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第14回2005/11/14
従来の日本型人事システム崩壊により、日本企業の賃金・報酬体系は、終身雇用を前提とする年功序列型体系から能力主義や成果主義の報酬体系へと転換が進められています。これにより、入社年次や勤続年数の反映だけではなく社員個々人の業績を処遇として反映させるための制度導入企業が増加しています。
一方、上場前のベンチャー企業において、昨今のIPOブーム再到来の中、能力主義や成果主義に加え、インセンティブとしてのストックオプションが注目されています。今回はこの「ストックオプション」について焦点をあて、解説します。
1.ストックオプションとは
法律上は、新株予約権と呼ばれるもので、会社役員や従業員等があらかじめ定めた価格で株式を購入できる権利をいいます。会社が取締役や従業員に対して、予め定められた価額(権利行使価額)で会社の株式を取得することのできる権利を付与し、取締役や従業員は将来、株価が上昇した時点で権利行使を行い、会社の株式を取得し、売却することにより株価上昇分の報酬が得られるという一種の報酬です。報酬額が企業の業績向上による株価の上昇と直接連動することから、業績連動型のインセンティブ報酬として利用されています。
2.ストックオプション制度導入の背景
ストックオプション制度が生まれた背景には、資金力のないベンチャー企業が、優秀な人材を確保するために、将来、飛躍的に上昇するであろう自社の株価を魅力的な材料にするという考えがあります。さらには、ストックオプションを付与することにより、従業員の会社に対する帰属意識を高めるという相乗効果を狙ったものでもあります。
3.ストックオプション制度導入のメリット
(1)モチベーションとしての効果権利保有者の利益が株価上昇と直接連動しているため、権利保有者は株価上昇のために会社業績の向上に努めるというモチベーションとしての効果が期待できます。
(2)人材確保・流出防止効果会社の業績向上に伴う株価上昇により、巨額の報酬を獲得することも可能な魅力的な成功報酬制度を活用することにより、優秀な人材の確保および人材流出を防ぐ効果が期待できます。
(3)アナウンスメント効果ストックオプション制度の導入により、それ自体が、「会社が自社の株価や業績を強く意識している」という経営姿勢のアピール材としての効果が期待出来ます。
(4)株主の利益向上効果制度導入に伴い、株価向上のための企業業績向上のモチベーションが働くことにより、実際に業績ならびに株価が上昇すれば、既存株主にとっても株式価値向上につながります。
(5)金融機関からの資金調達の促進ベンチャーキャピタル等の金融機関にストックオプションを付与してキャピタルゲインの可能性を高めることで、より低い金利での融資を受けられるといった効果があります。
(6)敵対的買収の防衛策あらかじめ友好的な株主・従業員・取引先等にストックオプションを与えておけば、安定株主比率を高く保つことが出来ます。これにより、敵対的買収を仕掛けられた際にも、ストックオプションを行使することで乗っ取り防止効果が見込めます。
4.ストックオプション制度導入の注意点
ストックオプション制度を導入することにより、上記のようなメリットが期待出来ますが、実際に導入したものの、運用がスムーズにいっていないといったケースもあり、ストックオプション制度を導入した企業の全てが成功しているわけではない、という現状もあります。ストックオプションを通じて企業がメリットを享受するためには、以下のような点に気を配る必要があります。
(1)付与基準の明確化や公平性の徹底付与基準の不明確さによる不平等感や、付与後に株価が上昇せず、期待した利益が得られそうにない場合の失望感などにより、従業員のモチベーションが低下する可能性があります。導入の際には公平性や付与基準の明確化が重要です。
(2)経営陣のモラル維持の徹底経営陣が、報酬の増大化を図るため株価第一主義となり、不当な決算処理や株価対策などモラルの低下をもたらす可能性があります。経営陣や監査役の社内外の管理体制強化や、自社コンプライアンスの徹底が重要となります。
(3)ストックオプション行使後の人材流出防止巨額な報酬が目当ての従業員の場合、株式公開後即座にストックオプションを行使して株式売却後に会社を辞めてしまうケースもあります。ストックオプション導入だけでなく、会社へのロイヤリティ含めた従業員のモチベーション対策も必要です。
昨今、IPOブームにある日本経済で、ストックオプション制度は株式公開を目指す企業においてほとんどといって良い程導入されていますが、導入の際には、その目的や導入・運用方法について様々な角度から検討する必要があります。制度の成功を決するためにも、自社の状況を適格に把握し、自社に合った仕組み(制度導入の時期・対象者の選定・付与株式数・権利行使価格や期間等の設定)を構築する必要があります。また、本年1月最高裁の判決により、ストックオプションの権利行使益が「一時所得」から「給与所得」と見なされるようになったため、制度の利用には注意が必要となってきました。
また、社内の給与制度や人事評価制度が不透明であったり、組織や個人の業績を適正に反映できるものとなっていなければ、ストックオプションのみを単独で導入しても、十分な効果を上げることは出来ません。大切なのは既存の人事制度体系の再構築を視野にいれたストックオプション制度を導入することで、優秀な人材の確保と社内の活性化やモラル・アップを実現しつつ、同時に企業価値の創造、株主価値の最大化を目指す経営を推進すべきであると言えます。
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