採用成功ガイドRECRUIT GUIDE


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    一定数以上の労働者を雇用している企業では、「法定雇用率」にもとづいて、障害者を雇用する義務があります。障害者に活躍の場を提供することで、貴重な労働力を確保している企業もまれではありません。民間企業の法定雇用率は、2021年4月までに現行の2.2%から2.3%へ引き上げられる予定です。障害者雇用にかかわる法定雇用率とは、どのようなしくみなのでしょうか。この記事では、法定雇用率の引き上げによる影響や、雇用義務のある障害者数の計算式、法定雇用率が下回った場合のデメリットなどを解説します。

    法定雇用率とは

    法定雇用率とは、常用労働者の数に対して、雇用しなければならない障害者の割合を示したものです。障害者雇用促進法では、民間企業などの事業主を対象に、従業員のうち一定割合以上の障害者の雇用を義務付けています。事業主が誰をどのような条件で雇うかについては「採用の自由」として認められている一方、憲法が定める「職業選択の自由」のもと、働く意欲がある障害者の「雇用の権利」を保証し、雇用を促進するための手段として導入されたのが法定雇用率です。

    常用労働者とは、正社員のほか、過去1年間以上継続して雇用されている労働者や、1年間以上継続して雇用されると見込まれる労働者も含まれます。つまり、この条件に当てはまる契約社員やパート、派遣労働者、外国人労働者を雇用している企業も法定雇用率の対象となるのです。

    対象となる障害の種類

    では、どのような障害を持った人が「障害者」とみなされるのでしょうか。障害者雇用促進法では、障害者を「身体障害、知的障害、精神障害(発達障害を含む。)、その他の心身の機能の障害があるため、長期にわたり、職業生活に相当の制限を受け、又は職業生活を営むことが、著しく困難な者」と定義されています。身体障害とは、視覚、聴覚、言語などの機能障害のほか、肢体不自由、心臓・腎臓、呼吸器などの内部障害がある状態のことです。身体障害者障害程度等級の1級から6級までの障害、もしくは7級の障害が2つ以上あり、身体障害者手帳の交付を受けた人が該当します。

    知的障害とは、発達期までの知的機能の障害によって頭脳を使う活動に支障があり、認知能力が遅れた状態にあることです。その確認は、都道府県知事が発行する療育手帳、または知的障害者判定機関が交付する判定書によって可能です。 精神障害とは、統合失調症、そううつ病、てんかんの症状がある一方、症状が安定していて就労が可能な状態を言います。 確認の手段は、精神障害者保健福祉手帳を所持していることや、医師の診断書などです。このような種類の障害に該当する人が、法定雇用率として雇用しなければならない障害者の対象となります。

    法定雇用率2.2%→2.3%に引き上げ


    法定雇用率は、2021年4月までには現行から0.1%引き上げられる予定になっています。 これによって企業にどのような影響があるのでしょうか。実際に雇用しなければならない障害者数の計算式も併せて解説します。

    各組織団体の法定雇用率

    法定雇用率は、義務化された1976年以降、何度か引き上げの見直しがありました。当初は1.57%でしたが、その後、1988年に1.6%、1998年に1.8%と段階的に上昇しています。法定雇用率が2%台に上ったのは2013年です。民間企業が2.0%、国・地方公共団体などが2.3%、都道府県などの教育委員会が2.2%となり、この年に法改正が施行されます。雇用義務の対象に精神障害者も加わることになった2018年には、民間企業で2.2%、国・地方公共団体などで2.5%、都道府県などの教育委員会で2.4%に引き上げられ、それらが現行の法定雇用率となっています。

    さらに、2021年4月までには現行から0.1%ずつの上昇が見込まれ、民間企業では2.2%から2.3%へ引き上げられる予定です。現在、障害者を1人以上雇用する義務がある企業は、常用労働者が45.5人以上となっていますが、2.3%に上がると、対象となる企業の常用労働者は43.5人以上になります。つまり、常用労働者が43.5人以上45.5人未満の企業は、現行で障害者を雇用する必要がなくても、2021年度以降は障害者を1人以上雇用する義務が生じるのです。

    雇用義務のある障害者数の計算式

    常用労働者が45.5人以上いる企業の人事担当者は、自社が雇用しなければならない障害者の数が何人になるのかを把握しておく必要があります。現行で雇用義務のある障害者数の計算式は次の通りです(小数点以下の端数切り捨て)。

    雇用義務のある障害者数=(常用労働者数+短時間労働者数×0.5)×法定雇用率2.2%

    例えば、8時間労働の正社員が95人、短時間労働者(週20時間以上30時間未満)のパート従業員が16人の場合、(95+16×0.5)×2.2%=2.266となり、小数点以下は切り捨てるため、雇用義務のある障害者数は「2人」となります。ただし、重度の障害者を常用労働者として雇用する場合は、障害者1人を2人としてカウントします。

    業種による除外率制度

    障害者に働く意欲があっても、職種によっては障害者の雇用が難しい企業も少なくありません。そのため、一般的に障害者の就業が困難であると認められる業種については、障害者の雇用義務を軽減する措置がとられました。法定雇用率を割り出す際に、一定の労働者数を控除する「除外率制度」がそれです。今後は段階的に除外率が引き下げられ、制度自体は廃止の方向に向かっていますが、現在では経過措置として、以下の通り業種別に除外率が設定されています。

    5%は、非鉄金属製造業、倉庫業、船舶製造・修理業、船用機関製造業、航空運輸業、国内電気通信業。
    10%は、窯業原料用鉱物鉱業、採石、砂・砂利・玉石採取業、水運業、その他の鉱業。
    15%は、非鉄金属第一次製錬・精製業、貨物運送取扱業。
    20%は、建設業、鉄鋼業、道路貨物運送業、郵便業。
    25%が港湾運送業で、30%が鉄道業、医療業、高等教育機関となっています。
    50%以上では、石炭・亜炭鉱業、道路旅客運送業、小学校、幼稚園、船員等による船舶運航等の事業などがあります。

    法定雇用率が下回るとどうなる?

    では、法定雇用率が下回るとどのようなデメリットがあるのでしょうか。大きくは、「行政指導」「社名の公表」「納付金の支払い」です。法定雇用率が達成できていない企業は、雇用義務を履行していないとみなされ、ハローワークによる行政指導が入ります。行政指導は、企業側による「障害者雇用状況報告」に対して、ハローワークから「障害者雇入れ計画作成命令(2年計画)」が出され、計画の実施状況が悪い企業には、「障害者雇入れ計画の適正実施勧告」や「特別指導」が行われるという流れです。「特別指導」に至っても障害者の雇用状況が改善されない場合は、社名が公表されてしまいます。社名公表は企業イメージを損なうリスクがあるため、そうなる前に法定雇用率を達成することが大事です。

    また、常用労働者が100人を超える企業では、法定雇用率が下回っている場合、納付金を国に納めなければなりません。雇用義務の障害者が1人不足するごとに月額5万円が徴収されます。これは「罰金」ではなく、法定雇用率を達成している企業に対して、調整金や報奨金を支給するための原資になります。障害者の雇用にあたっては、作業施設や職場環境の整備、特別な雇用管理などが必要です。そのため、法定雇用率を達成している企業と未達成の企業との間に生じる経済的負担のバランスを調整することが、納付金の目的になります。しかし、納付金を納めても障害者の雇用義務がなくなるわけではありません。障害者雇用の考え方はお金で解決する問題ではなく、本来の意図をしっかりと認識することが企業に求められています。

    まとめ