「コンピテンシー」

第3回2004/12/02

「コンピテンシー」


「コンピテンシー」

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近年、「コンピテンシー」という言葉に触れる機会が多くなりました。
コンピテンシーをその企業に適した形で活用することで、
採用・研修(人材開発)・人事制度にも影響を与え、
企業の生産性を高める人事を切り口とした重要なキーワードになっています。
最近では、採用においての"コンピテンシー面接"、研修・教育での"能力開発"、
人事制度での"人事評価基準"など
人事管理の各分野に活用できる新たなツールとして注目されています。

1.コンピテンシーとは

コンピテンシーとは、高業績者に共通してみられる行動特性のことです。
「ある職務や役割において優秀な成果を発揮する行動特性」などと定義されています。
社内で高い業績を上げている社員の専門技術・ノウハウ・基礎能力等を細かに観察し、
何がその人を「仕事のできる社員」にしているのかを明らかにするものです。
そして、この"コンピテンシー"を行動基準や評価基準に活用することにより、
社員全体の行動の質を上げていこうというわけです。

2.コンピテンシーの歴史

もともとは、ハーバード大学の心理学者であるD.C.マクレランド教授を中心としたグループが、
米国務省から「学歴や知能レベルが同等の外交官(外務情報職員)が、
開発途上国駐在期間に業績格差が付くのはなぜか?」という依頼を受け、
調査・研究を行った結果、「学歴や知能は業績の高さとさほど相関はなく、
高業績者にはいくつか共通の行動特性がある」と判明した事が始まりとされています。
このとき、挙げられた行動特性は以下のようなものでした。


 ・異文化に対する感受性が優れ、環境対応力が高い
 ・どんな相手に対しても人間性を尊重する
 ・自ら人的ネットワークを構築するのが上手い


コンピテンシーは職種・職務などによって異なります。
その後、コンピテンシーは米国を中心に、企業の人事システム構築のための1つの考え方、
手続き(ツール)として発展してきました。
コンピテンシーの定義は、学術的には確定したものはなく、
一部の学者やコンサルティング会社などがそれぞれの考え方をまとめ発表しています。

3.コンピテンシーの背景

コンピテンシーが注目される背景として、 1つは企業の成果主義導入
( ※詳細は当連載 第一回「成果主義」参照)への転換があります。
人事評価での業績・成果のウェートを高めれば高めるほど、
処遇での社員間の格差を大きくすればするほど、評価の客観性が厳しく求めらます。
そこで、「業績・成果評価基準」と適切な手続きに基づいて整備された
「能力評価基準」(コンピテンシー)が必要になります。
この2つの評価基準は、
"結果"と"プロセス"の関係にあり、今後の人事制度構築の際に核になるものです。


2つめは、人事制度以前の問題ですが、現在の熾烈な競争環境の中で、
組織としての生産性を今までより数段高めていかないと、
企業の存在そのものが危うくなる時代です。
業績を向上させるコンピテンシーを分析・整理し、社員にわかりやすく説明し、
各人がすぐにでも実際の行動に移し、結果を変えていかなければならないからです。

4.コンピテンシーの導入

コンピテンシー導入の最大の目的は、社員の"行動"を飛躍的に変革させることです。
コンピテンシーの考え方と従来の考え方は、スポットの対象が異なります。
従来は、「標準者」が対象ですが、
コンピテンシーでの考え方は「仕事のできる人」が対象となります。
また、以下の効果も考えられます。

 

全社員の行動の質を高める     →  行動基準や指導基準として活用する
ノウハウやコツの共有化を図る →  ナレッジマネジメントを実践する
能力評価基準の明確化を図る   →  能力評価のための具体的な指針として利用する

5.コンピテンシー開発について

コンピテンシーの導入は従来の能力開発の考え方を変えるきっかけとなります。
従来はスキルや知識習得中心の能力開発であり、業績と成果への影響(研修効果)は
測定しづらいものとして扱われてきました。
コンピテンシーによる能力開発(コンピテンシー開発)は"行動"に焦点をあてて行われます。
その開発効果は「行動変革あるいは行動の習慣化」→「中間成果の改善あるいは達成」→
「業績の改善あるいは向上」で測定されることになります。
コンピテンシー開発は、業績に直結するということと、
その影響をデータなどできちんと把握することが特徴です。
この開発には、対象者の上司や先輩の関わりが大変重要です。
コーチング(※ 詳細は当連載 第ニ回「ビジネスコーチング」参照)や
メンタリングの機能を発揮することが求められ、部下の日頃の仕事ぶりに対して的確で
タイミングの良いフィードバックが必要です。
人材開発部門は、職場の上司などをも巻き込んだ総合的なプログラムを提供する事になります。
個人や組織の業績に関わるということで、「社内コンサルタント」としての姿勢が求められます。
コンピテンシーモデルの構築は、能力開発のニーズを把握することであり、
360度フィードバックの開発・運用にもつなげやすくなります。
また、目標管理のプロセス活動とも密接に関係し、長期的視野に立てば、
キャリア・マネジメントのベースともなるものです。


※コンピテンシーモデル
高業績者が高い成果を出すために日ごろ取る行動を観察・測定し、抽出したモデルの事です。
他の社員がこのモデルを基にして、
同様に行動することによって成果が上がる→行動が習慣化される
というプロセスでコンピテンシー開発が進んでいきます。

6.コンピテンシーの活用 ~コンピテンシー面接~

新卒・キャリア採用で"できる人"の採用にはキャリアコンピテンシーの活用や
コンピテンシー面接などが有効と言われており、
コンピテンシー面接を取り入れる企業は年々増加しています。
コンピテンシー面接とは、行動で確認できる能力(コンピテンシー)を見るための面接手法で、
言い換えると、「どういう行動パターンをもっているか」検証する面接です。


第一印象がいい、元気がいいとかいう「主観的」な要素ではなく、
行動という「客観的」な要素で判断するということがキーポイントです。
「印象がいい、頭がいい=会社で成果を上げられる」とは限りません。
では、何を基準にすれば、成果を上げられる人を採用できるのでしょうか?
そのひとつの答えとして、すでに自社で成果を上げている人(モデル)に似た人を採用すれば、
その人は成果を残せるのではないか?というのがコンピテンシー面接の原点です。
そのためにモデルが持つ行動特性を分析し、
それをどれだけ持っているかを面接を通じて判断します。


また、コンピテンシーによる人事評価制度は、現在多くの企業でも導入されています。
注目の"人事評価基準"である、管理職向けの新人事制度において、
職務遂行能力の評価基準として現在注目されている
"コンピテンシー理念"を導入する企業が最近増加傾向にあります。
コンピテンシーは、その人の行動特性なので変わらないとも言われますが、
各人が意識して努力することにより人間は大きく変わるとも考えられます。

コンピテンシーを活かすためには、まず自社で、どのように活用できるかを模索し、
自社のシステムに合わせた使いやすい形で導入することが肝要です。

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