監査法人を辞めたいと思ったら必読!退職リスク、転職のタイミングと選択肢をまるっと解説!
監査法人は、企業の健全性を評価し、経済のしくみを安定に保つ上で欠かせない存在です。
しかし、入社して間もない新人や、早期で退職・転職を考えている人は意外に少なくありません。
「監査」という社会的にも重要な役割を担う立場にもかかわらず、「辞めたい」と思うのはどうしてでしょうか。
本記事では、思い描いていた会計士像と現実のギャップを解消する手助けとなるよう、監査法人を辞める理由や辞めるタイミング、辞めたあとの転職先などに焦点を当てていきます。
監査法人を辞める人によくある理由
監査法人を辞める理由は人それぞれですが、以下に、よくある3つの理由を取り上げてみます。
監査業務がつまらない
「監査業務は思いのほか単調で、魅力を感じることができなくなった」という理由は、監査法人を辞めた多くの人たちから聞こえてくる声です。
この理由にはいくつかの背景が絡んでいます。
まず、監査法人での業務は帳簿の入力や文書作成などのルーチンワークが中心で、これが単調でつまらないと感じる要因になります。
監査業務は、定められた方針やパートナーの指示に従って行われることが多く、個人の裁量を発揮する余地が限られていることも一因です。
また、形式的な手続きやマニュアルに基づいた作業が多く、クリエイティブな要素が不足していると感じる人も少なくありません。
監査は例年同じようなことを繰り返し行うため、長期的な展望が見通せないという不安が募ることがあります。
このように、思い描いていた世界観と異なる現実が、仕事に対するモチベーションを低下させてしまうのでしょう。
激務に耐えられない
監査法人での仕事はハードワークになりがちです。
というのも、本決算時の繁忙期は当然忙しくなりますが、四半期レビューもそれなりのボリュームがあるので、数か月に一回繁忙期があると考えていただければ分かり易いかと思います。
特に繁忙期は、深夜残業や週末勤務が一般的であり、仕事に対するストレスから体調不良につながることも珍しくありません。
この過度な労働負担が続くと、心身の健康に悪影響を及ぼすだけでなく、ワークライフバランスを崩す要因になり得ます。
働き方改革という救いの手も、なかなか繁忙期にまで行き届かないことが実状です。
結果的に激務に耐えられなくなり、監査法人を辞めるという選択肢に結びついてしまうのです。
人間関係に疲弊
人間関係や特定の対人関係が原因で仕事を辞めるというケースは、一般的にどこの職場で見られることです。
しかし、この「人間関係の疲弊」が辞職理由として多いことが、実は監査法人の特性でもあります。
その背景の一つは、クライアントとの関係性です。
監査法人の役割は企業を対象に監査することであり、クライアントにとっては自社の問題を指摘される立場となります。
このため、クライアントとの関係には緊張や対立が生まれやすく、それがストレス=疲弊の源となります。
さらに、監査法人内部での人間関係がうまくいかないことも少なくありません。
チーム内の協力や厳格なスケジュール管理が求められる監査業務では、上司・同僚との関係性も非常に重要です。
相性の良し悪しだけでなく、コミュニケーション能力に自信がなければ、人との接点や距離感に疲れを感じてしまうかもしれません。
内部で円滑な関係を築けない場合、職場にいること自体がストレスとなり、「辞めたい」という心境に行き着くようです。
監査法人を早期で辞めるリスク
一方、監査法人を早期で辞めることには、いくつかのリスクを伴います。
想定される主なリスクは以下のとおりです。
転職希望先から「またすぐに辞めるのでは」と警戒される
監査法人を早期で辞めた場合、転職希望先の書類選考において、働く意欲の信頼性に疑念を抱かれるリスクがあります。
採用担当者が短期離職の経歴を見て、自社が採用しても「またすぐに辞めるのでは」と警戒し、書類選考で落とされる可能性が高まるかもしれません。
