監査法人卒業組の転職。専門性を取り戻せ!

公認会計士試験の制度改定、大量合格世代の誕生、そしてリーマンショック後のリストラ、今思えば、監査法人と公認会計士を取り巻く環境は景気の影響を大きく受けてきました。
そして現在、監査法人を辞めたOBの状況にも変化が起き始めています。
今回は監査法人卒業組の転職と題し、彼らの転職後の軌跡や直近の状況、そして彼らを待ち受ける転職市場からの評価などを現実的な観点でまとめてみました。
監査法人を辞めて一般企業に移ったが…
リーマンショック後、監査法人も深刻な経営状況の悪化に陥り、2010~2012年頃にかけて人員削減を行っています。特に大手監査法人に至っては希望退職制度を設け、その時期に監査法人を退社すれば割増退職金を支払うなど、人件費削減に向けて奔走していたように見受けられます。
その時に監査法人を辞めた方の新たな行先は、一般事業会社だったことも記憶に新しいのではないでしょうか。では、当時監査法人を辞めた公認会計士は一般企業でどのようなキャリアを築いてきたのでしょうか。
監査法人退社後、最も多かったのが上場企業の経理部門です。当時は景況感も優れず企業も保守的な経営スタンスだったことから、現在のようにM&Aや海外事業の強化などは少なく、決算の効率化やきたるIFRS基準の導入に向けた準備などが多かったようです。
因みに、当時は企業内会計士という言葉も浸透しておらず、企業に転職すること自体が珍しかったため、雇用側も公認会計士の扱いに慣れておらず、基本的には採用ポジション、年収提示などはその企業の規定に基づいて行われていたようです。
従って、今の市場では考えられないかもしれませんが、公認会計士であっても上場企業転職時に年収500万円前後というケースも珍しくなかったのです。
その後、経理職として専門性の高い業務を行うようになった方もいれば、何となく決算や開示資料作成をルーティンで行っている会計士も少なくありません。
また当然のことですが、一般企業は決して会計士の集団ではありませんので、「会計制度の変更や会計処理上の重要な論点などが出てきた際に、以前のように専門的な知識を活かしながら判断をすることも減ってしまった」という方も一定数存在するようです。
まさに“企業内会計士のキャリアが二極化している”と言えるのではないでしょうか。
公認会計士としての専門性を取り戻したい
監査法人を辞めて外部に転職したものの、公認会計士として専門性の高い業務に就けていないという方も少なくはないようです。
例えば、大手企業の経理部門に転職したまでは良いのですが、最初の配属はIFRSや連結会計などとは程遠い固定資産管理に配置されてしまった方、経営コンサルティング会社に会計コンサルタントとして転職したものの、実際にアサインされた案件はITメインの案件だった方、会計事務所に転職したものの記帳代行や税務申告が中心でありM&AやIPOなどのコンサルティング業務に関与することが出来なかった方、その他にも多数の類似ケースが存在します。
また、「一般事業会社では監査法人のように出張や外出も少なく、決まった時間に出社し、固定の席・同じメンバーでルーティン業務をこなす日々だった」「決まった作業が多い職場環境に飽きてしまった」といった理由で、残念ながら企業を後にする方も少なくはないようです。
いずれにしても、「自分の専門性が劣化してきている」「公認会計士としてのアイデンティティが失われそう」と感じている公認会計士の中に、沸々と疑問や不安が募ってきている状況があると言えるでしょう。
監査法人卒業組の転職、気になる市場からの評価は?
では、上記のように一度監査法人を辞めた人材は、転職市場からどのように見られるのでしょうか。実は、監査法人卒業組に対する市場からの評価が近年上がってきているようなのです。
その一例として、監査法人業界では出戻り組を歓迎する傾向が高まりつつあります。数年前であれば、「リストラ対象だった方」「割増退職金をもらって辞めてしまった方」という不本意なレッテルを貼られてしまった方も、現在はそのような見られ方をされなくなってきています。
事実、監査法人としては会計監査の実務経験者を最優先で採用したいという思惑がある一方、なかなか監査法人出身者を採用出来ないというジレンマがあります。
その結果、この数年間で会計監査の実務経験を持っていない企業内会計士を採用し、今までは積極的には採用してこなかったUSCPAにも意欲的にオファーを出すようになってきています。
また、上記状況に加え、結婚や出産を機に監査法人を退職した方にも、時短や業務委託など社員の家庭環境に配慮しながら、働き手重視の雇用にシフトをし始めています。
上記のように業界でも風向きが変わり始めていますので、既に会計監査の経験をしていた方は、監査法人からすれば羨望の眼差し、まずは面接をしたいターゲットとなっているのです。
ただ、「一旦は辞めた監査業界に戻るなんて考えられない」という方もいらっしゃることでしょう。そういった方にも市場からの引きは十分あるようです。
例えば、一般事業会社で経理、財務、内部監査などの経験があれば、更にハイクラスな企業に転職することも可能になりつつあります。
一般事業会社で働く=専門性が低いという訳ではなく、専門性の高いメンバーで遣り甲斐のある仕事を行える環境を探せば、公認会計士としてのアイデンティティを取り戻すことも難しいことではありません。
監査法人卒業組の未来は明るくなりつつありますので、このトレンドを利用しながらご自身のネクストキャリアを模索して見てはいかがでしょうか。


