2021年12月07日

弁護士がインハウスに転職するには?求められるスキルと注意点

管理部門・士業の転職

かつては法律事務所での勤務後に独立するイメージが強かった弁護士のキャリアプランですが、司法制度改革などの環境変化に伴い、必ずしも独立が最良の選択肢とは言えなくなってきています。 中でも、企業内弁護士(インハウスローヤー)のニーズは増加傾向にあり、弁護士の新たな就転職先として広く知られるようになりました。

独立も含め、法律事務所で働く弁護士が臨床法務(クライアントの課題解決)を主な業務に据えているのに対して、インハウス弁護士は企業法務として「会社の利益を最大化する」方向性で法律を解釈する能力が問われます。

この記事では、そういった弁護士の職種の違いについて触れつつ、弁護士がインハウスに転職する際に求められるスキルや注意点についてご紹介します。


企業内弁護士(インハウスローヤー)とは

企業内弁護士とは、英語ではインハウスローヤー(inhouse lawyer)と呼ばれ、弁護士法人を除いた官公署を含む事業体で職員として勤務する弁護士のことです。

企業内弁護士という呼称の他、社内弁護士・インハウス・インハウス弁護士などと呼ばれることもあります。

弁護士資格を保有していることもあって、取締役・理事・役員といった形で経営に関与していることも少なくなく、弁護士の多様な働き方の一つとして認知されています。

しかし、企業内弁護士は日本国内で古くから知られている働き方ではなく、2000年代からこの10年ほどで一気に一般的になりました。

認知度が高まった理由は一概には言えませんが、大きなポイントとしては以下のようなものがあげられるでしょう。

法的リスクへの対処の必要性

市場原理を社会全体に取り入れた「構造改革」によって規制緩和の流れが生じた結果、多くの企業は会社法・証券取引法などの各種法律が改正することに伴い、自社でコーポレート・ガバナンスを整える必要性に迫られます。

しかし、もともと数も質も少なかった法務担当者を急激に増やすことは難しかったことから、法曹人材の採用に注力する企業が増えた結果、インハウスローヤーの数も増加しました。

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企業のグローバル化

安価で質の高い商品を製造・販売するために、日系企業は東南アジアを中心に海外進出を進めるようになります。

その際に法務整備を進める必要が生じ、現地法人設立・M&A・コンプライアンス構築・法律事務所の選定など、新しい課題が次々と生まれました。

それらの課題を効率的に解決するため、自社の法務部員だけでは限界があったことから、インハウスローヤーに白羽の矢が立つ結果になったものと推察されます。

リーマンショック後の競争激化

多くの業界に大きな爪痕を残したリーマンショックは、法律事務所にも例外なく影響を及ぼしました。 採用数や給与額が抑えられ、事務所とクライアントの間にあった力関係にも変化が生じたことで、厳しい状況を察した弁護士が就職先を確保するためインハウスを検討するようになったのです。

インハウスローヤーを希望する弁護士の志望理由とは

次に、インハウスローヤーを明確に希望している弁護士が、どういった志望理由を持っているのかについてお伝えします。

主なパターンとしては、以下の2パターンが考えられますので、それぞれのケースについて志望理由をまとめました。

法律事務所からインハウスへの転職を希望する弁護士の場合

法律事務所からインハウスへの転職を検討する弁護士は多いため、その志望理由にもバリエーションがあります。

具体的には、前職の事務所における労働条件・仕事内容などによって、転職理由が変わってきます。

もともと、法律事務所はハードなスケジュールの中で仕事をこなすケースが多く見られ、企業法務を担当する法律事務所なら、朝から深夜まで激務の渦中にいる弁護士は少なくありません。

そういった就労環境に疲労を感じ、ワークライフバランスを重視した働き方に転向したいと考えるのは、自然な流れと言えるでしょう。

また、法律事務所からのステップアップを考えた時に、独立することに対して抵抗を覚える弁護士も一定数存在しています。

自ら顧客を獲得する熱意に乏しく、将来的に独立する意向がないなら、収入が安定したインハウスを選択するのは理にかなっています。

インハウスから別の企業のインハウスを希望する弁護士の場合

すでにインハウス弁護士としてのキャリアがある場合、職種の一つとして再びインハウスの立場で働くのも一つの考え方です。

他職種で転職を検討する場合と同様に、インハウスから別の企業のインハウスを希望することは、何ら違和感のない選択肢と言えます。

具体的な理由としては、キャリアアップを理由に転職を希望する人が多く見られます。 例えば、どちらかというとドメスティックな企業からグローバル企業への転職を検討したい・現在の自分のキャリアやスキルを考慮した上で英語力を活かしたいなど、よりレベルの高い分野に挑むケースが該当します。

他には、現職においてインハウス弁護士が自分一人しかおらず、他の弁護士がいる環境で仕事をしてみたいと考えるケースも考えられます。

いずれの場合も、自分がこれまでの経験から培ってきたものを新たな環境で試したいという、比較的ポジティブな理由が目立ちます。

インハウスの弁護士に求められるスキルとは?


