3分でわかる最新人事コラム

第69回2010/10/12

「高齢者の活用」

昨今、日本国内では少子高齢化による人口減少により、長期的な労働力の不足が懸念されるようになりました。この問題を解決に導くためには、労働力不足による需要過多という現実を考慮し、これまでの働き盛りの男性正社員を中心とした人員構成のみではなく、非正規社員・高齢者・女性などの様々な人材の活用を積極的に進めていく必要があります。
そのなかでも"高齢者の活用"は、迫りくる「超高齢社会」に向け、今後さらに重要なテーマになると思われます。
しかし、実際の雇用現場では、労働条件や働き方などに関する考え方をめぐり、雇用サイドと高齢者との間でまだまだギャップがあります。
また、多くの企業で"高齢者の活用"の方向や道筋についても、理想の方法や明確な方針が見えていないのが現状です。これらの問題を解決し実際に運用していくために、雇用サイドである企業・国・自治体等はその方向性を真剣に考えなくてはいけない時期にきています。


そこで今回のコラムでは、雇用サイドである企業の取り組みや、将来目指すべき雇用という視点から"高齢者の活用"について考えてみたいと思います。


高齢者の活用が求められる理由
現在、日本の人口の5人に1人は65歳以上の高齢者です。厚生労働省によると、30年後には3人に1人が高齢者となることが試算されており、日本は世界一の「長寿国」として名実ともに君臨しています。今後も医療の進歩により寿命が延び、さらに社会的不安などから少子化が改善されなければ、現実的な「超高齢社会」の到来は避けられない事実とされています。
そのため、若年労働力が減少の一途を辿り、高齢者人口がいっそう増えるという社会的な構造変化、それ自体を回避するのは不可能に近くなります。先進国である日本にとっては、新しい構造に合った仕組みや考え方に社会を変化させていくことが、進むべき方向の一つと考える必要があります。

 

高齢者の活用に向けた取り組み
厚生労働省は、働く意欲と能力のある「高齢者」が社会の支え手として活躍できる体制が必要と考え、様々な高年齢者雇用就業対策を立てています。ここではその例をご紹介します。

 

① 『「高年齢者雇用安定法」の施行・改正』
厚生労働省の決定により、平成16年12月1日より、企業は「(1)65歳までの定年の引上げ」「(2)継続雇用制度の導入」「(3)定年の定めの廃止」のうち、いずれかの措置を講じなければならなくなりました。この影響もあり、現在では大半の大企業が「高年齢者雇用確保措置」を行い、中小企業でも9割を超える企業が実施するようになりました。

 

② 『70歳まで働ける企業推進プロジェクト』
このプロジェクトは簡単に言えば、「定年の引き上げや定年の廃止を行った企業に対しては、国が助成金を支払いますよ」という取り組みです。①の施行により65歳までの定年を定めている企業は増加してきてはいるものの、それ以上の高齢者を雇用している企業が少ないための措置と考えられます。会社の規模によりますが、40万円~最大で410万円(奨励金及び高齢者に対する研修助成金を含む)が支給されます。

 

③ 『中高年齢者の再就職の援助・促進』
これは、ハローワーク等におけるきめ細かな職業相談・職業紹介や中高年齢者トライアル雇用奨励金の支給を指しています。また、 シニアワークプログラム事業と称し、業種別団体や公共職業安定機関等と連携して、技能講習・合同面接会等を一体的に実施するという事業も行っています。

 

④ 『高年齢者の多様な就業・社会参加の促進』
定年退職者などの高年齢者に、そのライフスタイルに合わせた、短期のパートとしての就業の機会を提供する、シルバー人材センター事業を推進しています。また、ボランティア活動をはじめとするさまざまな社会活動への参加を通じて、「健康で生きがいのある生活の実現」「地域社会の福祉の向上・活性化」などに貢献しています。

 

上記のような様々な施策を通して、国として、この社会の構造変化に対応するべく動き始めています。

 

高齢者の活用における課題
前述のとおり、国側としては、積極的に高齢者の雇用に関して働きかけていると考えられます。しかしながら企業側の多くは、いわば法律に従うために対応をしているというのが現状であり、実際のところはまだまだ高齢者を「積極的に」活用しているとは言えません。高齢者の活用がなかなか前に進まない理由には様々な要因がありますが、それは企業側と労働者側の両方に起因しているようです。ここではその要因を考えてみます。

 

① 『日本型の賃金体系』
日本企業には昔から、年功型賃金体系という風土が根付いており、大手企業を中心に現在でも多く残っています。この賃金体系は、極端に言うと、若い間は安価な賃金のわりに業務量が多く、年齢を重ねるにつれ賃金は上がるが仕事量は減っていく、という内容です。さらにはある一定の年齢となると、個人の能力やスキル、組織への貢献度に関わらず基本的に全員を退職させる定年制もあります。
これらの制度によって、例えば企業側が高齢者の1年程度の仕事ベースでの短期採用を考えた場合でも、仕事量と賃金のバランスを考え、採用コストを割高と考えてしまったり、あるいは雇用される側の高齢者も正社員時の給与を参考に考えたりするため、割に合わないと考えてしまうという、ミスマッチが起こります。これは企業側と労働者側の両方に起因するというパターンの一つです。

 

② 『労働現場をとりまく環境』
経済や景気、雇用情勢も、高齢者の雇用に大きく影響を及ぼします。可能な限りの低賃金で労働力を海外に求めてきた先進国の流れや、ITなど技術革新のスピードが格段に速くなったことで、知識やスキルを蓄積してきた高齢者を適材適所に配置し活用する事が難しくなっているという現実があります。そのため、全ての企業に高齢者という労働力が有効に活用できる環境があるわけではないことになってしまっています。

