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採用担当者は応募書類を精査し、面接を通じてその人物と直に話してみることで、応募書類の内容と本人と会ってみた感覚を擦り合わせていきます。しかし、それらのプロセスで得られた情報が100%真実である保証がどこにもなければ、証拠の提示を求めるわけにもいきません。会社に貢献してくれる人材を採用したいという採用担当者としては、思わず応募者の情報の裏付けが欲しくなる場合もあります。そのために行われるのが、以下にご紹介するリファレンスチェックです。
1.リファレンスチェックとは
1-1.応募者情報の「裏付け」
リファレンスチェックとは、中途採用を行う企業が応募者より提供された情報が真実であるとの裏付けを取るために、応募書類などに記されているかつての勤務先の上司や同僚に問い合わせ、応募者が提示している経歴や人柄などを確認する手法のことです。確認する項目は、在職時の業務内容やその成果、勤務態度や離職理由の確認などが一般的です。まるでスパイ行為のように思えるかもしれませんが、雇用リスクの軽減のために行われるものであり、身元保証とは大きく意味合いが異なります。むしろ、応募者本人が以前の勤務先に推薦文(リファレンスレター)を依頼する場合もあるなど、リファレンスチェックは今日のビジネスシーンにおいて一般的なものとなりつつあります。リファレンスチェックによって得られる情報は採用を検討する企業側にとってだけでなく、応募者にとって自分の価値を確かなものとする一面も持っているためです。
1-2.リファレンスチェックを実施する日系企業も増えている
リファレンスチェックは外資系企業で実施されることが多く、人事の必須業務とされている企業も少なくありません。欧米ではリファレンスチェックはごく普通の採用活動の一環における行為として行われてきましたが、近年は日系企業でもチェックを行う会社が増えており、月額制のリファレンスチェックサービスを提供する会社もあります。チェックが行われるのは、経営陣や役員などのエグゼクティブクラスだけでなく、マネージャークラスでも経歴への裏付けとしてチェックされるようになってきています。
2.リファレンスチェックで違法になる行為とは?
リファレンスチェックを行う場合にもっとも気をつけるべきは、個人情報保護法に抵触しないかどうかです。仮に、本人の同意なしに採用担当者が応募情報をもとに以前の勤務先にチェックを行ったとしたら、同法に抵触することとなりますので注意が必要です。例えば、リファレンスチェックを内定者のみに実施する場合、秘密裏に行ったチェック内容をもとに内定を取り消さざるを得ないこととなってしまえば、かなりデリケートな問題となってしまいかねません。リファレンスチェックによって得られた情報を採否に反映させやすいよう、個人情報保護法に抵触しないようにするためにも、リファレンスチェックについて応募者本人の同意を事前に得るよう心がけましょう。
3.リファレンスチェックを行う3つのメリット
3-1.経歴詐称の防止
リファレンスチェックを行うメリットとしてまず挙げられるのは、経歴詐称の防止です。履歴書や職務経歴書は応募者本人が作成するものであり、面談時にはその応募者とのコミュニケーションを交わすだけなので、いざ捏造しようと思えば、できないこともありません。その事実確認をする手段はリファレンスチェック以外にほぼ存在していないのが実際のところである以上、確かな人材を採用したいと思う企業の採用担当者にとって、リファレンスチェックはとても大切な選考材料となってくるのは然るべきといえるでしょう。
3-2.採用ミスマッチの防止
また、かつての勤務先での実際の状況を知ることで、採用後のミスマッチの防止にもつなげることができます。応募者がどのような課題を抱えていたのか、どういった理由で退職に至ったのか把握することで、採用後、同様のトラブルが生じ得ないかどうかの判断材料となります。
3-3.応募者の客観的評価を知れる
