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3分でわかる最新人事コラム

第34回

2007/11/06

「健康診断(雇入れ健診・定期健康診断)」

従業員の健康管理

働く人にとって生命はもちろんのこと、心身の健康を保つことは重要です。
近年良く耳にするワーク・ライフバランスという言葉がありますが、
健康というものはその両面にとって最も重要なものであり、
且つ豊かな人生をおくる上での大前提ともいうことができます。


一方、企業にとっても従業員を雇入れて業務に従事してもらう中で、
従業員の健康管理は大変重要です。
なぜならば、従業員の健康状態は
その人が生み出す価値=労働生産性に直結しているからです。
当然、従業員の健康状態が悪くなれば製品の品質やサービスの質の低下にも繋がりますし、
仮に労災認定や安全(健康)配慮義務違反と判断された場合、
ケースによっては高額な損害賠償も請求されかねません。


このように、労働者・企業双方にとって健康管理は重要なものですが、
一般生活上の健康管理義務は個人にある一方で、
職業生活上の健康管理義務、
つまり従業員の健康管理義務は企業側が一定程度負わなければなりません。
特に健康管理については事後的な対応よりも事前の予防策が必要となるため、
法律上も労働安全衛生法などで企業に一定の義務を課しています。
次章以降は、特に重要な部分である法定健康診断に焦点を当てて概説致します。
また、その他にも健康管理を実施する上で注意すべきポイントがありますので、
次章以降で併せて説明して参ります。


法律による規定‐「法定健康診断」

"労働安全衛生法の健康管理義務規定には、
企業は常時使用する全ての従業員に対して、
雇入時と毎年1回医師による定期健康診断を実施しなければならない"と規定しています。


仕事が原因(「業務起因」と言います)の脳疾患・心疾患及び精神疾患が急増している中、
当然ですが健康管理を個人に委ねるのではなく企業側が管理する意識が必要です。
以下、法定健康診断を行うにあたって注意すべき点を、
雇入れ時健康診断、定期健康診断それぞれに分けて記載します。


(1)雇入時の健康診断〈労働安全衛生法66条1項、同規則43条〉

前記の通り、企業は労働者を雇い入れる際に健康診断を行わなければなりません。
労働安全衛生規則43条は、
「事業者は、常時使用する労働者を雇い入れるときは、当該労働者に対し」、
「医師による健康診断を行わなければならない。」として、
雇入時の健康診断の実施を義務付けています。
「ただし、医師による健康診断を受けた後、三月を経過しない者を雇い入れる場合において、
その者が当該健康診断の結果を証明する書面を提出したときは、
当該健康診断の項目に相当する項目については、この限りでない。」として、
3ヶ月以内に健康診断を受けていた場合には、その受診項目を省略することが出来ます。
尚、法律で定められている受診項目は以下の通りです。


・既往歴および業務歴の調査
・自覚症状および他覚症状の有無の検査
・身長、体重、視力および聴力の検査
・胸部X線検査
・血圧の測定
・尿検査(尿中の糖および蛋白の有無の検査)
・貧血検査(赤血球数、血色素量)
・肝機能検査(AST(GOT)、ALT(GPT)、γ-GTP)
・血中脂質検査(総コレステロール、HDLコレステロール、トリグリセライド)
・血糖検査
・心電図検査


※「3ヶ月以内」の他にも、幾つかの要件によって省略できる項目もあります。


労働安全衛生法上の健康診断は、
「常時使用する労働者」に対して実施しなければならないとされています。
この法律でいう「常時使用する労働者」とは、次の2つの要件を満たす者とされています。


1)期間の定めのない契約により使用される労働者。
なお、期間の定めのある契約により使用される労働者の場合は、
更新により1年以上使用されることが予定されている者、
及び更新により1年以上使用されている者。


2)その者の1週間の労働時間数が当該事業場において
同種の業務に従事する通常の労働者の1週間の所定労働時間数の4分の3以上であること。


1)について、前半の「期間の定めのない労働者」とはいわゆる正社員を指し、
後半の「期間の定めのある労働者」とは主に契約社員や嘱託社員、パート社員などを指します。
2)については、例えばパート勤務のアルバイトでも、
正社員の1週間の所定労働時間数の4分の3以上の場合であれば
(例えば正社員の所定労働時間が40時間であれば30時間以上)、健康診断の対象となります。
尚、この点については
「所定労働時間数の2分の1以上である者に対しても実施することが望ましい」とされています。


(2)定期健康診断〈労働安全衛生法66条1項、同規則44条〉
企業は常時使用する全ての従業員に対して、
毎年1回医師による定期健康診断を実施しなければなりません
(「常時使用」の解釈は前述の通りです)。
労働安全衛生規則43は、
「事業者は、常時使用する労働者に対し、一年以内ごとに一回、定期に、」
「医師による健康診断を行わなければならない。」として、
毎年1回の健康診断を企業に義務づけています。


また、パートタイマーやアルバイトであっても、
継続1年以上雇用する場合は定期健康診断を行なう必要があります。
ただ定期的に健康診断を行うだけでなく、情報を管理する義務も企業側にはあります。
健康診断の受診結果は、個人情報保護の観点のもとで、
それぞれの労働者ごとに「健康診断個人票」を作成し、
事業所に5年間保存しなければなりません。
なお、常時50人以上使用する事業所の場合は、
健康診断実施結果を労働基準監督署に届出る義務があります。


