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第12回2005/09/14
今年2月、地球温暖化防止などを明記した「京都議定書」が発行され、「環境」はいっそう世界の注目問題として認識されはじめた。このほど、英国で開催された主要国首脳会議(G8サミット)でも地球温暖化について討議され、日本においても京都議定書に掲げられたCO2削減目標を達成するため今後、企業を含めた環境対策(環境マネジメント)が本格化すると思われる。もちろん、日本経済を支える中堅・中小・ベンチャーにおいても将来的に避けて通れない問題である。そこで今回は企業のイメージ向上及び社員のモチベーションや採用上プラスに働く「環境マネジメント」とは何か、それによって企業にはどういったメリットや収益がもたらされるのかといった点についてフォーカスしてみたい。
1.環境マネジメントとは 環境マネジメント(Environmental Management)とは、経営方針の中に環境方針を取り入れ、その環境方針に基づいて計画を立て、実施するという企業活動の展開のことをいう。その目的は、企業の活動、製品またはサービスによる環境負荷(著しい環境影響)や環境リスクを低減しつつ、発生を予防するためのマネジメントシステムを構築し、そのシステムを継続的に改善していくことである。環境影響とは、環境に対して組織体の活動、製品またはサービスから生ずる影響の事である。環境マネジメントシステム(EMS)では、環境影響のうちで著しいものを抽出して、その影響を減らす、または発生を予防するといった行動につなげていく必要がある。
環境マネジメントシステム(EMS)は環境マネジメントを実施するための組織、責任、実務、手順、プロセスおよび経営資源の事であり、組織体が自主的に作成し、実施する。その基準となる規格がISO14001である。目的に対して計画を立て、実施することから始めて、Plan、Do、Check、 Actionの管理サイクルをシステム全体で継続的に改善していくように組織活動を展開することになる。ISO14001は、組織が規格に適合した環境マネジメントシステムを構築していることを自己適合宣言するため、又は第三者機関の認証(審査登録)取得のために用いられる。ISO14001に基づき環境マネジメントシステムを構築し、認証を取得することによって、組織は自らが環境配慮へ自主的・積極的に取り組んでいることを有効に示すことが可能となる。
2.「環境先進国・日本」それでは実際に、日本企業の環境マネジメントはどこまで進んでいるのだろうか。それを把握するための指標としては、EMS審査登録制度への登録数を参考にすると現時点の日本における同登録数は約1万8,000件。これは、世界的に見てもかなり多い数字となっている。しかも、この1、2年、この登録数は上昇カーブを描いているのである。 もっとも、EMSへの登録は事業所単位で行われるのが通例であるため、厳密な登録企業数は分からない。ただし、上の数字から判断すると、大企業のみならず、中堅・中小企業にまで環境マネジメント意識が浸透していることは明白であり、この点においては、日本は「環境先進国」であると言える。
一方、具体的な取り組みとしては、「もうかる省エネ」ということで、「ESCO(Energy Service Company)事業」が国内でも盛んに行われている。これは、省エネの方策を考えるための診断やコンサルティングに始まり、計画立案、設計施工、システムの保守運用管理、効果の計測や検証、事業資金の調達やファイナンスに至るまでの広範なサービスを指す。一言で言えば、環境改善とコストダウンを両立できるビジネス・モデルである。
1999年には、ESCO事業推進協議会も発足しており、会員企業は現在100社を超えている。同協議会によれば、ESCO事業の受注額は1999年に 186億2,400万円だったのが、2000年には264億6,100万円、2001年には667億 1,300万円と、2000年から2001年の1年間で一挙に2.5倍に膨らんでいる。環境省の調べによると、自社の環境情報を開示すると共に利害関係者(ステークホルダー)の環境に対する要求を汲み上げるために、すでに1,000社以上が環境報告書(環境リポート)を作成している。環境報告書は、オランダ、デンマーク等一部の国を除き、その作成は義務づけられているものではなく、また作成基準もない。つまり、環境報告書の発行は企業の自由意思によるものでありながらも多くの日本企業が公表しているということになる。
3.なぜ今「環境対応」が注目されているのかそれでは、なぜここにきて、環境マネジメントが重要な経営課題の1つとしてとらえられるようになったのであろうか。その背景にはもちろん、 1997年の地球温暖化防止京都会議でCO2削減基準が定められたことに代表されるように、世界規模での環境保全に対する意識の高まりがある。そして、もう1つ忘れてはならないのが、環境マネジメントそのものが、企業活動に大きなメリットをもたらすと考えられるようになってきたことである。
環境マネジメントの推進によって企業が得ることのできる具体的なメリットとして、以下のようなものがある。
・審査登録制度に登録することによって、適切なEMSを確立し、かつそれを運用していることを内外にアピールできる。・省エネ・省資源、リサイクルの推進によってパートナーシップ関係の強化が図られる。・製品の環境適合によって、付加価値が生まれる。・環境リスクに対する先手管理や予防原則を確立することができる。・環境コミュニケーションによって企業としての信頼性が向上する。・社会的影響力のある企業として社員のモチベーション向上に繋がる。
また上記メリット以外に、環境貢献企業に対し金融機関も積極的に支援する動きが活発化している。某大手損保の場合、環境報告書を添付する企業においては、保険料の割引制度を検討している。政府系金融機関である日本政策銀行は「環境格付け」を利用した融資制度を実施し、評価に応じて貸出金利に差をつけている。環境意識の高い中堅・中小企業には特例を設け、現段階で最低ラインを達していなくとも、今度の改善を約束すれば特別に点数が上積される。また商工中金においても今年2月「環境配慮に取り組む事業者に対する総合支援策」を創設し、環境への配慮のある中小企業をターゲットとしている。
まずはISOの認証を得れば、環境対応企業であることを内外にアピールすることができる。こうした「お墨付き」が、企業のブランド・イメージ向上に果たす役割は決して小さくない。省エネ・省資源・リサイクルに積極的に取り組めば、必然的に経費の圧縮が図られるため、収支にもプラスのインパクトをもたらすことになろう。また、そうした努力を継続していけば、将来的に省エネにまつわる製品やサービスを開発し、事業化につなげることも可能である。製品・サービスの環境適合は、他社に先行すればそれだけで貴重な付加価値を生む。最近、大手家電メーカーや自動車メーカーが、先を争って製品の省エネ設計に取り組んでいるのも、そういった効果を見込んでのことである。
今後、中堅・中小企業においても自社の環境への取り組みを企業の外部に積極的に公開していくことで、利害関係者や消費者、あるいは地域からの信頼をさらに獲得することが可能となり、採用上においても企業イメージアップにつながるだろう。
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