加えて、応募者の客観的評価を知ることができるのもメリットと考えられます。応募書類、面談時の受け答えはいずれも応募者の主観によるものであり、欠けている客観性を補うためにはリファレンスチェック以外の方法を探しづらいのが実際のところでしょう。応募者の客観的評価を知ることによって、採用担当者はより精度の高い判断ができるようになります。これまでご紹介したリファレンスチェックを行うメリットは採用担当者としての視点でしたが、上でも触れているよう、事実と相違なき応募者にとってはキャリアの裏付けとなるため、応募者本人にとっても価値のある情報に他なりません。
4.リファレンスチェックを行うデメリット
4-1.応募者から嫌煙される
リファレンスチェックを行うデメリットとしてまず挙げられるのは、応募者から嫌煙される場合もあるという点です。応募書類や面接時の受け答えの内容について、いくらか脚色している場合にもその後ろめたさから反発を招くでしょうが、離職理由の如何によってリファレンス対象として欲しくないケースも考えられます。これら個々の事情を考慮することなく行ったリファレンスチェックは、その後のトラブルの種となりかねないため注意が必要です。例えば、在職したまま転職活動を行っていた場合、在職中の企業にチェックが入るわけですから、秘密裏に転職活動をしていたのであれば、その応募者との間に大きな亀裂が生じるだろうことはイメージに容易いでしょう。
4-2.時間がかかる
また、リファレンスチェックは何かと時間がかかるのも難点です。個人情報の取り扱いにデリケートとなるようコンプライアンス対応が求められる今日、リファレンスチェックを目的としていると告げたところで、問合せ先の企業がかつての従業員の個人情報についてあれこれと簡単に教えられるはずもなく、予想以上の時間をロスすることも少なくありません。加えて、応募者に有利・不利な情報が浮かび上がってきたとしても、万全を期すにはそれら情報について更なる裏付けが必要となります。求職者から同意を得たリファレンス先であっても、客観的に信用に値する情報源かどうかも逐一考慮する必要があるのもネックといえるでしょう。
5.リファレンスチェックは調査会社を使う?自社でやる?
5-1.自社で行うメリット・デメリット
リファレンスチェックを自社で行うメリットとしては、コストをかけなくて済む点がまず挙げられます。採用にかけられる予算を十分に確保しづらい中小企業であれば尚更でしょう。しかし、チェックのノウハウを持っていなければ、必要な情報をしっかりと把握するのは簡単ではありません。リファレンスチェックの際、応募者の同意を事前に得るなど個人情報の取り扱いに注意しなければなりませんが、これはチェックを行う相手先の会社も同様であり、これを理由に回答を拒むケースもあるためです。このように、自社でリファレンスチェックを行う場合にはどうしても形骸化してしまうリスクがあるため、確かな確認を希望するのであれば、調査会社に委託するほうがおススメです。
5-2.調査会社を利用するメリット・デメリット
調査会社へと委託すれば採否判断に必要な情報をしっかり抑えられるほか、個人情報を取り扱うリスクも軽減できます。コンプライアンスに敏感な社会において、適切に個人情報を取り扱うことはとても重要なポイントとなります。当然、調査会社へ支払うコストは生じてしまうものの、調査対象とする人数を絞ったり、調査する項目を減らしたりするなど、調査会社へ委託する内容を絞り込んでいくことでコストを抑えることができます。また、自社でリファレンスチェックを行う場合には時間がかかってしまいがちですが、調査会社へ委託すればよりスピーディーに必要な情報を得られますので、採否判断を行うまでに時間がない場合にも便利です。
6.まとめ
採否を決定する際、その応募者についての情報に裏付けがあれば、とても心強さを覚えますが、それらの情報を確認するには応募者本人の同意が必ず必要です。社会がコンプライアンスへの対応に厳しい視線を向ける状況下、適切な個人情報の取り扱いができていなければ、予期せぬトラブルに発展することもありますので注意しなければなりません。このようなリスクを軽減するため、確かな情報を収集するというリファレンスチェック本来の目的を達成するためにも、調査会社への委託は検討すべきといえるでしょう。どのポジションの採否判断のために、いつ調査を行うのか明確にしておくと、より調査会社を利用しやすくなるとともに委託コストを抑えることができます。
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