3分でわかる最新人事コラム

第61回2010/02/15

「メンタルヘルスの重要性」

 御社にはうつ病の従業員はいませんか?

 

 上記の問いかけを受けた多くの方は「いない」とお答えになると思います。しかし昨今、「メンタルヘルス」と言う言葉を目にする機会も増えてきており、厚生労働省の労働者健康状況調査(平成19年)によると、仕事での何らかの強いストレスなどを感じている労働者の割合が58%に上ると報告されています。
 職場での過度のストレスなどによって発症する『心の病』は、上司や同僚などの周囲のケアや従業員の管理体制を整備することによって予防することが可能です。しかしながら、心の病は身体的なケガや病気とは異なり、素人には症状や対策がわかりにくいため、対応が遅れると、労働問題や訴訟を引き起こすなどして、企業経営に大きな影響が出ることも少なくありません。
 今回、そのようなメンタルヘルスにスポットを当て、メンタルヘルス問題は企業経営にどのようなリスクがあり、また、その対策にはどのような手法があるのか、経営者や従業員が意識すべき事項を解説致します。

 

メンタルヘルスとは
 まず、「メンタルヘルス」や「メンタルヘルス問題」とは何を指すのでしょうか?
 一般的に、「メンタルヘルス」は言葉の通り「精神面での健康」を意味し、「メンタルヘルス問題」とはそれらに関連する諸問題を意味します。具体的には、従業員がうつ病、不安障害、心身症などのメンタルヘルスを損なった状態に陥り、従業員の長期休職、退職、解雇、自殺、及びそれらに関連する訴訟などが引き起こされることを指します。
 日本では2000年に厚生労働省がメンタルヘルス対策に関する指針を示し、また、同年に最高裁より下された、自殺した大手企広告代理店従業員の遺族による民事訴訟の判決によって企業のメンタルヘルス対策への関心が高まりました。特に、後者の民事訴訟では、初めて長時間労働とうつ病、自殺の因果関係が認められ、企業側が約1億6,000万円もの損害賠償責任を負う判決が下されたこともあり、多くの企業が労働環境の整備やメンタルヘルス問題に取り組むきっかけとなりました。

 

メンタルヘルスに関する現状・諸問題
 冒頭に述べた通り、仕事で何らかの強いストレスなどを感じている労働者の割合が58%に上ると報告されていますが、ストレスの原因としては、「職場の人間関係」が38.4%と最も多く、続いて「仕事の質」(34.8%)、「仕事の量」(30.6%)が共に30%を超える要因として挙げられており、日常の労働環境や職務内容など身近な要因に労働者がストレスを感じるリスクが潜んでいます。

 

◆仕事での強いストレス等を感じる労働者の割合と理由
全体:58%
<ストレスの原因>
職場の人間関係:38.4%
仕事の質:34.8%
仕事の量:30.6%
会社の将来性:22.7%
仕事への適性:22.5%
昇進・昇給:21.2%
※厚生労働省 労働者健康状況調査(平成19年)

 

 また、実際に心の病などのメンタルヘルスの問題が原因で労災認定を受ける従業員数も増加傾向にあり、特に、精神障害等を理由とした労災認定数は平成16年度の130件から平成20年度には269件まで増加しており、5年前の2倍となっています。
 労災は内容によっては企業イメージを大きく損ねたり、刑事責任を問われたりすることになるため、企業側としても心の病を理由とした労災のリスクも今まで以上に意識しなければなりません。

 

メンタルヘルス対策の目的と重要性
 従業員のメンタルヘルス対策には、「労働生産性の維持(人材の有効活用)」と「有事に対する危機管理」の大きくふたつの目的があります。

 

