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求人情報に応募してきた求職者が書類選考や面接を通じて提供した情報は必ずしも正確なものであるとは限りません。どうしても採用されたいがために事実ではない情報を提示して、自分が魅力的な人材であるとアピールする場合もあります。情報の真偽を見極められずに採用した結果、採用後に経歴詐称が発覚して対応に戸惑うケースも十分に考えられます。
この記事では、経歴詐称発覚時の対応に加え、採用前に経歴詐称の可能性を見分けるノウハウをご紹介していきます。
重要な経歴詐称のみ解雇が有効
採用した人が経歴詐称であった場合、必ずしも解雇できるわけではありません。経歴詐称を原因として解雇する場合には、あらかじめ就業規則などでその該当要件を定めておく必要がありますが、これだけでもまだ経歴詐称した採用者を解雇できると決まったわけではありません。解雇要件を満たすために必要となるのは、その経歴詐称が選考時にわかっていた場合に採用しなかった、または同等の労働条件を提示しなかっただろうと客観的に判断できる程度の詐称である必要があります。
つまり、軽度の詐称であったり、その詐称が就業について直接的な影響を与えたりしないような場合には、経歴詐称を原因に解雇することはできません。仮に解雇したならば、それは不当解雇と判断される可能性があり、復職や損害賠償請求を命じられるなど思わぬ事態に陥ってしまうことも十分に考えられますので、冷静な判断が要求されます。
経歴詐称の種類
よくある経歴詐称としてまず挙げられるのが学歴の詐称です。学歴についてどれほど重視しているかはその企業によって異なりますが、一般的に学歴詐称は重大な詐称であるとされがちです。企業が学歴によって異なる給与テーブルを設けているケースが多いため、最終学歴が高校であるにも関わらず、大卒であると詐称して入社した場合には不当に高い賃金を支払うことになったと客観的に判断できるからです。職種によっては大卒なのに高卒と偽るケースもありますが、この場合にも学歴の詐称であると取り扱われます。
職歴の詐称も職務の遂行に大きな影響を与えるため重大な詐称とされますが、難しいのはその詐称の範囲です。まったくの未経験であるのに5年の実務経験があると詐称する場合もあれば、半年程度の実務経験を記載しない場合もあるので、詐称であるかどうかはケースバイケースとなります。注意すべきは求人広告に経験不問と記していたり、従事する業務に実務経験が必須であると客観的に判断できなかったりする場合です。こういったときには、重大な詐称とはいえないため、懲戒解雇は不相応とされる可能性もあります。保有資格の詐称も同様であり、従事する業務について重大な影響を及ぼすかどうかで判断されます。
犯罪歴については刑が確定しているもの以外は犯罪歴として取り扱われないので、賞罰欄にも記載する義務もなければ、面接時に口にする必要もありません。起訴猶予になった、執行猶予期間が満了した、刑期を終えて10年以上が経過した、といった場合には犯罪歴はなしと取り扱われます。
経歴詐称を雇用する企業のリスク
経歴詐称した人物を雇用する場合に生じる企業のリスクとしては、本来であれば支払うはずのない賃金を継続して支払わなくてはならないコスト上のリスクが挙げられます。高卒なのに大卒と詐称して入社した場合、大卒向けの給与テーブルが適用されるため、本来支払われるべき給与よりも高く支払ってしまうことになります。詐称の発覚時に適切な対応を行えばいくらか修正できるものの、解雇要件を満たすほどではない軽微な詐称であると判断された場合には雇用を継続しなければならず、給与の発生が続いてしまいます。場合によっては不当解雇をめぐって損害賠償請求へと発展してしまうケースもあるので注意が必要です。
