3分でわかる最新人事コラム

第81回2011/10/17

「震災後のワークスタイル」

日本の産業界に大きな衝撃と打撃を与えた東日本大震災が起きてから、半年以上が経過しました。徐々に復興は進んでいるものの、原子力発電所の事故を受けて、不安定な電力供給は今もなお続いており、企業や自治体ごとの節電への取り組みは継続して行われています。また、世界的な経済の影響から、為替が不安定な状況になってきていることなどもあり、今まさに日本経済は耐え所であり、この難局をどのように乗り切っていくか、どのような戦略を取っていくか、企業経営者は大きな決断を迫られています。
経済界以外に目を向けてみると、震災の影響は我々の日々の生活にも様々な変化を起こしつつあることがわかります。防災に対する意識の向上、節電への呼び掛け、被災地復興支援の活動などが挙げられますが、そのうちの一つに「ワークスタイルの変化」があります。
今回は上記のように、震災後に様々な変化が起きている中でも、とりわけ「働く」という基本的な部分にフォーカスし、企業の対応とそれを受ける従業員のワークスタイルの変化について纏めてみたいと思います。

 

震災直後の企業の対応
東日本大震災は東北のみならず、関東にも大きな被害をもたらしました。震災当日は帰宅困難者が大量に発生し、翌日以降も朝夕の通勤時のラッシュによって交通機関が混乱しました。また、原子力発電所から放射能が漏れているというニュースが世間を震撼させ、外国人労働者が大量に帰国、屋外に出ることに抵抗感を示す人も数多く見受けられました。そのような状況下で、まず企業としては社員の安否を確認し、緊急時にどのような対応を取るかを検討、災害対応マニュアルの見直しを行った会社も少なくないようです。
結果として、自宅待機や自宅勤務を許可する企業、ラッシュの時間帯を避けた通勤の推奨をする企業が一時的に目立ちましたし、各企業の迅速な対応が多くの労働者の安全を確保したことは言うまでもありません。しかし、上記はあくまで震災直後に企業が取った行動の一部でしかありません。震災後には原発事故による電力不足のため、日本、とりわけ首都である東京都近郊では今まで経験したことがない事態が生じました。
次の項目では企業の節電対応と、それに応じて労働者のワークスタイルにどのような変化が生じたのか、また生じつつあるのか、についてお伝えしたいと思います。

 

企業の節電対応とワークスタイルの変化
震災直後の混乱を切り抜け、徐々に平静を取り戻しつつある状況ではありますが、原子力発電所の相次ぐ事故と不安定な電力供給が影響し、日本全体で節電ムードが広がっています。計画停電のように住宅地を巻き込んだ極端な節電はさすがになくなりましたが、電力消費量が特に多い都心部では、照明の一部を消したり、ビル自体が空調の温度を高めに設定したりと、電力使用量を控える措置を取っているのが実態です。そのような状況の中、企業としても節電に対して協力を迫られるのは当然のことであり、それにより「残業の禁止(抑制)」「ノー残業デーの設置」「サマータイム制度導入」、特定の業界においては「休日の変更」に至るまで様々な対応を行っているようです。具体的にはどのようなものがあるのか、下記に主だった例をまとめてみました。

 

(1)在宅勤務
インターネットの普及や社会のクラウドに伴い、在宅勤務の仕組みを取り入れる企業が増加しています。内職やSOHOと呼ばれる完全歩合給制(または成果報酬型など)とは異なり、労働者は一般の正社員と同様、企業から給料が支払われます。現在の在宅勤務で多く見られるスタイルとしては、労働者の自宅の一室、あるいはそれらに準ずる空間で社内と同等の業務を行い、勤務時間内はパソコン(インターネット)をオンライン状態にし、Eメールやチャット(WEBカメラ)、電話などを用いて常時連絡の取れる状態にしている場合が多いようです。震災直後には同制度を推奨した会社もあり、仕事は必ず会社で行う、という概念も徐々に変わってきているのではないかと思わせる制度でもあります。

 

(2)時短勤務
主に育児中の従業員が利用できる制度です。通常よりも勤務時間を短縮することにより、育児がしやすくなりますし、同制度を申請する機会は近年増えてきているようです。また、通常の時短勤務とは異なりますが、震災後は節電のため短時間労働を取り入れる企業も見受けられました。企業側としても同制度を利用することで、節電以外にも既存社員の残業時間圧縮や人件費削減に繋がっているようです。また、時短勤務のように働き手にとって「働きやすい」環境を提供することで、職員の定着率を高めるという狙いもあり、企業・労働者双方が注目をし始めている制度の一つです。最近では若い男性で育メンという育児に積極的な父親が増えてきており、仕事も大事だが家族と過ごす時間も大事、という気持ちが強い人には受け入れられやすい制度のようです。

