3分でわかる最新人事コラム

第82回2011/11/14

「女性の管理職登用」

あなたの企業では女性の管理職登用は進んでいますか?
そう聞かれて「はい」と答える方は一体どの程度でしょうか。
雇用や労働について議論される課題は多いですが、とりわけ昔からのテーマでありながら、今なお議論されているテーマのひとつに企業における女性の活用、ひいては女性の役員・管理職登用について、が挙げられます。男女雇用機会均等法が成立された1986年からちょうど四半世紀が経ちますが、女性の管理職登用はどの程度進んでいるのでしょうか。今回のコラムでは、現在の企業における女性の管理職登用について解説します。


日本の女性活用の今と海外の実態
2011年は日本最大手證券会社や大手電機メーカー、大手製薬メーカーなど、複数の著名な企業で初の女性役員が誕生した年でした。男女雇用機会均等法を受けて大手企業に女性の総合職が初めて登場し始めた1980年代半ば以降、特にバブル期には女性の社会進出が奨励される世相もあり、企業により女性を活用したプロジェクトや、CSRとして女性を活用しているといったアピールが見られるようになりました。その過程として1990年代後半にはダイバーシティ推進部や経済誌等に登場する女性看板部長が出現してきたようです。
しかし実態としては、近年の厚生労働省の調べによると日本企業の女性役員比率は1%以下、というあまりにも少ない数字が出てきます。

 

参政権の男女平等は戦後すぐだったものの、日本が国連機関の男女差別撤廃条約を批准したのは実に国連加盟国中72番目と、多くの新興国に後れを取っていました。
一方、欧州ではノルウェーによって初めて導入された「クォータ制」と呼ばれる制度が欧州各国によって次々に導入され、EUは主要加盟国へ2015年までに女性取締役比率を30%にするよう要請しています。
「クォータ制」とは、もともとは法律で国政に携わる政治家の女性割合を定める制度でしたが、多くの欧州諸国では上場企業や一定の社員数以上の企業に対し、女性の役員割合を30~40%以上とする内容となっています。実際、ノルウェーでは民間企業についても2006年からクォータ制が導入されており、その後急速に女性役員比率は上昇し2009年に40%以上まで増えたようです。
ノルウェーでこうした女性登用が進んだ背景としては、もともと男女平等意識が比較的高いことに加え、少子高齢化の背景、物価や給与水準、また税率や年金の問題から男女共に定年まで働くことが求められる社会背景がありました。また、女性役員を多く持つ企業はそうでない企業に比べマネジメント戦略に優れる、収益率があがるといった外部機関の研究成果が発表されていることも追い風となっているようです。


日本の女性役員登用率が低い背景とは
日本の女性役員比率は1%以下ということを先にお伝えいたしましたが、なぜ日本では女性役員が増えないのでしょうか。そもそも役員に限らず女性管理職としてみても、厚生労働省がまとめた2009年度の雇用均等基本調査では、係長相当職以上の管理職に占める女性の割合は8.0%ですが、5000人以上の大企業に限ると5.6%にとどまっており、日系大手企業では特に女性の管理職登用が進んでいない事実が浮き彫りとなっています。

 

政府は各分野で政策や方針の決定などにかかわる「指導的地位」にある女性の割合が、2020年までに30%になることを目指すとしていますが、具体的な施策はまだ試行錯誤の段階と言えるでしょう。
女性管理職が1割未満の企業にその理由を聞いた調査結果では「必要な知識や経験、判断力を持つ社員がいない」との回答が6割を占め、「勤続年数が短く、管理職になるまでに退職する」との回答も2割超となっています。それらを併せると、女性社員は管理職候補となる年次前に退職したり、幹部候補となるような経験や意欲を持つ社員が少なかったりする等の背景が考えられます。それは、女性が結婚や出産というタイミングで働き方を変える、もしくは断念する選択肢を持つことと関係しているでしょう。
日本でも1992年に育児休業法が施行され、女性の出産後の継続勤務が制度上可能になった企業が多い中、その産休復帰実績は決して短期間で高い水準までにはあがりませんでした。この背景には、男性は仕事、女性は育児という考えが根強くあり、また、夫婦で外に出て働いたとしても、主に女性が育児の役割を担う事が多く、育児と仕事の時間的、労力的な両面が困難である場合が多いということが挙げられます。

 

男女共同参画会議にも参加された、ある教授の説明によると、「男女の雇用均等度が相対的に高い職場は、女性にも男性と同様の働き方を期待し、それが実現されれば男女の別なく処遇する傾向がある」とのことです。要するに、男女比が均等な職場ほど、女性も男性と同じような働き方を期待され、また管理職に登用されることもあると述べています。しかし問題は、多くの職場において社員が長時間労働や転勤を期待されている場合が少なくないことであり、会社に求められるままに残業や転勤が出来る女性であれば、男性と同じく出世が出来るという雇用の均等が実現されているに過ぎないようです。今なお家庭の仕事(家事、育児)を男性よりも中心的役割として期待されがちな日本女性にとって、既婚後も男性と同じ働き方をしていくのが困難なことが、自然と管理職候補となる働き盛りの、経験豊富な女性総数を少なくしていると考えられます。

