アドバイザリーとは?会計士がなるメリットや主な業務内容について解説!

アドバイザリーは企業の戦略立案や業務改善、リスク管理など、幅広い分野におけるサポート役を担うため、自身の専門知識をより幅広く、もっと深めることができるほか、多岐にわたる業界や業務への洞察を得ることができます。
この記事では、会計士がアドバイザリーへ転職することでどのようなメリットを期待できるのか、具体的にどのような業務に従事していくのか、などを取り上げていきます。
アドバイザリーへの転職をお考えの会計士の皆さまは是非、参考にされてみてください。
アドバイザリーとは?
監査法人の業務は大きく分けて、監査業務と非監査業務の2つに分類されます。
監査業務は監査法人の主要な業務であり、クライアント企業の財務諸表が企業会計の基準に従って正確に作成されているかどうかをチェックし、その結果を監査報告書として提出するものです。
一方、非監査業務は、監査以外の業務のことであり、多くの監査法人で「アドバイザリー業務」と呼ばれています。
アドバイザリー業務には、経営戦略の支援やコーポレートガバナンスの強化など、公認会計士の知識と経験を活用した多岐にわたる業務が含まれます。
具体的な例として、長期経営計画の策定支援や財務面からの経営課題分析などが挙げられますが、いずれも数字を分析した結果をレポートするだけでなく、その結果をもとに企業成長を実現させるためのアドバイスを行います。
アドバイザリー業務は、クライアントの経営課題解決を支援するための業務なので、公認会計士の独占業務である監査業務とは相反する性質を持っていることから、監査の独立性を保つ観点より、監査業務を行うクライアントに対して同時に非監査業務を提供することは制限されています。
コンサルとアドバイザリーの違いは?
アドバイザリーはコンサルと混同されがちですが、以下の3つの点において大きく違いがあります。
期間(プロジェクトの長さと密さ)
コンサルは特定の課題解決に専念するため、プロジェクト期間は比較的短めです。
プロジェクトの期間中は企業の内部で一緒に行動することも多いため、従業員との関係性は密となりがちです。
一方、アドバイザリーは会社全体へのアドバイスが中心となるため、期間は長く、社員との関係は薄めとなります。
コンサルが狭く深く対応するのに対し、アドバイザリーは広く浅く対応するという違いがあります。
軸となる考え方(ノウハウを売るか、知識を売るか)
コンサルの場合、自社の特定のソリューションを売り出すことが目的であり、特化したノウハウを販売します。
一方、アドバイザリーは専門知識や経験をもとにした戦略的なアドバイスの提供がメインであり、クライアント企業の抱えている経営課題に合わせた知識を売ります。
これらのように、コンサルとアドバイザリーではサービスとして提供するもの自体が異なっています。
期間で見る効果の大きさ
コンサルは特定の課題解決に専念するため、その課題に対してはダイレクトかつ短期的な効果を期待できる一方、その課題以外への干渉は少ないことから、全体的に見れば効果は限定的といえます。
アドバイザリーは会社全体を見ながら経営改善に向けたアプローチを行うため、人材育成や技術の向上なども含めた幅広い効果を長期的に得られると期待できます。
アドバイザリーの主な業務内容
アドバイザリーの主な業務内容として、以下の6つが挙げられます。
財務DD
財務DDは、M&Aの前に買収先企業の財務調査を行うプロセスのことをいいます。
貸借対照表・損益計算書・キャッシュフロー計算書を正確に作成し、対象企業のリスクを特定します。
監査と似ている業務にも見えますが、修正要求などは行わないため、クライアントとの関係が比較的スムーズです。
バリュエーション
バリュエーションは財務DDから得た情報をもとに、企業価値を算定する作業です。
公認会計士試験(経営学)で学んだ企業価値の算定手法をもとに、財務の知識を活かしながら、金融の知識も習得できるため、公認会計士にとって人気のある業務です。
PMI
PMI(ポスト・マージャー・インテグレーション)はM&A後の統合プロセスであり、それまでは異なる組織であったシステム・人事・業務プロセスなどを一体化します。
PMIはM&Aを成功させるための鍵となるプロセスであり、その業界や企業に関する高い専門性も求められるため、転職難易度が高いとされています。
その他FA(PPAや減損テストなど)
Big4が提供するその他サービスとして、PPAや減損テストなどが挙げられます。
PPAはM&A後の「のれん」の取得原価の配分を行います。
減損テストは「のれんの減損テスト」を指します。
企業再生・事業再生
企業再生・事業再生は、赤字企業の事業再構築・再生支援を行う業務であり、大きなやりがいを得られると人気です。
基本的には金融機関等からクライアントの紹介を受け、財務DD・事業DD、改善計画の策定へと進んでいきます。
フォレンジック(不正調査)
