3分でわかる最新人事コラム

第38回2008/03/11

「時間外労働」

先日、某大手外食チェーンが店長を管理職として扱い、残業代を支払わなかった為に、
同社の店長から残業代と慰謝料として1350万円を求められる事件が起きました。
これに対し、東京地裁が同社に755万円の支払いを命じる事件が起きました。


現在、労働組合加盟率が低下したことにより、
企業対労働組合の構図で争われる集団的労使間紛争が減少し、
企業対個人の構図で争われる個別的労使間紛争が増加しています。
それに伴い労働組合の総意として企業と交渉・調整されていたグレーゾーンの労使問題が、
一社員の訴えにより顕在化する事件が発生しています。


こうした労使問題の一つである賃金不払残業、
いわゆるサービス残業はどの企業でもいつかはぶつかる経営課題です。
特に成長著しい時期を少数精鋭で乗り切るベンチャー企業にとって、
社員一人ひとりの質だけでなく量も高めたい、
一方でコストは削減したいというのが本音では無いでしょうか。


成果主義へ方針転換する日本において、
長時間働くことが必ずしも正しいとは限らないという価値観は広がり、
多くの企業が「年俸制」の導入や積極的な「管理職登用」といった対応を行っています。
特にベンチャー企業では、生産性向上とモチベーションアップを意図して、
これらの対応をしている企業が多くあります。
一方、正確な知識なく「コスト削減」を意図してこれらの対応を行う企業は、
冒頭の大手外食チェーンのように思わぬところで足元をすくわれます。


そこで、今回は「残業」をキーワードに、その概念と対策例を概説します。


労働基準法における「残業」の位置づけ

残業への対策を講じるにあたり、まずは正確な知識、
つまり労働基準法を理解しておく必要があります。
労働基準法上においては「時間外労働」とされるいわゆる「残業」は、
法定労働時間外の労働を指し、
通常は就業規則によって定められた労働時間を越えて労働することを意味します。


時間外労働は日本の法令において、
以下の3つの1つ以上に当てはまる場合においてのみ許されます。


1)労働基準法第33条第1項:災害その他避けることが出来ない事由によって、
 臨時の必要がある場合において、使用者が行政官庁の許可を受けた場合
 (事態急迫の場合は、事後に届け出る。)


2)労働基準法第33条第3項:官公署の事業(一部の事業を除く)に従事する国
 家公務員及び地方公務員が、公務のために臨時の必要がある場合


3)労働基準法第36条:使用者と労働者の過半数で組織する労働組合又は事業場
 の労働者の過半数の代表者とが時間外労働、休日労働について協定を書面で
 締結し、これを行政官庁に届け出た場合(いわゆる三六(さぶろく)協定)
 時間外労働に対しては、その対価として残業代、つまり割増賃金が発生します。
  残業代は労働基準法において以下のように定められています。


4)労働基準法第37条第1項:時間外労働を行った場合、通常の労働時間(休日
 勤務の場合は、労働日)の賃金の2割5分(休日労働は3割5分)以上5割以下
 の範囲の政令で定める率以上の率で計算された割増賃金を支払わなければ
 ならない


5)労働基準法第37条第3項:使用者が午後10時から午前5時までの間に労働さ
 せた場合においては、通常の労働時間における賃金の計算額の2割5分以上
 (時間外+深夜労働では5割以上)の率で計算した割増賃金を支払わなけれ
 ばならない


6)労働基準法附則132条第1項、第2項:1年以内及び1週間非定型の変形労働時
 間(フレックスタイム)制を採用する場合、三六協定は必要ないが、労使
 協定で割増賃金を支払うべきとされる時間が生じることがある


⑦労働基準法第37条第4項:割増賃金の基礎となる賃金には、家族手当、通勤
 手当その他厚生労働省令で定める(1ヶ月を超える期間毎に支払われる)賃
 金は算入しない


