「変形労働時間制」

第15回2005/12/06

「変形労働時間制」


「変形労働時間制」

従来の日本型人事システムが崩壊し、新しい人事システムを導入する企業が、増加しています。
その人事システムは「成果主義」や「年俸制」等の処遇システムにとどまらず
「フレックスタイム制」等の労務管理まで含めた人事システムを導入するケースが多く、
厚生省の調査によると、平成15年までに変形労働制を導入している企業は、
日本全国の30名以上の企業の半数を超えています。
今回は、その「変形労働時間制」に焦点をあて解説します。

 

1.変形労働時間制とは

法廷労働時間は、1日8時間、1週間40時間と労働法で定められています。
しかし、業務によっては月ごとに仕事の繁閑があるものもあります。
(ある週では40時間も人手は要らないが、別の週では40時間ではとても足りない、等。)
このような場合、一律にどの週も40時間と限定するのは非合理的です。
そこで、もっと労働時間に順応性を持たせようとしてできたのが「変形労働時間制」です。
この変形労働時間制は、
繁忙期・閑散期を通じた期間(変形期間)を一単位として法定労働時間を考え、
その一単位の期間の長さにより3種類に分かれます。

 

 2.変形労働時間制導入のメリット

(1)職種に応じた柔軟な対応
同じ企業内でも、営業・技術・管理部門などその職種によって特性があります。
繁忙期と閑散期がある程度明確な場合には、該当する1部署のみ、
1ヶ月単位または1年単位の変形労働時間制を導入する事ができます。


(2)人材確保・流出防止効果
企業側においては、労働時間・コストの縮減がメリットとして挙げられます。
企業活動の繁閑の差や顧客ニーズへの対応の必要性に基づいて
「忙しい時は長く、暇な時は短く」働く事によって、
年間(月間)の実労働時間の短縮が期待できます。
また繁忙期は1日あたりの法定労働時間を超えて就業させる事ができ、
所定時間内であれば時間外手当も発生しないため、コスト削減の効果もあります。

 

(3)企業のサービス力の向上
企業側においては、顧客ニーズに合わせて労働時間を設定することができるため、
顧客の満足に繋がるサービスを提供しやすい環境になります。
人手が必要な繁忙期に労働力の確保が保障されているので、
変形労働時間制導入以前よりも余裕ができ、
顧客の要望により柔軟に対応できる環境になります。

(4)生産性の向上
社員の時間感覚の意識改革をする事で、
単に時間による拘束以上の生産性を上げる効果があります。
時間ではなく繁閑の業務量によって働き方が変わるという意識を高めると
「繁忙期は忙しくても閑散期は早く帰れるのだから」と社員のモチベーションが上がり、
生産性を向上させる可能性が期待できます。
実際に社員の意識改革が功を奏し、1%の労働時間短縮(年間12%短縮)で
3%以上の生産性の向上が実現したという調査報告も発表されています。

 

(5)従業員が働きやすい環境
予め所定の労働時間が定められているため、
社員にとっては生活スタイルを確立しやすい環境になります。
特に近年は個々人が「自身の働き方を考える」という意識が強くなってきている傾向があるため、
閑散期には労働時間が短縮されてプライベートな時間を作りやすい制度は
「働きやすい」というイメージに繋げる事ができ、企業の魅力の一つとなり得ます。
それによって求職者からの企業評価が高まり、採用力がアップすることが期待できます。


3.導入時のポイント・注意点

(1)運用対象者を明確にする
変形労働時間制を適用する社員の範囲を明確に定めることが重要です。
業務によっては繁閑の差異が少なく変形労働時間制になじまない業種や職種もありますが、
変形労働時間制は1部署のみ導入する事も可能です。
そこで、業種として全社員が適用対象となるのか、ある特定の部署や職種にするのか等、
社内で十分議論し対象者を選定する必要があります。


(2)繁閑の差異割り出し
事前に導入のメリット・デメリットを明確にするためにも、
繁閑の労働時間の差異を明確にする必要があります。
当然ながら、繁閑の労働時間の差異がある程運用後の効果が期待できます。
効果が期待できるのは社員のどの範囲なのか、
自社の繁閑の周期はどのように巡っているのか、
導入に適切な周期はどれに当てはまるのか等、
社員からのヒアリングも含め社内の現状を正確に把握する事が大切です。


(3)顧客対応へのリスク回避
繁忙期には労働時間が長くなるため顧客のニーズに合わせた対応がしやすくなりますが、
その分閑散期には通常よりも労働時間が短くなるため、
突然の顧客対応の際に担当者が不在などの問題を避けるために、
変形労働時間制を導入している事をあらかじめ顧客に伝え
理解を求める等のリスクヘッジが必要です。


(4)経営者を含め社員全員の意識改革
実際の労働時間の短縮を図る上で大切な要素は、経営者も含めた社員全員の意識改革です。
これまで通りの方法と姿勢で業務に携わっていると、
労働時間の短縮はイコール生産性の低下に繋がってしまいますので、
労働生産性の低下を招かずに労働時間の短縮を実現するためには、
短くなった時間の有効活用法を絶えず図っていく姿勢が必要です。
時間感覚は一朝一夕では根付かないため、
経営者や管理職が意識的に旗振り役となって意識改革の見本を見せる事が肝要です。

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