3分でわかる最新人事コラム

第95回2013/10/15

「産休・育休の実態」

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今年の4月に行われた安倍首相の戦略成長スピーチで、「女性の活躍」を推進する為に、現在の育児・介護休業法で定められている育児休業期間を1年から3年に伸ばそうという話が挙がっていたことからも、育児休業に関して世間の関心が集まっていることがうかがえます。
そこで、今回のコラムでは産休・育休という題材をテーマに、産前産後休業・育児休業取得の実態や、各企業の産休・育休に関する取り組みについて、紹介をしていきたいと思います。


産前産後休業・育児休業とは
今回のコラムでは産前産後休業と育児休業、通称「産休・育休」の実態についてお伝えするわけですが、そもそも、産休・育休について法的にはどういった内容なのでしょうか?
正確に把握されていない方も多いと思いますので、一度内容について確認したいと思います。
まず、産休=産前産後休業についてですが、こちらは労働基準法で以下のように定められています。


第65条
■使用者は、6週間(多胎妊娠の場合にあつては、14週間)以内に出産する予定の女性が休業を請求した場合においては、その者を就業させてはならない。
■使用者は、産後8週間を経過しない女性を就業させてはならない。ただし、産後6週間を経過した女性が請求した場合において、その者について医師が支障がないと認めた業務に就かせることは、差し支えない。
■使用者は、妊娠中の女性が請求した場合においては、他の軽易な業務に転換させなければならない。


次に育休=育児休業についてですが、こちらは厚生労働省のホームページには次のように記載されています。

育児・介護休業法のあらまし
育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律(平成3年法律第76号。以下「育児・介護休業法」といいます。)は、育児又は家族の介護を行う労働者の職業生活と家庭生活との両立が図られるよう支援することによって、その福祉を増進するとともに、あわせて我が国の経済及び社会の発展に資することを目的としています。

育児休業制度(法第5条~第9条)
労働者は、申し出ることにより、子が1歳に達するまでの間、育児休業をすることができます(一定の範囲の期間雇用者も対象となります)。一定の場合、子が1歳6か月に達するまでの間、育児休業をすることができます。
(出典:http://www.mhlw.go.jp/general/seido/koyou/ryouritu/aramashi.html


以上が産休・育休の定義となっております。法律では上記のように定められていますが、実際に産休・育休を取得している女性社員はどのくらいいるのでしょうか。


産休・育休の取得実績
まずは、厚生労働省が毎年発表している「雇用均等基本調査」で育児休業制度等に関する取得実績を見てみましょう。以下の図は、平成24年度の事業所調査による結果です。
こちらの統計によると、規定で定められた事業所のうち、およそ4割の事業所が育児休業を取得した実績があると回答しています。

育児休業者の有無.jpg

続いて次の図(表9)は、「1年間のうち在職中に出産した女性がどのくらい育休を取得しているか」を示す図となっています。これによると、8割以上の女性が育休を取得していることになり、休暇の取得が十分普及しているようにも見受けられます。

育児休業の有無別事業所割合.jpg

 

しかしながら、上記のデータはあくまでも「在職中に出産した女性がいた事業所に占める女性の育児休業者」を表すものなので、出産のために事前に退職した女性はデータには含まれないことになります。
もし、出産を機に会社を辞めなければならなかった女性が上記指標の集計に含まれていたら、どのようになるのでしょうか?そういった統計は公表されていないので正確には分かりませんが、出産の為にやむを得ず職場を辞めたという方も含めると、育児休業取得者の割合は8割を下回ることになるかもしれません。産休・育休取得の実態を考えると、これらの統計だけでは世の中で産休・育休が普及していると断言することは出来なくなってきます。
また、それを裏付ける事実として「産休・育休切り」という言葉が数年前から出回っていることは皆さんご存知でしょうか?これは、派遣切りをもじった言葉なのですが、その名の通り、産休・育休を取得したいと会社に申し出る女性労働者たちの雇用契約が切られてしまっているという事実によるものです。


産休育休の実態
例えば、東京労働局が公表をしている【妊娠→産休→育休→復職】紛争解決事例集によると、「切迫流産で1ヶ月会社を休んだら解雇になった」、「妊娠を理由に雇用形態をパートにされた」、「一旦退職をして出産後に戻ってくればいい(つまり産休・育休は取得させない)」など多くの紛争事例が掲載されています。法律上、これらの行為は違法になるのですが、悪意ではなく、主に企業側の知識不足が原因なのですが、最悪の場合は裁判にまで発展することもあります。
ちなみに、もし産前産後休業中の雇用者を企業側が解雇した場合、労基法19条違反で6カ月以下の懲役又は30万円以下の罰金が科せられます。その他、違反した企業の企業名を公表される場合もあり、企業イメージが悪くなることも予想されます。企業イメージが悪くなれば、出産や育児に伴い退職をした社員の補充どころか、それ以外の新卒・中途採用や自社の事業にも支障をきたす可能性があります。雇用をする側もされる側もデメリットしかありませんので、産前産後休業や育児休業を取得する社員の対応には十分注意が必要です。


