3分でわかる最新人事コラム

第57回2009/10/13

「解雇」と「リストラ」の違い

はじめに
サブプライムローン問題に端を発した景気の後退から、企業の業績悪化に伴う不採算部門の縮小、閉鎖や子会社・グループ会社の売却が増えています。また、有効求人倍率の低下や失業率の上昇などネガティブな話題も増え、ニュースや紙面では多くの企業がリストラ・解雇を行っているという記事が飛び交っています。
最近、よく耳にする「解雇」と「リストラ」という2つの言葉について、『従業員削減』という同じ意味に捉えている方は多いと思います。一見似ているように思えるこの2つの言葉の持つ本来の意味は、全くの別物であるという事をご存知でしょうか。


今回のコラムでは「解雇」と「リストラ」の違いについて事例を交えて解説をさせて頂きます。

 

解雇とは
解雇とは、以前のコラムでも述べさせて頂きましたが「使用者側から労働者への一方的な労働契約解除」であり大きく3つに分類することができます。


1、普通解雇
労働者が労働契約上の債務を履行しない場合、つまり約束をした労働(仕事)の提供がされなかった場合など、労働契約を継続し難い止むを得ない事由のある時に認められる解雇。


2、整理解雇
企業の業績が悪化したことなどによる、止むを得ない人員整理を行うことを目的とする解雇。


3、懲戒解雇
多くの企業では、就業規則において「服務規律」と称される労働者の行為規範を定めていますが、これに違反した労働者に対する懲戒処分。

 

リストラとは
リストラとは、正式には「リストラクチャリング」といい企業が環境の変化に柔軟に対応をし、事業を効果的に再構築することをいいます。
コア事業・成長分野に対して経営資源の集中投資を行い、収益増加の為に経営改革を実行したり、事業展開の再編成を通じて組織の活性化を図ったりして、経営効率を高めていきます。また、収益の良くない事業を縮小、売却、分社化などで再編し、人員や有利子負債を縮小していきます。
しかし、収益建て直しのための合理化策だけがリストラクチャリングと呼ぶわけではなく、成長部門や新規部門などの強化、人材の育成・従業員のモチベーション向上をすることもリストラクチャリングの1つです。


こうして「解雇」と「リストラ」のそれぞれの定義を比較してみると、同じ意味ではないことがお分かりになるのではないでしょうか。


次にリストラクチャリングについてもう少し掘り下げて解説していきます。

 

リストラクチャリングの手法
リストラクチャリングには、実に多くの手法があるという事をご存知でしょうか。代表的な手法をいくつかご紹介をさせて頂きます。
具体的な手法としては、帳簿上の固定費用の削減、見直しとして、不動産費用圧縮(例:営業系社員の専用デスクの支給をしない、LANで結ばれたコンピューターを使用し自宅で業務を行うなど)や、電話代の削減(例:IP電話化)、不要なリース契約の見直しなどが挙げられます。


人事労務の観点からみても、いくつかの手法があります。
業務効率化(例:間接部門統合、経理のシステム化)、総労働時間抑制(例:週35時間労働)やワークシェアリング(例:午前勤務1名と午後勤務1名を組み合わせて、1名分の仕事で2名分の雇用を創出する)などが挙げられます。 また、新規雇用の抑制やアウトソーシング(外部委託)も手法の1つです。特に短期プロジェクトの場合、プロジェクト終了後、社内に失職者を抱えないためにも外部委託の活用が有効になります。


上記の様にリストラクチャリングには様々な手法があり、必ずしも解雇を伴うわけではありません。
解雇を行わなくても、固定費を圧縮する方法はありますので、「リストラの検討=解雇の検討」ではなく、状況に応じて段階的に最善の対策を講じていく事が重要です。

 

リストラクチャリングの具体的事例
次に実際にリストラクチャリングを行って経営再建に成功した事例をご紹介します。
多くの企業が経営環境に応じてリストラクチャリングを行ってきましたが、今回はリストラクチャリングの手法が対照的な、外資系企業と日系企業の2社の事例をご紹介いたします。


まず、解雇を伴うリストラクチャリングを行い経営再建に成功した外資系オートバイ製造・販売会社A社の事例を紹介します。


A社は大型バイクにおける市場で8割近いシェアを有していました。しかし、高品質・低価格を強みとしている別のバイクメーカーが市場に参入したことにより、急激にシェアを落とし業績不振になりました。
その状況下から経営再建を目指す為に、経営陣のMBOにより親会社から独立をしました。
はじめに労働者の約半数を解雇し、残った従業員に対しては10%の給与カットを行うといった大幅な人件費の削減を遂行しました。
また緻密なマーケティングや熱狂的なファンの獲得、製造手法に日本のスタイルを取り入れ、製造工程を大幅改善するなど、コスト削減に努めました。その結果、売り上げが飛躍的に増加し、現在では順調に業績を伸ばしています。


次に解雇を伴わないリストラクチャリングを行った某日系小売チェーン企業B社の事例をご紹介します。


B社は首都圏を中心とした小売チェーンであり、業績が好調だった時代に飲食業界へ参入し、新店の出店を行ってきましたが、競合環境の激化、低価格競争、お客様ニーズの多様化といった事業環境の変化により赤字に転落してしまいました。
そこでリストラクチャリングに強いアドバイザリーファームに再建を依頼し、不採算事業から撤退をしてコア事業に経営資源を集約して黒字化を目指すという戦略を取りました。不採算事業の店舗スタッフは本社に戻し、人的資源をコア事業に集約した結果、早期の段階で黒字へ転換。その後は利益を順調に伸ばし、経営再建に成功しました。


上記の2つの事例を並べてみると「解雇」と「リストラ」の違いがさらに分かりやすいのではないでしょうか。上記の2つの例からも解雇=リストラではなく、「解雇」というのは「リストラ」を行う上での手法の1つであることが分かります。


企業の固定費のうちの大きなシェアを占める人件費を大きくカットすることで固定費を圧縮し、経営の建て直しに成功したA社。
赤字事業からは撤退し、人員のコア事業への集中という形で経営を再建したB社。
中には解雇が効果的な場合もありますが、必ずしも解雇といった手法を選ばなくてもリストラクチャリングによる経営再建は可能なのです。
経営状況に応じた最善なリストラクチャリングを策定し、しっかりと遂行していく事で経営環境は必ず良い方向へと向かっていくのです。

 

総括
経営環境の変化に対し事業を効果的に再構築することがリストラクチャリングであり、解雇はあくまでリストラクチャリングを行う上での手法の1つにすぎません。
安易に解雇を行ってしまうと、従業員との間で労使問題が起こったり、外部からネガティブな企業イメージを持たれたりと、様々な弊害が発生する可能性があります。その為、リストラクチャリングを検討する際は、最初に解雇を考えるのではなく、それ以外の可能性を十分に検討してから行うほうが賢明です。


解雇を検討するような状況にならないよう、常に先を見越した経営と最適な人員配置を行い、経営環境に柔軟に対応したリストラクチャリングを継続して遂行していく事が大切です。


今回のコラムを通じて「解雇」と「リストラ」の違いを認識して頂き、経営を行う上での一助にして頂ければ幸いです。

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