採用成功ガイドRECRUIT GUIDE


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    いわゆる「法律家」と呼ばれる仕事は数多く存在し、行政書士・司法書士・弁護士など、様々な士業が日本に存在しています。 その中で、ひときわ異彩を放つように見られるのが「弁理士」です。

    人間の知的財産や所有権を法的に保護するため、きわめて重要な役割を担う士業の一つであり、工業に関する法的な知識だけでなく、各分野の専門知識にも精通していなければならないため、文系・理系という垣根を超えた幅広い知識に基づいた理解力・判断力が求められます。 この記事では、各種メーカー人事担当者向けに、弁理士の仕事内容・企業内弁理士を雇うことのメリットについて、詳しくお伝えします。

    1.弁理士とは


    1-1.弁理士の仕事内容

    弁理士は、企業や個人の依頼を受けて、創作技術・デザイン・業務上の信用といった抽象的な権利について、「特許権」「意匠権」「商標権」などの形で具体的に権利化する出願手続きを行います。 もちろん、それらを取消し・無効とするための異議申立て手続きも、弁理士の業務の一環です。 現代の技術は進化が速いことから、ライセンス契約の交渉・仲介手続きの代理など、知的財産分野全般にわたって企業ないし個人が弁理士を頼るケースが増えてきています。

    1-2.弁理士試験の難易度

    弁理士試験は、年齢・性別・学歴などにかかわらず誰でも受験できますが、2018年度の合格率は7.2%で、およそ4,000人が受験して260人しか合格しないという、非常に難易度の高い試験です。 また、弁理士は、そもそもスタートラインとして理系の知識が求められ、物理学・化学・工学に関する知識があることを前提条件とした問題も登場することから、高学歴・30代以上の受験者・資格保有者が数多く見られます。

    1-3.弁理士の平均年収

    弁理士の平均年収については700万円前後といわれています。年齢や勤め先に応じて違いがあり、総じて500~1,000万円という幅広さとなっています。

    1-4.弁理士と知財部の違い

    また、知財部との違いを端的に説明すると、

    • 弁理士の仕事はアイデアを具体化して明細書に書き起こすこと
    • 知財部の仕事は発明者が意図する部分を理解して戦略を立てること
    というニュアンスの違いがあります。

    知財部経験者が弁理士資格を取得することで有利になるのは、企業戦略を見据えた知的財産権の保護がスムーズにできる点です。 特許を取得する場合、特許明細書という特殊な書式を使いますし、複数の発明の中から自社にとって有利な特許の取得にかける戦略を考えなければなりませんから、法的な視点から最善の選択に結びつける場面でも弁理士は役立つはずです。

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    2.弁理士を企業内で採用するメリット


    2-1.特許の出願が社内で完結する

    弁理士に仕事を依頼する場合、特許事務所などに依頼して、特許の出願から登録までを依頼するイメージが一般的かもしれません。 メーカーの場合、顧問弁理士契約を結び、必要に応じて依頼をかけるケースも多いでしょう。

    しかし、弁理士を企業内で採用した場合、特許に関する出願などを社内のリソースで完結することが可能になります。 知財部に所属・あるいは知財部と連携して、スムーズに手続きを進められる点も魅力です。 企業弁理士知財委員会の統計によると、全弁理士数に対する企業内弁理士の数の比率はおよそ20%という結果が出ており、大手メーカーを中心に一定のニーズがあるものと推察されます。

    2-2.コスト削減

    報酬の面で考えてみると、1件あたりの固定報酬制・難易度も関係する従量制・依頼処理に要した時間に対してかかるタイムチャージ制など、複雑な報酬体系の中から支払い方法を選ぶ必要がなく、基本的には給与という形で固定給を支払えば、諸々の業務を企業内弁理士に依頼できますから、コスト削減につながります。

    2-3.知財の法律に関わる相談ができる

    弁理士は、特許出願や登録に関する事務を行う専門家ではありますが、同時に法律家でもあります。 そのため、本来は法務職の仕事とは別の観点から法律を扱いますが、相性自体は悪くありません。

    具体的に言うと、知財の法律に関する相談窓口として社内外の役に立つことができ、個人との対応の中から優秀な発明家とのコネクションを探ったり、同じ弁理士同士が集まるセミナーに参加したりして知識・見識を深めてもらうこともできます。 企業という大きな組織に属する形をとることで、弁理士自身も新たな可能性を見つけることができ、その実りは企業にも分配されることでしょう。

    2-4.知財訴訟の対応ができる

    知的財産権の侵害訴訟に関して言えば、弁理士会が実施する「特定侵害訴訟代理業務試験」に合格した弁理士は、特定侵害訴訟代理業務付記(いわゆる「付記弁理士」)と呼ばれ、訴訟代理人になることができます。

    訴訟対応について、弁理士は「訴訟代理人」という立場で、弁護士と連携して訴訟を行います。 弁理士は訴訟に特化した職務を行っているわけではないため、法廷での立ち回りを有利に進めるためには、弁護士との協力が必要になってきます。 この場合、会社の事情を知る企業内弁理士が訴訟に関わることで、外部の弁理士を通すよりも自社の主張を通しやすくなるでしょう。

    3.企業内弁理士の採用ポイント


    続いては、企業内弁理士を採用する際に気を付けたいポイントを、人事担当者の視点からいくつかまとめました。 全ての企業に当てはまるとは限りませんが、意識しておけば質の高い人材の採用につながりやすくなるはずです。

    3-1.20代の弁理士の採用は超難関!