 

③ 『高齢者雇用に対する偏見』
主に企業側に言えることですが、事実として高齢者に対する偏見意識は存在しています。高齢者にも様々な状態・様々なキャリアの人材がいるのにも関わらず、個人ベースの判断をせず、高齢者全体に対して一定の偏見やイメージを持っている企業は少なくありません。また、一般的にはその偏見は海外よりも日本企業のほうが強いと言われています。それは、これまで日本の企業が「年功序列」の考えを持ってきたのに対し、海外の企業は「実力主義」という考えのもとに企業運営をしてきたからかもしれません。

 

上記のような課題を抱えているため、多くの企業が高齢者の活用に対し積極的になれない状況があるというわけです。

 

高齢者の活用に求められる考え方
前述の課題を解決するために、まずはどのような考え方をすべきかを考えてみます。

 

①の賃金体系に関する課題ですが、これに関しては前述の通り、多くの場合に企業側と高齢者側の双方に問題があります。そのため、双方が譲歩し意識改善をすることが必要となります。特に若年層の採用に困窮しない大手企業にとっては、高齢者の採用それ自体が譲歩となる場合もあります。そのため、これはあくまでも一意見ではありますが、企業側からしても定年退職後の再雇用という考え方を取り入れ、再雇用の場合には現役とは異なる業務内容・ポジションを検討し、それに見合った賃金で雇用・就業するという方針が双方にとって一番妥当と考えられます。一方、高齢者側も過去の年収にこだわりすぎず、職責や業務内容に見合った報酬を現実的に考えて行かなければなりません。

 

②の労働現場をとりまく環境の問題に関しては、研修等でキャッチアップできる部分とできない部分が出てくると思われます。企業側には、最低限の研修等の提供と高齢者を活用できるポジションを探す努力が必要であり、高齢者側には自らの経験の中で、現代社会で活かせるスキルのアピールが必要であると思われます。

 

そして最大の難関が③の高齢者雇用に対する偏見という心情的な隔たりです。この点に関してはもちろん企業側からの解決が必要となりますが難しい問題です。就業するということは、採用される側対採用する法人格の問題ではなく、個人対個人の関係に帰着します。経営者・株主・従業員など採用する側に属する個人が意識改革をしなければ受け入れられません。ただ、現在、国が法律というきっかけを作ってその意識改革を促している段階に来ていますので、次は株主もしくは経営者が、高齢者に対する偏見を無くしてみることで、その考えを徐々に従業員に落とし込んでいく、という流れが自然だと思われます。日本の将来を考え、まずは意識を変える、という努力と柔軟性が求められます。

 

高齢者の活用の実例
ここでは実際に高齢者を活用に成功している企業の実例をご紹介します。

 

① A社(介護老人保健施設運営)
A社では、定年退職後の高齢者を採用してサービスを提供しています。具体的な業務としては、デイサービス利用者の車両による送り迎えや、利用者が施設に所在している間の介護サービスの提供が中心的な業務とのことで、業務内容は年齢問わず一定であるため、採用時には年齢による差別はせず、むしろ福祉に対する考え方等で選考しているそうです。再雇用等の高齢者の場合には賃金を低く設定することで、マンパワー不足とされている業界でも、労働力を確保できているといいます。

 

② B社(ゲームコンテンツ開発)
B社は、未上場から新興市場への株式公開へ向けて動いている段階でした。上場準備のためには管理部門の構築及び監査役会の設置が必要となっており、監査役会には常勤監査役が必要となります。監査役の業務としては、「監査法人の監査の相当性の監査」「経営判断の妥当性の監査」「取締役の職務遂行適法性の監査」などが含まれ、つまりは会計士並みの会計知識・弁護士並みの法律知識が厳密には必要なことになります。まだまだ規模の小さな企業であることから専門家の採用にかけるコストが悩ましいという状況で、B社は過去に株式上場を達成した経験のある高齢者の人材を、同様のスキルを持った若手人材よりも低い賃金で監査役として迎えました。資格は持っていないまでも、上場準備に関してはスペシャリストという経験を活かして、B社の株式公開に向けて高いパフォーマンスを出しているそうです。

 

高齢者雇用問題の解決と高齢者の活用の実現に向けて
ここまでご紹介したように、高齢者の雇用をとりまく環境には、様々な問題があります。上記に挙げた問題もそれに対する解決策もほんの一例でしかありません。国全体に可視化されている課題と、各企業ベースで顕在化している問題、さらには業務に従事する現場ベースで起こる問題はそれぞれ異なると考えます。
しかし、厚生労働省が「超高齢社会」という未来をひとつの課題であると認識し、国として動き始めているだけでなく、例に挙げたように実際に動き始めている企業があることも事実です。それぞれの視点で自らの問題を見据え、この構造変化への対応へ動きだすべき時は既に来ています。
国という大きな視点からの落とし込みは既に始まっています。より大きな変革の為に必要なのは、それとは逆のベクトル、つまりは小さな範囲からの突き上げです。経営者個人の考え方が変わり、従業員全体の理解を得、企業としての方針が変わり、さらには周りに影響を与えることで、社会全体の意識はより大きく変わっていくことでしょう。
課題克服をチャンスとして潮流にのることが出来れば、世界一の長寿国という先進国に成長した日本が、さらなる飛躍を遂げることが出来ると思います。それは今、個人個人の考え方を変えてみるという、小さな一歩の努力から始まるのではないでしょうか?

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