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    MBO(目標管理制度)の基礎知識。OKRとの違い

    ドラッカーの名著「現代の経営」において、MBO(目標管理制度)という概念が登場します。 社員が自律的に目標を設定する人事評価制度のことを指し、日本でも数多くの企業が導入しています。 似たような制度にはOKR(業績評価制度)がありますが、こちらはMBOと比べて評価の頻度や目標設定などに違いがあり、ひとくくりにして考えることはできません。 この記事では、MBOに関する基礎知識に加え、OKRとの仕組み上の違いについてお伝えします。

    MBO(目標管理制度)とは

    MBOは、正式名称を「Management By Objectives」と言います。 個別・グループで目標を設定し、それに対する達成度合いから評価を決める制度のことです。 一見すると、「自分勝手な目標を設定して、それを達成すればよい」という解釈ができそうですが、もちろんそのような制度ではありません。 組織の目標が先にあって、それについて個人・グループとしてやるべきことを目標にまとめ、最終的に個人・グループの目標が組織の目標にリンクする形になるよう調整することが、この制度の重要な部分になります。

    実際に設定する目標は、以下のようなポイントを踏まえた内容でなければなりません。

    • 明確であること(具体的で分かりやすい)
    • 適正な目標レベルであること(目標レベルが高い、低いということがないようにする)
    • 時間軸を設定すること(達成までの期間を設ける)
    • 具体的な方法を明記すること(取り組み方、目標を達成するための方法)
    • 会社の目的と自分の使命に関係すること(企業戦略、個人としての役割)

    また、重要なポイントとして、社員の成長を上司が把握できるようマネジメントすることが求められます。 目標設定を受けて行う各人の努力が、空回りしていないかどうかをチェックするため、上司の指摘が必要です。 実際の現場では、難易度別に複数の目標を立て、それらの進捗度を上司がチェック・ランク付けするスタイルが見られます。 単純にノルマを設定して目標管理を行うのではなく、あくまでも会社と社員の間で密なコミュニケーションを図り、従業員のモチベーションを高めることが制度上重要です。

    MBO(目標管理制度)の歴史

    冒頭で、MBOという概念は、ドラッカーの「現代の経営」から登場したものとお伝えしました。 発表は1954年、当時のデュポン社、ゼネラル・モーターズ社などが行っていた手法をまとめたもので、当時の新しい経営手法「目標と自己統制による管理」として紹介されています。 発表当時、目標だけは組織の方針に合わせるよう相談し、それ以外は本人の裁量・自発性に任せる点は画期的なもので、MBOは成果主義が浸透するにつれて普及していきました。

    MBOは1960年代に日本にも導入されましたが、評価手法としてではなく、人材育成・モチベーション向上を目的として導入された企業が一部あるに過ぎませんでした。 また、本格的に導入されるようになったのは、バブルが崩壊した1990年代からです。

    当時は、年功序列型→成果主義人事への転換期であり、主に評価を目的とした導入でした。 不満の声もあれば納得の声もあがり、最終的には年功序列と組み合わせて評価制度に組み込まれる形で落ち着きましたが、次第にMBOの問題点も露見します。 ただ、1954年に発表された概念で、しかも日本企業への導入を考えれば、時代の流れに十分マッチしていなかったとしても不思議ではないでしょう。

    そのため、MBOをより洗練させるために、2000年代から各社がカスタマイズを行います。 結果に偏っていた部分をプロセスの評価に振り分けたり、育成面により注目するようにしたり、各社の方針にマッチするよう仕組みが変わっていきました。 その結果、日本におけるおよそ9割(88.5%)の企業が、MBOを導入するところまで普及したのです。

    MBOのメリットとデメリット


    各社でMBOに関する研究や実践は進み、メリット・デメリットとなるポイントも各社で細かい部分は異なります。 しかし、共通している要素もいくつかありますから、以下の点については基礎知識として再度押さえておきましょう。

    メリットは、きちんと実践できれば「会社のレベルが上がる」こと

    MBOは、年功序列の悪い面に引きずられていた日本企業に、新しい光をもたらした制度の一つです。 特に、本来の目的である「自己管理によるマネジメント」は、正しく実践できる人材に恵まれれば、小さな経営者をたくさん会社に作ることができます。

