「ES(Employee Satisfaction-従業員満足-)」

第32回2007/09/21

「ES(Employee Satisfaction-従業員満足-)」


「ES(Employee Satisfaction-従業員満足-)」

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変化の激しい現代のグローバル市場競争が加速する中、
これまで企業では経営課題として従業員満足よりも顧客満足、
すなわちCSの向上ばかりが叫ばれてきました。
しかしながら、従業員のモラルや意欲は製品・サービスの品質・生産性に影響を与えており、
結果としてCS(顧客満足)の向上、ひいては業績に影響を与えることから、
ES(従業員満足)の向上は企業の成長と切り離せないファクターとなっています。


また、現在の人材売り手市場や終身雇用制の崩壊による人材流動化をうけ、
優秀な従業員を採用し育成・定着させるためにも
ES(従業員満足)は決して無視できない概念となっています。


今回はこのES(従業員満足度)に焦点をあて、
その意味から実際の取り組み例などについて解説していきます。


1.ES(従業員満足)とは

Employee Satisfaction-従業員満足-とは、
端的には「従業員がどれだけ会社、仕事に満足しているか」ということを意味します。
ESは従業員の労働環境・労働条件を満たすことで向上し、
ひいては業績の向上などが期待されます。
一般に従業員のモラルとモチベーションを調査することでその企業ごとのESを測りますが、
最近ではCSの向上への期待や人材マネジメントの一環として調査が行われ、
欠陥がみつかれば改善するといった動きが盛んになっています。


冒頭に述べたように、業績に不可欠とされるCS(顧客満足)は
実はES(従業員満足)と密接に係っています。


変化と競争の激しい現代のビジネスシーンにおいて、
「顧客満足度を重視した経営」を目指す経営者が多いことを考えると、
ESも大きな注目を浴びる指標であることがわかります。
例えば、サービス業のように顧客と従業員が常に対面するビジネスモデルの場合で考えると、
従業員がどんなモチベーションや態度で業務に臨んでいるかが
顧客満足にどれだけ影響してくるかがわかると思います。


もし従業員が企業や仕事内容、労働環境などに強い不満を感じていると、
その企業で働く意欲や、企業の発展に貢献したいという忠誠心が薄れ、
結果として顧客に対してのサービスの質が低下し
顧客満足を損ねる可能性が出てきてしまいます。


「顧客を満足させるには、まず従業員を満足させなくてはならない。」という表現もあるように、
企業の業績・成長を考える上で、ES(従業員満足)はCS(顧客満足)に繋がり、
延いては業績の向上に重要なファクターとなっております。


実際に成功を収める企業の多くは、
自社の従業員満足を高めることで従業員の定着・生産性をあげ、
結果としてサービスの質を向上し顧客満足を実現させ
パフォーマンスをあげていることが実証されています。


2.ESが今重要な訳は?

CSとESの関連性に加えて、
企業の継続的な発展・成長においてもESの視点が重要となってきています。


昨今の雇用をとりまく環境変化によって、
多くの企業で人材マネジメントが経営課題の優先項目となっている事実があります。
そのような環境の中、優秀な人材をいかに惹きつけ、
つなぎとめ、モチベーションを向上させ成長を促しどう組織の中で活かしていくかが、
企業にとって今後の成長・発展に欠かせない課題であるのは間違いないでしょう。


バブル経済崩壊後から長引く不景気を経た昨今の経済環境の変化に伴い、
従業員のモチベーションのあり方も多様化してきました。
従業員は報酬アップや企業内の地位向上のみでなく、
人材市場におけるキャリアアップに価値を見出すようになってきています。
そうした従業員のニーズを汲み取り従業員の期待に応えることで、
価値ある人材を採用・定着させること、
さらに、そうした従業員の意欲やロイヤルティを高めることこそ、
現代において企業が人材活用を成功させ、グローバル競争に勝ち抜く条件なのです。


つまりはES(従業員満足)の把握・向上努力こそ組織発展の鍵といえるでしょう。


3.ES(従業員満足)の分析要素

実際に企業のES(従業員満足)を測る場合には、
様々な項目への意識をヒアリングし分析する手法がもちいられます。
単に給与への満足感を把握するだけでなく、
従業員が企業に求める項目も様々であることを認識しなければなりません。


従業員満足を測る指標は大きく分けて2つあり、
モラルの観点とモチベーションの観点から構成されます。


調査会社によるESに関する調査では、
一般に給与や人事評価、仕事内容、仕事量、人間関係、福利厚生、職場環境など、
その企業の従業員満足に影響を与えると思われる項目ごとに従業員にアンケートを実施し、
生産性や顧客サービスの低下などにつながる組織の不活性化や従業員の離職、
労働意欲の低下の原因を探ります。
把握した結果をもとに従業員の期待(ニーズ)が高い(満足度が低い)項目を見つけた場合、
満足度を向上させる取り組みが必要となります。


4.ES(従業員満足)向上の取り組み

従業員満足を向上させるために、もうひとつ理解して頂きたいことがあります。


従業員の満足を左右する要素は、苦痛とモチベーションに分けられると言われています。
例えば、職場の衛生状態が悪かったり、給与が安くて生活が苦しければ、
従業員は苦痛を感じ満足度が低い状態になります。
こうした場合、苦痛の原因を取り除くこと(待遇改善)でも従業員満足度は向上しますが、
これだけでは高い満足度にはつながりません。
従業員一人一人のポテンシャルをさらに活かし生産性を高めるには、
仕事を通じて従業員個人が成長や達成感を実感できることが必要なのです。


つまり、企業は企業価値最大化のためには、
資産やリソースを活用し職場環境や労働環境を整えるだけでなく、
従業員それぞれの仕事への意識を確認し、それぞれが達成感や職務への誇りを感じ、
成長している実感を仕事を通じて得られているのかどうかなどにも目を向ける必要があります。
達成感や向上心が高く維持されている従業員はそれだけ職務への意欲も強く、
パフォーマンスの向上も期待されるでしょう。


ES向上の取り組み例としましては、
表彰制度やインセンティブ・イベント等の充実などもあげられますし、
従業員1人1人にとっての職業設計、
研修制度の充実やジョブローテーションによるスキルアップ機会の提供、
延いては人生を豊かにする為に休暇・余暇の活用促進による
ワークライフバランスの充実を図ることなどがあげられます。
さらには、社員の長期的なキャリア形成を促進させるための
キャリアカウンセリングの提供なども、
従業員の意欲の維持・向上に効果的といえるでしょう。


従業員満足は、それぞれの企業の形態・フェーズなどによって
その重要とされる項目・期待値と満足度の問題点が異なります。


長期的な企業の発展のためというのはもちろんのこと、
短期的なパフォーマンス向上、CSの向上の為にも、
従業員の意識を変革させるES(従業員満足)への配慮が
今後の企業の勝敗を分けるポイントといえるのではないでしょうか。
本稿が今後の企業発展の一助となれば幸いです。

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