3分でわかる最新人事コラム

第101回2014/11/17

「変わる新卒採用」

変わる新卒採用

誰もが通る大人への第一歩、それが「就職活動」です。
就職活動は学生にとって、人生の中での大きな分岐点の1つであり、社会人へ新たな生活をどんな会社でスタートさせるのかを決めるための、とても大事な活動です。一方、企業にとっても、自社の発展のために活躍してくれそうな優秀な学生を選ぶ新卒採用は、人事戦略上重要なミッションの1つです。
新卒採用には、「公平・公正な採用」や学生の「学修時間の確保」などを目的とした『新規学卒者の採用・選考に関する倫理憲章』(以後、倫理憲章)というルールがあります。日本経団連が中心となって、新卒者の採用活動に関するガイドライン(※主にスケジュール等に関する一定のルール)を定められていますが、今の大学3年生の就職活動から倫理憲章の内容が大きく変更になります。
今回は、この倫理憲章の変更、正確には「就職・採用活動開始時期の変更」が企業・学生にそれぞれどのような影響を与えるのか、企業の採用ツールはどう変わっていくのか、"変わる新卒採用"についてお伝えしたいと思います。

 

新しい新卒採用の内容(時期変更のスケジュール)

平成27年度卒業・修了予定者(現在の大学3年生等)から、スケジュールが変更になります。
まず、企業の広報活動の開始が、12月1日以降(現在)から翌3月1日以降(※大学3年の3月以降)になります。ここでの「広報活動」とは、リクナビ等を代表とするネット媒体への掲載や、就活系イベントへの出展などを利用した、学生へのプロモーション活動のことを指します。
次に、採用選考開始時期も、現在は4月1日以降なのに対し、新スケジュールでは卒業・修了年度の8月1日以降(大学4年の8月以降)になります。

新しい新卒採用の内容(時期変更のスケジュール).png

※内閣府HPよりhttp://www.kantei.go.jp/jp/singi/ywforum/zikihenkou_info.html

 

新卒採用スケジュール変更の背景

政府は、平成25年6月14日に閣議決定された『日本再興戦略』の中で、新卒採用活動時期変更の理由を以下の2つとしております。
1、学修時間の確保
日本は、これまで世界の先進国の中でも"若年失業率が低い"と評価されてきました。(2012年の15~24歳失業率:日本8.1% フランス23.8% ドイツ8.2% 韓国9.0% アメリカ16.2% イギリス21.0% <出典:OECD  Labour Force Statistics>)
これは、卒業見込みの学生について、卒業後直ちに働き始めることを前提に在学中に採用を内定する、いわゆる「新卒一括採用」の採用慣行の定着が要因とされております。
一方で、政府は「就職活動の早期化・長期化は、学業に専念すべき学生自身の負担になるばかりでなく、学生の成長が最も期待される卒業・修了前年度の教育に支障を来し、結果として学生の学力の低下が懸念される」としています。そこで、就職・採用活動開始時期を遅らせることで、「学生が学業等に専念できる環境が整備されること」を期待しています。

 

2、留学等の促進
"グローバル化"が叫ばれる昨今、留学経験や語学力のある学生を採用する企業は増えてきております。しかし、そのような状況と反比例するように、日本人の海外留学者数は2004年に約8万3000人を記録したのを最後に減少し続け、2011年時点で5万7000人まで落ち込んでいます。(※参照:文部科学省「日本人の海外留学状況」)
http://www.mext.go.jp/a_menu/koutou/ryugaku/__icsFiles/afieldfile/2014/04/07/1345878_01.pdf

 

そして、留学者数減少の要因の1番の大きな理由が、「就職」だとされています。

 

・日本人学生の留学に関する主な障害として、(1)就職、(2)経済、(3)大学の体制、(4)語学力に関することが挙げられており、中でも就職等のために留年する可能性を懸念する学生の割合が顕著。

留学に関する主な障害.png
 

・留学先の学年期間は我が国のものと異なる場合が多く、また多様である。そのため、留学生が日本での就職を希望しても、卒業して帰国する時期によってはすでに企業の採用選考が終わっている場合もある。

留学先学年期間.png

 