    自分の仕事と会社の方針をすり合わせることで、目標に具体性が生じ、仕事を管理する意味を理解しながら目標達成に向けて行動できます。 また、自分の仕事内容を客観視しやすくなるため、具体的なアイデアを出したり、上司のフィードバックを活かしたりするのが容易になります。 結果的に、個人・グループ・会社全体のレベルが向上し、企業全体が評価される結果につながります。

    デメリットは、評価作業に時間がかかり運用の難易度も高いこと

    MBOそのものは、優良な評価制度として機能するだけの手法ですが、評価作業に時間がかかってしまうことが難点です。 インターネットの普及に伴い、例えば半年前の目標自体が古いものになってしまうケースも珍しくなく、評価の方向性が変わる中での人事評価を余儀なくされる場合も想定しなければなりません。

    また、MBOによる目標設定は、そもそも会社の目標を自分に当てはめて考えたものです。 そのため、会社の目標を達成する明確な動機が社員になければ、モチベーション向上にはつながらないでしょう。 しっかり制度を運用することを考えると、難易度は高い部類に入ります。

    MBOを採用しない企業も出てきている

    MBOがもたらす、成果主義の「ランク重視」という悪い面を考慮して、MBOを採用しない動きを見せる企業は増えてきています。 Googleのような世界的大企業でも、成果主義の廃止に向けた動きを見せており、将来的にこの流れは避けられないものと推察されます。 ただ、日本企業全体に浸透するには、未だ時期を待たなければならないでしょう。 なぜなら、MBOの廃止が実現すれば、会社が評価に携わる部分が減り、上司が行う作業が増えるおそれがあるからです。

    会社の人事評価制度によっては、人事部が行っていた仕事を現場の上司が行うことにもつながり、会社によってはかなりの負担をマネージャークラスに強いることになります。 また、コミュニケーションを密に行う環境が整っていない状況で仕組みだけを変えてしまうと、結果的に部下の気持ちが上司・会社から離れてしまうことでしょう。 人事には、今後の動向に注目しつつ、現時点で運用している制度のレベルを高める努力が求められます。

    OKRとMBOの違い


    MBOと似たような評価制度として、日本でもOKRが認知されていますが、詳しい中身をチェックすると細かい部分に違いがあります。 MBOが主に報酬の決定を目的としているのに対して、OKRは会社全体の生産性向上が目的です。 また、評価の頻度もMBOに比べて細かく設定されており、四半期に1回・1ヶ月に1回という短いスパンでレビューが行われます。 ビジネスのスピードが早い業種・部門においては、MBOの1年スパンでは間に合わないケースもあることから、必然的にOKRを選択せざるを得ない会社もあるでしょう。

    OKRでの目標設定には、SMARTの法則が採用されており、以下の5つのポイントに沿って目標が設定されます。

    • Specific(目標が明確・具体的であること)
    • Measurable(計量が可能なこと)
    • Achievable(社員が目標達成について同意していること)
    • Relevant(経営目標に根差したものであること)
    • Time-bound(期限が設定されていること)

    しかし、MBOには明確な目標設定の手法はないことから、どのような基準を設けるのか・目標を設定するのかは会社次第ということになります。 目標の最適な達成率も、MBOとOKRで異なります。 MBOはほぼ100%であることが期待水準となっていますが、OKRは60~70%という水準が理想とされます。 仮に、OKRにおいて達成度が高すぎる場合、それは設定した目標が低いものと判断します。

    これらの点から、OKRは個人・組織について包括的に評価する手段というよりも、会社としての目標を達成する手段としての性質が強い仕組みと言えます。 導入の際は、社員一丸となって目標に集中し、その達成に向けて効率的に動くための手法として認識することが必要です。

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    まとめ

    MBOは、ドラッカーが提唱した概念の一つで、20世紀において重要な意味を持つ人事評価制度・手法の一つです。 日本でも数多くの会社が導入し、多くの社員がその評価に従って業務に従事しています。

    しかし、MBOは万能な手法とは言えず、運用にあたっての弱点やリスクもあります。 アメリカなどではすでにMBOのランク評価を廃止して、新しい評価制度を社内に普及させる動きも活発ですが、日本では組織の事情から一気に鞍替えするのは難しいと考えられています。

    人事の立場としては、できるだけ効率的かつ納得のいく形で評価制度を運用したいと考えたいところですが、現代のビジネススピードから考えて、MBOそのものに限界を感じてしまうケースもあります。 将来的にはどの会社でも、MBOとの差異を理解した上で、OKRなど新しい手法を導入することを想定しておく必要がありそうです。

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