この記事を監修したキャリアアドバイザー

大学卒業後、新卒でMS-Japanに入社。
法律事務所・会計事務所・監査法人・FAS系コンサルティングファーム等の士業領域において事務所側担当として採用支援に従事。その後、事務所側担当兼キャリアアドバイザーとして一気通貫で担当。
会計事務所・監査法人 ・ 法律・特許事務所 ・ コンサルティング ・ 金融 ・ 公認会計士 ・ 税理士 ・ 税理士科目合格 ・ 弁護士 を専門領域として、これまで数多くのご支援実績がございます。管理部門・士業に特化したMS-Japanだから分かる業界・転職情報を日々更新中です!本記事を通して転職をお考えの方は是非一度ご相談下さい!
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公認会計士が外資系企業に転職するメリットは何ですか?
公認会計士が外資系企業に転職するメリットは、「自分のペースで仕事ができる」「日系企業に比べて年収が高い」の2つです。 外資系企業は良くも悪くも実力主義のため、成果を出すことができていればプライベートの時間も確保しながら仕事をすることができます。 また、日系企業に比べて年収が高い傾向がありますが、福利厚生は日系企業の方が充実しているため、年収と福利厚生のどちらを重視するかを検討する必要があります。
公認会計士は外資系企業でワークライフバランスを重視した働き方が出来ますか?
外資系企業は日系企業に比べて実力主義な傾向が強いため、自分で労働時間を管理することができます。 また、今では日系企業でもリモートワークを採用している企業が多いですが、外資系企業は日系企業よりもリモートワークが普及しているため、働き方という意味でも外資系企業ではワークライフバランスよく働くことが可能です。
公認会計士は外資系企業でどのような部門に配属されることが多いですか?
公認会計士が外資系企業に転職する場合、「アカウンティング部門」もしくは「ファイナンス部門」のいずれかが有力な選択肢となります。 アカウンティング部門は、日系企業でいう経理部に当たり、ファイナンス部門は日系企業でいうと予算管理部門と経営企画部門のちょうど間ぐらいの立ち位置になります。
公認会計士が外資系企業で働くにはどのようなスキルが求められますか?
公認会計士が外資系企業で働くには、本国の経営陣や従業員とビジネス的な会話ができるレベルの語学力が必要です。 また、本国の所在地にもよりますが、US-GAAP、IFRS/IASといった海外の会計基準と日本の会計基準の違いをしっかりと理解しておく必要があります。 日本の公認会計士だけでなく、USCPAなどを取得しておくと外資系企業への転職には有利になります。
公認会計士が外資系企業に就職・転職するハードルは高いですか?
公認会計士が外資系企業に就職・転職するハードルは決して低くはありませんが、IFRS(国際財務報告基準)に関する知識と経験がある方には転職のチャンスがあります。 また、一定の英語スキルも必要にはなりますが、入社時に極端に高い語学力が求められるわけではありません。 尚、管理職を目指す場合は本国や他国の拠点とやり取りをするためにも、英語力は必須となります。
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