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第66回2010/07/12

「コンプライアンス強化の必要性」

ここ数年、日常の様々な場面で「コンプライアンス(Compliance)」という言葉に触れる機会が増えてきています。平成21年3月に発表がありましたが、公正取引委員会が東証一部上場の企業約1000社を対象に実施したアンケート結果によると、約1000社のうち、コンプライアンスマニュアルを整備していると応えた企業は98%というほとんどの企業が、何らかのコンプライアンス対策を実施していました。

 

コンプライアンスが注目されている理由の一つに、食品偽装(原材料や賞味期限、産地など)や、マンション耐震偽装問題、粉飾決算など、企業の不祥事に関する報道が後を絶たないことが挙げられます。消費者や顧客、株主、時には従業員をも欺き、裏切るような事件を起こしてしまうと、企業は消費者離れや顧客離れなどにより企業存続に多大な影響を被るだけでなく、最悪の場合には会社が倒産に陥ってしまうなど、法的な制裁及び社会的制裁を受けることになります。

 

上記のような事故を起こさない為にも、我々はコンプライアンスとどう向き合っていけば良いのでしょうか?
今回は「コンプライアンス強化の必要性」について考えてみたいと思います。


コンプライアンスとは
そもそもコンプライアンスとは、コーポレートガバナンス(企業統治)の基本原理の一つで、直訳すると法令遵守を意味しますが、特に企業活動におけるそれを意味しています。コンプライアンスは法律のみではなく、社内規定やマニュアル、企業倫理、社会貢献などの基本的なルールの遵守まで含みます。企業の社会的責任(CSR、Corporate Social Responsibilityの略)という考え方も、法令遵守が前提となっています。

 

コンプライアンスの重要性が叫ばれるようになった背景には、導入部分でも述べたように、近年、大企業を中心とした不祥事件が国内外において相次いで発生していることなどが考えられます。違法行為や反社会的行為を起こした企業は、消費者や取引先の信頼を失い、不売運動などから事業継続が困難になります。
コンプライアンスは、顧客や株主、取引先や従業員など、企業活動をする上で全てに関わるステークホルダーを守るためのものであり、企業が守らなければならない最低限のルールとして考えなければなりません。


コンプライアンス強化の必要性
不景気や過当競争などを背景に企業は生き残りをかけ、経営のスリム化や業績拡大などの利益追求の姿勢が強く求められます。しかし、利己的な利益追求に傾きすぎてしまうと、コンプライアンス違反を取らざるを得ない場面に直面する可能性があります。そこで倫理感が欠落した判断をしてしまうと、目先の利益追求のためにルールを犯してしまうことになり、その結果、会社の存続そのものを困難にさせてしまいます。そうならないためにも、コンプライアンス強化は必要です。
また、弁護士の増加や、消費者からの安全性への要求の高まりなどの背景も加わり、企業におけるコンプライアンス強化は避けて通れない時代へと突入しています。

 

コンプライアンスの強化は、重大な問題発展への事前防止策としての効果があることに加え、社会的信用度も高まり、クリーンで安心感を顧客に与えることができ、経営の安定基盤の支えの一つとしての戦略的活動でもあります。

 

コンプライアンスの活動は、現場や法務担当などを交えたグループディスカッションや年に数回の勉強会、倫理委員会やコンプライアンス室の設定などの方法で取り組むことができます。こういったコンプライアンス強化の為の活動は、多くのコストがかかる割に、企業の利益に直結するわけではないため、経営側から軽視されてしまう場合があるようですが、それを惜しまず、社会貢献の一環として取り組む姿勢があれば、結果的に顧客や消費者、従業員からの信頼を得ることができ、企業の存続と永続性につながるのです。


コンプライアンス違反の事例、コンプライアンス違反が起きやすい環境
必要な対策を行わないと、コンプライアンス違反が起こる可能性が高まりますが、実際コンプライアンス違反にはどういったものが挙げられるでしょうか?
冒頭で挙げた例の他にも、脱税、横領、個人情報流出、セクハラ、パワハラ、賭博などが挙げられます。悪意があるものは当然ですが、気づいていても言えなかった場合や、違反の意識そのものがマヒしてしまっている場合も違反となりますし、違反していることに気づいていない場合も「知らなかった」では済まされませんので注意が必要です。
上記のようなコンプライアンス違反は、どんな状況でも起こる可能性はありますが、下記のような環境では違反がおきやすいといわれているため、特に注意が必要です。
  ・金もうけ主義、利益最優先の体質
  ・ 隠蔽体質、バレなければいいという意識の欠落
  ・ 同族経営、ワンマン経営で上層部が絶対的な権力を持つ、独裁的体質
   (逆に経営者の性格によっては違反が起きにくいこともあります)
  ・努力義務の欠落、努力義務の違反に対する罰則や処分が無い場合、それを悪用してしまう姿勢
  ・ 殿様商売、自社のブランド力を逆手にとり、取引先などに強気な取引を要求する体質
  ・ 縁故採用、天下り幹部が多い環境
  ・ 極端な成果主義、精神論重視の社風 etc

