採用成功ガイドRECRUIT GUIDE


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    人事における重要な要素の一つに、社員のモチベーションアップがあげられます。 モチベーションの高い社員は生産性を日々高めることができる反面、低い社員は生産性に悪い影響をもたらすだけでなく、早期の離職にもつながるため、モチベーションのマネジメントは組織運営において重要です。

    職務遂行に向けた努力への推進力が、正しい動機付けによって生まれることは、ブルームの期待理論によって提唱されています。 この記事では、主にブルームの期待理論に焦点を当てつつ、ポーター・ローラーの期待理論との違いや、期待理論が注目される理由・活用のメリットについて解説します。

    ブルームの期待理論とは

    期待理論の最初の提唱者は、組織における人間行動を心理学的に分析した、経営学・心理学教授のビクター・ブルームでした。 ブルームは1964年、著書「仕事とモチベーション」の中で、期待理論をビジネスに適用します。

    期待理論とは、かんたんに言えば「動機づけの過程」を説明した理論のことで、人がどういった心理的プロセスを経て動機づけられるのか・どのようなメカニズムで行動の選択と持続がなされるのかを理論化したものです。 モチベーションが生じる過程は、理論の中では数式によって示されていますが、ブルーム氏はモチベーションという概念を著書の中でかんたんにまとめています。 具体的には、以下の要素に対する知覚・信念・態度といった心理的過程が、モチベーションを左右しているものと説明しています。

    • 期待 :がんばればどれだけのことが成し遂げられたか
    • 用具性:それが成し遂げられた場合、さらに何がもたらされるのか
    • 誘意性:もたらされたものに、どれだけの値打ちがあると予想されるか

    期待理論の中では、以下の2つの期待が連鎖することで、動機づけが実現すると説明されています。

    • 目標を実現することによって、魅力ある成果を期待する
    • 戦略によって、目標の実現を期待する

    そして、これら2つの期待連鎖を実現するためには、以下の3つの設定が必要だと説明されています。

    • 魅力ある成果の設定
    • 成果を実現するのに必要十分な目標値の設定
    • 目標値を実現するのに必要十分な戦略展開

    これをもう少しかんたんにまとめると、「やるべき限界値が明確で、戦略が必要十分であり、達成した目標の成果が魅力的なら、その目標に向かうモチベーションが生まれる」というのが、ブルームの期待理論の考え方です。

    ポーターとローラーの期待理論とは?プルームとの違い


    ブルームの期待理論が提唱されてから4年後に、その内容の中で不明瞭だった部分をさらに掘り下げた、ポーターとローラーの期待理論が提唱されました。 ベースとなっているのはブルームの期待理論ですが、その中にはない特徴的な考え方として「ループ」の発想があります。

    期待理論のモデルについて、一連の流れを順番通りに説明していくと、以下のような流れとなります。

    ①誘意性(報酬が持つ魅力)と期待(努力が報酬になる)の度合いが、努力の大きさを決める
    ※(努力に対して能力・資質・役割・方向性が加わる度合いによって、得られる業績の大きさが決まる)

    ②業績の大きさは、自己の達成感・成長感と、昇給・昇進・賞賛などの度合いに影響を与える

    ③報酬の大きさに対し、それが公正な報酬だと自己認識できているかどうかによって、満足度が影響される

    ④業績に対する報酬の度合いが期待に、満足度が誘意性に影響を与える

    流れを紐解いていくと、①で触れられている誘意性と期待は、結局のところ④で満足度に影響を受けており、業績に対する報酬に満足できたなら、次の仕事に向けてモチベーションを向上させることができると説明されています。 また、満足度は、報酬をどれだけ得られるか・報酬の魅力はどのくらいあるのかに影響を受けるため、企業の目的・従業員自身の目的を一体化させることが有効だとも説いています。 企業が社員を評価する姿勢を見せれば、それが社員自身の達成感・成長感につながり、公正な報酬と自己認識できれば、それが満足につながるというサイクルになっています。

    なぜ期待理論が注目されるのか

    期待理論は、金銭的な報酬を調整することでモチベーションアップを図るだけでなく、心理的な面で報酬を用意することが、社員に働き甲斐を与えることを理論化しています。 よって、経営者・管理職・人事職などマネジメントに携わる人材の多くは、期待理論を適切に運用すれば、社員のモチベーションアップにつながるものと考えています。 続いては、なぜ期待理論が注目されているのか、2つの視点から紐解いていきたいと思います。

