2023年04月04日

会計士が投資銀行に転職できるか?

管理部門・士業の転職

会計士がキャリアアップのために転職を考える場合、スキル・専門知識・経験を活かせる選択肢は多数ありますが、その候補の1つとなり得るのが投資銀行です。
リーマンショック後に注目度が下がった時期もありましたが、会計・ファイナンスの専門家が能力を発揮して高い報酬を得る場として、投資銀行は魅力ある転職先といえます。

今回は、投資銀行における仕事内容や望ましい転職の年齢、活かせる会計士のスキル、転職後の年収などについて詳しく解説しましょう。

投資銀行とは

投資銀行は名称と異なり、一般的な金融機関である銀行とは違う業務を行います。会計士で転職先に金融機関を考える場合、一般の銀行と投資銀行とは分けて考える必要があります。最初に投資銀行の定義を確認しておきましょう。

一般の銀行と投資銀行との違い

一般の銀行は、企業や個人に貸し付けたお金の利息を利益に経営しています。しかし投資銀行が扱うものは有価証券です。その点では、証券会社に近いかもしれません。

証券業に属する投資銀行

たしかに投資銀行は証券業の一種に分類されます。ところが、同じように有価証券に関わっていても、証券会社が取引の手数料を利益にしているのに対して、投資銀行は有価証券そのものを扱うことで利益を上げます。業務内容はまったく別と言ってよいでしょう。

投資銀行の役割

実際に投資銀行は有価証券を扱いますが、その業務は企業が有価証券を発行するサポートにあたります。たとえば、ある企業が株式を発行する場合、規模が大きくなるとさまざまな手続きが必要になり、株式を購入する投資家も募集しなければなりません。

こうした業務を専門的に扱うのが投資銀行です。一般企業の財務部門が扱うには、あまりにも専門的な業務であり、企業の資金調達やM&Aなどが多様化するにつれ、現在投資銀行の役割は一段と拡大しています。そのため会計士からの転職機会も増えていますが、金融・投資・証券などに関わる専門的な知識とスキルが必要になることは言うまでもないでしょう。

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投資銀行の種類

投資銀行の業務は、ひと言で表すと証券を介した資金調達です。ただし、実務的にはさらに細分化されるため、投資銀行の業務は以下の4種類に分類できます。

M&Aアドバイザリー(M&A Advisory)部門

企業のM&Aに関する総合的な顧問業務であり、買収先企業の査定から買収交渉も含め、M&Aが完了するまでをサポートします。特に有価証券の売買、TOB(公開買付)などは、投資銀行または証券会社でしか扱えません。

デット・キャピタル・マーケット(DCM:Debt Capital Markets)部門

債権(社債)による資金調達をサポートする部門です。国内もしくは外資系の投資銀行では、収益のかなりの部分をDCMが占めています。企業が社債を発行する機会は非常に多く、発行提案から条件決定まで、一連の流れを担当するのがDCMの役割です。また、金融機関とのつながりが強いという特徴もあります。

エクイティ・キャピタル・マーケット(ECM:Equity Capital Markets)部門

企業の最も一般的な資金調達方法である、株式の発行をサポートする部門で、主に株式の増資や分割などを請け負います。具体的には、株式市場調査、投資家の募集、株式の配分などもECMが扱います。

新規株式公開(IPO:Initial Public Offering)引受部門

IPOでは未公開の株式を証券取引所に上場し、株式市場での売買を可能にすることで、さらに多くの株主から資金を調達します。投資銀行は、このIPOに関わる準備からフォローまで、クライアントにアドバイスやサポートを行います。

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投資銀行のポジションの種類

監査法人の役職が、スタッフ、マネージャー、パートナーへとステップアップするように、投資銀行にも独自のポジションがあります。転職を目指す会計士にとっては、どのポジションを狙うべきか、最も重要なポイントかもしれません。ここでは投資銀行の代表的な五つのポジションを紹介します。

①アナリスト

投資銀行でのキャリアをスタートさせるポジションです。上司にあたるアソシエイトなどの指示に従い、データ収集や分析、資料の作成などを担当します。会計士からの転職では、若手の場合アナリストに配属される可能性が大きいでしょう。労働時間はかなり長めです。

②アソシエイト

アナリストを3年ほど経験すると、次のステップのアソシエイトが見えてきます。業務内容はアナリストの延長線上にありますが、部下を使って仕事を進める点が異なります。やはり労働時間は長めです。

③ヴァイスプレジデント

日本の企業では中間管理職にあたります。アソシエイト以下をチームとしてまとめ、一つのディール(業務プロジェクト)の完了まで責任をもって進めるポジションです。マネジメントなどの専門的なスキルが求められますが、長時間労働からは解放されます。

