「マイナンバー制度」

第106回2015/09/29

「マイナンバー制度」


「マイナンバー制度」

マイナンバー制度

平成27年10月、いよいよ「マイナンバー」が通知されます。
マイナンバー制度の開始は平成28年の1月ですが、このマイナンバー制度について、皆様はどこまで理解できていますでしょうか?

マイナンバー制度は全ての企業・全ての人に関わるものです。しかし、制度の詳しい内容や影響範囲などについてあまりよく知られていないという問題が発生しています。マイナンバー制度の対応はいつまでにする必要があるのか、制度が始まることで企業にどのような義務・責任が発生するのか、これは全社員が知っておくべきことでしょう。
特に経営者層や管理職、担当部署(人事、総務、経理など)の方は、影響する業務範囲と対応方法を理解し、更には企業でマイナンバー制度を導入するに当たり、どういったリソースが必要になってくるのかを把握し、対応しなければなりません。

各方面でも既に取り上げられていますが、非常に重要な制度です。
今回のコラムでは、その「マイナンバー制度」ついてお伝えします。

「マイナンバー制度」について

マイナンバー制度とは、「公平・公正な社会の実現」「国民の利便性の向上」「行政の効率化」を目的とした制度です。
民主党政権時代の平成22年度税制改正大綱で、低所得者対策として給付付き税額控除制度の創設案が掲示されると同時に計画されました。
当日は、「税と社会保障の共通番号制度」と呼ばれ、平成22年2月に制度に関する検討会が設置。6月に公表された「中間とりまとめ」で番号制度の骨子が固まりました。

マイナンバーは12桁の番号から成り立ち、住民票を有する全ての方に付与されます。社会保障、税、災害対策の各分野で効率的に情報を管理し、複数の機関に存在する個人の情報が同一人物の情報であることを確認するために利用される大切なものです。通知されたマイナンバーは一生使うものであり、漏えいにより不正に使われるおそれがある場合を除いて、番号は一生変更されることはありません。

「マイナンバー制度」はいつから?

平成27年10月にマイナンバーが国民へ事前に通知され、翌年の1月にマイナンバー制度が導入されます。
流れとしては、まず市区町村から住民票に登録されている住所宛にマイナンバーを記載した「通知カード」と「個人番号カード交付申請書」が郵送されます。これは中長期在留者や特別永久者などの外国人の方も同様に通知されます。郵送されてきた「個人番号カード交付申請書」に返信、もしくはインターネットで申請することで、身分証明書など様々な用途に利用できる『個人番号カード』を受け取ることができます。
個人番号カードは、交付申請後、市区町村から個人番号カード交付準備完了の通知書が届き、平成28年1月以降に市区町村窓口で受け取ることができます。

申請・交付スケジュール

企業が「マイナンバー制度」を扱う上での注意点

マイナンバー情報と顔写真が表示された「個人番号カード」は、身分の証明や自治体のサービスを受ける際に利用できるようになる予定となっています。

具体的には下記のようなときに利用されます。
・年金の資格取得や確認・給付、医療保険の保険料徴収時
・税務当局に提出する確定申告書、届出書、調書などの記載の時
・災害者生活再建支援金の支給や、災害者台帳の作成事務 など

一般企業の場合は、給与所得の源泉徴収票の作成、社会保険料の支払い及び事務手続きなどに必要となる為、人事部、総務部、経理部などの部署が取り扱うことが多くなりそうです。
マイナンバーを運用する際の、各プロセスの注意点は下記の通りです。

■取得時の注意点
・マイナンバー取得の際にはあらかじめ利用目的を特定して通知又は公表することが必要
・本人確認はなりすまし防止のためにマイナンバーの確認と身元の確認を厳格に行う

■利用時の注意点
・マイナンバーの取得は法律で定められた税と社会保険の手続に使用する場合のみ可能で、それ以外の目的(社員番号や自社の顧客管理など)で利用・提供することはできない

■保管方法・廃棄時の注意点
・データで保管する場合はファイルにパスワードを設定し、端末にはウイルス対策ソフト等を導入する
・紙で保管する場合はカギ付きの保管庫を用意する
・情報が必要無くなったら速やかに廃棄・削除を実行する

■安全管理措置
・取扱い担当者を明確にし、担当者以外がマイナンバー情報を取り扱うことが無いよう、情報へのアクセス制御を掛ける
・担当者以外からむやみに情報を覗き見されないよう、座席配置等を工夫する

マイナンバー法ではマイナンバーを扱う事業者に、個人情報保護法よりも厳しい保護措置を求めています。上記のポイントを踏まえて社内でルールを定め、利用目的の策定、社内へのアナウンスやガイドラインの作成、マイナンバー収集までのスケジュールを確認することが必要です。

(補足:マイナンバー情報を「目的の行政手続き」以外で使用すると、執行猶予なしの禁固刑という罰則の対象となってしまいます。4年以下の懲役、もしくは200万円以下の罰金とかなり厳しい内容です。知らずに法に触れ、罰せられることがないようにセキュリティー対策はしっかりとやっておく必要があります。)

参照:内閣官房HP
http://www.cas.go.jp/jp/seisaku/bangoseido/download/kojinjigyou.pdf

今からでも遅くない?!マイナンバー制度対策方法

まずは本制度の内容を理解し、制度開始に向けた準備をするためのスケジュールを計画します。
政府が広報している企業の対策プロセスは、大きく分けて下記の4つです。

1.マイナンバーを適正に扱うための社内規程づくり(基本方針、取扱規程の策定)

2.マイナンバーに対応したシステム開発や改修(人事、給料、会計システム等への対応)

3.特定個人情報の安全管理措置の検討(組織体制、担当者の監督、区域管理、漏えい防止、アクセス制御など)

4.社内研修・教育の実施(特に総務・経理部門などマイナンバーを取扱う事務を行う従業員への周知徹底)

※参照:政府広報オンライン
http://www.gov-online.go.jp/tokusyu/mynumber/corp/

特に、時間のかかる「システムの開発や改修(バージョンアップ等)」を実施する際は、早めに取り組むことが必須です。急ぐあまり、システムの仕様書が曖昧なものになると、システム導入にあたって不要な作業や費用が発生したり、システムそのものが使い物にならなったりという恐れもあります。そのような事態を未然に防ぐために、中小企業診断士や社会保険労務士などの専門家に依頼するのも一つの手です。
10月に通知される社員のマイナンバー情報の収集とその管理も優先的に進めていきましょう。

まとめ

マイナンバー制度について、日経BPコンサルティングが行った調査によると、約6割の企業が、本制度が全企業を対象となっていることを認識していないという結果が出ています。また、システム開発の遅れについては、企業だけでなく自治体においても指摘されており、対応が遅れている傾向は官民問わず見ることができます。

今からでも遅くはありませんので、まずはマイナンバー制度への理解を深めることが重要です。内閣官房のHP情報やフリーダウンロード資料を活用したり、現在頻繁に開催されている外部セミナーに積極的に参加したりと、新しい情報を入手しながら準備を進めていくと良いでしょう。

繰り返しになりますが、マイナンバー制度は全ての企業・全ての人に関わるものです。経営や管理部門だけでなく、社員ひとりひとりの意識を高め、会社全体で取り組んでいくことをおすすめします。

(文/リクルーティングアドバイザー 久村知誉)

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