とはいえ、雇用をする側の企業としては1年間休業する社員の代わりをどうするか、その社員が戻ってきたらどのような配置・業務内容で受け入れるかなど、悩みは尽きません。また、安倍首相が提案しているような「3年間抱っこし放題=育児休業期間を3年に伸ばす」というような施策が導入されてしまうと、3年も仕事から離れていた社員をまた復帰させるということになり、業務効率を考えると全社員で歓迎した状態で迎え入れるということは難しくなるかもしれません。そういった背景もあり、実態として「産休・育休切り」のような事態が起きているのだと思われます。
しかしながら、本当に雇用をする側には何もメリットはないのでしょうか。・・・実は、育児休業の取得をさせると企業側にもメリットがあるのです。
中小企業の場合だと「中小企業両立支援助成金」という制度を利用することができ、対象労働者1名あたりに対して数十万円単位の助成金を国から受け取ることが出来るという制度です(具体的には、従業員数100名以下の事業主であれば、育児休業取得者を原職または原職相当職に復帰させ、1年以上継続して雇用した場合、育児休業者1人目だと40万円の支給を受け取ることができる等)。また、外から採用する訳ではない為、イチから業務を教える必要もありません。中途採用を行うよりも即戦力性が期待出来ることから、大手企業を中心に産休・育休の取得を推進する動きも出てきているようです。


各企業の取り組み
では、実際に企業側はどのような取り組みを行っているのでしょうか。労働基準法で定められた範囲の規定以外にも、多くの企業で子育てを支援する動きが出てきています。
ここでは実際の企業の取り組みを、具体的にご紹介したいと思います。


社内保育園の設置
外資系小売チェーンIKEAや人材派遣会社パソナグループでは、社内に保育園(託児所)が設置されています。子供と一緒に出社し、そして一緒に帰宅することが出来ますし、いざという時にもすぐに子供のもとへ駆け付けられるので母親側にとっては安心です。
また、社内に保育園を設置することで、近年問題視されている待機児童問題の解消にもつながるのではないかとも言われています。子供を預ける先が見つからず、職場復帰のタイミングが遅くなるということが無くなることは、企業側にとってもメリットになるのではないでしょうか。


ワークライフ・マネジメント
育児・介護休業法施行前の1990年という早い時期に育児休業と短時間勤務の制度を導入したリコーグループでは、社員が働きやすい職場環境づくりに力を入れています。各家庭環境に応じて勤務時間の選択が出来たり、子供が小学校に上がったら通常通り勤務―という事ではなく、小学校に入っても短時間勤務を利用できるなどフレキシブルに働ける環境を提供しています。
「子育て」のステージによって柔軟に勤務出来る働き方であれば、退職を選択する社員も減り、従業員の定着率も今まで以上に良くなることでしょう。


出産祝い金
子どもを産みやすく、育てやすい職場をつくるため、そして少子化問題に企業全体で取り組んでいこうという企業では、出産の際のお祝い金を増額した企業もあります。
例えば、通信大手のソフトバンクグループでは第1子誕生で5万円、第3子で100万円、第5子以降だと500万円が支給されるそうです。大家族を応援してくれるような何とも太っ腹な制度ですね。


イクメン推進
女性だけが子育てに励むというのではなく、男性にも育児に参加してほしいという思いから「イクメン」なる造語が世間で出回り始めています。大手化粧品メーカーの資生堂では、昼食の時間に社員同士で育児に関する情報交換を行う場を設けています。その名も、「イクメンランチ」。男性の子育て参加を促したり、夫婦で家事を分担する事に対する理解を目的としています。
最近では男性の育休取得を積極的に提案している企業もあるので、今後、育休は女性社員だけのものではなく、男性も取得するというのがスタンダードとなるかもしれません。


以上が各企業の具体的な取り組みとなります。それぞれの企業毎にカラーはありますが、基本的には産休・育休を取得される女性社員(一部男性社員を含む)を企業として応援している制度であるということに変わりはないようです。


まとめ
今回この記事を読まれている皆様にお伝えしたかったのは、産休や育休は法律で定められているものだから取得させなければいけないということではありません。出産後に女性社員が戻ってこれる環境があるということは、雇用される社員にとっても、雇用する企業側にとっても、少なからずメリットがあるということなのです。
私自身も一人の働く女性として、こういった制度がより多くの企業に普及し、充実していくことを願っています。しかし、出産や育児を支援する上記のような制度があることが当たり前だというスタンスではなく、私たち働く女性側も、残された社員達から「○○さんにまた会社に戻ってきてほしい」と思われるようなパフォーマンスを休暇前に発揮しなければなりません。
制度はあくまでも制度です。働く女性としても、出産・育児を応援する為の制度に胡坐をかくような真似はしたくはないものです。

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