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事業規模の大きい会社では、将来の法的な問題に備え、企業内弁護士を採用したいと考えるケースが増えてきています。 その反面、企業内弁護士を採用するにあたり、求人方法や募集内容のまとめ方についてのノウハウがなく、途方に暮れる人事担当者は少なくありません。 企業内弁護士を採用したいのなら、求人から採用をどのように行うのか、一般職と異なるフロー・ツールを理解していなければなりません。 この記事では、企業内弁護士を自社で採用する場合の、具体的な方法と注意点についてご紹介します。
1.企業内弁護士を採用する企業は増加している
法科大学院制度の導入に伴う司法試験合格者の増加に伴い、弁護士のキャリアパスは変化しました。
かつて、弁護士になるなら法律事務所で経験を積み、独立することがスタンダードなキャリアパスでしたが、大手企業で経験を積むという選択肢も増えてきています。
弁護士のパイが増加したことにより、自社にとっての法的な利益を最大限に活かす・守るための社員として、企業内弁護士を採用することが注目されています。
より具体的な事情を言えば、法律事務所に都度依頼するよりも、社員として給料を支払うケースの方が、コスト削減につながるという側面があります。
法律事務所で弁護士の作業時間・拘束時間が増えると、料金はその都度発生するため費用が読みにくいですが、社員として雇うなら月に1度の固定給とボーナスで調整できます。
社内の事情にカスタマイズされた法的知識を弁護士が吸収することにより、コンプライアンスの向上やスピーディーな対応にもつながります。
また、弁護士の側にとっても、複数のクライアントを抱えて多忙な中で働くことが、ストレスになってしまうケースは珍しくありません。
特定の会社で働くなら、基本的には会社の利益を最大化し、損失を最小化する方向性で業務を進めていけば事足りますから、業種・個人・法人の別に悩まされることなく業務を遂行できます。
もちろん、ある意味では狭く深い知識を要求されるため、簡単な話ではありません。
それでも、毎月の給与・賞与が保証される中、勤務時間は減少するのであれば、弁護士にとっても悪い話ではありません。
2.企業内弁護士を採用する方法
採用担当者として、企業内弁護士を採用する方法は、大きく分けて2つあります。 求人媒体を使う方法と、人材紹介会社を使う方法です。 以下に、それぞれの方法について、具体的な例をご紹介します。
2-1.弁護士専門の求人媒体を使う
かつての求人媒体は、一つの大きな媒体の中で、職種ごとにカテゴリを分ける形で求人を掲載していました。
しかし、Web上で求人情報が載せられるようになった時、検索機能によって、ユーザーは自分の欲しい求人情報を速やかに得られるようになり、さらに職種別に求人媒体を分けることも可能になりました。
弁護士も同様で、弁護士に特化した求人情報がまとめられており、各団体等からの弁護士及び司法修習生に対する「求人情報」と、弁護士及び司法修習生の「求職情報」を掲載し、働いて欲しい側・働きたい側それぞれに求人情報を提供する仕組みとなっています。
2-2.弁護士に強い人材紹介会社を使う
より早く・より確実に、自社にとって有能な弁護士を見つけたいのであれば、弁護士に強い人材紹介会社を利用するのも一手です。 弊社MS-Japanは、管理部門と士業に特化した人材紹介企業ですので、弁護士も対象としています。毎年弁護士を含む法曹の方からのご登録者が増加しており、ご要望に合わせたご提案が可能です。 また採用ニーズに合わせて、そもそも弁護士が必要なのかや、どのような経験・スキルを有する弁護士を必要としているのかなどを本質的な課題解決にむけて提案致します。
3.企業内弁護士を採用するときによくある悩み
求人に向けた動きを行ってから求職者との面接に移った場合、一般的な職種との違いに戸惑うことがいくつか発生します。 ただ、求職者がなぜ企業内弁護士を望むのか、当人の考え・傾向を押さえておけば、それほど悩まずに対応できるはずです。 以下に、企業内弁護士を採用する際によくある悩みと、求職者の思惑とのギャップについてご紹介します。
3-1.弁護士としての専門的な仕事はないけどいいの?