 まず、一つめの「労働生産性の維持(人材の有効活用)」に関してですが、企業経営は限られた人材で効率よく行っていかなければなりませんので、過酷な労働環境や過度のプレッシャーによって従業員が長期の休職や退職に追い込まれてしまうリスクを回避する必要があります。
 実際、ひとりの従業員が心の病で休職した場合の損失は大きく、厚生労働省「こころの健康科学研究」(平成20年度調査)によると、うつ病などの精神性疾患による休職期間は1回当たり平均で5.8ヶ月になるとのデータが出ています。精神性の疾患には再発・休職の繰り返しも見受けられるので、再発すると最終的にはひとりの従業員が数ヶ月、場合によっては1年以上もの期間に渡って職務に携われないことになります。特に、従業員数が限られているベンチャー企業や少人数で運営されている部門にて休職者や退職者が発生した場合、その損失や現場の負担増も大きいためより一層の注意が必要です。

 

 また、二つめの「有事に対する危機管理」ですが、メンタルヘルス問題はひとつ間違うと大きな労働問題に発展するリスクも兼ね備えています。「メンタルヘルスが注目され始めた背景」でも述べました通り、2000年の大手広告代理店の従業員関連裁判以降、メンタルヘルス問題は会社側の不備が問われる時代になっており、うつ病によって社員が退職となったり、極端な場合は社員が自殺してしまうケースでは本人や親族からの訴訟となったりすることも多く、企業側としてはそのリスクを回避するためにも、日頃から従業員のメンタルヘルス対策を行っておくことが重要です。

 

メンタルヘルス対策
 では、具体的にはメンタルヘルス対策はどの程度行えば良いのでしょうか?
 メンタルヘルス対策のポイントは主に2点です。

 

 一つめは、社内の労働環境を法律(労働安全衛生法)に準拠する水準に持って行くことです。
 労働安全衛生法によって、企業の規模に応じて産業医や衛生管理者の配置、衛生委員会や安全委員会などの設置が義務付けられていますが、細かく遵守できていない企業が意外と多いのが実情です。各企業の労務管理の状況にもよりますが、労働安全衛生法に対応するにあたっては、特に多大なコストや人員を投資せずともしっかりと遵守した体制を作れることも多いので、社内の人事担当、各部門と連携して法律に準拠する水準に持って行くことが重要です。

 

 二つめは、メンタルヘルスに関連する労務問題(社員の自殺やうつ病によって退職に追い込まれるなど)が起こり、訴訟になった場合に不利にならない水準の対策を行うことです。
 メンタルヘルスに関して、訴訟等の問題に発展した際は、企業側がメンタルヘルスに関する「積極的な対策を行っていたかどうか」が重要な争点となります。主なポイントは、前述の大手広告代理店の裁判などの判例から、下記のような内容が基準とされているようです。

 

・社員に対する相談窓口が設置され、かつ、十分に認識されていたかどうか。
・従業員に対してメンタル教育(一人当たり年間で1時間以上が目安)を行っていたかどうか。
・前述の労働安全衛生法を含めた、各種法令を遵守していたかどうか。

 

 従業員の自殺などが起こり、訴訟となるケースは「自社には関係ない。」と感じられる方々も多いかもしれませんが、急成長中の企業ほど気がつけば経営者や人事の目の届かない規模まで従業員が増加していたり、急激な規模拡大に伴って現場従業員の労働環境が悪化していたりするケースが多く見受けられますので注意が必要です。

 

 では、法令に基づいてメンタルヘルス対策を行う以外に、現場では具体的にはどのような対策やケアができるでしょうか?事項では職場でのメンタルヘルスケアに関して述べていきます。

 

職場におけるメンタルヘルスケア
 うつ病などの心の病は、特に軽症の場合に見過ごされやすく、初期段階では単に「調子が悪い」と安易に処理されてしまう傾向もあります。フォローが遅れたことにより休職や退職に至るレベルまで悪化してしまったと言ったケースも見受けられますので、逆を言えば、現場レベルで日々のメンタルヘルスケアを意識し、初期段階で異常を発見することによって心の病を防ぎやすくなります。

 

 具体的なメンタルヘルスケアの方法ですが、主に4つの方法があります。

 