監査法人を辞めた理由がネガティブなものであったとしても、将来のキャリア形成を目指すポジティブ志向をしっかりアピールすることが重要です。
修了考査の学習時間を確保することが難しくなる
公認会計士として正式に登録承認を得るためには、3年間の実務補習と修了考査に合格しなければなりません。
監査法人では、公認会計士を目指して働きながら学習時間を確保することに理解があります。
しかし、早期退職後の転職希望先において、公認会計士に対する理解がなければ、実務補習に通うための休暇が取りづらく、修了考査に必要な学習時間の確保が難しくなります。
修了考査は再受験が可能で、合格期限もありませんが、転職を検討する際には学習計画を立て、仕事との両立を考慮することが賢明です。
実務経験が積みづらくなる
監査法人での経験は、会計や財務分析などの専門知識を積むための貴重な機会です。
将来的に会計・財務の分野を目指したいのであれば、少なくとも4~5年程度は監査法人での実務を経験しておくべきでしょう。
早期に辞めると、実務を通じた経験が積みづらくなり、今後のキャリアに影響を及ぼす可能性があります。
どうしても1~2年で辞めなければならない理由があるなら、目指す分野に関連した実務経験が積める転職先を選ぶことが望ましいでしょう。
給与・待遇が下がる可能性がある
監査法人での給与や待遇は、業界標準として比較的恵まれているほうです。
しかし、他の業界・職種へ転職する際には、給与や待遇が現状より下向きになる可能性を考慮すべきです。
特に一般の事業会社では、賃金テーブルに従って給与が決められるため、公認会計士(試験合格者)であっても優遇対象となる保証はありません。
事業所の規模によっては大幅な年収ダウンもあり得ることから、転職前に労働条件を確認し、経済的なリスクに注意を払うことが必要です。
監査法人からの転職を考えている場合、監査法人を早期に退職することのリスクもしっかりと把握しておきましょう。
監査法人を辞めるタイミングは?
上記のようなリスクを踏まえた上で、どうしても監査法人から離れたい場合は、タイミングを考慮して転職活動をしましょう。
但し、また、肉体的・精神的に監査法人の仕事がつらい場合は、短期離職リスクはありますが、心身に不調をきたす前に転職することも視野に入れるべきでしょう。
ここでは監査法人から転職するタイミングについて着目してみます。
何年目に転職を考えるか
1~3年目
この年次で退職する人は、主に現状への不満が理由として多く見られます。
単調で繰り返しの多い監査業務をつまらないと感じたり、職場の人間関係にストレスを抱えたり、どちらかと言うとネガティブな動機がほとんどです。
辞める時期が早すぎるという見方もあるかもしれませんが、心身の健康に悪影響を及ぼすような状況下では、「辞めて転職する」ことが原因を解消するために有用な選択肢となります。
修了考査合格後
監査業務の経験を積み、修了考査に合格して公認会計士登録を果たした時は、新たなキャリアを模索するタイミングでもあります。
この時点で、一通りの経験と一定の目的を達成したと見なされるので、履歴書上の評価も悪くないでしょう。
シニア昇格後
監査法人からの転職時期としては最適なタイミングと言えます。
現場スタッフの経験だけでなく、インチャージとしての経験が積み重なっていれば、少なからずマネジメントの素養があると評価され、転職活動で有利です。
年齢的にも30歳前後の転職適齢期に当たる人が多いのではないでしょうか。
マネージャー昇格後
マネージャー昇格後であれば、待遇面での多少のダウン、もしくは現状維持を受け入れつつ、監査法人以外での転職が可能です。
ただし、マネージャー職を長く続けると、転職先での待遇にと現状の年収で開きが生じることがあります。
そのため、マネージャー昇格前後のタイミングで自身の市場価値や転職の可能性について情報を収集し、今後のキャリアに向き合うことをおすすめします。
何月に転職活動をすべき?
