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第80回2011/09/12

「会計・法律の専門知識を持った第二新卒の活用」

高収入で安定しているというイメージが強い弁護士や公認会計士。人気職業ランキングや、結婚相手に望む職業ランキングなどでも常に上位に位置しています。そんな弁護士、公認会計士の資格試験に合格した若者が、就職難に直面しているという現状を聞くと、驚く方も多いのではないでしょうか?
例えば公認会計士の試験合格者に関しては、リーマンショック以降大手監査法人が採用を絞るなか、平成22年度の新規合格者は2041名と10年前と比較して6倍以上に増加しており、供給過多の状態となっています。監査法人以外の就職先となり得る事業会社でも、それほど採用ニーズは顕在化しておらず、日本公認会計士協会が2011年3月に上場企業の財務担当者向けに実施したアンケートでも「社内に公認会計士などの会計の専門家が必要」と考えている企業は2割程度という結果になっています。
そのような中、彼らを専門家としてではなく、「専門知識を持った第二新卒」として採用し、若手労働力の強化を図る企業も増えてきました。
今回のコラムでは、「会計や法律の専門知識を持った第二新卒」の採用~活用について、事例を交えてお伝えします。

 

専門知識をもった第二新卒の特徴
第二新卒とは、一般的には20代の既卒者のことを指します。以前は「一度就職したが短期間のうちに転職をしようとしている者」の意味で使われており、若干の社会人経験を積んだ人材のことを指していましたが、就職氷河期と言われる昨今、社会人経験を持たない既卒者の方も、第二新卒として就職市場に出てくるようになりました。(最終学歴卒業後3年以内の方に限り新卒者とも呼ばれています)
今回のテーマである「会計や法律の専門知識を持った第二新卒者」である会計士試験合格者や法科大学院修了生の多くは、大学や大学院を出てからも継続して勉強を続けて資格試験を受けている為、後者に該当します。
そのような「専門知識を持った第二新卒者」は、社会人経験を持たない方が多いという点以外にも、大きく3つの特徴が挙げられます。
一つ目は、高学歴の方が多いという特徴です。難関資格を目指していただけあって国立大や有名私大を卒業されている方が多いのですが、単純に高学歴というだけではなく、資格取得の勉強を通じて、専門知識だけでなく論理的思考力を身につけている方も多くいます。通常の新卒採用ではなかなか内定受諾まで至らないような、優秀な人材が大半を占めています。
二つ目は、高い危機意識を持っている点です。昨今の就職環境の冷え込みから、「もう後がない」という意識をもった方が多く、彼らの多くは同年代と自分自身を比較し、ビジネスパーソンとして後れを取っていることに危機感を持っています。早く成長して同年代のみんなに追いつきたい、仕事を通じて社会に貢献したい、という彼らの意識は「若手の採用を通じて組織を活性化させたい」という採用側のニーズともマッチしやいといえます。
三つ目の特徴は、豊富な専門知識を持っている点です。
試験勉強をし、あるいは難関試験に合格している彼らは、豊富な会計・法律の専門知識を持っているという特徴があります。通常の新卒学生はもちろんのこと、第二新卒の人材の持つ知識よりも遥かに高い専門知識を持つことは、社会人未経験の彼らには大きな武器であるといえます。
会計・法律の専門知識を持った第二新卒である方々には上記のような特徴がありますが、現在そのような第二新卒者が増えてきているのは一体なぜでしょうか。

 

-会計の専門知識をもった第二新卒
公認会計士が監査業界のみならず、事業会社等でその専門知識を生かして働くなど、経済界の幅広い分野で活躍することを期待して、2006年より新しい会計士試験制度が始まりました。その結果、10年前の6倍以上の試験合格者が毎年誕生するようになりました。
会計士試験合格後、公認会計士資格を取得するには、通算2年以上の業務補助または実務従事し、修了考査に合格後、内閣総理大臣の認定を受ける必要があります。実務補助、実務従事とは、監査法人での監査補助経験や、公認会計士実務要件で定められている一般事業会社や金融機関内での該当実務の経験を指します。
会計士試験合格者数が増えているのに対し、景気の影響などにより監査法人の新人受け入れ体制が弱っており、昨年は2000名強の新規合格者に対し、800名程度の受入しかありませんでした。その為、多くの会計士試験合格者が監査法人以外の実務従事を目指して、事業会社や金融機関への就職を視野に入れるようになってきたという背景があります。

