2025年03月11日

監査法人とコンサルティングファームの違いとは?向いている人の特徴や求人例など

公認会計士のコンサルティング分野のキャリアは、「監査法人のアドバイザリー」「コンサルティングファームのコンサルタント」の2つに分けられます。
どちらも、コンサルティング業務を行う職種であるため「違いがよく分からない」などの声をよく聞くのも事実です。

この記事では、監査法人とコンサルティングファームの違いや、コンサルタントに向いている人の特徴、実際の求人例などをご紹介します。

監査法人とコンサルティングファームの違い

監査法人のアドバイザリー業務とコンサルティングファームの業務において、「クライアントに助言を行う」という点は共通していますが、コンサルティングのスタンスに違いがあります。

それぞれの業務の違いについて、詳しく説明します。

監査法人は「守り」のコンサルティング

監査法人では、会計処理や決算内容などの監査を行う監査部門と、非監査業務に該当するコンサルティングを行うアドバイザリー部門に分かれます。

監査法人のアドバイザリー部門は、「守り」のコンサルティングと言われていますが、これは業務範囲に対する制限があることが理由として挙げられます。

監査法人は、監査先のクライアントに対して独立性を保持する必要があるため、経営の意思決定に関する提案などの業務(攻めのコンサルティング)は行うことができません。
そのため、監査法人のアドバイザリー業務は、利益拡大よりも「リスクヘッジ」「ファイナンストラブルの防止」「業務プロセスの効率化」などに重きを置いた内容であることが一般的です。

コンサルティングファームは「攻め」のコンサルティング

コンサルティングファームでは、「利益拡大」「売上向上」「事業規模の拡大」などを目的としたコンサルティングを行います。
財務面よりも、経営戦略やマーケティングなどに関する助言が主な業務です。企業の拡大支援という観点から、コンサルティングファームのコンサルティングは「攻め」のコンサルティングと言えるでしょう。

またコンサルティングファームによっては、一部、守りのコンサルティングにも対応することがあります。「制限の少ない、幅広いコンサルティング」を行うことも、コンサルティングファームの特徴です。

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なぜコンサル業界に転職する会計士が多い?

公認会計士のファーストキャリアとしては、昔も今も監査法人の選択が一般的です。
監査法人で一定のキャリアを積み上げた後、コンサル業界に転職する公認会計士が増えています。
その理由について解説します。

キャリアアップの見込みがない

監査法人の組織構成はピラミッド型になっていて、就職後はジュニアスタッフ(アソシエイト)からキャリアをスタートし、3~4年程度でシニアスタッフへ昇格することが一般的です。
順調に出世を重ねると8~10年ほどでマネージャーに昇格します。その後シニアマネージャーに昇格できる人はさらに絞られ、最終的に最高職位のパートナーに就任できる人材は一握りです。

監査業務の性質上、業務において他の会計士と比較して、とびぬけて高い成果を出すことはできないため、監査法人での昇進が難しいと感じる会計士は、実力主義であるコンサル業界への転職を検討することが少なくありません。

監査業務に飽きた・やりがいを感じられない

監査は、複雑で専門性の高い業務ですが、ルーティンワークも多く、地道な確認作業も膨大です。
また、監査はクライアントの間違いを指摘する立場であるため、業務を通して感謝をされることも少ないと言えるでしょう。
そのため、仕事に対するやりがいを見失い、モチベーションが下がってしまう公認会計士も少なくありません。

「ルーティンワークから脱却したい」「もっとモチベーション高く仕事がしたい」という欲求から、コンサル業界をセカンドキャリアとして選ぶケースが多い傾向です。

新たな専門性獲得と年収アップを目指している

公認会計士は会計という強みを持っていますが、会計監査だけでなくビジネスマンとして幅広く成長していきたい人材もコンサル業界に転職する傾向があります。
会計×ITや会計×経営知識など、会計に加えて新たな専門性を獲得することで、ビジネスマンとしての市場価値が高まり、結果的には年収アップにもつながります。

コンサル業界では一定の経験を積んだ後に独立開業する、会社を興すなどの目的をもって働いている人も少なくないため、常に人材のターンオーバーが発生していることから、通年でコンサルタントを募集している場合も珍しくありません。