 

歴史的にも女性の社会進出が活発な欧米諸国に比べ、日本の女性管理職の増加は、社会的意識やインフラなどを含め、阻害要因がまだまだ大きいと言えそうですが、そうした阻害要因を克服してまで、女性活用が企業に与える意義、メリットはあるのでしょうか。


積極的な女性の登用は企業にとって有利か?
まず国全体として大きな視点で考えてみると、女性が長期にわたり働くことは労働力人口を女性により補うことにつながり、日本社会における少子高齢化から来る労働力不足問題の解決に対して必要なことであると言えます。優秀な女性の活用ができれば、労働力を確保するうえでのメリットになります。
また企業単位でみてみると、女性向け商品の開発や営業、またはそれに限らず女性の感性を活かしやすいと言われる広報マーケティング分野、語学力を活かせる分野、細かい数字を扱う会計分野などでは、女性を活用するメリットは大いにあるため、活躍の伸びとともに管理職となる女性も増え、日本でも相当な数の女性管理職が活躍するようになってきています。特に、家庭内に関連する商品や女性消費をメインターゲットとした商品を作る企業では女性の活用は企業戦略上欠かせないテーマであるため、女性の目線、女性のアイディアが必要不可欠です。
既存のビッグブランド商品が企業を安泰とさせる時代ではない今、優秀な人材は企業経営を左右する最大の要といえます。大きく言えば人口の半分である女性を活用しないとなると、人口の半分の中から優秀な人材を探さざるを得ないことになり、非常に不利であると考えられるようになりました。そのため、女性も含めた100%のパイから優秀な人材を探し、活用しようという考えが徐々に高まってきているというわけです。

 

また、女性社員の登用に取り組むことで、業務効率があがり、残業時間の軽減につながったという話もあります。家事に取り組むことが多い女性社員は残業を厭う傾向にあり、活躍している女性役員でも様々な取り組みで業務効率をアップさせ、残業時間を減らし育児と仕事を両立させたというエピソードを良く披露されているように思います。世界で第2位(1位は韓国)の残業天国である日本ですが、これについては男女ともにではありますが、健康管理や仕事の効率の観点からも残業は良い習慣とは言えません。女性社員活用をきっかけに、いかに残業時間を減らし家事や育児と仕事を両立させるかに取り組むことによって、社員全体の効率化につながるという結果をもたらすことも期待出来ます。
多種多様な人材の生産性を最大にする働きやすい職場環境をつくることは、労働力不足の解消や、何年もかけて育成した人材という経営資源の有効活用につながり、企業存続に欠かせない取り組みの一つといえるのではないでしょうか。


女性活用に成功する企業とは
女性役員登用に成功している企業、というと、近年生え抜きの女性社員から4名の役員をだした大和証券、女性役員はまだいないものの女性管理職が多い第一生命、様々なメディアでも取り上げられているP&Gなどが挙げられます。それらの企業に共通して言えることは一体何でしょうか。
それは、おそらく自然と女性の管理職が増加したのではなく、企業のトップの意識として女性活用に真摯に取り組み目標を実現する形で女性役員を誕生させたという経緯があるのではないでしょうか。大和証券を例に挙げてみると、社長直轄プロジェクトとして女性登用のチームを作るなど、トップからの明確な指標と社内制度の整備によって女性社員を育て、管理職候補を作り管理職に登用。このような取り組みを行い、役員を誕生させるべくして誕生させているのです。
上記のような企業には、急激なグローバル化をうけ、企業の国際化も進んでいる昨今、日本人旧来のビジネス感覚では国際競争を勝ち抜いていけない、という危機意識があるようです。新卒社員の外国人割合を7割にした楽天グループを始め、グローバル競争時代へ照準を合わせ、外国人採用を積極化する企業も増えました。しかし、多様化という意味では言葉の違う外国人登用よりも、まず社員としている在籍している女性を有効活用するべきなのかもしれません。先んじて女性活用を進めた上記の企業のように、女性社員の登用に向けた取り組みの内容をまとめると、概ね下記の項目に集約されると思います。

 