企業内弁護士を雇う場合に問題となるのが、その仕事内容です。 弁護士法第72条に関連する仕事、すなわち法律事件への対応が求められる状況は、おそらく企業内弁護士であれば経験する機会は少ないものと考えられます。 その点につき、採用担当者が「当社に魅力を感じないのではないか」と不安に感じるのはもっともですが、求職者側としては、弁護士資格を活かして取り組める仕事にこだわらず、ビジネスマンとして結果を出したいという人も増えています。 専門職の採用ではあるものの、まずは法務職の延長線で考えて差し支えないでしょう。
3-2.年収が法律事務所ほど出せない…
法律事務所は、年収やキャリアパスの面では高待遇であり、独立に至るケースでは登竜門の一つです。 しかし、企業内弁護士を希望する弁護士は、安定的に給与が手に入ること・スケジュールが過密でないことをメリットとして認識していることから、あまり年収にはこだわらない傾向が見られます。 どうしても引け目を感じてしまうようなら、業務内容に応じて資格手当などで上乗せするのもよいでしょう。
3-3.弁護士の人柄ってどうなの?
面接に臨む際、弁護士の人柄を気にする採用担当者は多いようです。 普段、採用担当者が社内で弁護士と話す機会はそう多くありませんし、経営者でも毎日のように顔を合わせるようなことはないはずです。 よって、プライドの高さを感じさせる人が多いのではないかと疑りがちですが、弁護士である前に彼らも同じ人間です。 プロフェッショナルな気質の方もいれば、マネジメントなど管理職の資質を備えている人もいますから、個性は各人によって異なると考えておきましょう。
3-4.弁護士の採用面接で見るべきポイントは?
弁護士を採用する際の面接では、
- 経験分野(企業法務・一般民事など)
- 担当クライアントの属性(業種・規模など)
- 個人としての案件受任をしているかどうか
- 語学力(留学経験など)
- 組織への順応性
- 企業内弁護士を望む理由
- 希望年収(弁護士会費を含めてなのか要確認)
特に、前職での経験については、顧客が法人だったのか、それとも個人だったのかによって、担当してもらう領域が異なってきます。採用担当者として、どんな人を採用したいのか、ペルソナを具体化しておくことが大切です。
尚、現年収や希望年収を確認する際は、「弁護士会費」についても気に留める必要があります。弁護士は、弁護士として活動していくために、弁護士会の会費を支払う必要があります。これが年50万円~100万円程度と決して安くない金額であるため、年収の中から本人が会費を支払うのか、企業が全額負担するのか、別途手当を支給するのか等によって変わってきますので、その点も踏まえて面接時に確認すると良いでしょう。
4.企業内弁護士を採用するメリット
採用担当者は、企業における「企業内弁護士を採用するメリット」を自覚した上で、採用活動に着手することが大堰堤です。 初めて採用活動を行うのから、以下のメリットを享受できる環境にあるのかどうか、社内体制を確認しておきましょう。
4-1.トラブルや法律がらみの業務がスピーディーに対応できる
社内外のトラブルや、法律が関係している業務については、原則として法務部が担当することになるでしょう。 しかし、企業内弁護士がいるなら、例えば訴訟問題になった場合に即時対応を考えることができます。 法律事務所に依頼した場合、まず誰にお願いするか、というところからのスタートですから、対応にかけるスピード感がまるで違うはずです。
4-2.企業の信頼度が上がる
どの会社でもそうですが、顧問弁護士を雇うことは、自社が「法的にきちんとした対応のできる会社」であることを証明する要素の一つです。 企業内弁護士を雇うことは、顧問弁護士よりも早く不測の事態に対処できる点で、さらに一歩踏み込んだ評価を周囲に与えてくれることでしょう。 「あの会社なら、何かあってもすぐに対応できるだろう」と他社は考えるため、安心して取引を進めるための一助になってくれるはずです。
4-3.新規事業の立ち上げなどがスムーズに
新規事業を立ち上げる際に、社内に必要な契約書類・法的な注意点が分かる人がいない場合、 顧問弁護士などに相談することになります。 しかし、企業内弁護士が社内の各種業務に通じている場合、顧問弁護士に連絡・依頼する手間を省ける分、いち早く新規事業に関する情報収集や対応に進むことができるでしょう。
5.まとめ
弁護士の数が増えたことにより、企業内弁護士を雇うことを考える会社は増えてきています。 事業規模や雇う目的に応じて、各社が何とかして有能な人材を手に入れようと画策している状況です。 採用をスムーズに進めるためには、効果的な採用方法を学ぶことと、求職者側とのギャップを埋める努力が求められます。 また、企業内弁護士として働くことを望んでいる求職者は、基本的に安定志向であり、性格も千差万別であることを理解しておく必要があります。 どういう人に来てもらえば、自社のブランドイメージが向上するのか、あるいは仕事の面でメリットを享受できるのかを十分に考えてから、採用基準・ペルソナをイメージすることが、採用担当者には求められると言えるでしょう。
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