 

-法律の専門知識をもった第二新卒
司法試験法の改正により、受験制限のなかった旧司法試験制度が2011年に終了し、法科大学院修了後5年以内、3回までのみ受験資格が与えられる新司法試験制度に完全移行されることとなりました。新しい司法試験制度は「法曹の質を維持しつつ、法曹人口を拡大させる」という要請に応えるために導入された制度であり、制度導入の検討当初は、法科大学院の課程を修了した者のうち相当程度(概ね約7~8割)が新司法試験に合格できるよう、充実した教育を行うべきであるとの努力目標を掲げていました。しかし昨年度の新司法試験では、法科大学院修了生のうち合格者は約25%であり、当初の目標とは大きく異なり、新司法試験合格は非常に狭き門となっています。
そのような背景により、法科大学院を修了し新司法試験に合格できなかった多くの法科大学院修了生(いわゆる法務博士)が就職市場に出てくるようになりました。

 

専門知識を持った第二新卒採用のメリット
そもそも第二新卒採用のメリットとしては、新卒採用に比べると費用や労力をかけずに採用ができる点や、入社時期も調整できる点などが挙げられます。
そして入社後は、前職の癖がついていないため、中途採用者と比較し企業風土になじみやすく、育てやすいという点もメリットと考えられています。

 

中でも会計、法律の専門知識を持った第二新卒の採用に関しては、母体数確保や採用の容易さが大きなメリットとなります。
会計、法律分野に関しては、若手実務経験者は現在の転職市況でも売り手市場が続いており、採用に苦戦し長期化するケースが多く見受けられます。それは採用競争力のある企業であっても同様です。採用活動が長引くことにより、採用担当の労力や採用費用、また中には労働力不足による現場社員の疲弊など、様々な問題を引き起こすことも考えられます。
一般的に早期戦力化を期待する中途採用では、実務経験者を求めるケースが殆どです。しかし状況に応じて、「若手実務経験者」だけでなく「専門知識を持った第二新卒」の採用も視野に入れる企業が増えてきました。

 

それでは、実際に専門知識を持った第二新卒の採用に成功した企業では、どのように彼らを採用し、活用しているのでしょうか。次は専門知識を生かしたポジションで活用した例や、彼らの特徴である地頭の良さやマインドなどを例に、いくつかの事例について解説いたします。

 

1)若手実務経験者から、会計士試験合格者に切り替えて採用に成功した上場メーカーA社の事例
学歴や転職回数も採用時のポイントとしているA社では、経理部の組織の若返りと人員補強の為に若手実務経験者の採用活動を行っていました。しかし該当業務の経験がある若手経理実務経験者は売り手市場であり、さらに高学歴で転職回数の少ない方となると、有名企業でも引く手数多の為、内定を出しても辞退されてしまうことが多くありました。そこで若手の会計士試験合格者も採用ターゲットに加え、採用活動を行ったところ、高学歴で、新卒採用の際にもなかなか出会えないような高いポテンシャルを持った候補を採用することができました。
通常の中途採用と比較すると、やはり仕事に慣れるまでは若干の時間がかかりました。しかし難関資格に合格しているだけあり、通常の決算業務だけではなく、原価計算や開示資料作成など幅広い業務に対する深い知識があり、通常以上の速さで実務を習得しています。地頭がよく、吸収力が高かったため、入社から半年後には若手スタッフと同等の業務を任せられる頼もしい人材に成長しました。

 

