≪税理士版≫新世代の独立開業、これからのトレンドは?

更新日:2017/09/28
税理士

≪税理士版≫新世代の独立開業、これからのトレンドは?

管理部門・士業の転職

一昔前のように独立前提で税理士試験を受ける人が減っている。そもそも税理士試験の受験者自体が減っているため、こういった状況は不可避だったと言えるかもしれない。
また、最近の受験生の多くは独立よりも長期勤務や安定した就労環境を希望するような傾向にあり、士業=独立というスタンダードは崩れ始めているように感じる。
一方、そういった傾向を踏まえた上で税理士を雇い入れる側のあり方も変わりつつあるようだ。独立開業を支援する事務所、のれん分けを歓迎する事務所、後継者候補のポジションを出す事務所など、税理士を受け入れる側も人材の獲得に有効と思われる手法を導入し始めている。今回の会計トピックスでは新世代の独立開業と題し、税理士の独立手法やトレンドについて注目してみた。

資格は取るが独立は考えていない人が増えている?

税理士試験の受験者も減少傾向にあるが、それ以上に独立志向の受験者も減っている印象だ。筆者も日々税理士や公認会計士といった税務会計系の方とキャリアの相談を通じてお会いするが、「正直独立は考えていない」という方は多い。因みにこの傾向は若い世代になればなるほど強くなる印象だ。
また、今や世の中全体で人材不足が叫ばれているため、若くして税理士試験に受かるような優秀層には進路の選択肢も多い。例えば大手企業の経理部門、大手金融機関等、チャレンジをすれば行けてしまう状況にある。今や税理士のキャリアも多様化している状況、昔のように士業は士業界で転職を行い、最終的には一本立ちしていくような流れは、確実に鈍化していると言える。

独立しにくい市場なのか

では、なぜ独立開業志向の方が減ってしまったのか。彼らに夢や願望がないわけではない。むしろ彼らは現実的にマーケットを見ている。かなり冷静に市場を見ているからこそ、今独立したらどのようなリスクがあるかを考えてしまうのだ。例えば、「のれん分けしても新規顧客の開拓が上手くいくか分からない」「顧客の単価も下がりつつあり、稼げるイメージが沸かない」と考える人も多い。特に業界全体で単価が下がってきている点に不安を感じる人も多く、それが結果として独立=リスクがあるという見方に繋がっているようだ。
因みにこのような風潮やトレンドはリーマンショック後に形成されてきた印象だ。不景気の到来で、世の中の物価が下落、長い期間デフレが続いたことで、税理士の顧問報酬水準も下降トレンドに入った。また、インターネットの普及に伴い顧客も簡単に顧問税理士を探せる時代になったことで、価格の比較も容易に出来るようになってしまった。
また、景気が悪化したことにより、当面は新規の起業件数が減った。駆け出しの税理士であれば、起業支援・創業支援などの分野で若い会社を取り込んでいくパターンが多かったが、そもそもそういった起業案件が少なくなれば税理士にとっても痛手だ。
また、顧客から寄せられる期待・要望も高くなっている印象だ。「価格とサービスのコスパが合っている税理士を選ぶべき」という見解が広まったことで、経理代行や税金の知識だけでは食べていけない時代…という認識が広がりつつある。また、そういった風潮が税理士の独立を阻んでいる一要素になっている印象だ。

事務所承継という選択肢

一方、「自分では開業はしないが事務所の事業承継案件があれば手を挙げたい」という次世代税理士は徐々に増えてきているように感じる。一昔前であれば、事務所承継なんて外部の人間に任せられるか!と一喝されてしまいそうだが、実は後継者不在に悩む会計事務所は多い。中には後継者不在が理由で事務所を身売りするケースや最悪の場合は廃業に追い込まれる事務所も出てきている。このような状況だからこそ、後継者として名乗りを上げる税理士の存在は貴重なのだ。
ただ、後継者候補として“適正な年齢”というものも存在する。60代以上の所長からすれば事務所を承継する人材に20~30代は若すぎると感じられるだろう。また、既存職員との人間関係、顧客先の年代を考えても、後継者候補は40代以降のほうが良さそうという風潮は実際にある。いずれにしても、税理士の高齢化は業界が抱える課題でもあるため、後継者候補のニーズは益々増えることが予想される。

共同事務所という選択肢

上記のように事務所を承継するという選択肢もあるが、それにもリスクがあると感じる人は少なくない。今まで培ってきた人脈や人間関係、顧客基盤、事務所の伝統やルールなど全てを承継するのは中々重たい、と感じる人も多いからだ。むしろ気の合った仲間で得意分野を持ち寄って開業するような「合同事務所スタイル」のほうが現実的にも上手くいきそうだと考えている方は増えている。今は税理士も一人だけでは戦いづらい時代、だからこそ、チームで共同受注、顧客のシェア、事務所の維持費の折半、などリスクを減らしながら互いに成功を目指すようなケースは今後のトレンドの一つになりそうだ。

企業・他士業とタイアップしながら独立を実現

その他、新しいタイプの独立も見受けられる。それは、一般事業会社や他士業とタイアップして、半独立の状態を作る方法だ。これは近年広まりつつあるパターンで、一般企業の中でも医者や地主、不動産オーナー等の富裕層に特化している場合、税金の相談を頻繁に受けるため税理士事務所や税理士法人を作ってしまおう、というものだ。
このような類の事例は少しずつ市場に出始めており、不動産会社や金融機関、医療向けコンコンサル会社、弁護士事務所などで実例もあるようだ。税理士としては新規顧客解体の手間が省け、安定した収入が得られやすい点、独立とはいえ組織には属するため、半独立形態を維持でき、将来的な雇用や収入に関しても安心感がある、という利点がある。もちろん事業会社やコンサル会社、弁護士事務所としても税の専門家を内製化できるため、営業に有利、他社との差別化も実現しやすい。
こういった新しいタイプの独立も今後は広まっていく可能性がある。

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