「セクハラ問題」

第54回2009/07/06

「セクハラ問題」


「セクハラ問題」

男女雇用機会均等法にてセクハラ防止の条項が加えられてから、徐々にセクハラに対する認識は高まってきていますが、まだまだセクハラの被害は後を絶ちません。企業としては、セクハラなど起こっていないと思いたいところではありますが、職場でのセクハラは表立って問題になることも少なく、正しく認識されていないことも多々あります。セクハラが発覚した場合に、加害者の個人的信用が失墜したり、裁判に訴えられたりする可能性がある事は言うまでもないことですが、セクハラが起こった企業に対しても、もちろん大きな影響があります。例えば、職場ではセクハラに対する嫌悪感から社内モラルや仕事への意欲低下、そして円滑に仕事を進め難くなる場合や、または被害者が退職する事により、社内の業務効率悪化を招く場合もあります。このような状況は会社全体に影響を及ぼしてしまいます。また、セクハラの被害者から企業に対して訴訟が起こった場合には、多額の賠償金の支払いを言い渡されるケースもあり、訴訟により公に企業名が公表され、会社のイメージダウンにつながることもあります。厚生労働省からも事業主には社内でセクハラ対策を取ることが義務付けられており、会社としてセクハラを認識し、対策を練っていくことが必要です。

 

今回のコラムでは解かりづらいセクハラ問題の定義と企業側ができるセクハラの予防策と対応策をご紹介します。企業内でのセクハラ対策にお役立て下さい。


セクハラとは・・・
セクシャルハラスメントを訳すと「性的嫌がらせ・性的脅かし」となり、時・場所・相手を選ばずに相手を不愉快にさせる性的な言動を指します。大きく分けると【対価型】と【環境型】に分けることができます。

 

具体的な例
【対価型】
・上司がスタッフに対し性的な関係を要求したが、拒否をされたため、その労働者を異動させる。
・上司がスタッフと性的な関係であると公言をしていたが、拒否をされたため、その労働者を降格させる。

 

【環境型】
・オフィスで上司が労働者の身体を不必要に度々触る。
・社内で性的な記事の載った新聞・雑誌を度々広げる。
・同僚に対し、性的な発言・質問をする、または冗談を言う。
・社員の性的な噂話等を広める。

 

【対価型】は肉体関係などを迫られ、抵抗・拒否などを行うと、その対価としてその労働者が減給・降格などの不利益を被ることを指し、【環境型】は性的言動が行われることにより、労働者の就業意欲が低下する・働きづらい環境が作られる行為を指します。
ただし、環境型の場合、一概にこれらの言動を取った場合には必ずしもセクハラに当たるとは言い切れません。なぜならば環境型を判断する場合にはこのような性的言動を受けた労働者が不快に感じるかどうかという部分がポイントになるためです。性的言動に対する反応は男女差、または個人差があり、行っている本人は大した事ではないと思っていたが、受け取る側は多大な精神的苦痛を受けているケースが多々あります。そのため、厚生労働省では環境型を判断する場合に、被害者と同じ性の平均的な感じ方(被害者が女性の場合には平均的な女性の感じ方・男性の場合には平均的な男性の感じ方)を判断基準とすることが進められています。

 

また、セクハラ問題の背景として、男性優位の社会が過去に成り立っていたという歴史があります。そのため、「性別により役割やキャラクターを限定する」事や、古典的な男女の役割に当てはめる事もセクハラに該当します。例えば、女性にだけお茶くみや受付をやらせることや、女性に対し「結婚をしないのか」と聞くことや、「女性は女らしくいるべきである。」という様な発言もこれに当たります。また、同様の事が男性にも言え、男性に対し「男のくせに根性がない」等と言う事もセクハラになります。宴会などのオフィス以外でのこういった言動はセクハラに当たらないと認識もあるようですが、仕事とつながりのある場所(移動中の車内、取引先、アフターファイブの宴会の場等)での言動もセクハラに当たります。