上記の通り、今の採用スケジュールでは「帰国後、留年する可能性が大きい」等の考え方から、留学を躊躇する学生が多く見られていました。
例えば、大学3年次から1年間留学を希望すると、帰国時期は早くとも4年次の5~6月頃になると予想されます。しかし、その頃には日本での採用選考活動はすでに始まっており、採用選考が既にほぼ終わっている企業も少なくないと考えられます。そこで、就職・採用活動開始時期を4年次の8月に遅らせることで、留学生の増加や留学から帰国した学生も選考活動に対応できることが期待されております。

 

政府は、学生が自己の興味や適性を考え、就職に向けた企業・業界理解や職業意識の醸成のため、インターンシップや職場体験への積極参加を奨励しております。大学1年次から、自分の適性をみるために興味のある業界のインターンシップに参加することで、まずは「働くとはどんなものなのか」「社会とは何なのか」を知り、就職後も成長し続けられる人材の育成を目指しています。
この他にも、大学と連携した在学生に対するキャリア教育・就職支援機能の強化や、地域の中小企業と大学等が連携し、経営者による出前講座等を通じて中小企業と学生が日常的に顔の見える関係を構築するとともに、合同説明会等によるマッチング支援を全国的に展開しています。

 

新卒採用スケジュール変更に対して、予想されるメリット / デメリット

就活時期の後ろ倒しは、「学業に専念させる」という点で、大学・企業・政府の三者で意見が一致し、就活解禁の時期を後ろ倒しにすることになりました。しかし、「いいことずくめではない」と心配する声も挙がっています。
まずは、予想されるメリット・デメリットに関して、下図をご覧ください。

メリットデメリット.png

(『人材活用、課題解決のヒントが満載! テンプ ナレッジマガジン』より)
http://www.tempstaff.co.jp/magazine/nippon/vol18.html

 

上記の図によれば、企業のメリットとして"重複内定の辞退者が減るので、採用コストを抑えられる"点があげられております。学生は、これまでのように6ヵ月間かけて複数社を受け内定を得た企業の中から選ぶという時間的余裕がなくなり、応募先を絞り込んで活動することになるでしょう。
しかし、上記の図のメリット・デメリットは、あくまで"経団連の指針に賛同している企業の場合"という前提条件が付きます。日本の企業数は中小企業を入れると421万社あり、そのうち経団連に参画している企業はわずか1,286社で、全体の0.03%にしかなりません。つまり、全国の99.97%の企業は今回変更になるスケジュールが当てはまらない可能性があります。このことから、企業にとってのデメリットあるいは懸念材料として、外資系企業や経団連に加盟しない新興企業などが経団連の倫理憲章に縛られないため、「3月解禁」を守らずにフライングして学生にコンタクトをとり、混乱させるのではないかという声もあります。また、そもそも就活のルールは企業間の「紳士協定」であり、首相の要請といえども法的拘束力がないので、「青田買い」をする企業が増えれば台無しになってしまうことも十分にあり得ます。各企業の採用方法や対応に、目が離せない状況です。

 

では、学生は今回の就活時期の後ろ倒しをどのようにとらえているのでしょうか。
下図は、2013年5月にマイナビ社が当時の大学4年生に実施したアンケートでは、2016年卒の就職活動解禁が、現在の12月1日より3カ月後ろ倒しになる可能性についての質問で、就職活動が「不利になると思う」が50.8%と過半数を占める結果となりました。(下図参照)
(全企業が倫理憲章を守る前提で)不利になると思う理由として、「選考が遅くなれば、大企業に落ちたあと、中小企業へ行く時間が少なくなる」(文系男子)、「卒業研究の追い込みの時期と重なるので、準備が間に合わないから」(理系男子)などの理由が挙がっています。 有利になると思う理由としては、「就活準備をする時間が増えるから」(文系男子)、「理系の場合、学会等に参加しやすくなり、実績を残せるから」(理系女子)などが挙がっています。

 

~2016年卒の就活から「3月説明会開始・8月選考開始」に変更になるというニュースが報じられましたが、もしあなた自身の就活がこのスケジュールで行われた場合、現在の「12月説明会開始・4月選考開始」に比べて有利になると思いますか?~

スケジュール変更に関するアンケート.png

(『2014年卒マイナビ学生就職モニター調査 4月の活動状況』より)
http://news.mynavi.jp/news/2013/05/27/166/

 