また、会計分野に精通した高度専門人材は常に不足しているため、問題解決能力と会計分野の専門知識を兼ね備える公認会計士のニーズは依然として高い傾向です。
こういった転職市場の状況もあり、公認会計士はコンサル業界に転職しやすいといえるでしょう。

コンサル希望の会計士を転職支援

公認会計士が転職するコンサルティング業界は

公認会計士がコンサルティング業界に転職を考えた場合、主に候補になるのが「財務・会計系」「戦略系」の2つです。
各業界のサービスラインや公認会計士が担う仕事内容について詳しく解説します。

財務・会計系

「会計士として培ってきた能力」を活かしたい場合は、財務・会計系コンサルティングファームがおすすめです。「FAS(ファイナンシャル・アドバイザリー・サービス)領域」とも呼ばれています。

FAS領域への転職を目指す場合、監査法人のアドバイザリー部門や大手系列FAS、独立系FASなど、様々な選択肢があります。
なおFASの中でもいくつかのサービスラインに分かれますが、主なサービスとしては以下の3つが挙げられます。

M&A(ディールアドバイザリー)

公認会計士がFAS領域で働く場合、M&A関連の業務に従事するケースが一般的です。
買収・売却対象の企業の財務リスクを洗い出す財務DDや、企業の価値を数値的に評価するバリュエーション、M&A後のPMIなど、M&Aのプロセスの中でも様々な業務があります。

中でも、監査法人での経験を活かしやすい業務は財務DDです。まずは財務DDからはじめ、バリュエーションやFAに挑戦していくというケースが多いでしょう。

企業・事業再生(ターンアラウンド)

企業・事業再生では、倒産の危機に瀕している企業や売り上げ・利益が悪くなってしまった事業を健全な経営状態に導くなど、クライアントに寄り添った「アドバイス」と「支援」を行います。

「クライアントへの貢献」を重要視する場合、企業・事業再生系コンサルティングファームを選ぶことで、満足度の高い転職が実現するはずです。
経営状況が悪化した企業の支援を担当するため、事業計画の立案だけでなく、資金繰り交渉や事業再編にも関わります。

経営者と対話しながら、事業戦略や人材、オペレーションなど各方面から改革を進めていくため、財務だけでなく、幅広い職域の知識が必要です。

フォレンジック

フォレンジックとは不正調査のことであり、企業内で発生した会計に関する不正行為の原因調査を行います。

昨今、企業の大規模な不正・不祥事が社会問題となり、コンプライアンス・ガバナンスの観点からフォレンジックサービスのニーズが高まっています。
不正の証拠を見つけ出し、その過程や規模、影響を明らかにすることがフォレンジックの最初のミッションです。
不正が疑われる取引の詳細分析や関連文書の精査を行い、不正の事実関係を解明します。

なお、実際に不正が発覚した場合の調査のみではなく、過年度の影響額調査や過年度遡及修正を行うこともあります。
不正調査や対応と併せて、不正行為を未然に防ぐための内部統制システムの構築支援や、リスク管理体制の評価・改善提案も行います。

戦略系

自身の「市場価値アップ」を目指す場合、戦略系コンサルティングファームへの挑戦も考えられます。
企業の経営陣が抱える問題を解決する戦略コンサルは、飛び抜けて高い論理的思考能力とビジネスセンスが必要です。

戦略コンサルでは、「売上を上げる」または「費用を減らす」を思考の柱にしているため、監査経験をベースにして仕事を組み立てる公認会計士の一般的なキャリアとは異なるスキルが求められます。
そのため、純粋な監査業務経験を有する公認会計士のキャリアからの転職の場合、キャッチアップに苦労する場合もあるでしょう。

その他、監査以外で公認会計士が貢献できる分野について知りたい方は、以下の記事もご覧ください。

会計士に特化した転職支援を受ける

コンサルタントに向いている人の特徴とは

コンサルタントに向いている人の特徴とは

コンサルタントは人を選ぶ職種であり、適性の有無で成果に大きな違いが生じるため、転職前に自分がコンサルタントに向いているかどうかを見極めることが大切です。
以下、コンサルの適性がある人材の特徴についてご紹介します。

