監査法人を継続?転職?マネージャー昇格を機に考える公認会計士のキャリアプラン
監査法人で公認会計士としてキャリアを重ねていくと、転職を大きく意識するタイミングが訪れます。
その1つが監査法人の中間管理職であるマネージャーへ昇格するタイミングです。
マネージャーになれば、環境や役割が大きく変化するため、今後のキャリアを考え始める方が急増します。
この記事では、監査法人でマネージャー候補、または現在マネージャーで転職を考えている会計士の方のために、おすすめのキャリアプランを紹介します。
なぜ公認会計士はマネージャー昇格を機に転職を考えるのか?
監査法人のマネージャーは、一般企業の中間管理職に相当します。
このポジションはいわゆるプレイングマネージャーで、部下の指導・管理をしつつ、スタッフと変わらず監査業務にも従事するため、仕事量は増えて責任が重くなります。上層部と部下との間で板挟みになり、ストレスも増加するでしょう。
そのため、マネージャー昇格のタイミングで、思い切って転職を考えるか、それともさらにキャリアを積んで上のポストを目指すのか、という人生の岐路に立たされることが多いのです。
転職するにためには、マネジメント経験があると有利に働きますが、マネージャーとして経験を積むと、今度は年齢的に転職が難しくなることも考えられます。
これらの点を考慮すると、マネージャー昇格のタイミングは、転職でキャリアアップするチャンスであるともいえるでしょう。
マネージャー昇格のタイミングで転職を考える理由とは
ここでは、公認会計士がマネージャー昇格時に転職を考える理由を詳しく解説します。具体的には、主に以下の4点です。
•ワークライフバランスに不安がある
•家庭環境が変化した
•監査以外の仕事がしたい
•パートナーになれるか不安を抱えている
それぞれの理由を詳しく解説します。
ワークライフバランスに不安がある
前述した通り、マネージャーへ昇格すると、職責の増加とともに、より多くの時間とエネルギーを要求されることになります。
監査法人では、とくに繁忙期には長時間労働が常態化しており、マネージャーはチームの管理やクライアントとの関係構築、業務の品質管理など、より複雑で責任の重い業務を担うため、労働時間がさらに長くなる可能性もあるでしょう。
上記のような状態では、マネージャー昇格後のワークライフバランスを不安に思うのも当然です。そのため、より柔軟な勤務条件やワークライフバランスが整っている職場への転職を考えるケースも多く見受けられます。
昨今は公認会計士のキャリアが多様化し、インハウス志向が強まっている背景も、転職を後押ししているでしょう。
家庭環境が変化した
結婚や出産、親の介護などのライフステージの変化は、仕事に対する優先順位を見直す要因となります。
マネージャー昇格は、キャリアアップのチャンスである一方で、家族と過ごす時間が減少してしまうきっかけにもなるでしょう。例えば、子どもが生まれたばかりでマネージャーへ昇格し、激務をこなしていくとなると、子どもとの関係にも影響を及ぼすかもしれません。
監査以外の仕事がしたい
監査業務は、公認会計士としての基礎を築くのに重要です。監査法人は「監査のエキスパート」としての経験は積めますが、それ以外の知識や経験があまり身につかない傾向があります。会計監査以外のスキルが身につかず、「本当にこのままでいいのか」と自問自答をした末、転職を決意する会計士も多いようです。
一通りの監査経験を積んだ後、財務アドバイザリーや税務、内部監査、コンサルティングなどに関心をもち、「キャリアの幅を広げたい」と考える方も少なくありません。
パートナーになれるか不安を抱えている
そもそもマネージャー自体、大変狭き門ですがシニアマネージャーやパートナーとなれば、さらに激しい競争となります。
マネージャーに昇格した時点で、自分が将来的にパートナーになる可能性を真剣に考え、「自分がその競争を勝ち抜けるかどうか」「現実的かどうか」を鑑みて、転職を決める人もいます。
パートナーは、単に専門知識や技能が優れているだけでは不十分で、ビジネス開発能力やクライアントとの関係構築、リーダーシップ、組織内での影響力など多くの要素が求められます。条件をすべてクリアするのに自信がない、または自分の強みが別の領域にあると感じる会計士は、パートナー昇進の可能性に不安を感じるでしょう。
監査法人のマネージャーの年収
監査法人のマネージャーの年収は900万円前後~1200万円前後が目安と言われています。スタッフは600万円前後、シニアスタッフは800万円前後、マネージャーの上位であるパートナーであれば1,500万円以上となるのが相場です。
一般的な水準としては、マネージャーはスタッフやシニアスタッフよりも年収は高めではありますが、管理職であるため残業代は支給されません。
シニアスタッフ時代に長時間労働を日常的に行っていた場合、マネージャー昇格後に年収が下がる可能性もあるでしょう。
監査法人のマネージャーの仕事内容
続いて、監査法人のマネージャーが担う業務について掘り下げて解説しましょう。 以下で取り上げるのは、「監査計画の立案」と「業務の進捗管理・戦略の提示」の2点です。