2)人柄のマッチングで苦戦していたITベンチャーB社の事例
株式上場準備を行っていたITベンチャーB社では、数年後に控えた総務法務部責任者の定年退職に伴い、同部署での採用を開始しました。単純な欠員補充ではなく、上場後も会社を支えてくれる、長期的な活躍や成長が見込める若手法務実務経験者をターゲットとして採用活動を行いました。しかしポテンシャルの高い若手法務実務経験者は転職市場に少なく、さらにベンチャーマインドを持った人材にはなかなか出会えずにいました。このような状況の中、経験よりも人柄を重視する同社は、採用のターゲットを母集団形成がしやすい法科大学院修了生に切り替え、その母集団の中から、企業の求めるマインドをもった方を見極めることにしました。
その結果、ベンチャーマインドを持った高学歴のポテンシャル層の採用に成功しました。
選考中~採用当初は、弁護士を目指していた方は頭が固いのではないかと心配していましたが、人柄を重視した選考を行った結果、そういった心配は杞憂でした。勉強を通じて身につけた豊富な知識をもとに、社内各部署からの質問に対し、かみ砕いたわかりやすい返答をしてくれていて、大いに活躍しています。社内折衝や教育にも知識は生かされており、企業側は、近い将来には管理職として活躍して頂きたいと期待をされています。

 

3)若手総合職が少なく、年齢構成がいびつになっていた大手ゼネコンC社の事例
C社ではバブル崩壊から景気が回復するまでの間、新卒採用を絞っていたため、若手の総合職、特に事務系総合職の人員が不足していました。効率的にポテンシャルの高い高学歴の若手を補強するため、専門知識を持った第二新卒をターゲットにして採用活動を行い、会計士試験合格者や法科大学院修了生など、5名の採用に成功しました。
入社した彼らは総合職として、会計や法務以外の分野で現在も活躍しています。採用当初は、総合職として活躍するうえで、高い専門知識は邪魔になるのではないかという懸念もありました。しかし、仕事の内容ではなく事業内容に関心を持ち入社した為、どのポジションの方も意欲を持って仕事に取組んでいます。その上で、勉強を通じて身につけた知識や思考力などの高い能力を実務で活かし、活躍していただけているようです。

 

専門知識を持った第二新卒の採用~活用における注意点
専門知識を持った第二新卒の特徴を活かし、活用している企業が増えてきた中で、注意しなければならない点も見えてきました。それは、もともと目標としていた会計士としての監査の仕事や、弁護士としての仕事に就ける可能性が出てきたときに、早期退職をしてしまう可能性です。
また、一緒に資格取得を目指して勉強してきた仲間の声や、勉強期間を金銭的、精神的にも支えてきたご家族の声により、企業内での就業意欲が低くなってしまうこともあります。
企業内で働くとはどういうことなのか、自社で働く社員のキャリアプランはどのようなものなのか等、しっかりと納得した上で入社してもらえるよう、慎重に彼らの本音を探ったうえで、選考時からしっかりとした情報を提供して活用していく必要があります。

 

-若手の第二新卒採用を行っていたIT企業D社の事例
若手の第二新卒を総合職として採用していたD社では、司法試験終了後の6月にエントリーをした法科大学院修了生を採用することに成功しました。地頭がよく、また同年代に負けたくないという強い成長意欲を持っている方だった為、今後の成長や活躍に大きな期待がかかっていました。
しかし同年9月、新司法試験の結果発表があり、試験合格していたことがわかりました。このまま働くか、法律の道に進むか悩まれた結果、やはり今まで目標としていた法曹業界への思いを断ち切ることができず、司法修習に行くため早期に退職することとなってしまいました。

上記のケースでは、企業側が選考時に彼の良い点を評価することはできましたが、本音の志向を確認しきれなかったことが早期退職のポイントとなりました。そもそもなぜその資格を志したのか、そしてなぜ今当社を希望しているのか。一貫した納得性のある理由をしっかり確認し、長期的な就業意欲を見極めることが重要です。

 

まとめ
冒頭で述べたとおり、現在資格制度の変化や市場の変化により、会計や法律の専門知識をもった第二新卒が多く就職市場に出てくるようになりました。新卒採用枠にも中途採用枠にも当てはまらない彼らの多くは、就職先を見つけられずに、若い労働力や豊富な専門知識を持て余しています。
しかし、国内の労働力不足が叫ばれている現在、このような若い労働力を活かさずにいることは、社会として大きな機会損失になり得るのではないでしょうか。
それだけではなく、現在の資格制度が続き、志をもった若者の就職難が続くと、経済活動において重要な役割を担っている「士業」を志す若者が減っていくかもしれません。
志を持った若者が夢に向かって頑張れるよう、試験に合格した彼らが第二新卒として活躍できる機会を作ることは、今後の企業の務めの一つとなっていくのではないでしょうか。

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