論理的な説明能力も含めた高いコミュニケーションスキルがある

コンサルタントは、クライアントの問題解決をミッションとしていますが、クライアントに口出し(ダメ出し)をするのではなく、クライアントが納得できるように具体的な問題解決の流れ・方法を説明する能力が求められます。

枠組みだけを作るのではなく、具体的な根拠・事実・数字を用いて説明するなど、丁寧なコミュニケーションができる人が向いていると言えるでしょう。

フレキシブルに考えられる

コンサルタントには、クライアントの要望だけにとらわれず、社会情勢も踏まえた上での解決策を提案することが求められます。
状況に応じてフレキシブルに考えられるよう、意識的に思考回路を変えていかなければ、コンサル業界の変化スピードについていけなくなるでしょう。

心身のタフさを備えている

コンサルティング業界は、会計業界以上にハードワークを強いられるケースも多く、日常的に夜遅くまで働くことも珍しくありません。
また、クライアントとの衝突や意見のすり合わせも多いため、心身ともにタフな忍耐力が求められます。

コンサル希望の会計士を転職支援

監査法人のアドバイザリー求人例

ここでは、弊社MS-Japanが運営する士業・管理部門特化型転職エージェント「MS Agent」で取り扱っている監査法人のアドバイザリー部門求人の一部をご紹介します。

大手監査法人の財務会計アドバイザリー

仕事内容
・IFRS・新会計基準への対応コンサルティング
・M&Aに係る会計処理対応、M&A後の財務会計統合(PMI)コンサルティング
・国内外でのIPO、米国ファイリング(F-4等)の財務会計コンサルティング
・決算早期化、管理会計の高度化などのプロセス改善コンサルティング
・RPAやその他の会計ツール導入サポートなど
必要な経験・能力
<必須>
以下のいずれかに当てはまる方
・国内外の公認会計士資格保有者もしくは科目合格者
・会計監査業務もしくはアドバイザリー業務経験
・経理実務経験(資格不問)

・英語力:TOEIC600点以上
・MS Office(Word、Excel、PowerPoint)の実務操作スキル
想定年収
450万円 ~ 1,500万円

大手四大監査法人による資産・投資運用向けアドバイザリー

仕事内容
・証券投資信託および不動産ファンドに対する監査およびアドバイザリー業務
・証券投資信託および不動産ファンドの運用会社に対する監査およびアドバイザリー業務
・運用会社および信託銀行に対する内部統制検証業務およびアドバイザリー業務
必要な経験・能力
日本公認会計士資格保持者
想定年収
400万円 ~ 1,200万円

コンサルティングファームの会計士求人例

ここでは、「MS Agent」で取り扱っているコンサルティングファームの公認会計士対象求人をご紹介します。

準大手コンサルティング会社

仕事内容
<経営コンサルタント>
・成長戦略
・事業再生
・業務改善
・上場支援
・経営に関わるコンサル業務全般
<組織再編コンサルタント>
・組織再編のプロジェクトマネジメント業務
・財務DD
・valuation
・IPO支援
・内部統制構築支援
・M&A業務など
必要な経験・能力
<必須>
・公認会計士/実務経験3年以上
・公認会計士短答式試験合格者/実務経験3年以上(一般事業会社経験尚可)
・基本的なPCスキル(Excel/Word/PowerPoint)
想定年収
600万円 ~ 1,000万円

会計・税務コンサルティング会社

仕事内容
・企業再生
・M&A
・事業承継
・成長支援
・ベンチャー支援
・財務経営コンサルティングと税務サービス全般
必要な経験・能力
・公認会計士(シニア以上)
・監査法人等での実務経験
・中小企業の支援にやりがいを感じる人
・中小企業経営者のビジネスパートナーとして真摯に対話を行える方
想定年収
700万円 ~ 900万円

まとめ

監査法人の会計士からコンサルタントへの転職を目指す場合、「監査法人でアドバイザリーになるか」「コンサルティングファームでコンサルタントになるか」のどちらかを選ぶケースが多いです。

