弁護士=高給取りとは言えない時代?気になる弁護士の収入事情を解説
一般的に年収が高いと思われている弁護士ですが、現代では必ずしも【弁護士=高級取り】というイメージが正しいとは言い切れません。
他の業種・職種でも同じことが言えますが、弁護士の働き方は多様化していて、大手法律事務所で働く選択肢だけでなく、企業に所属する企業内弁護士(インハウスローヤー)のような働き方も認知されてきています。
その結果、同じ弁護士であっても、収入面で差が大きく開く傾向にあります。
高収入の代わりに激務を受け入れるか、収入は一般的でも安定した職を手放さずに過ごすかによって、弁護士としてのキャリアパスが変わってきます。
この記事では、一昔前の状況から大きく変化した弁護士の収入事情について、働き方の違いと合わせて解説します。
弁護士の平均年収は?
弁護士の平均年収は、年々減少傾向にあります。日本弁護士連合会の「弁護士白書2018年度」によると、収入・所得の平均値と中央値は、それぞれ以下のように推移しています。
<収入・所得の平均値>
|
2006年 |
2008年 |
2014年 |
2018年 |
収入 |
3,620万円 |
3,389万円 |
2,402万円 |
2,143万円 |
所得 |
1,748万円 |
1,667万円 |
907万円 |
959万円 |
<収入・所得の中央値>
|
2006年 |
2008年 |
2014年 |
2018年 |
収入 |
2,400万円 |
2,200万円 |
1,430万円 |
1,200万円 |
所得 |
1,200万円 |
1,100万円 |
600万円 |
650万円 |
2006年から2018年までを俯瞰すると、収入は年を追うごとに減少しています。
また、所得は2014年よりも2018年の方が多いですが、総じて2006年の水準には大きく届いていません。
なぜ、弁護士の平均収入は下がっているのか
弁護士の平均収入が減少しているのは、かんたんに言えば「需要と供給のバランス」に変化が生じているためで、もう少し掘り下げると「供給側の人数が増えている」ことに原因があります。
弁護士白書2020年度の情報によると、弁護士の数は右肩上がりで増えており、2004年は20,224人だった弁護士数は、2020年には42,164人にまで増えています。
その一方で、弁護士の収入源の一つである民事訴訟事件は、新規受付数が年々減少しています。
日本弁護士連合会の調査では、2009年の235,508件に対して、2019年は134,934件となっており、弁護士の人数が増えたのに事件は少なくなってきているという状況が生まれました。
案件が減ったのにライバルが増えるということは、そこに競争が発生します。
弁護士一人あたりの案件数が少なくなると、案件の単価が上がらない限り、収入は増えません。
よって、弁護士の平均収入が減少してしまうのです。
弁護士が年収を増やすためにはどうすべきなのか
厳しい現実の中で、弁護士が年収を増やすためには、ただ勤務経験を増やすだけでは不十分です。
働く場所や仕事内容を選ぶなどして、 収入を増やせるよう行動しなければなりません。
例えば、一般民事事件を取り扱う法律事務所よりも 、企業法務案件の取り扱いが多い法律事務所の方が、売上も安定するでしょう。
可能であれば、企業・一般両方の案件が集まる法律事務所で働き、たくさんの案件をさばいた方が、収入増につながります。
一時の年収にこだわらず、継続的な昇給と安定した収入を実現したいなら、一般事業会社でインハウスローヤーとして働いた方が安心できます。
独立するケースとは違って、年収には上限が生まれてしまいますが、ベンチャー企業に勤め、将来的に経営陣の一員となれば、 年収を増やせる可能性があります。
また、どんな場所で働くにせよ、年収増を実現するには何かしらの専門分野に精通していることが条件となります。
単純に難易度の高いジャンルを勉強するのではなく、実務も含めた知識・経験をアピールできることが重要です。
同じ弁護士なのに働き方によって収入に違いがある?