 

(3)サマータイム制度導入
夏季の一定期間に限って、時刻を一定時間進めるという制度です。夏の間、時計の針を1時間進めることで、夕方の明るい時間が1時間増えますので、夕方から夜間にかけての照明の点灯時間が減り、照明用エネルギー需要を削減できるというのがサマータイム制度の狙いです。この制度は節電を求められる都心部の企業で採用をされ始めており、今夏は特に注目されていました。また、同制度を利用して帰宅時間が早まったビジネスマンを対象に、飲食店や有料学習スペースなどの各種サービス業界にてビジネス拡大を狙い集客をしていたのも記憶に新しいかと思います。実際に早く帰ることが出来るようになり、家族や友人とのコミュニケーションや、将来のための勉強など、改めて自分自身がやりたかったことへ時間を使うことが出来るという点でも、同制度を好意的にとらえる方も少なくなかったようです。

 

(4)休暇の振替
自動車業界など特定の業界では、土日休みを平日の、たとえば火曜・水曜に振り替える会社が目立ちました。特にメーカーに多い傾向ですが、商品を製造する際に大量の電力を必要とする為、意図的に電力使用量の比較的少ない曜日(土日)に工場を稼働させるという「輪番操業」が一般的にも知られています。また節電対応のために行われる措置でもある為、工場での残業時間も以前より少なくなった、という声もありました。

 

上記のように震災後に企業が取った対応策、取り入れた制度は、単に労働時間が減っただけでなく、場所や時間が限られる中、これまでと同様の成果を上げる必要がありました。それを経験することで、企業にとっても、労働者にとっても、今までの「働き方」について、改めて考えるきっかけとなったのではないでしょうか。

 

震災までの日本のワークスタイル
今回の震災以前から、徐々に変わりつつあった日本のワークスタイルですが、もともと年功序列を基調とした日本の社会構造からして、上司よりも早く帰ることに罪悪感をもつことや、また効率化を重視するよりも汗を流して努力する姿が良いと思われがちな風潮・慣習が強い社会だったように感じます。しかし、長い年月を経て作り上げられた日本式の労働観は、突然訪れた震災の影響によって、徐々に多様化へと向かっていくのかも知れません。また、労働者側の視点からこの状況を捉えても、帰りづらいからという理由の無駄な残業をしなくて済むことや、場所や時間に縛られずに柔軟に働くことが出来るようになることは、自分自身の時間を確保しやすくなりますし、今まで以上に家族を大事にすることが出来るようになるため、むしろ歓迎されやすい内容が多いように思います。

 

旧来のように何処となく残業することが良いという風潮は、震災後もまだまだ実態社会には根強く残っているのかも知れませんが、今回のコラムで取り上げたような在宅勤務や時短勤務、サマータイム制度の導入などは、前提として残業をよしとしない、またはライフスタイルに合わせて定時通りにオフィスで働くこと以外も認めるという制度ですので、労働者としても躊躇せずに受け入れることが出来るでしょう。また、震災後は企業が率先して同制度を導入・推奨するという「今までになかった動き」が出てきており、今後はワークスタイルの多様化がさらに社会に受け入れられていくのではないでしょうか。

 

まとめ
震災以前の日本のビジネスシーンでは、節電への意識や対応も震災後ほどではなく、またサマータイム制度の導入なども本格的には議論されていませんでした。また残業の禁止を徹底することや、在宅勤務のように会社に居なくても仕事が出来るというスタイルは恐らく広がりづらかったのではないかと思われます。周囲に同化し、個人が目立たぬようにという日本人特有の美意識も、欧米諸国から見れば「日本人は皆遅くまで残業をし、仕事中毒なのではないか」という風に奇妙に見えていることもあるかも知れません。しかしながら、時代は少しずつ変化していますし、以前にも増して多種多様な事業が市場で受け入れられています。ビジネスの形態も多様化すれば、ワークスタイルの多様化も今まで以上に進んでいくでしょう。日本に大きな爪痕を残した東日本大震災は、もしかすると「働く」という最も根底となる行為に対して、今までのままで良いのか、と疑問符を投げかけているのかもしれません。

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