1、 女性活用プロジェクトの設置
基本的には女性による女性活用のためのチームを作ること、から始める企業が多いようです。チーム(プロジェクト)は社長直轄にするなどして、なるべく全社の組織を横断的に、また各世代の女性社員を集め男性だけの目線ではなく主体者目線で議論をする、そこからこれまでの役員(男性のみの仮定)では見えなかった課題や、アイディアが出てくるのだといいます。また、既存の組織である人事などでなく、組織横断し各世代によるメンバーを募ることで、女性のなかでも多角的なイシューが議論されますし、また実行や運営にあたっても拡散的にそれらを進めることが可能となります。

 

2、 社内インフラ整備
女性がまず管理職候補となるまで、長く勤務できる環境整備を進める必要があります。
結婚や出産の後も継続して働けるような人事制度づくり、場合により託児所の設置や在宅勤務の推進、ベビーシッターや保育所にあてる育児手当給付など、その会社の勤務形態や業種にあったインフラを整備することも必要です。また、そうした整備は女性社員の意識変化にもつながり、潜在能力のある女性社員の長期目線のキャリア構築意識を促すことにもつながります。

 

3、 社内への意識啓蒙(男性社員、男性管理職)
女性側への対策を進めるだけではなく、社内の男性社員の意識を変えていくことも必要です。育児休暇等での部署の労働力不足に対峙することになる男性社員の理解や、部下の女性社員の長期活躍のために制度の内容を理解しておくこと、部署内でのフォローなど、組織内すべての人が女性登用、女性活用を理解しコミットする必要があります。そうした環境があることで、育児等で自身のワークスタイルを変えざるを得ない中でも女性が休暇を取得しやすくなり、長く働くことへの不安が解消されるようになるのです。

4、 ロールモデルを作る、候補を育てる
「女性社員の意識が低い」と言われる背景には、そうしたロールモデルがなく、「どうせ長く働いても出世できない」とあきらめている女性が多いためかもしれません。また、女性登用に成功している企業のトップやこの分野の知識人は口を揃えて「ポストが人を育てる」といいます。人材登用にも思い切った決断が必要であり、少数でも実際に女性管理職を作ってしまうことで後に続く社員が出現してくるでしょう。
また、管理職(または役員)にひとりだけの女性を登用するのではなく、なるべく同時期に複数名を管理職に登用するのが適切との意見もあります。ひとつには社内のプレッシャーを「異色の女性管理職」に集中させないためです。たった一人が失敗したら社内に「やはり女性はだめだ」といった見方が強まり、その先その企業の女性登用にはネガティブなイメージが定着しかねません。もうひとつは、女性登用の効果を出すためです。大多数対1の女性的意見では会社運営に女性的センスが活用されるとは考えづらいです。まずは数人でも女性管理職や役員が誕生すれば組織の上部に女性の意見や意識が取り入れられ、女性社員のモチベーションにつながりますし、後に続く女性社員が活用されやすくなることでしょう。

 

上記のポイントは組織的に女性登用を進める上で必要ですが、まず何よりも重要なのはトップによる「女性を登用する」という明確なビジョン、意思と言えそうです。
現在社会のリーダーとして有名な女性の一人であるドイツのメルケル首相も、当時の長期政権であったコール首相にまだ政治家としての経験が浅い37歳の若さで大臣に抜擢され、経験を積んだことから頭角を現し、ついには一国の首相にまでなったと言われています。企業においても女性リーダーを誕生させるには、社長含め役員の強い意志や大きな決断が必要でしょう。組織の明確なメッセージにより女性社員にやる気を芽生えさせ、有能な女性役員候補の育成に努めるのも企業として必要な努力と言えます。


まとめ:女性活用について思案される企業へ
何らかの事由で女性活用を検討される企業、または女性比率は多いが管理職登用が進まず思案されている企業は多いかもしれません。企業規模の大小や、従業員の女性比率の度合いに関わらず、女性活用の問題は人材をより有効に活用していくために向き合うべきテーマとなります。
もし、女性活用を負担してとらえているのであれば、その認識を企業の成長戦略に必要なことであると認識して取り組むことで、これまでと違った施策がみえてくるのではないでしょうか。女性活用を企業戦略に取り入れ実践に向けて必要な手立てを打つことは女性の問題に終始しない、社員全体の問題、また会社運営の効率化やマーケティングの上でも重要なテーマであるはずです。
設立間もなく、まだ他のテーマに取り組む段階と思われている企業でも、女性活用は意外と身近なテーマとなり得るのではないでしょうか。特に若いうちから実力主義を発揮できるベンチャー企業のほうが女性社員の活躍が目立つこともあり、少数精鋭の社員の人材活用は男女問わず重要なテーマとなるはずです。女性側は雇用継続を望んでいても企業がそれを望まないように見えてしまっては、理解のある場所へ転職していく人材流出が起きてしまう、それは会社にとっても損失と言えるでしょう。

 

改めてお聞きします、あなたの企業では女性の管理職登用は進んでいますか?
もしまだであれば、一度女性登用について見直してみてはいかがでしょうか。

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