「管理部門人材の市場価値」
第48回2009/01/15
「管理部門人材の市場価値」
「管理部門人材の市場価値」
企業が存続するために欠かすことのできない管理部門。
今回は、企業の根底を支え、重要な役割を担う管理部門に注目し、
管理部門人材の市場価値をご紹介します。
また、管理部門人材の採用ノウハウについてもご説明します。
貴社の組織強化にお役立ていただければ幸いです。
「管理部門」とは
そもそも管理部門とは、企業がより効率的に高い収益を上げるために営業活動を管理し、
間接的に支援する部門のことを指します。
具体的には経理・財務・人事・総務・法務・経営企画等の職種があり、
それぞれの分野の営業活動上の問題を解決することで
営業部門が高いパフォーマンスを発揮できるように支援しています。
また、管理部門は直接的に収益を上げないという特徴があります。
営業部門や技術・生産部門等を間接的に支援しているため
管理部門が直接売上を上げることはありません。
しかし、収益を上げないからといって、
この管理部門を蔑ろにしてしまうと営業活動が非効率になり、
大幅に業績が悪化してしまうという事態にもなりかねません。
管理部門を強化することで、営業状態を正確に把握し、営業環境を整え、
より効率的に高い収益を得ることができます。
営業活動を最適な方向に進めるためにも管理部門は大変重要な部門です。
市場価値の高い管理部門人材
経営環境は日々変化し、企業はその対応に四苦八苦しています。
国際会計基準の導入や日本版SOX法など、
どの時代でも経営環境への適応は企業の重大な課題です。
日々変化する経営環境に対応するためには管理部門を強化し、
しっかりと経営状況を把握して、社内外の変化を素早く認識し、
適切な対応を行う必要があります。
これらのことから、管理部門の強化を行おうとする企業は多いものの、
管理部門経験者の中途採用に苦戦する企業は多数あります。
その理由としては...
・少数精鋭で構成されるため、即戦力を求める傾向にあるが、即戦力となる人材は
少なく、管理部門経験者の市場価値が高くなっている
・どの企業も管理部門人材は必要なため、採用における競合企業が多数存在する
このような理由から管理部門人材を採用することは難しくなっています。
まずは、闇雲に採用を行うのではなく、
管理部門経験者の市場価値を企業側が把握することで、
より採用効率を高めることができると言えます。
ではどのような人材にニーズが集中しているのか、
管理部門人材で市場価値が高い人材について、具体的に例を挙げてみます。
【経理・財務】
・決算業務を一人で行うことができる
・英語力中級レベル(TOEIC700~800点程度)以上
・連結決算経験、有価証券報告書作成経験
・上場企業での実務経験者
・IPO(株式公開準備)経験者
・マネジメント経験がある
【人事・総務】
・採用・研修・労務・人事制度のうち2つ以上を経験している
・海外人事の経験
・人事制度構築経験者
・株主総会運営や株式管理業務経験者
・英語力中級レベル(TOEIC700~800点程度)以上
【法務】
・契約書のドラフト経験
・英文契約書の審査・作成経験
・契約法務をベースに商事法務の経験
・英語力中級レベル(TOEIC700~800点程度)
【経営企画】
・M&Aの経験者
・予実管理経験者
・事業計画・中期経営計画経験者
・新規事業立ち上げ経験者
・英語力中級レベル(TOEIC700~800点程度)
このような経験を採用基準としている企業は非常に多いのですが、
ぴったりのキャリアを持つ人材は市場に少なく、且つニーズが集中するため、
実際には望み通りの採用をすることが難しい現実があります。
管理部門人材の採用ノウハウ事例
ではどのようにすれば管理部門の人材を採用することができ、
管理部門を強化できるのか、採用ノウハウをご紹介します。
ケース1:採用基準が高く、マッチする人材がいない
例えば、上述の経理・財務のスキルをすべて満たしている人材を求めている場合などは、
まずは採用基準の項目の中で優先順位を考え、
必須条件を減らし、候補者の母数自体を増やすことです。
候補者のスキルは想定より低くなるものの、採用ができないまま時間が過ぎていくよりも、
いち早く採用を行い、教育を行う方が結果的には企業にとってプラスになる場合が多いのです。
そのため面接時に人柄・ポテンシャルも含めて、
その人材の成長性も考慮し、採用することが重要になってきます。
ケース2:該当する人材の絶対人数が少なく採用が困難