前項では、弁護士の年収について大まかに解説してきましたが、弁護士の年収は就業形態によっても 変化することがあります。
以下、具体的な4例をもとに、働き方と収入の違いの関係性についてお伝えします。
独立開業弁護士の場合
独立開業弁護士の年収は、その弁護士の力量によって異なるため、一概に平均年収を計算することは難しい部分があります。
ただ、大まかに見れば年収1,000~2,000万円ほどが平均年収で 、売上から経費を差し引いた額が年収になります。
もちろん、ただ弁護士になったからといって、何の苦労もなく高額の報酬をもらえるわけではありません。
年収が高かったとしても、一人で働いているような状況だと、ワークライフバランスに問題があるケースもあります。
一方で、独立してから年収10億円を実現してしまう人もいるため、収入は青天井とも言えます。
独立開業弁護士として収入を増やすためには、チャンスを見つけたらそこに飛び込んで、成果を出そうとするスタンスが求められます。
勤務弁護士の場合
勤務弁護士の年収は、どこで働いているか・どんな役職に就いているかによって変動します。
都心は比較的チャンスが多いかもしれませんが、地方都市の場合は案件そのものが相対的に少ないため、年収増のためには名の知れた法律事務所に所属する必要があります。
初年度の年収は、事務所によって300~800万円とレンジが広い傾向にあります。
ただし、個人事件を多く担当すれば、その分年収に反映されやすくなります。
大手弁護士事務所の場合
東京都内の大手弁護士事務所に 勤めた場合、クライアントの質・量ともに充実しているため、給与は高い傾向にあります。
初年度から年収1,000万円を超えるケースも珍しくなく、年数を重ねていけば昇給が見込めますが、その分激務になることが予想されます。
事務所の中で頭角を現せば、パートナークラスになり年収3,000万円を目指すことも不可能ではありません。
ただ、限られた数の椅子に座るには、時に自分の実力以外の要素も求められるため、狙うなら万一に備えて独立の準備をしておくのも賢い選択かもしれません。
中小規模弁護士事務所の場合
個人事務所レベルの弁護士も含め、中小規模弁護士事務所の場合、年収は300~500万円前後からのスタートが想定されます。
ただ、個人で案件を引き受けられるチャンスも多いので、顔が売れれば開業弁護士クラスの年収も期待できます。
企業内弁護士の場合
企業内弁護士は、法律事務所と比べて年収の大幅な伸びは期待できませんが、着実に年収増につながる点では有利です。
企業側でも相応の待遇を用意する傾向にあるため、800万円程度の平均年収が期待できます。
また、管理職クラスになれば、年収1,000万円に届くことも珍しくありません。
一方で、開業弁護士 のような青天井の収入や、大手弁護士事務所のパートナークラスの収入は難しいでしょう。
弁護士は高収入を目指せる仕事
ここまでお伝えしてきた通り、全体を通してみれば弁護士の年収は減額傾向にあります。しかし、一般的な会社員の平均年収と比較すれば、はるかに高い収入を狙えます。
そもそも、弁護士になるためには、日本の国家試験の中でも最難関である司法試験に合格しなければ、道は開けません。
さらに、弁護士になってからも、クライアント獲得のため競争を強いられます。
何より、多くのクライアントは「この弁護士は信頼できる」と考えて、相談を持ちかけます。
その信頼を裏切らず、目的を達するために日夜努力するからこそ、報酬が付いてきます。
弁護士という仕事は、高収入を得るだけの資格がある仕事であり、時にクライアントの人生さえ変えてしまう立場にあります。
責任は重大ですが、それだけ見返りも大きい世界と言えます。
弁護士の数が増えているのに案件が減少傾向にあると、弁護士を志している人・これからも弁護士として働いていこうと考えている人にとっては、将来に不安を 感じてしまうかもしれません。
しかし、現時点で年収が減額傾向にあるからといって、将来を悲観すべき職種ではありません。
身に付けたスキルや働く環境次第では、年収1億を超える可能性もあります。
司法試験合格者であること・弁護士になることには、それだけの希少価値があるのです。
まとめ
弁護士全体を通してみると、収入は減少傾向にありますが、その事実が弁護士の存在意義を疑わせるもの ではありません。新たな案件を得る努力を惜しまず、チャンスを得るために準備を進めていけば、未来は良い方向へと 進んでいくことでしょう。
もし、収入面で不安を感じることがあったら、転職を視野に入れるのも一つの選択肢です。
転職エージェントに現状を相談することで、今まで見えなかった風景が見えてくるはずです。
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