④ディレクター

ディレクターになると複数のチームを管理し、直接クライアントとコミュニケーションをとるようになります。業務関連の責任者と言ってもよいでしょう。勤務年数よりも能力が重視され、誰もが到達できるポジションではありません。

⑤マネージングディレクター

一般企業では役員クラスにあたり、業務に関わるよりも経営に参画するポジションです。投資銀行経営の方向性を決めると同時に、具体的な業務はディレクターに指示を出して全体を統括します。

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公認会計士が投資銀行に転職したい理由とは

公認会計士の働き方の一つに、企業の財務に関するアドバイスを行う「FAS(フィナンシャル・アドバイザリー・サービス)」があります。FASと投資銀行の業務には共通性があるため、財務に関わった経験のある会計士であれば、転職先に投資銀行を選ぶことが、キャリアアップにつながる可能性があります。

しかも投資銀行が扱うような資金調達に関わるディールは、規模が大きく高い専門性が求められます。監査法人などで経験できるFASに比べると、はるかに高度な業務を体験することが可能です。しかもその経験は、次の転職ステップでも大きな武器になります。

このように、同じ会計という領域の中で企業経営に直結する事業の最前線に立ち、会計の専門家としての実力を発揮できることが、会計士が金融関係の中でも投資銀行を目指す理由の一つだと考えられます。

活動の場を広げるという目的以外に、もう一つ会計士が投資銀行に転職する動機としては、収入面でのステップアップも挙げられるでしょう。監査法人や会計事務所では、年収1,000万円以上を目指すには少なくとも10年以上は必要です。しかも会計だけの経験では、転職でキャリアアップしても年収の上限はある程度見えてしまいます。

ところが、投資銀行では実力主義ということもあり、中堅のヴァイスプレジデントでも年収は1,500万円から3,000万円まで狙えるといわれています。これまでの経験を活かして活躍の場を広げ、年収の大幅アップを目指すなら、投資銀行は最高のターゲットになるでしょう。

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投資銀行の仕事内容

投資銀行の主な業務内容は、法人を対象とした証券業務やM&Aの仲介などです。
銀行とは、個人や法人から資金を預かり、借入を望む企業への融資を行うことで利益を得る商用銀行をイメージする方が多いでしょう。
しかし、そもそも投資銀行には預金機能自体がなく、アドバイザー業務に基づく手数料が利益の源泉です。そのため、企業などに融資は行いません。

欧米では古くから投資銀行は一つの法人として独立して存在しています。
一方、日本の場合、以前は商用銀行内に投資銀行部門が設置されるケースが一般的でした。ところが近年では、海外資本に対抗すべく、投資銀行であることを宣言する法人も登場しています。

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投資銀行への転職は若いうちが有利

キャリア形成の観点からも、投資銀行への転職は若い方のほうが採用されやすいようです。
30代、40代で投資銀行への転職を志す場合、即戦力であることを証明する実績・語学力・MBA資格などが求められます。

例えば、外資系の投資銀行では就職後、アナリスト、アソシエイト、バイスプレジデント、マネージングディレクターという順で階級が上がっていきます。
投資銀行での勤務未経験者が転職する場合はアナリストでの採用ですが、多くの場合、採用対象となるのは新卒または第二新卒がメインです。
そのため、30代を迎えてから、投資銀行業務の経験がゼロで転職を成功させるのは難しくなってきます。

なお、投資銀行への転職は、大きく分けて外資系、証券系、銀行系、独立系などの様々選択肢があります。

・外資系・・・モルガン・スタンレー、ゴールドマンサックスなど
・証券系・・・野村証券、大和証券、みずほ証券、SMBC日興証券、三菱UFJモルガン・スタンレー証券など
・銀行系・・・みずほ銀行、三菱東京UFJ銀行、三井住友銀行など
・独立系・・・日本M&Aセンター、マーバルパートナーズなど

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投資銀行の年収

投資銀行における年収は全般的に高く、外資系のアナリスト1年目であっても、700万円程度の年収を得ることができます。
以下に、各ポジションにおける一般的な年収の目安をまとめてみます。

・アナリスト(1~3年目):約700万円~
・アソシエイト(4~6年目):約1,000万円~
・ヴァイスプレジデント(7年目~):約1,300~1,500万円
・ディレクター:約1,800~2,000万円
・マネージングディレクター:約2,500万円~

若いうちに転職すれば、20代で年収1,000万円以上を得ることも十分に可能です。ただし実力主義の職場であるため、一般企業と比べると能力と実績により年収に個人差が生じやすくなります。ディレクター以上になると、大幅な年収アップも夢ではありません。

同じ投資銀行でも、日系の場合は外資系よりもやや年収は低めといわれていますが、それでも監査法人や会計事務所に比べればかなり高めです。勤務年数を重ねるとベース給は増えますが、成果給のアップなどは実力でつかみとらなければなりません。