 

企業内で上記いずれかに該当すると考えられる場合は、コンプライアンス違反が発生しやすい環境と考えられるため注意が必要ですが、実際にどのような対策を講じれば効果があるのかを考えていきたいと思います。


コンプライアンスの導入・運用
組織内において、コンプライアンスを遵守できるよう経営管理し、事業活動を行うことをコンプライアンス・マネジメントといいます。

 

企業を取り巻く法律や規則は、民法や商法をはじめ独占禁止法、不正競争防止法、労働法、消費者保護法など多数あり、監督官庁の命令・指導などもあります。さらに、営業活動や市場競争の公正さ、消費者などへの情報公開など、多くの場面で高い倫理感(企業倫理)が求められます。企業は、こういった多岐にわたる規則・規範を全役員や従業員に啓蒙し、遵守していかなければならず、もし違反行為があった場合には、早期に発見して是正できるマネジメント体制を作ることが求められます。

 

それぞれの具体的な方法についてはお伝えいたしませんが、基本的な運用方法としては、事業部門から半独立したコンプライアンス組織・委員会の体制を作ることや、コンプライアンスプログラムの策定、行動指針や方針の明確化、コンプライアンス規定の整備、コンプライアンス監査の実施などが求められます。

 

規定や運用の整備に対し、社内への啓蒙も非常に重要な要素です。コンプライアンスマニュアルやコンプライアンスハンドブック、コンプライアンス意識啓発ポスター、コンプライアンスカード、コンプライアンス研修テキスト、コンプライアンス意識浸透ツールなども作成できれば、経営陣や従業員への意識強化につながります。

 

コンプライアンス・マネジメントは1回行われれば良いものではなく、永続的な活動として取り組まなければ意味がありません。何故ならば、1回だけでは、時間が経つと意識も薄れ忘れられてしまい、自然と取り組み前の元の体制に戻ってしまう為です。世の中が変化していくのと同じように、社内のコンプライアンス体制もそれにあわせ、変革していかなければなりません。コンプライアンスの必要性について啓蒙活動を続けることや客観的な視点、弁護士や第三者のアドバイス、それに伴う経営者や社員の意識の高まりが、コンプライアンス体制の強化へと大きくつながっていくのです。


最後に
今回のコラムでは、コンプライアンスというキーワードが、すでに他人事ではないことをご理解いただけたかと思います。コンプライアンスの事故は、社内の些細な出来心から始まり、それが気づかぬうちに大きくなってしまい、取り返しのつかない事態を招く場合がほとんどです。
このような悲しい事件が起こらないためにも、事前防止や発生時の適切な対応のためにも、コンプライアンスの対策はとても重要なことです。不景気や過当競争など、企業ではこれまで以上に勝ち残りを賭けた厳しい時代へと突入していますが、それを理由にコンプライアンスを疎かにしてしまうと、上記で述べたような制裁が降りかかり、明日は我が身となってしまう危険性がとても高いと考えられます。

 

「うちの会社に限っては大丈夫だろう」「これくらいのことは他社でもやっているだろう」「利益のためには仕方がないことだ」「1回くらいなら問題ないだろう」「見つからなければ大丈夫だろう」・・、こういったちょっとした気の緩みが大きなコンプライアンス違反を発生させます。
企業活動をする上で何が一番大切なのか、社会への貢献は出来ているのか、お客様に満足をして頂いているのか、など日々倫理観を磨き、初心を忘れずに企業活動をすることが求められます。コンプライアンスは経営者のみではなく、現場社員も含め当事者意識を持った一人一人の参加意識が大切です。コンプライアンスへの考え方や共有が企業で、業界で、地域で、そして世の中で行われるようになれば、共存社会への貢献に大きな前進となる活動として、大きな視点で捉えていけばならない時代へと突入しています。

 

今回を機に、コンプライアンスの重要性をもう一度理解すると共に、改めて社内の体制を見直してみてはいかがでしょうか?

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