三六協定を締結していない場合は
時間外労働の法令①、②に該当する場合のみ時間外労働が許されることになり、
常に残業をさせることは労働基準法違反になります。
三六協定を締結していない場合は使用者の裁量で時間外労働の管理が行われます。


残業に対する行政勧告

前述の通り使用者の裁量で時間外労働の管理が行われる場合もありますが、
無制限に出来るものではありません。
この点を根本的に誤解した対応が多くの企業で見受けられます。


具体的には以下の場合は労働基準監督署から是正勧告を受けます。


 1)1ヶ月100時間以上の時間外労働をしている場合
 2)直近6ヶ月間で月平均80時間を越える時間外労働をしている場合


この勧告は、80時間以上の残業が過労死をはじめ
様々な病気の原因であるという統計データに基づいており、
2001年には厚生労働省より
「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置」が全国労働局に通達が発せられ、
本格的な調査と厳しい是正指導が始まっています。


昨今、上記の是正勧告を受けた企業が過去へさかのぼって支払うという出来事が起きています。
積もり積もった残業代は資金面で大きな打撃を企業に与えると同時に、
社会的地位も低下させます。
正しい労働基準法の知識を身につけ、適切な対応をすることが求められています。


誤解が多い残業への対応

具体的な対策の中で、誤った認識の下で実施されていることが多いのが、
「年俸制」と「管理職登用」です。


まず、「年俸制」ですが、
年俸は成果主義の概念に基づいて純粋に成果に対して報酬を支払う際に用いられる制度です。
成果に対して報酬を支払うのだから残業代は必要ないと誤解されがちですが、
年俸制の導入も労働基準法に則って行われるため残業代の支給は必要です。
支給の方法としては、多くの場合、1ヶ月に見込まれる残業時間を想定して
みなし残業代や営業手当として年俸に反映することが多いようですが、ここにも誤解があります。


想定時間を超過した残業には別途、残業代の支給が必要になります。
また、残業代の計算は1ヶ月単位で区切るものとされているため、
繰越が出来ませんのである月の残業時間を翌月以降に繰り越して相殺することは出来ません。


もう一つ誤解が多い事例として、管理監督者登用があります。


管理監督者、いわゆる管理職は労働時間の拘束を受けず
残業代の支給を受けない代わりに職位に見合った管理職手当の支給が必要です。
しかし、この職位に見合わない管理手当で多くのサービス残業を強いられているケースや
管理職相当の裁量権を持たずに管理職待遇で扱っているケースが多くあります。


そもそもの誤解は、管理職に当たるのは厚生労働省の通達によると
「一般的に局長、部長、工場長等労働条件の決定その他労務管理について
経営者と一体的な立場に在る者であり、名称に捉われず
出社退社等について厳格な制限を受けない者について実態的に判断すべきもの」
とされているので、使用者の主観的な判断で定めることは出来ません。


上記のような法律を理解せず、コスト削減を目的に残業代を支払わずにいると
いざ調査が入った場合や社員が訴訟を起こした場合、企業に回避の余地はありません。


総括

このように正確な知識なく残業の扱いをしていると、
思いもよらぬ危機を招く結果になります。
また、単に企業の危機を回避するために残業代を支払えば良いということでもありません。


既述の通り、月80時間を超える時間外労働は社員に肉体的、
精神的に負担をかけると同時に生産性の低下、
モチベーションの低下、モラルの低下につながります。
一度これらの低下が起こると
金銭では解決できない大きなダメージを企業が負うことになります。 
残業を減らし社員が健全に働ける職場作りをし、生産効率を高めることが求められています。
その為の策として、代休制、ノー残業デー、
変形労働制、フレックス制、裁量労働制などを導入する企業も増えてきています。


しかし、最も重要なのは、
労使の双方が協力してより良い職場作りをする意識を共有することです。
まずは、使用者側から積極的に働きかけ、
労使間の相互理解と目的共有を図る必要があります。

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