健康診断実施上の注意すべきケース

(1)健康診断の費用負担について〈昭和47年9月18日基発第602号〉
厚生労働省の通達によれば、健康診断の費用については、
法律で事業者に健康診断の実施の義務を課している以上、
当然事業者が負担すべきものであるとされています。
トラブルになるケースは少ないですが、雇入れ時の健診を実施する、
またはそのための健康診断結果の提出を求める場合は、
基本的にはその候補者を採用することが前提になると思いますので、
費用は企業側で負担したほうが候補者にとっても良いでしょう。


(2)健康診断結果と採用決定について
企業によっては採用内定前に健康診断書の提出を求める場合もありますが、
必ずしも望ましいことではありません。
厚生労働省の通達によれば、
健康診断の結果を理由に採否を決定することは出来ないとされています。
例えば「健康診断の結果次第で正式に内定を出すか決めます」、
「健康診断に問題が無ければ内定ですから、現段階では内々定です」、
等の言葉を人事から候補者に伝えるケースがありますが、
このように健康診断結果を採否の決定に用いることは厚労省の通達に反する行為となります。
逆に「健康状態をみて最終的な選考結果を出したい」などといい、
選考中の候補者に健康診断結果を提出させる、または健康診断を受診させるということは、
採用を内定したとみなされる可能性もあります。


健康診断結果の提出を求める場合、基本的には採用内定(決定)後に行うべきですが、
実務上は採用内定通知書に内定取消事由として「提出書類に虚偽があった場合」等を記載し、
採用選考時に提出させた履歴書等の「健康状態」欄の記載内容を確認した上で、
仮に採用内定後に実施した健康診断で
内定時に示した職務が遂行出来ないような結果が出た場合に、
採用内定を取消すという方法がとられます。
しかしながら正当な内定取消のケースであっても一定のリスクがあるため、
出来るだけ事前に口頭や提出書類で確認をしておいた方が良いでしょう。


(3)受診拒否に対する懲戒処分について
既述の通り、法律上企業には健康診断を行う義務があり、
この義務に違反した場合50万円以下の罰金に処せられることになります。
一方、労働者にも健康診断を受診しなければならない義務が
法律上規定されていながら(労働安全衛生法66条5項)、
この義務違反に対しての罰則はありません。
では法定健康診断を受診しない労働者に対して
企業は懲戒処分を行うことが出来るのでしょうか。


ケースにもよりますが、過去の判例に従えば
企業の受診命令を拒否した労働者に対して懲戒処分を課すことは可能です。
しかし、労働者には医師選択の自由がありますので(労働安全衛生法66条5項但書)、
指定した健診機関での受診を拒否したことから直ちに懲戒処分が可能となるわけではなく、
労働者が企業や産業医が再三受診を促したにも拘らず、
健康診断そのものを拒否した場合に処分が可能となります。
逆に、企業が実施あるいは予定している健診機関ではなく、
労働者が自分で選択した健診機関で受診し、
その健診結果(証明書)を企業に提出した場合は、その結果を尊重しなければなりません。

 

特に注意すべきケースは、
労働者が宗教上の理由などの個人的事情で健康診断を拒否する場合、
企業や産業医は受診の義務を充分に説明したうえで対処を決めないと
後々トラブルに発展しかねませんのでご注意下さい。


総括

戦前、または戦後まもなくの時代においては、
「健康管理」という言葉・概念すらなく、
労働者は自分の健康状態を自分で管理することが当たり前の環境で働いていました。
時代柄、その当時の労働者の多くが工場や炭鉱で働く肉体労働者であり、
「女工哀史」(細井和喜蔵著)などでも著されているように
劣悪・不衛生な環境のもとで多くの労働者が働いていました。
そのような環境の中で労働者達は結核に罹患し、命を落とす人も少なくありませんでした。


時代は移り変わり、私たちが働く環境は前記とは大きく異なってきておりますが、
現代においても労働者は自分が従事する仕事に関連して
事故や病気にかかったりする可能性を常に持っています。
労働者の働く環境は変化しており、
現代で言う「健康管理」とは過去における衛生管理中心のものではありませんが、
より労働者が健康で快適に働けるよう「健康管理」の意識は更に高まっています。
特に過剰労働に起因する過労死は年々増え続けており、
日本は世界の中でも過労死による死亡率が高い国です。
また労働ストレスによる食生活の乱れから生活習慣病が増え、
最近は「メタボリック症候群」という言葉もよく耳にするようになりました。


労働環境が従業員の健康状態に大きく影響を与えることから、
もはや健康管理は個人だけの問題ではありません。
労働環境を提供する企業側の姿勢も問われる問題です。
冒頭でも記載したとおり、従業員の健康状態は労働生産性に直結しているわけですから、
企業側も一定の責任を負うことを忘れてはいけません。
その責任を負う上で、正しい対応を行うためにも労働安全衛生法の知識は必要です。
雇入れ時の健康診断、定期健康診断それぞれのルール・注意すべき点を
企業側がしっかりと認識していることが大切です。

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