「女性活躍推進の実態」

第121回2024/03/28

「女性活躍推進の実態」


「女性活躍推進の実態」

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女性活躍推進法の背景

女性活躍推進法とは、2016年4月から施行された女性の活用・社会的活躍を推進するための法律です。
施行当初は、労働者数301人以上の事業主に、女性活躍に向けた行動計画の策定と公表を義務化しましたが、8年後の2022年4月に対象を拡大する改正が行われ、労働者数101~300人以下の事業主も義務化されました。

この背景には、少子高齢化に伴う労働者不足や、産業構造の変化により女性を含む多様な人材を活用していこうという社会風潮の高まりが挙げられます。
男女共同参画推進本部では、「社会のあらゆる分野において、2020年までに指導的地位に女性が占める割合が少なくとも30%程度になるよう期待する」と掲げられていましたが、この目標は2024年現在で達成できているのでしょうか。
この記事で参照する調査結果データをもとに、女性活躍の実態を見ていきましょう。

最終目標指数に対する現状(指導的地位に女性が占める割合)

まずは、目標指標としている「指導的地位に女性が占める割合」についてです。

民間企業の雇用者の各役職段階に占める女性の割合

内閣府の「男女共同参画白書 令和5年版」のデータを見てみましょう。
この指標における目標は、「2020年までに指導的地位に女性が占める割合が少なくとも30%程度」です。
指導的地位の定義は「法人・団体等における課長相当職以上の者」としているため、目標設定している2020年当時は、部長級が8.5%、課長級が11.5%の合計20%と、目標よりも10%低い結果となりました。

また、最新データである2022年は、部長級が8.2%、課長級が13.9%の22.1%となっています。
到達目標としている年から2年経過していますが、まだ目標である30%に達していないことが分かりました。

女性管理職の割合

続いて、株式会社帝国データバンクによる「女性登用に対する企業の意識調査」から女性管理職の割合を見ていきましょう。2021年から2023年における女性管理職の割合について表したものは、以下のグラフです。

女性管理職の割合

グラフからも分かるように、管理職においては「全体の30%以上が女性」という企業は昨年から0.3%増加しています。
しかし、「0%(全員男性)」も0.1%増加していることが分かります。平均すると、「9.8%」と前年から0.4%増加しました。

今後の課題 ~施策・制度導入の実態を踏まえて~

今後、指導的地位に占める女性の割合を上げていくには、男女ともに仕事と育児を両立できる環境整備が一番に挙げられます。
ここでは、育児休業の男女別取得率や、その他制度の導入状況について見てみましょう。

1. 男女別 育児休業取得率の推移

育児休業取得率の推移(女性)

育児休業取得率の推移(男性)

令和4年度における女性の育児休業取得率は80.2%で、昨年度から4.9%減少しています。
対して男性の育児休業取得率は17.13%と、3.16%増加しました。
男性の取得率が増加は、令和4年10月から施行された出生時育児休業が影響していると考えられます。これは、「産後パパ育休」と呼ばれる新たな育休制度で、出生日から8週間までに最長4週間の育休を取得することが可能です。

2. 育児のための所定労働時間の短縮措置等の制度の導入状況

次に、短時間勤務やフレックスタイム、テレワークなどの制度導入率を見ていきましょう。

育児のための所定労働時間の短縮措置等の制度の導入状況

昨年度より導入率が増加した制度は、短時間勤務制度、所定外労働時間の制限、始業・終業時刻の繰上げ・繰下げ、育児に要する経費の援助措置、育児休業に準ずる措置の5つです。

近年は、「仕事と家庭(育児)の両立支援」が重要課題と認識され始め、課題解決に向けた制度導入は少しずつ進んでいると言えるでしょう。
男性の育休取得も5年前と比較して3倍以上に増加していることからも、「会社内での男女均等支援」が進み始めていると考えられます。

しかし、時短勤務の充実など育児・仕事の両立支援ばかりを重視すると、女性の離職防止にはつながりますが、補助的な仕事内容や役割を担うこととなり、女性のキャリア形成支援は進みません。
会社内での男女均等支援のみを重視すると、働ける一部の女性のみに昇進が限定されてしまいます。相互の施策をバランスよく連動させ、実行していくことが必要なのです。

私自身、キャリアアドバイザーとして求職者の方から「産休・育休・子の看護休暇の利用を“良し”としない空気がある」「男性が育児参加し辛い」「上層部が、男性は仕事、女性は家庭という意識がある」などの声をよく聞きます。
労働人口が減少する中で、多様性や様々な人材の活用が叫ばれている昨今、柔軟な考え方を取り入れていかなければ女性の活躍推進は思うように伸びていかないのではないかと思います。

まとめ

今回のデータを読み解いた結果、女性活用の推進に向けて、現在社会の風潮は徐々に高まっていることが分かりました。
しかし、男性の育休取得も急増してはいるものの、女性と比較すると半数以下であることも事実です。今でも「男性は仕事、女性は家庭」のような風潮はしっかりと存在感を持って企業の中にあり続けており、さまざまな場面で女性の活用を推し進める障壁となっているようです。

働く方のキャリアを支援する転職エージェントとして、いつか「女性活用」や「女性活躍推進」という言葉が使われなくなり、性別に関わりなく全ての人が自然に活躍できる社会が実現するように願っています。

【関連記事】
・内閣府 「男女共同参画白書 令和5年版」
・株式会社帝国データバンク 「特別企画 : 女性登用に対する企業の意識調査(2023年)」
・厚生労働省 「令和4年度雇用均等基本調査」

(文/キャリアアドバイザー 工藤 修士)

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