監査計画の立案
監査計画とは、監査を効果的かつ効率的に行うために立案する計画のことです。
監査計画を立てる際は、企業の規模と事業内容の複雑性を考慮し、管理組織の水準や内部統制の状況、取引の実態などを分析して、監査対象範囲を設定します。
その上で、適性に監査チームのメンバーを選定し、具体的な監査のスケジュールを決めていきます。
監査計画を立てる上で最も重要なポイントは、粉飾やミスを見逃してしまう「監査リスク」を減らすことです。そのため、豊富な監査経験が必要であり、実績のあるマネージャーがその役割を担います。
業務の進捗管理・戦略の提示
監査法人の監査は、マネージャーが立案した監査計画のスケジュールに則り、チーム単位で実施されるのが一般的です。
マネージャーは現場の管理者および責任者として、業務の進捗管理やチームに対する戦略の提示などの役割を担います。
監査法人を続け、パートナーを目指すキャリアパス
監査法人のパートナーは、法人の規模によって人数や職務が異なります。
小規模な監査法人におけるパートナーは、経営者もしくは役員に限定されるケースが一般的です。一方で大手監査法人は、所属する公認会計士の約10%がパートナーといわれていますが、その全員が経営に携わるわけではありません。役員クラス以外は各部門のトップとして業務の統括にあたります。
国内の大手監査法人は、海外に比べてパートナーのポジションが多く、昇進のチャンスが大きいと言われています。
いずれにせよパートナーは、クライアントの監査報告書に責任をもつという、非常に重要な職責を担っていると言えるでしょう
また、前述した通りマネージャー昇格のタイミングでの転職者が多いため、転職せずにそのまま職務を継続することで、パートナー昇格のチャンスがさらに大きくなる可能性もあります。
その場合、入社から約15~18年でパートナーになることも不可能ではありません。条件によっては、30代後半でパートナーにまで昇りつめるチャンスがあると言えるでしょう。
監査法人を離れる公認会計士におすすめの転職先
マネージャー昇格を機に監査法人を離れ、転職を目指す公認会計士におすすめの4業種をご紹介します。
•事業会社(インハウス会計士)
•コンサルティング業界
•会計事務所・税理士法人
•金融機関
上記の4業種では、会計士の専門知識とスキルを活かしつつ、新たなキャリアの道を開くきっかけを得られるでしょう。それぞれの特徴を詳しく解説します。
事業会社(インハウス会計士)
公認会計士のキャリアが多様化している近年は、事業会社に転職する会計士が増えています。事業会社でのインハウス会計士は監査法人とは異なり、企業内部での財務・会計業務に集中するのが主な役割です。
連結決算、管理会計、国際財務報告基準(IFRS)にもとづく決算書作成などの業務に従事します。
給与水準は監査法人に比べて低い場合もありますが、ワークライフバランスや福利厚生が充実していることが多く、ワークライフバランスを改善できるでしょう。また、企業内において専門家としての地位も確立しやすいとされています。
コンサルティング業界
コンサルティング業界も、会計士の転職先としておすすめです。具体的には、財務会計に特化したFAS(Financial Advisory Service)や、監査法人のアドバイザリー部門、戦略系コンサルティングファームなどが含まれます。
監査業務にやりがいを見失ってしまった会計士におすすめの転職先で、クライアントに対してアドバイスを行い、直接的な好影響を与えるコンサルティング業務に挑戦できます。
激務になる可能性もありますが、給与水準は高く、実力主義の業界のためキャリアアップの機会も豊富です。
会計事務所・税理士法人
公認会計士は、試験を受けずに税理士として登録することができます。そのため、会計事務所・税理士法人も人気の高い転職先です。
会計事務所や税理士法人では、日常的な経理業務、確定申告書の作成、税務相談などの業務を行います。クライアントとの密接な関係を築きながら、専門知識を活かして直接的に貢献できるのが醍醐味です。会計事務所・税理士法人でのキャリアには、独立開業の道もあります。
金融機関
珍しいケースではありますが、監査法人から金融機関に転職する選択肢もあります。金融機関では、公認会計士の財務諸表やバリュエーションに関する知識が高く評価される傾向です。フロントオフィスとして株式債権や為替の取引を行ったり、ミドルオフィスとしてリスク管理や内部統制を担ったりなど、多岐にわたる職務に従事できます。
ワークライフバランスは、事業会社よりも偏りが発生する可能性がありますが、年収アップが見込めるでしょう。
公認会計士の転職成功例
弊社MS-Japanが提供する士業・管理部門特化型転職エージェント「MS Agent」を利用して、監査法人から別業種へ転職した公認会計士の事例をご紹介します。
コンサルティングファーム
Hさんは大手監査法人にて会計監査業務に従事し、シニアスタッフまで昇格しましたが、中小企業の経営幹部になる夢をもっていたため、20代のうちに転職活動を開始しました。
転職活動では会計の専門能力だけでなく、若さや意欲が高く評価され、最終的に事業再生コンサルティング会社の内定を勝ち取ります。