監査法人のアドバイザリー業務は「守りのコンサルティング」、コンサルティングファームの業務は「攻めのコンサルティング」と、助言の方向性に違いがあります。
コンサルティング分野への転職を検討している方は、「なぜ転職したいのか」を意識しながら応募先を探すことが重要です。

会計士の経験や知識を活かすのであれば「財務・会計系」や「再生系」、「戦略系」のコンサルティング業界がおすすめです。M&Aやフォレンジックなどの業務に携わりながら、コンサルタントとしてキャリアアップが目指せるでしょう。
ただし、「戦略系」では、思考力やビジネスセンス、語学力など多くの能力が高水準で要求されるため、監査法人の経験だけではアピールが不十分な可能性もあります。

「自分にはどのようなコンサルタントが向いているかわからない」「挑戦したいコンサルティング業界はあるが、自分の経験やスキルに不安がある」という方は、コンサルタント転職に強い転職エージェントを活用するとよいでしょう。
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この記事を監修したキャリアアドバイザー

河本 俊範

大学卒業後、食品メーカー営業を経て2005年MS-Japan入社。企業側営業担当を1年半経験し、以降はカウンセラー業務を担当。若手中堅スタッフの方から、40~50代のマネージャー・シニア層の方まで、年齢層問わず年間500名以上をカウンセリングさせていただいています。
企業管理部門全般~会計事務所など士業界、会計士・税理士・弁護士資格者まで弊社の特化領域全般を担当しています。

経理・財務 ・ 人事・総務 ・ 法務 ・ 経営企画・内部監査 ・ 会計事務所・監査法人 ・ 役員・その他 ・ 公認会計士 ・ 税理士 ・ 弁護士 を専門領域として、これまで数多くのご支援実績がございます。管理部門・士業に特化したMS-Japanだから分かる業界・転職情報を日々更新中です!本記事を通して転職をお考えの方は是非一度ご相談下さい!

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公認会計士が外資系企業に転職するメリットは何ですか?

公認会計士が外資系企業に転職するメリットは、「自分のペースで仕事ができる」「日系企業に比べて年収が高い」の2つです。 外資系企業は良くも悪くも実力主義のため、成果を出すことができていればプライベートの時間も確保しながら仕事をすることができます。 また、日系企業に比べて年収が高い傾向がありますが、福利厚生は日系企業の方が充実しているため、年収と福利厚生のどちらを重視するかを検討する必要があります。

公認会計士は外資系企業でワークライフバランスを重視した働き方が出来ますか?

外資系企業は日系企業に比べて実力主義な傾向が強いため、自分で労働時間を管理することができます。 また、今では日系企業でもリモートワークを採用している企業が多いですが、外資系企業は日系企業よりもリモートワークが普及しているため、働き方という意味でも外資系企業ではワークライフバランスよく働くことが可能です。

公認会計士は外資系企業でどのような部門に配属されることが多いですか?

公認会計士が外資系企業に転職する場合、「アカウンティング部門」もしくは「ファイナンス部門」のいずれかが有力な選択肢となります。 アカウンティング部門は、日系企業でいう経理部に当たり、ファイナンス部門は日系企業でいうと予算管理部門と経営企画部門のちょうど間ぐらいの立ち位置になります。

公認会計士が外資系企業で働くにはどのようなスキルが求められますか?

公認会計士が外資系企業で働くには、本国の経営陣や従業員とビジネス的な会話ができるレベルの語学力が必要です。 また、本国の所在地にもよりますが、US-GAAP、IFRS/IASといった海外の会計基準と日本の会計基準の違いをしっかりと理解しておく必要があります。 日本の公認会計士だけでなく、USCPAなどを取得しておくと外資系企業への転職には有利になります。

公認会計士が外資系企業に就職・転職するハードルは高いですか?

公認会計士が外資系企業に就職・転職するハードルは決して低くはありませんが、IFRS(国際財務報告基準)に関する知識と経験がある方には転職のチャンスがあります。 また、一定の英語スキルも必要にはなりますが、入社時に極端に高い語学力が求められるわけではありません。 尚、管理職を目指す場合は本国や他国の拠点とやり取りをするためにも、英語力は必須となります。

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