また、業務のスムーズな進行の妨げになる場合も考えられます。なぜ経歴を詐称するのかといえば、その人物は実際の自分をより良く見せたいからであり、自分の目的を叶えるためには虚偽を提示することもいとわないからです。このような人間性を持った人物の場合、営業成績を上げるために誇張した営業を行って顧客からのクレームに発展したり、トラブルをひた隠しにしてポジティブな報告のみを繰り返したりする危険性が高くなります。トラブルが生じるリスクは対外的なものだけではありません。虚偽や誇張を繰り返す人物は、配属先で一緒に仕事をしている従業員の士気にも大きく影響を及ぼすほか、何かしらのきっかけで予期せぬトラブルが生じる可能性も高まります。
経歴詐称が発覚した際の対応法
経歴詐称が発覚したからといって、必ずしも解雇できるわけではありません。経歴を詐称して入社したものの、期待に値するだけのパフォーマンスを発揮しているのであれば、解雇しないほうが自社のメリットとなるからです。また、経歴詐称を原因とする解雇が認められるのは、詐称がなければその人物を採用しなかっただろうと客観的に判断できる程度の詐称である必要があるので、解雇したくてもできない場合もあれば、解雇にした結果、労使トラブルが生じてしまうことも考えられます。
このような背景から、経歴詐称が発覚したときにまず検討すべきは、その人物を社内で活かせる可能性があるかどうかという点です。もしも、活かせると判断できた場合には、その方向性に沿った方が良いでしょう。同時に忘れてならないのは、経歴詐称があったことを社内で公にするかどうかという点です。その従業員のことを考慮し、経営陣のみで留めておくケースもあれば、社内で共有するなど対応は様々ですが、対応を考える際には企業風土も考慮しつつ決めていきます。
経歴詐称を見抜く4つのポイント
経歴詐称が採用後に発覚すれば、後のトラブルの原因となり得ますので、できるならば選考段階で詐称を見抜きたいところです。経歴詐称を見抜くためのポイントは大きく3つあり、まずは提出書類から見抜く方法があります。
例えば、雇用保険被保険者証には前職の会社名や入社日が記載されており、年金手帳には前職までの加入歴が記されているほか、源泉徴収票には前職の会社名や退職日が記載されていますので、これらの提出を求めれば職歴についての詐称の有無をいくらかチェックできます。また、前職についての確認に限って言えば、労働者から要請があれば、会社側は速やかに交付することが法的に義務付けられている退職証明書の提出を求めることも可能です。
面接時に、相手が受け応えを想定していないだろう質問を投げかけることで、応募者の本質を浮かび上がらせる方法も有効です。詐称している内容の受け応えについて、応募者はしっかりと対策を練っているものなので、そこから的を外すようなリラックスできる質問や声かけを行い、そこでの受け応えで何か矛盾する点が見つからないかどうかチェックします。注意しなければならないのは面接時間には限りがあることと、的外れな質問を投げかけることに不信感を抱かれないよう、適度なさじ加減に留めておかなくてはならない点です。
最後に、リファランスチェックや第三者情報で見抜く方法があります。応募者が提供する情報の真偽を前職の上司や同僚など第三者に確認を入れれば、その情報が真実であるとの裏付けがとれます。個人情報の取り扱いについてはとてもデリケートなので、この方法を実践する場合には応募者本人の承諾を得てから行うよう注意が必要です。
まとめ
その会社に入りたい、という想いを持って求人へ応募してくる以上、自分を魅力ある人材であると思わせたいというのは自然な発想であり、経歴詐称は決して珍しいものではありません。しかし、詐称の内容によっては採否そのものに大きな影響を与える場合もありますので、詐称の発覚時には解雇という選択肢も頭を過るかもしれませんが、そのようなときには一度冷静になり、その人物が自社にとって有益な存在であるか、それとも不利益をもたらす存在であるかを熟慮するのが大切です。その判断にもとづき、適切な対応を行わなくてはなりません。余計な悩みの種を抱えてしまわないようにするためにも、選考時に詐称の有無をチェックするための工夫を凝らしてみてはいかがでしょうか。
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