具体的には、法務職の経験者などはそもそも絶対数が常に少なく、
採用が非常に困難な層であるといえます。
しかし昨今の経営環境の変化で法務の強化は重要な課題であるため、
一部の企業では、法科大学院の卒業生(司法修習生)のポテンシャル採用を行い始めています。
このように、優秀な人材を採用し育てていく姿勢も求められます。
市場価値が高い経験者を採用する場合は、実務経験だけに条件を絞り、
その他の条件は採用基準を下げて採用することがより賢明です。
ケース3:管理職を採用したいが、良い候補者に巡り合えない
管理職の求人となると、実務経験や人柄に加え、マネジメント経験も採用基準に加わり、
しかも自社の社風に合う人材となると、更に採用のハードルが高まります。
例えば、課長職を採用したいが、なかなか採用が進まないという場合、
既存の社員を教育し、課長職に昇格させ、一般社員を採用するというように、
視点を変えて対応することで良い採用が実現するケースもあります。
以上の採用ノウハウ事例には、採用を効率化させることによる採用コスト低減や、
採用者の年収を想定よりも抑えられるというメリットもあります。
不況時は採用のチャンスと捉える
米国のサブプライムローン問題に端を発した世界金融不安の中、
国内においても厳しい雇用情勢が続いています。
メガバンクや証券会社、海外展開している大手企業など
採用基準を全面的に見直している企業が続出しています。
しかし、不況時は採用側にとっては、好機とも言えます。
なぜなら今まで採用能力の高い大手企業等が優秀な人材を獲得していましたが、
この金融不安で採用を見合わせているからです。
さらにこの金融不安で在籍している企業の先行きに不安を感じ、
転職活動を積極的に行う人も増えてきます。
この不況の時期は採用市場から見てもチャンスであり、
経営の観点から見てもチャンスだと捉える事ができます。
不況時だからこそ管理部門を強化し、
経営環境に柔軟に対応できる組織作りを行うことで、
競合他社との差を広げることができるのです。
人材紹介会社利用のメリット
これまで市場価値を把握した上で、
柔軟に採用を行うことの重要性を、述べてきましたがその一方で、
採用の現場ではなかなかこれらを実施することが難しいことも事実です。
【採用現場での問題点】
・採用基準を広げることにより、応募数が増え、業務が増加する懸念
・刻々と変化する人材市場の把握が困難
・最適な採用を行うための適切な採用基準の設定が困難
・採用基準を広げ過ぎると本来のニーズにマッチする人材が応募しなくなる
上記のような問題は採用現場では常に起こり得ることです。
そういったリスクに対応するには、人材紹介会社の活用が効果的です。
紹介依頼を行う前に、募集背景についてのヒアリングを受けることができるので、
企業ごとに異なる、細かいニーズに対応した紹介を受けることが可能です。
人材紹介会社をうまく活用するには、事前に情報をよく伝えておくことが肝要です。
自社が抱える経営課題を伝え、
今回の採用でどういった経営課題を解決したいのかなどを具体的に理解させ、
採用依頼をすることが重要です。
「本当はこの層を採用したいのだが、実際は、この層まで検討範囲に入れる」など、
なるべく具体的に伝えましょう。
そうすることで、
自社にとってよりニーズに合った良い人材の紹介を受けることが可能になります。
【人材紹介利用のメリット】
・多くの求人と求職者を扱っているので、常に人材市場の動向を把握している
・多くの候補者の中から、ニーズに合った候補者のみ、紹介を受けられるため
選考に関する業務量が減る
・自社の魅力を第三者からも伝えることができ、採用能力が高まる
・一般公募では反応が少ない優秀な人材が登録している
この他にも使い方によっては、単なる"人材の紹介"に留まらず、
もっと広い意味での人事・組織コンサルティングを付加サービスとして受けることも可能です。
人材紹介会社をうまく利用して、効率よく優秀な人材を獲得することが賢明です。
おわりに
先に述べた通り、不況時は企業の根底を支える管理部門を強化し、
環境への適応を迅速に行える組織体制を構築する機会でもあります。
人材は企業組織を構成する最も基礎的且つ重要な要素です。
企業の基礎体力は優秀な人材を採用・育成できるかにかかっています。
企業の更なる発展のために、
不況時だからこそ先行投資としての人材採用・育成について再考してはいかがでしょうか。
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