インハウス弁護士は、勤め先の環境によって求められるスキルが変わってきますが、どの企業でも共通して必要なポータブルスキルも存在しています。 以下に、主要なスキルをいくつかご紹介します。

コミュニケーション能力

コミュニケーション能力は、社会人として基本的な能力ではありますが、弁護士の場合は特にフラットな立場でコミュニケーションが取れるかどうかが重要です。

というのも、インハウス弁護士が業務を進めるにあたっては、自社内の他部署とも一緒に仕事を進めていく必要性があります。

当然ながら、法律のバックグラウンドがない相手ともコミュニケーションをとる機会が多いため、そこで法律知識を前提とした会話を続けても、実りのある結果にはつながらないでしょう。

そのため、インハウス弁護士は、相手の知識を確認しながら法律知識を分かりやすく伝えつつ、企業の利益になる意見を謙虚に受け入れた上で、具体的なソリューションに向け行動を起こせるだけのコミュニケーション能力が問われます。

他部署と協働しビジネスを進める力

インハウス弁護士は、他部署と協働しビジネスを進める力も求められます。

具体的には、単純なコミュニケーション能力の枠を超えた「ビジネスセンス」が要求されるものと考えてよいでしょう。

法律に携わる職種の中でも、法務は特殊な領域であり、インハウス弁護士は企業法務に携わる場面がどうしても多くなります。

一般的に、弁護士は「やってはいけないこと」を条文から判断することには長けていますが、逆に「ここまでならやってOK」という線引きを苦手とする人も少なくありません。

できることの線引きは、弁護士一人で考えても解決しないことが多いため、他部署と連携を取りながら過去の事例を洗い出すなど、商慣習も含めて検討する必要があります。

法律を柔軟にとらえビジネスを有利にするセンスも、インハウス弁護士に必要なスキルの一つに数えられるのです。

英語力

海外に拠点を持つ企業では、一定の英語力もしくは特定の国の言語能力を問われる場合があります。 企業によっては必須ではないものの、やはり英語力の有無で選択肢は変わってくるでしょう。

ただ、ここでの英語力とは、各種交渉や英文契約書のチェックに携われるだけの能力を指しているのであって、具体的な資格を要求されるとは限らない点に注意が必要です。

あくまでも、実務に即したコミュニケーション能力・読解力・ライティング力が求められるものと理解しておきましょう。

交渉力

弁護士が遭遇する交渉の場面においては、決裂の危機に近い状況からスタートすることも想定しなければなりません。

特に海外での交渉は、一歩間違えば交渉が決裂してしまうような、非常にシビアな場面に遭遇することも珍しくありません。

そのような場面で、できる限り当事者同士が納得できる解決策を提示できるかどうか・解決策を認めさせることができるかどうかが、インハウス弁護士には問われます。 最後の最後で妥協点を見出すセンスも含め、交渉力のある弁護士はどの会社でも重宝されるはずです。

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弁護士がインハウスに転職する場合の注意点

実際にインハウス弁護士として転職する場合、一般的な職種への転職とは異なり、いくつか注意しておきたいポイントがあります。 以下に、主なものをご紹介します。

法律事務所との違いを理解しておくこと

一般企業と法律事務所とでは、働き方がまったく異なるケースも珍しくありません。 特に、中小規模の法律事務所からインハウスへの転職を希望する場合、あらゆる点でギャップを感じることになるはずです。

具体的には、職場の雰囲気・仕事の進め方・案件の性質などに違いが見られます。 これらのギャップが大きければ大きいほど、働き始めてから悩まされる場面が増えるものと予想されるため、できるだけ働く前に周囲のインハウス転職経験者からアドバイスをもらうのがよいでしょう。

委員会活動など弁護士特有の活動について確認をしておくこと

弁護士の採用実績がある企業であれば、弁護士特有の活動について理解しているものと思いますが、企業側にとって初めての採用である場合は要注意です。

弁護士会費の負担・委員会活動の参加の可否・個人受任の可否などについて、採用時点で十分な理解・方針がない可能性があるからです。

例えば、弁護士会費の負担方法については、企業が弁護士会に直接支払うのか・会費分を給与に上乗せして支払い弁護士側で支払うのかなど、複数の選択肢が考えられます。

採用活動の場においては、お互いにとって損にならないようアピールの仕方を工夫するとともに、転職エージェントを経由するなどして共通理解を構築する必要があるでしょう。

まとめ

法律事務所に転職する場合と、インハウス弁護士を目指す場合とでは、転職に際して求められるスキルに違いが見られます。

そのため、採用する側・される側ともにミスマッチのリスクがあるため、ニーズを正しくとらえなければ転職に失敗してしまうおそれがあります。

インハウス弁護士になるには、キャリア・適性を自ら見極める機会を設けて、今回お伝えしたスキルを保有しているかどうかを確認しながら転職活動を進めていくことが大切です。

法律事務所とのギャップ・弁護士特有の活動への理解も含めて企業を選定するには、転職エージェントに頼ることが、インハウス弁護士への転職を成功させる近道になるでしょう。

この記事を監修したキャリアアドバイザー

小島 亜里紗

大学卒業後、ウェディングプランナー、業界大手で求人広告の企画提案営業を経て、MS-Japanへ入社。
企業担当のリクルーティングアドバイザーを経験した後、現在は転職を考えられている方のキャリアアドバイザーとして、若手ポテンシャル層~シニアベテラン層まで多くの方の転職活動のサポートをしています。
人材業界での経験も長くなり、いつまでも誰かの記憶に残る仕事をしていたいと思っています。

経理・財務 ・ 人事・総務 ・ 法務 ・ 経営企画・内部監査 ・ 会計事務所・監査法人 ・ 役員・その他 ・ 公認会計士 ・ 税理士 ・ 弁護士 を専門領域として、これまで数多くのご支援実績がございます。管理部門・士業に特化したMS-Japanだから分かる業界・転職情報を日々更新中です!本記事を通して転職をお考えの方は是非一度ご相談下さい!

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