転職しやすい時期:6~9月
一年の内、監査法人を辞めて転職しやすい月は、3月決算の期末監査業務が終了した後の6月から9月にかけてです。
年度明けはチーム再編による人の入れ替わりがあるため、この時期に辞職することでチームのメンバーに迷惑がかかりにくくなります。
また、監査業界は「世界が狭い」ことで知られており、転職後も元上司や同僚と接点を持つことも考えられるので、円満に退職することが肝要です。
転職しづらい時期:1~3月
逆に、1月から3月の期末監査前は、監査法人を辞めにくい、転職しづらい時期と言えます。
この期間は監査業務がピークに達し、チームにかかわるメンバーが辞職するとプロジェクトの混乱が避けられません。
特に、インチャージなどの役職にある場合は影響力が大きく、離職がチームに大きな負担をかける可能性があります。
業界内での評判も損なわないよう、タイミング良く円滑な退職を心がけるようにしましょう。
監査法人からの転職先は?
思い描いていた会計士像と現実とのギャップを解消するには、異なる環境に身を置き換えることが有効な手立てです。
以下に、監査法人での経験が活かせる転職先をピックアップしました。
事業会社(経理)
一般事業会社の経理はワークライフバランスが取りやすく、公認会計士向けのアンケート調査でも満足度が高い職種とされています。
監査の経験が活かせる経理職に転職することで、激務や長時間残業から解放され、仕事と私生活を両立させやすくなるでしょう。
自社の監査や株主総会に対応できる組織内会計士として活躍が期待されるだけに、求人も増加傾向です。
ベンチャー企業(CFO候補)
ベンチャー企業では、監査法人で経験のある公認会計士をCFO(最高財務責任者)候補として迎え入れるケースが少なくありません。
スタートアップのプロセスや経営全般にかかわる機会など、多様な経験も積めるため、監査業務だけに携わってきた会計士にとっては魅力的なポジションです。
高水準の年収とストックオプションの報酬にも期待でき、正当な評価を受けながら存分に働けるでしょう。
FAS
FASは財務アドバイザリーを提供する専門分野として、近年めざましい成長が見られます。
M&Aや財務デューデリジェンス、PMIなど、クライアントのニーズに応えるサービスを通じてやりがいを感じることができます。
FASに転職するには専門知識が必要ですが、併せて英語スキルやIPO経験などがあれば、採用選考時に評価されやすいでしょう。
コンサルティングファーム
コンサルティングファームでは、企業のさまざまな課題を総合的に解決するために公認会計士のスキルが求められます。
会計・財務系、税務系、戦略系、事業再生系など、コンサルサービスの選択肢は多様で、自身の希望に合ったサービスラインを探すことがポイントです。
特定の専門分野でスキルを磨けば、コンサルタントとしてのキャリア形成につながっていくでしょう。
会計事務所・税理士法人
監査法人を辞めた後も、同業種の会計事務所や税理士法人で働くことができます。
ここでは、会計や税務の専門知識が求められ、監査法人で培ったスキルは非常に有用です。
公認会計士資格の取得者であれば無試験で税理士登録ができるため、業務の移行もスムーズでしょう。
中小監査法人
監査法人から中小監査法人への転職も見逃せない選択肢です。
大手監査法人とは異なる企業文化やクライアントを抱え、より幅広い業務に携わることができます。
短期間で転職する理由に理解がある上、ワークライフバランスも保ちやすく、現状を変えたい公認会計士におすすめです。
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まとめ
監査法人で働くことは重要な社会的役割を果たす機会であり、特に大手監査法人での経験は非常に価値のあるものです。
しかし、激務や人間関係による健康上の問題が、早期でも辞めたい気持ちを引き起こすこともあるでしょう。
理想と現実とのギャップが生じた場合、「転職」は検討すべき選択肢の一つかもしれません。
退職後も、公認会計士の知識とスキルを活かせるキャリアは多彩です。
初めての転職が不安という方は、公認会計士の転職サポートが豊富な「転職エージェント」に相談してみることをおすすめします。
この記事を監修したキャリアアドバイザー
大学卒業後、カーディーラ・小売業を経験し、2008年からMS-Japanでリクルーティングアドバイザーとキャリアアドバイザーを兼務しております。
会計事務所・監査法人 ・ コンサルティング ・ 公認会計士 ・ 税理士 ・ USCPA ・ 弁護士 を専門領域として、これまで数多くのご支援実績がございます。管理部門・士業に特化したMS-Japanだから分かる業界・転職情報を日々更新中です!本記事を通して転職をお考えの方は是非一度ご相談下さい!
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