「社員が会社を辞める理由」~経営者(上司)との意見相違~

第44回2008/09/10

「社員が会社を辞める理由」~経営者(上司)との意見相違~


「社員が会社を辞める理由」~経営者(上司)との意見相違~

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「社員が会社をやめる理由」について前二回にわたり「労働環境」、
「キャリアに対する意識」をテーマに解説して参りました。
今回は「経営者(上司)との意見相違」をテーマに解説致します。
経営者(上司)との意見の違いが退職理由となってしまう場合に、
どのようなケースがあるのか具体例を挙げ、問題解決のために出来ることを考えて参ります。


意見相違が退職理由となる背景

そもそも意見相違は必ずしも悪いことと言えるのでしょうか。
複数の人間が集まる以上、異なる意見が出ることは、自然で健全なことです。
意見が異なる者同士で話し合うことで、理解を深め合うことができたり、
新たなアイデアに昇華させられたりすることもあります。
つまり個人・企業の双方にとって、「意見相違」はチャンスと捉えることができます。
しかし現実には、「意見相違」が退職理由となっています。
これは、「意見相違」が対処の仕方によっては、
人間関係やモチベーションにまで、悪影響を及ぼすからと言って良いでしょう。


あるアンケートに次のような問いがありました。
「人間関係の良し悪しは、業務に影響を与えますか?」
この質問に、約八割の人が、「影響を与えている」と回答しています。
そして、「職場の誰に対する対応で苦労しますか?」という質問の答えとして、
一位が「上司」で六割以上の人が挙げています。
次いで二位が「部下」、三位に「同僚」と続きます。
また、同アンケートにおける退職理由ランキングでは、
「上司との人間関係を理由に退職」という理由が一位に挙がっています。
人間関係を悪化させる要因は様々ですが、
その一つとして、「意見相違への誤った対処」が考えられます。
つまり経営者(上司)と社員の「意見相違」を良い方向へもっていくことが出来れば、
人間関係の悪化を防ぎ、延いては無為な退職をも減らすことができるのです。


経営者との意見相違

組織によっては、決して身近とは言えない場合も多い
「経営者と社員」の間でも、「意見相違」は起こります。
具体的には、「ドラスティックな人事配置に納得がいかない」
「今後の経営計画に不安を感じる」といった経営方針に関わるケースです。
意図を適切に説明し、現場の社員に理解してもらえていれば良いのですが、
会社の経営方針が退職理由となるケースは、残念ながら多く見受けられます。


経営者と社員のコミュニケーション

前述のようなケースを防ぐためには、
経営者と現場とのコミュニケーションを活発にする必要があります。
経営者の想いや、その企業の目指す姿を、従業員も直接肌で感じて、
経営者と同じ目線で日々のビジネス活動を行えることが理想と言えるでしょう。
しかし、規模が大きくなるにつれ、組織構造は複雑になり、
末端の社員には経営者の想いなど大切なことが届きにくくなります。
そこで経営者側で必要となることを具体的に挙げてみます。


・ミッションやビジョンを明確にする
・伝達の回数、伝達手段のバリエーションを増やす
(社員総会での告知、社内報の活用、自社HPの活用、中間管理職を通じての伝達など)
・中間管理職へのミッション・ビジョンの理解促進
・社員からのフィードバックを受けられる機会、手段を増やす
(社内交流会、アンケートの実施、個別面談等)
・採用面接において、経営陣より直接、候補者へビジョン・ミッションを伝える。
(面接だけでなく、採用パンフレット、採用ホームページ等も活用できます)


これらの事項を積極的に推進することが、
活発に意見交換が行われる理想的な組織へと変わる足がかりとなります。


上司との意見相違

多くの社員にとって身近な存在であり、意見の相違も起こりやすいのが直属の上司です。
部下の意見をまず聞き、意見の相違があった場合には、もう1歩踏み込んだ対応、
つまり、「お互いの意見を共有し、
より良い方向に向かうためにはどうしたら良いか話し合う。」
という対応ができることが理想的です。


その為の前提として、以下の二点が必要条件と考えられます。


・まずは上司が「意見の相違」は社員のモチベーションを高め、
組織を活性化させるチャンスとして認識し、部下へも認識させる
・「コミュニケーションの土壌作り」を普段から意識して行う。
(話ができる雰囲気を大切にする)
この前提条件に不足があると、意見相違が起きた際に、
「単なる意見のぶつけ合い」に終わるだけでなく、
意見すら出てこない事態を招くこともあります。
そして結果的に人間関係やモチベーションに悪影響を及ぼすのです。


リーダーシップの醸成

前述のように、上司には組織を統括する上で、
「意見の相違」から実りある結果を引き出すための認識やスキルが求められます。
経営者側で、管理職向けの研修などを積極的に実施し、
管理職としてのスキルをアップさせることなどが大切です。
昨今、その重要性が広く認知されるようになった
「コーチング研修」などは有効と言えるでしょう。


社内に適当な人材が不足している場合には、
管理職の採用を検討することも視野に入れる必要があります。
他にも、権限や役割分担の明確化など、
リーダーシップを発揮しやすい環境づくりを推進することも重要です。


コミュニケーションの土壌を作る

コミュニケーション不足になってしまう原因の一つとして、
「報告・連絡・相談」といった基本行動がスムーズにいっていない場合があります。
具体的な要因として、「連絡手段を、E-mailに頼り過ぎている」、
「報告・連絡・相談のルールが浸透していない」などが挙げられます。
「報告・連絡・相談」を「する人」と「受ける人」の、
双方が共通の認識とルールを見直すことが、
コミュニケーション不足を解消するための一つのキーポイントといえるでしょう。


まとめ

「意見相違」は、退職をも引き起こす反面、
企業と個人の成長・発展を産み出すきっかけにもなる大切なものです。
この点を「経営者」が認識できているか、まず確認することが肝要です。
現場の社員や、中間管理職の立場では、
日々の業務の中で、意見相違のネガティブな側面にフォーカスしてしまうことは、
ある程度仕方が無いこととも言えるでしょう。
その為、「意見相違」を広い視野で捉え、
社員をよりポジティブな方向に導くことが求められます。
立場に拘らずに意見や悩みを話し合える、風通しの良い環境づくりが、
『人財』の無為な退職を防ぎ、定着率を高め、企業として発展するために不可欠なのです。

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