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投資銀行での働き方

監査法人や会計事務所で働いていた公認会計士にとって、転職先に投資銀行を選ぶと働き方が大きく変わります。投資銀行では業務の規模と動かす資金が大きくなることと、いわゆる激務の業種というイメージがあるため、転職に不安を感じる皆さんがいるかもしれません。

投資銀行は階層構造でディールをさばくため、アソシエイトやアナリストのポジションでは、さまざまな雑務に追われて激務に感じることもあるでしょう。クライアントに具体的な資料を提示して、資金調達の戦略を練るという性格から、資料の作成に多くの時間を割く必要があるからです。

ただし「投資銀行の種類」で解説したように、4種類の部門ごとに役割は異なります。当然仕事の内容によって働き方も変わるでしょう。大きなチームで、規模の大きな資金調達を行うような投資会社、もしくは会社内の部署に入れば、比較的効率よく働ける可能性があります。

一方で、ヴァイスプレジデントとディレクターのように、チームや部下の管理とマネジメントが主な業務になると、今度は高度な知識やスキルを求められる働き方に変わります。資料の作成などの業務は減り、代わって営業やクライアントとの交渉など、プロジェクトを推進するための能力が必要になります。

しかし、どのポジションでも共通することは、単に正確な資料作成や業務管理に長じているよりも、業務全般を効率的に、しかもセンスよく進められる能力があるほうが、投資銀行では重要な人材と見なされるという点です。会計士の能力にプラスして、さらに幅広い能力が求められるわけです。

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会計士が投資銀行で活かせるスキル

投資銀行では業務を行う上では、財務諸表を読み解く力が欠かせません。また、ファイナンスに関する高度な知識も要求されます。
公認会計士の有資格者であれば、投資銀行で求められる能力の水準は十分クリアできるでしょう。

投資銀行では財務関連のスキルに加えて、論理的思考力やコミュニケーション能力、PCスキル、語学力など、ビジネスシーンで必要となるあらゆるスキルが求められます。
ただ、それまで公認会計士として会計事務所や企業の財務部門で活躍してきた人であれば、これらのスキルを伸ばす機会も多いでしょう。
そこで得た経験は投資銀行に転職後も活用できます。

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投資銀行を経た後のキャリア

公認会計士として投資銀行で実務経験を積めば、スキル・知識面で大きな武器を持つことになり、その後の転職活動も有利に進められます。投資銀行を経た後のキャリアとしては、金融業界でキャリアアップを図る、というのが1つの方法です。
また、プライベートエクイティファンド(PE)に転職する、コンサルティングファームもしくは事業会社の財務・経営企画部門に転職する、という道もあります。

さらに投資銀行時代の実績次第では、ベンチャー企業の最高財務責任者(CFO)に迎えられることも珍しくありません。
給料のみならずストックオプション付きで採用されるケースもあります。

もし自身の能力・実績・人脈に自信があるなら、自ら起業するという選択肢もあるでしょう。
実際、各種市場で成長中のベンチャー企業の創業者が、投資銀行出身という例はよく見受けられます。

会計士から投資銀行に転職する際、求められる能力水準が高く、そのハードルは決して低くはありません。
しかし転職に成功すれば、投資銀行で得られる知識・スキル・経験は、ビジネスマンとしての能力・実績を確実に成長させてくれるでしょう。

まとめ

まとめ

会計士にとって、投資銀行は魅力ある転職先です。
ただし、転職の際は若い方が有利であること、さらに財務会計能力に加えてビジネスマンとしての総合的な能力が求められることを十分理解しておきましょう。

投資銀行で働いた後のキャリアとしては、金融業界でのキャリアアップやPE、コンサルティングファーム、事業会社などへの転職、起業など多様な選択肢があります。
会計士として投資銀行への転職を考える場合は、将来的な人生設計をしっかりと考えた上で決断しましょう。

<参考>
日系金融から投資銀行(IBD)への転職。転職のポイントや年収

この記事を監修したキャリアアドバイザー

佐藤 颯馬

大学卒業後、新卒でMS-Japanに入社。
法律事務所・会計事務所・監査法人・FAS系コンサルティングファーム等の士業領域において事務所側担当として採用支援に従事。その後、事務所側担当兼キャリアアドバイザーとして一気通貫で担当。

会計事務所・監査法人 ・ 法律・特許事務所 ・ コンサルティング ・ 金融 ・ 公認会計士 ・ 税理士 ・ 税理士科目合格 ・ 弁護士 を専門領域として、これまで数多くのご支援実績がございます。管理部門・士業に特化したMS-Japanだから分かる業界・転職情報を日々更新中です!本記事を通して転職をお考えの方は是非一度ご相談下さい!

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