政府の方針通りであれば、学生の考えるメリットとして「インターンシップへの参加がしやすくなる」「留学から帰国しても面接に間に合うので安心」などの声がもう少し多くても良いのかもしれません。しかし、実際の学生はこの就活時期の後ろ倒しを"不利になる"と考える学生も多く、"どちらとも言えない"と就職に対してあまり意識をしていない学生も40%程いることから、政府との温度差を認めざるを得ない結果となっています。さらに、DSSというNPO法人が2011年に実施した、東大・慶応・早稲田など、有名大学4年生約1000人にアンケート調査では、全体の7割が「就活時期を遅らせても学業へ向かう姿勢に変化はない」と回答しています。また、日本人留学生は6月に帰国するので8月からの選考には間に合いますが、就活をスタートする時期は国内組よりも遅くなるので、「就活時期の後ろ倒し=留学の増加」に対しても疑問の声があがっています。

 

新卒採用スケジュール変更に対する各社の対応

就活時期の後ろ倒しにより、各社による"人材争奪戦の過熱"が予想されます。
少しでも学生との接点を持つため、各社はざまざまな人事戦略を取ることが予想されます。ここでは、いくつか具体例を紹介したいと思います。

 

例1 リクルーターの活用
大阪の一部上場メーカーでは、若手社員を出身大学に送り、後輩の学生に会社や仕事をアピールする「リクルーター」を活用する方針です。採用難と就活時期の後ろ倒しを見据え、12月ごろから社員を大学に送り、学生に事業概要や仕事の内容を説明し、「学生に会社の理解と関心を高めてもらう」のが同社の狙いです。
この他にも、東京のコンピューター系メーカーでも、リクルーターの数を1.5倍に拡充すると発表しています。
このように、「リクルーター」を活用する企業は徐々に増えてきており、知り合いの就活生や出身大学の学生に接触することで、求める人材像に近い学生を引き寄せる活動は盛んになるかもしれません。

 

例2 インターンシップを実施する企業の増加
HR総研が2014年7月に上場および未上場企業(198社)の人事担当者に対して実施したアンケートの中で、2割の企業が今年からインターンシップを実施することを検討していることがわかりました。(※下図参照)

インターンシップを実施する企業の増加.png
(『「2016年卒向けインターンシップに関する調査」結果報告』 HR総研調べ)
http://www.hrpro.co.jp/research_detail.php?r_no=93

 

上記の図からもわかるように、企業規模に関わらず約2割の企業が「前年は実施していないが、今年は実施する」と回答しています。企業規模を問わず、全体としてインターンシップを実施する企業が増える見込みであり、特に中小企業では、早くから学生に自社の存在を認知してもらい、採用に結び付けられればという思惑があるようです。

 

例3 人事コンサル企業の躍動
就活時期の後ろ倒しにより採用活動が短期集中化するため、採用効率の良い紹介や採用代行サービスが利用が広がる可能性があります。人材紹介や採用代行サービスの活用を発表している企業やデータはないので、創造の範疇を出ませんが、各企業は採用活動自体の見直しを余儀なくされる為、可能性はおおいにあると言えます。

 

まとめ

首相の強い要請で就職活動のルールが変更になり、2016年卒の学生(2014年11月時点で大学3年生)から、就活の解禁時期が後ろ倒しになります。
大学生や大学側からは賛否両論ありますが、政府の目的である「学生が学業に専念するための環境を整えること」「留学する学生の増加」の狙い通りに留学生が増加すれば企業も世界に通用する人材を確保しやすくなるでしょう。企業に関しては、優秀な人財確保のために"人材争奪戦の過熱"が予想されます。これまでの採用活動自体の見直しを行い、「リクルーター」の活用やインターンシップをより積極的に行うことで、学生との接点を増やそうとする企業が増えてきております。これ以外にも、スタートアップ企業などでは自社のパーティーに学生を招待し、学生との接点を設けるダイレクトリクルーティングを積極的に行っており、採用の形は多種多様化していくと思われます。
就活時期の後ろ倒しにより、"企業の方から学生を採りに行く"という新たな新卒採用のスタンスが顕著になり、学生にとっては今後より一層の"売り手市場"が形成されていくのではないでしょうか。

(文/リクルーティングアドバイザー 重田智幸)

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