人材採用の観点からのリスク
冒頭でもお伝えしたとおり、セクハラは、社員のモチベーション低下や、有能な社員の退職を招く原因にもなり得るなど、人事の側面にも大きなリスクをもたらす問題です。現在は、インターネットへの書き込み等により、情報が非常に早く伝わる時代です。セクハラが起こったという事が噂になると、会社のイメージやブランドの低下に直結し、採用力も落ちることが考えられます。また、セクハラ被害者が退職することにより、新たな採用コストや手間も発生してしまいます。


セクハラ対策法
では、セクハラの定義をお話したところで、企業としてはどのようなことができるかを考えてみたいと思います。セクハラ対策にはいくつかのステップがあります。

 

1、 職場におけるセクハラの実態把握
まずは社内においてのセクハラの実態を把握するところから始めましょう。セクハラに対する意識や意見を聞くためのアンケート、または部署ごとに話し合いの機会を設け、社内でセクハラがどのように考えられているのかを把握することが重要です。セクハラに対しての認識は人それぞれ違うため、もし意識が低いようであれば、研修・社内冊子等を通して、意識を高めることが必要です。

 

2、 企業のセクハラに対する方針の明確化と社員への啓発活動
社員の問題意思を高めることと同時に、企業としてセクハラをどのように扱うのかという指針をしっかりと社員に提示をしましょう。就業規則内にセクハラの禁止を規定し、セクハラが起こってしまった場合の罰則を設け、社員に知らせましょう。伝達方法としては、社内報やメールを使うこと、また経営トップが自らセクハラ防止を宣言するなども効果的です。

 

3、 相談に応じ適切に対応するための体制整備
ここからは万一セクハラが起こってしまった場合の体制整備について解説したいと思います。ここで重要になってくるポイントはセクハラの被害者が相談できる場所を作ることが必要です。セクハラ相談担当を選任し、何かがあった時には担当に相談できる環境を作りましょう。この時に担当は問題を公正かつ、適切な対応をすることができる人材を選任することが必要です。また、担当者が一名の場合、また、担当者との人間関係により、相談しづらいという場合も考えられますので、担当者を複数人選任すると良いでしょう。相談窓口で受けた状況によって、相談担当と人事担当が一緒に迅速に対処できる体制も整備することをお勧めします。

 

4、 事後の迅速かつ適切な対応
実際にセクハラが起こった後に、対処方法を検討していては対応を遅らせることになります。迅速に対処できるよう、問題が起きた場合の対応部署・対応手順などをあらかじめ決めておきましょう。その際にポイントとなる点は事実確認を迅速かつ正確に行い、行為者・被害者に対する処置、そして再発防止の措置を講ずることの3点になります。まずは担当者が行為者・被害者の双方から事実確認を行います。行為者に対しては就業規則に基づき、一定の処罰を下し、被害者に対しては必要であればメンタルケアなどの処置も必要かもしれません。その後、状況により社内意識の確認、対応の再検討をしましょう。

 

5、 プライバシーの保護
セクハラ問題はとてもセンシティブな問題のため、プライバシーの保護が何よりも重要になります。プライバシー保護のための対策を講じ、対応に関わった部署や相談窓口担当者はプライバシーの厳守を行うことが必要です。被害者を含め、事実確認に協力をした社員などのプライバシーが保護されること、不利益な扱いを受けない事を明示し、掲示することが必要です。

対応法などについて詳しくは厚生労働省のHPをご参照ください。
http://www.mhlw.go.jp/general/seido/koyou/danjokintou/kigyou01.html

 

これまでセクハラ問題について述べて参りましたが、貴社ではしっかりとセクハラの対策ができていますでしょうか。セクハラが起きない環境であれば、社員の方々はより就業意欲も高く、よりイキイキと働いて頂けるのではないかと思います。特にセクハラ問題の女性に対する影響は大きく、セクハラのない企業では女性が企業内の平等さを感じる事ができ、女性がより明るく、能動的に勤務することができる様になります。すると、社内の雰囲気も変わり、より発展性のある企業へ変わる事でしょう。
セクハラについてや、そのリスクを理解し、対策をとられる事をお薦め致します。

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