1:自分自身によるケア(セルフケア)
 メンタルヘルスをケアするに当たって、最も身近で重要であるのがセルフケアです。精神面の健康管理を自らしっかりと行い、ストレス耐性を高めることによって心の病を防ぐことができますので、メンタル面の健康を従業員自身でマネジメントできるように従業員教育を行っていくことが大切です。

 

2:管理者によるケア(ラインによるケア)
 本コラムの冒頭で述べました通り、ストレス原因の3割強が仕事や職場の人間関係に依るものです。そのため、現場で管理者がケアすることによって、心の病の兆候を早い段階で発見し防止することができます。また、上司のパワハラやセクハラ、過度な業務分担、上司や同僚との人間関係などをきっかけにメンタルヘルス問題に発展することも多々ありますので、メンタルヘルス教育をしっかりと行い、上司や部門がきっかけとなる心の病を軽減することも大切です。

 

3:社内の産業医や衛生管理者、人事労務管理スタッフなどによるケア(事業場内産業保健スタッフ等によるケア)
 本人や上司からのケア以外に、社内のリソースを利用したメンタルヘルスケアもあります。特に、職場にストレスの原因がある場合は、上司や同僚には相談できないことでストレスを溜め込み、症状が悪化することもありますので、契約の産業医や、社内の衛生管理者、また、人事担当や他部門の先輩やベテラン社員などがケアすることも重要です。

 

4:精神科医などの専門医、産業カウンセラー、メンタルヘルス支援会社などによるケア(事業場外資源によるケア)
 特に、メンタルヘルス問題が悪化した場合や、悪化しそうな兆候がある場合などには社外のリソースを使うことも必要です。具体的には、メンタルクリニックや精神科、心療内科などの専門の医療機関の情報を把握しておき、状況に応じて協力を求める体制を構築しておく方法があります。従業員に心の病の兆候が現れた際には、本人やその家族の協力のもと、早期に専門医との面談をセッティングし解決を図ることが大切です。

 

 また、より本格的なメンタルヘルス対策を行いたい企業であれば、必要に応じて民間のメンタルヘルスケアサービスを活用することも選択肢のひとつです。メンタルヘルスケアの分野には、「EAP(従業員支援プログラム)」と言うメンタルヘルスケアの対策手法を専門に提供する企業もあり、メンタルヘルス対策に関するコンサルティングや、従業員に対するメンタルヘルス研修などの提供を行っています。そういった専門サービスを利用してみるのも方法のひとつです。


総括、メンタルヘルス対策・管理の重要性
 メンタルヘルスに関するポイントをまとめますと、以下の通りになります。

 

・生産性の低下や訴訟リスクなどメンタルヘルス問題が企業に与える損失は意外と大きい。
・メンタルヘルス問題は法令順守の体制を整えることが大切である。
・従業員への教育、知識の提供、現場レベルでの対処をしっかりと行うことによって、メンタルヘルス問題の多くを回避することができる。

 

 これまで述べてきましたように、メンタルヘルス問題は心の病など従業員個人の問題のように思われがちですが、ひとつ対処を間違えば訴訟問題に発展するなど大きなリスクも含んでいます。一方で、社内のコンプライアンスや従業員の教育体制を整備するなど、普段より適切な対処を行っておくことによってその問題の多くを回避することができ、最終的には従業員が生産性高く健全に働くことにつながりますので、企業経営にとってプラスに働きます。
 また、昨今では、IPO(株式公開)においても労務関連のコンプライアンスが重視されるなど、企業に必要とされるメンタルヘルス対策の水準も高くなってきていますので、今後IPOを検討している企業においては特に重要なポイントとなる事を理解しておかなくてはなりません。

 

 改めて考えてみてください、御社にはうつ病の従業員はいませんか?

 

 自信を持って「いない」と言えない場合は、ひょっとしたら対策が必要かもしれません。
 手遅れにならないうちに、自社のメンタルヘルス対策を見直してみてはいかがでしょうか?

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