弁護士は副業ができない? どのような副業なら認められるのか
弁護士の年収が軒並み下がっているとの報道を、再三にわたって様々なメディアで見聞きするようになりました。では、本業の収入を補うために、副業をすることはできないのでしょうか。
弁護士が副業をするための条件
依頼する側としては、いざというときに法律的に助けてくれる弁護士は、本業に集中していてほしいと思うところです。しかし、弁護士の人口が増えて競争も激しくなったので、なかなか依頼人を確保できないにもかかわらず、弁護士業務一本に賭けるのは、リスクが高いといえます。
結論から申し上げますと、弁護士が副業をすることは認められます。ただし、所属する弁護士会に届出をすることが条件です。弁護士法30条1項に定められています。
○弁護士法 第30条(営利業務の届出等)
1 弁護士は、次の各号に掲げる場合には、あらかじめ、当該各号に定める事項を所属弁護士会に届け出なければならない。
一 自ら営利を目的とする業務を営もうとするとき 商号及び当該業務の内容
二 営利を目的とする業務を営む者の取締役、執行役その他業務を執行する役員(以下この条において「取締役等」という。)又は使用人になろうとするとき その業務を営む者の商号若しくは名称又は氏名、本店若しくは主たる事務所の所在地又は住所及び業務の内容並びに取締役等になろうとするときはその役職名
以前は、弁護士が副業を行うにあたっては、弁護士会の「許可」が必要でした。許可が必要ということは、弁護士会の判断で副業が不許可になるかもしれない、ということなのです。しかし、2003年以降は「届出」があれば問題ないことになっています。
届出であれば、弁護士会による審査などがなく、出せば受理されることが前提です。
弁護士資格を活かした司法試験の予備校講師から、ほとんど関係ないカフェの経営まで、副業は基本的に自由です。ただし、弁護士法1条1項「弁護士は、基本的人権を擁護し、社会正義を実現することを使命とする」の定めから懸け離れすぎないイメージの副業にチャレンジするようにしたいものです。
法に触れるギリギリの業務であるなど、弁護士が行うにはふさわしくないと感じさせる副業なのであれば、弁護士会から厳しい注意を受ける危険性があります。
なお、弁護士法3条3項は「弁護士は、当然、弁理士及び税理士の事務を行うことができる」と定めていますので、弁護士をしながら弁理士としての知的財産関連業務や、税理士としての税務相談や確定申告書作成代行などの業務を請け負うことは可能です。ただ、これは副業というより「兼業」と呼ぶべきかもしれません。
副業をやっている弁護士は公表される?
弁護士法30条2項には、「弁護士会は、前項の規定による届出をした者について、同項各号に定める事項を記載した営利業務従事弁護士名簿を作成し、弁護士会の事務所に備え置き、公衆の縦覧に供しなければならない」と定められています。つまり、副業を届け出ている弁護士は、弁護士会が保管している名簿に掲載され、だれでも内容を見られるようになっているのです。
副業の内容が変更になったり、廃業したり、他の営利事業に役員や従業員として関わっていたのを辞任・退職したりすれば、それも弁護士会に届けなければなりません。
ただ、実際に弁護士会まで足を運んで、「営利業務従事弁護士名簿」をチェックしようとする人は、めったにいないでしょう。ただ、弁護士の働きぶりが思わしくなく、いつも疲れていて集中できないような印象を依頼人が受けていたら、「ひょっとして副業をしているせいかも?」と思われて、名簿を閲覧しにやってくるかもしれません。
副業での疲れや精神状態などが、本分である弁護士業務にまで影響が出ないようにくれぐれも気をつけましょう。
「営利を目的とする業務」とは?
「営利を目的とする業務」ということですから、NPO法人など非営利の活動を立ち上げたり、監事などとして関わったりするのであれば、少なくとも論理的には届出が不要といえます。
また、株式投資や不動産投資、FXなども、あからさまに投資家としての事業所得として積極的に稼ぐのでなく、資産運用の範囲内であれば、「営利を目的とする業務」には該当せず、届出までは必要ないでしょう。
資産運用の範囲内での投資であれば、副業が原則として禁止の公務員であっても、プライベートの場で行うことが認められています。ただ、どこまでが資産運用で、どこからが営利目的の投資なのか、線引きが曖昧なのは確かです。
本業の収益を上回り、営利目的の投資が疑われるほどの儲けが出てしまったならば、念のために投資を副業として届け出たほうがいいかもしれません。
本業だけで精一杯なほど依頼が殺到する弁護士なら、副業は必要ないはずです。必ずしもそうでない弁護士こそ、副業で収入を安定させ、足場を固めてから、本業で取り組みたいテーマに安心して邁進できれば、業界全体にもいい効果が生まれます。
また、副業での経験が弁護士業に活かせる場面もあるでしょう。
<参考>
・Themis-弁護士の副業
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