フォレンジックは、不正行為の捜査を行う業務です。
基本的にプロジェクトは不正発覚後に始まるため、予防措置を講じるための依頼は多くありません。
アドバイザリーに転職するメリット・デメリット
アドバイザリーへの転職は、多くのメリットがあります。
特に魅力的なのが、序盤から大きく成長できる点です。
監査法人のアドバイザリー部門では多岐にわたるプロジェクトに参加できるため、短期間でのスキルアップを実現しやすくなります。
この結果、人材価値も高まっていくため、年収アップにも直結し、監査部門に比べても高い報酬が得られることが一般的です。
さらに、大規模なプロジェクトに参画できるチャンスも増えるため、大企業の仕組みを学ぶことができるほか、社会的に評価されるキャリアを形成しやすくなります。
アドバイザリーに転職する際のデメリットは、基本的に多忙である点が挙げられます。
特にBig4系のアドバイザリーは競合が少なく、自ずと担当するクライアントが増えるため、長時間労働が常態化しがちです。
また、上が詰まっているので昇格が難しいトップヘビーな企業体質もデメリットといえるでしょう。
このため、監査法人のアドバイザリーは「キャリアアップのための踏み台」として考えている人が多く、2~3年ほどで辞めていくケースが少なくありません。
その他、知識の習熟が早すぎることも問題となり得ます。
序盤から大きく成長できるのはメリットですが、この裏には、早々に成長が止まってしまうというデメリットが存在しています。
アドバイザリーを経験した後の転職先は?
監査経験とアドバイザリー経験を持つ公認会計士は、多岐に渡るキャリアパスを選ぶことが可能です。
具体的な転職先の例として以下のようなものがあります。
事業会社
国際会計基準の導入や直接金融の増加などに伴い、事業会社での公認会計士のアドバイザリーが不可欠になっています。
企業内での経理業務、財務業務、IR業務、経営企画業務など、多岐にわたる業務が期待されます。
事業会社で働く公認会計士を指す“組織内会計士”という言葉も浸透しており、事業会社への転職は代表的なキャリアパスのひとつとなっています。
会計事務所
公認会計士は税理士業務も行えるため、会計事務所での採用も増えています。
主な業務としては、税務代理、税務書類の作成代行、税務相談、経理業務指導などが挙げられます。
中小企業や個人事業主向けのサービスが中心となります。
その他
高度な専門性を活かせることから、コンサルティングファームでのM&A、事業再生、経営戦略策定などのアドバイザリー業務の人気が高まっています。
また、ベンチャー企業のCFOとして、経営管理部門の強化に貢献するポジションも注目されています。
ベンチャー企業の場合には経営管理部門が脆弱なことが少なくないので、それらを構築・整備する業務はとても大きなやりがいも得られます。
まとめ
公認会計士が持っている高い専門性を活かし、クライアントの経営課題解決を支援するためのアドバイザリー業務は大きなやりがいを感じながら、もっと幅広い知見を得られるのが魅力です。
アドバイザリー業務に従事することで人材価値も高まり、年収アップへとつながっていくほか、その後のキャリアの選択肢も豊富になっていくなどのメリットも期待できます。
基本的に忙しく、トップヘビーな体質であるなどのデメリットがあっても、これらを十分に上回るだけのメリットを期待できるのがアドバイザリーとしてのキャリアです。
今後のキャリアを考える上で、アドバイザリーへの転職を選択肢のひとつとしているなら、この機会に本格的にご検討されてみてはいかがでしょうか。


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公認会計士は外資系企業でワークライフバランスを重視した働き方が出来ますか?
外資系企業は日系企業に比べて実力主義な傾向が強いため、自分で労働時間を管理することができます。 また、今では日系企業でもリモートワークを採用している企業が多いですが、外資系企業は日系企業よりもリモートワークが普及しているため、働き方という意味でも外資系企業ではワークライフバランスよく働くことが可能です。
公認会計士は外資系企業でどのような部門に配属されることが多いですか?
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公認会計士が外資系企業で働くにはどのようなスキルが求められますか?
公認会計士が外資系企業で働くには、本国の経営陣や従業員とビジネス的な会話ができるレベルの語学力が必要です。 また、本国の所在地にもよりますが、US-GAAP、IFRS/IASといった海外の会計基準と日本の会計基準の違いをしっかりと理解しておく必要があります。 日本の公認会計士だけでなく、USCPAなどを取得しておくと外資系企業への転職には有利になります。
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