    2019年度の日本弁理士会会員のデータを見ると、弁理士の平均年齢は51.33歳。約6割の会員は40代~50代であることが分かります。20代は全体の0.5%程度、35歳まででも5%に満たない人数と、若手の弁理士はかなり少数であることが分かります。そのため、20代の合格者の中から弁理士を選ぶのは、なかなか難しく、ある程度社会人経験・実務経験を積んだ40~50代以上をターゲットにして採用活動を進めるのが良いでしょう。

    3-2.得意分野が企業とマッチするか確認しよう

    弁理士は、専門分野の違いが明確に反映される士業で、弁理士の資格を取得していれば何でも対処できるわけではありません。採用しようとしている弁理士の得意分野が、自社とマッチするものかどうかは、採用する前にキャリアを確認しておいた方がよいでしょう。 理系の弁理士であれば、大きく「機械系」「化学・バイオ系」「電気系」「IT・通信系」の4つに分けることができます。文系の弁理士であれば、「商標・意匠・著作権」を専門としている方が多いです。また、国内案件が得意か、海外案件が得意なのかも弁理士によって分かれる点ですので、面接時に確認しておく必要があります。

    【関連記事】
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    3-3.人柄が組織にマッチするか確認しよう

    多くの企業では、企業内弁理士を採用することを想定した場合、特許事務所からの中途採用を考えるでしょう。 その際、事務所との働き方の違いに戸惑い、ミスマッチが生まれてしまう可能性は否定できません。 相手の人柄を見定め、自社の事業規模・社員数の中で動ける適性があるかどうか、しっかり見極めることが肝要です。

    3-4.給与は資格手当で上乗せしよう

    給与・待遇の面で、他の社員と明らかに待遇を分けるのは反感を買うおそれがあることから、企業内弁理士の取り扱いは難しいかもしれません。 そこで、資格手当を活用し、その上で働きに応じて査定を行うのが有効です。 弁理士という資格へのリスペクトを踏まえつつ、会社員として出る杭にならないよう調整が可能になるでしょう。

    4.企業内弁理士が増えている背景


    長引く日本国内の不況に加え、技術の発展・進化が進む世界情勢の中、企業内弁理士の比率は今後増加傾向が見込まれます。 以下に、その理由をご紹介します。

    4-1.安定を求める弁理士の増加

    弁理士の職業は、仮に事務所を離れ独立した場合、完全歩合制となります。 そのため、特許事務所を離れてからのキャリアパス・特許事務所内でのキャリアパスに行き詰まりを感じ、より安定して収入を増やせる会社員という生き方に魅力を感じる弁理士は少なくないようです。 後述しますが、これは企業にとっても悪い話ではなく、自社で弁理士を固定給で抱えられるのは大きなメリットになります。 利害関係の一致が続く限り、この傾向は続くでしょう。

    4-2.出願の増加

    日本弁理士会の「弁理士白書」によると、一時期に落ち込んだ出願件数が再び増加傾向にあり、中でも国際出願の件数増加が著しいという結果が出ています。 そのため、出願の専門スキルを持つ弁理士を社内に囲い入れ、効率的な特許戦略を考えたい企業も多く、縮小する国内市場から海外を視野に入れて、国際色のある弁理士を採用したいという空気感が広がっています。

    4-3.コストダウン

    弁護士などもそうですが、士業に仕事を外注すると、どうしても報酬がかさみます。 日程や難易度に応じて料金も別途かかるため、場合によっては想定以上に報酬が膨らんでしまうリスクも。 社員として弁理士を雇えば、基本的に支払う金額は固定給となり、想定外の報酬をにらむ必要がなくなります。 そこで、安定した立場を望む弁理士との利害が一致し、今後の日本の景況によっては、採用の動きがより加速することも想定されます。

    5.まとめ


    弁理士の仕事は、企業の知的財産権を守る意味で非常に重要です。 その分試験の難易度も高く、専門分野の知識も問われることから、単純に資格を取得したからといって仕事に精通するとは限りません。 事務所は実力社会であり、独立すれば完全歩合を覚悟しなければなりません。 自分で仕事を取らなければならないため、適性がない人にとっては難しい部分があります。 それを想定して、企業内弁理士を目指す弁理士は少なくないため、企業の側としても比較的受け入れやすい士業の一つと言えます。 組織にカスタマイズした知識の運用・訴訟問題への迅速な対応・外注と比較した際のコストカットなど、企業内弁理士の採用には多くのメリットが伴います。 求職者・企業それぞれの利害を一致させる採用を実現することが、人事採用担当者に求められるミッションと言えるでしょう。

    【この記事を読んだ方におすすめ】
    >企業内弁護士を採用したい!その方法や注意点とは?

    【参照】
    >日本弁理士会会員の分布状況
    >弁理士試験の実施状況(特許庁)

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