「女性活躍推進の実態」
第121回2023/06/06
「女性活躍推進の実態」
「女性活躍推進の実態」
女性活躍推進法の背景
日本政府として女性の活用・社会的活躍を推奨する背景には、少子高齢化に伴う労働者不足や、産業構造の変化により女性を含む多様な人材を活用していこうという社会風潮の高まりが挙げられます。
具体的な目標としては、男女共同参画推進本部において「社会のあらゆる分野において、2020年までに指導的地位に女性が占める割合が少なくとも30%程度になるよう期待する」と掲げられています。
2023年現在、この目標は達成できているのでしょうか。
この記事で参照する調査結果データをもとに、女性活躍の実態を見ていきましょう。
1. 最終目標指数に対する現状(指導的地位に女性が占める割合)
まずは、目標指標としている「指導的地位に女性が占める割合」についてです。
閣府の「男女共同参画白書 令和4年版」のデータを見てみましょう。
この指標における目標は、「2020年までに指導的地位に女性が占める割合が少なくとも30%程度」です。
指導的地位の定義は「法人・団体等における課長相当職以上の者」としているため、目標設定している2020年当時は、部長級が8.5%、課長級が11.5%で、合計20%となりました。
また、最新データである2021年は、部長級は下落しましたが、課長級が増加したことにより、20.1%となっています。
いずれの年においても、30%という目標は達成できない結果となりました。
女性管理職の割合
2020年から2022年における、女性管理職の割合について表したものは、以下のデータです。
データ1に表れている通り、管理職においては「全体の30%以上が女性」という企業は微増しています。10%未満と0%については、少しずつですが減少しています。
今後の課題 ~施策・制度導入の実態を踏まえて~
今後、指導的地位に占める女性の割合を上げていくには、仕事と育児を両立できる環境整備が一番に挙げられるでしょう。その一つの要素として、企業の育児休暇の制度の導入率や取得率やについて見てみましょう。
1. 育児休業制度の規定がある事業所割合の推移
育児休業制度の規定がある事業所の割合は上記の通りです。
平成27年度と平成29年度に下降したものの、全体を通してみると増加傾向にあります。
2. 男女別 育児休業取得率の推移
女性の育児休暇取得実績は、平成24年に減少したものの、その後緩やかではありますが、微増傾向にあるように見えます。
一方で、男性は平成25年度を境に上昇し、令和3年度には18.9%まで上昇しました。
3. 事業所規模別子の看護休暇制度の規定あり事業所割合
子の看護休暇制度の規定状況について、平成30年度と令和3年度を比較すると、5~29人規模の事業所から100~499人規模の事業所までは、子の看護休暇の規定ありの割合が増加しました。
一方で、500人以上の規模の事業所では、3.2%減少しています。
小学校就学前までの子を持つ労働者がいる事業所のうち、令和3年度に子の看護休暇の取得者がいた事業所の割合は 28.3%でした。
そのうち、男女ともに取得した事業所は27.4%、女性のみ取得した事業所は 58.2%、男性のみ取得した事業所は 14.4%です。
子の看護休暇は男女問わず付与される制度ですが、やはり女性の取得者の方が多いことが分かります。
以上の数値的結果からも、「仕事と家庭(育児)の両立支援」は重要課題であると考えられます。
実際に課題解決に向けた制度導入は少しずつ進んでいるようですが、「会社内での男女均等支援」の重要性も忘れてはなりません。
なぜならば、育児休暇制度・時短勤務の充実など、育児と仕事の両立支援施策を重視すると、女性の定着は進むものの仕事の内容や役割は補助的なものなり、キャリア形成支援が進まないでしょう。
会社内での男女均等支援のみを重視すると、働ける一部の女性のみに昇進が限定されてしまいます。相互の施策をバランスよく連動させ、実行していくことが必要なのです。
転職コンサルタントとして日々求職者の方のお話を伺う中で、求職者の方から次のような意見は今でもよく聞きます。
「産休・育休・子の看護休暇の利用を“良し”としない空気」、「男性が育児参加し辛い環境」、「男性は仕事、女性は家庭という意識」といったものが、まだまだ日本企業の職場にはあるようです。
労働人口が減少する中で、多様性や様々な人材の活用が叫ばれている昨今、柔軟な考え方を取り入れていかなければ女性の活躍推進は思うように伸びていかないのではないかと思います。
まとめ
今回のデータを読み解いた結果、女性活用の推進に向けて、現在社会の風潮は徐々に高まっていることが分かりました。しかし、残念な点は障壁となっている要因が、昔も今も変わっていないことです。今でも「男性は仕事、女性は家庭」のような風潮はしっかりと存在感を持って企業の中にあり続けており、さまざまな場面で女性の活用を推し進める障壁となっているようです。
働く方のキャリアを支援する転職コンサルタントとして、いつか「女性活用」や「女性活躍推進」という言葉が使われなくなり、性別に関わりなく全ての人が自然に活躍できる社会が実現するように願っています。
<出典>
内閣府 男女共同参画白書 令和4年版
株式会社帝国データバンク『特別企画 : 女性登用に対する企業の意識調査(2022年)』
厚生労働省 令和3年度雇用均等基本調査
(文/キャリアアドバイザー 井原美菜子)
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