    報酬以外のモチベーション

    社員が仕事に対するモチベーションを上げる要素として、期待理論では魅力ある報酬以外の要素を提唱しています。 個人の実力・潜在能力に応じた適切な目標設定や、仕事を円滑に進めるための戦略など、直接的な報酬だけでなく、仕事そのものへの取り組み方がモチベーションにつながることを理論の中でまとめているのです。

    また、高いモチベーションを保ちながら仕事を続けていれば、それが次の仕事にも良い影響をもたらし、やる気を持続できるという好循環も、ポーターとローラーの期待理論で説明されています。 金銭的な報酬以外の面で、社員の心を会社に留めるための方策として、期待理論の中身や応用方法が注目されているものと考えられます。

    もちろん、報酬を完全に無視してモチベーションアップを図るのは難しいところですが、周囲から正当に評価されていると感じる時、誰もがその仕事にやりがいを見出した経験があるはずです。 期待理論は、個人の価値観にもとづいた「賞賛」・「承認」にも言及しているため、モチベーションを説明する上での説得力が十分にある理論と考えられます。

    企業と社員との関係を強める

    期待理論は、人事面での具体的な施策を考える指針として優秀で、特に企業と社員の橋渡しをする上では重要な役割を担います。 理論のサイクルに当てはめて人事評価制度を見直すことで、よりモチベーションアップに貢献できる昇給・昇格条件を考えることにつながり、結果として社員に「この会社は努力を正しく評価してくれる」と認識させることができるからです。

    魅力的な報酬と正当な評価はワンセットであり、目の前にどんなにおいしそうなニンジンがぶら下がっていたとしても、それが永遠に届かなければ、いずれ社員たちは努力するのを止めてしまうでしょう。 また、残念ながら結果には今一歩届かなかったとしても、その努力を認めてくれる存在がいれば、もう一度チャレンジしようという気持ちが生まれるはずです。

    永続的なモチベーションのサイクルを生み出す意味で、期待理論は大きなヒントを提示してくれています。

    期待理論を活用するメリット


    期待理論をマネジメントに活用した場合、企業にはどのようなメリットがあるのでしょうか。 理論を必要としている事情によって、得られる結果・感じる効果に差異はあるものの、大きく分けて2つのメリットが期待できます。

    離職率の改善

    期待理論の実践が企業にもたらすメリットに、企業に対する社員の信頼感を上昇させる点があげられます。 適切な報酬・評価によって、この会社にいると自分は安心して働ける・成果をきちんと認めてくれると感じるようになった結果、社員のモチベーションが上がり、離職率の減少が期待できます。

    部下の目線で考えると、上司が自分の価値観を理解してくれて、魅力的な報酬を用意してくれていたら、自然と上司を信頼して仕事を進められるでしょう。 もちろん、それを実現するためにはコミュニケーションの積み重ねが必要ですから、上司・会社の側では理論をベースにした地道な信頼関係構築への努力が求められます。

    業績の向上

    自分が勤めている会社に対して好意的な感情を持つ社員が増えると、社員の会社に対する帰属意識が強まります。 すると、一人ひとりの社員が会社の問題を「自分事」としてとらえ、設定された目標に対する結果を出すため努力するようになります。

    間接的には、業務効率・生産性の向上や、クレーム減少・顧客満足度上昇など、会社にとってよい効果が期待できます。 結果が出ることにより、社員はさらにモチベーションを高め、ストレスへの耐性も高まるでしょう。

    まとめ

    ブルームの期待理論により、モチベーションの向上を実現する具体的な要素が特定された後、ポーターとローラーの期待理論によってそれをサイクル化するモデルが生まれました。 それぞれ、1964・1968年と歴史は古い理論ですが、今なお経営者・管理職・人事職のマネジメントに影響をもたらしています。

    期待理論の中では、社員それぞれに個性があるため、一律の目標を設定しても魅力に乏しい点が指摘されています。 逆に言えば、個々の社員に合わせた目標設定・正しい評価・魅力的な報酬を提供できる組織は、モチベーションアップの好循環を生み出すことができるのです。

    マネジメントに期待理論を活用する際は、どれか一つの要素に偏らず、現実的な目で見て実現可能な施策を講じることが大切です。 正しく期待理論を理解して、会社の健全な経営に役立てましょう。

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