Hさんが転職に成功した理由は、中小企業の経営に携わり、事業再生を通して地元の地域経済に貢献したいという強い思いをもっていた点です。
年齢も若く、監査法人での実務経験だけでは、他の転職希望者との差別化は図りにくい状況でしたが、興味関心や熱意の面が認められ、希望通りの内定を得ることができました。
東証プライム上場企業
Dさんは監査法人にて上場企業やIPO準備企業の監査業務に取り組んでいました。しかし、長時間就業が当たり前という状況に疑問を抱き、ワークライフバランスの整った事業会社への転職を決意します。
転職活動の結果、希望に合った職場環境である大手上場企業への転職に成功しました。
Dさんは、応募した複数社から内定に向けた手ごたえを得ていましたが、「家庭との時間を大切にする」という転職の動機を重要視して転職先を決定しました。
転職先として複数の選択肢が目の前にある場合、自分のもともとの転職動機は何かに立ち返ることが、後悔のない転職につながります。
税理士法人
Yさんは監査法人で働いていましたが、独立を見据えた転職を決意します。
ただし、独立後は中小企業向けの税務やコンサルティングを行うことになるため、大手の税理士法人ではなく独立系の税理士法人への転職を目指しました。
しかし、Yさんは現年収1,000万円の維持を希望したため、単価の低い税務案件を中心とする税理士法人を避けて転職活動を行いました。
そのため、転職先を探すのにやや苦労したようですが、最終的には「固定給+インセンティブ」という形で、転職前の年収を維持できる余地を残すことに成功しました。
マネージャーになった後も転職できる?
ここまでお伝えしてきた通り、マネージャー昇格前の転職は一定数いると言えますが、マネージャーになった後も転職は可能です。むしろ、マネージャーを経験していることによって、転職時に評価されやすくなります。
ここでは、転職市場でマネージャーが評価される理由と、転職する際の注意点を解説します。
マネージャーが評価される理由
マネージャーが高く評価される主な理由は、特定の業界に関する深い専門知識をもっていることです。公認会計士として様々な企業の監査経験を積むことで、業界特有の横断的な知識が身に付きます。事業会社にインハウス会計士として転職する場合、こうした知識が高く評価されるでしょう。
また、監査だけでなく管理職としてマネジメント経験があることで、コミュニケーションスキルや組織全体を見るスキルもアピールできます。
さらに、セミナー・研修の講師や面接官などマネージャーとして従事した間接業務への関与経験も高く評価されるでしょう。
マネージャーが転職する際の注意点
マネージャーが転職する際の注意点は、過度に期待される可能性があることです。
マネージャーレベルでの転職では、新しい職場で高い期待が寄せられるでしょう。入社後すぐに結果を出すことを期待されるため、プレッシャーに感じるかもしれません。
また、管理職ポジションで入社した場合、新しい環境でのチームマネジメントが難しい可能性もあるでしょう。監査法人と異なる企業文化やチームのやり方に適応する必要があるため、既存のチームメンバーとの関係構築や信頼獲得が鍵となります。新しいチームの強みと弱みを理解し、効果的なリーダーシップを発揮することも、マネージャークラスの人材に求められます。
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まとめ
監査法人でシニアスタッフなどある程度の職位で活躍しており、「マネージャーになってまで監査法人を続けるべきか」と悩む人は多いでしょう。とくにワークライフバランスや家庭環境の変化、パートナーポジションの争奪戦など、マネージャーを取り巻く状況は複雑です。
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また、転職をしようか迷っている段階でもお気軽にお問い合わせください。公認会計士業界に詳しいキャリアアドバイザーとのカウンセリングで、今までの経歴や目指すキャリアプランを鑑みて、そのまま監査法人で経験を積むべきか、転職活動を進めるべきか、ご相談いただくことも可能です。
この記事を監修したキャリアアドバイザー
カナダ州立大学卒業後、新卒でMS-Japanへ入社。求人企業側の営業職を経験した後、2014年にキャリアアドバイザーへ異動。
2016年からは横浜支社にて神奈川県内の士業、管理部門全職種を担当し、現在は関東全域の士業、管理部門全職種を担当。
経理・財務 ・ 人事・総務 ・ 法務 ・ 経営企画・内部監査 ・ 外資・グローバル企業 ・ 会計事務所・監査法人 ・ 役員・その他 ・ IPO ・ 公認会計士 ・ 税理士 ・ USCPA ・ 弁護士 を専門領域として、これまで数多くのご支援実績がございます。管理部門・士業に特化したMS-Japanだから分かる業界・転職情報を日々更新中です!本記事を通して転職をお考えの方は是非一度ご相談下さい!
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