2025年01月27日

弁護士が任期付き公務員を経験した後、どういった転職先が考えられるのか?

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弁護士としてのキャリアを歩む中で、「任期付き公務員」という選択肢に興味をもったことのある方もいるのではないでしょうか。

任期付き公務員とは、一定の期間だけ公務に携わる特別な職務形態で、法律知識を活かせるポジションが多くあります。
魅力的な給与、福利厚生、そしてキャリアに与える影響などを考えると、転職先としての可能性が十分に考えられる選択肢です。

本記事では、弁護士が任期付き公務員になるメリットや具体的な給与水準、その後の転職市場での評価などについて詳しく解説します。
「弁護士としてさらに市場価値を高めたい」「新しい働き方を模索したい」と考えている方は、ぜひ参考にしてください。

任期付き公務員とは

ビジネスを取り巻く環境の変化が目まぐるしいことに加え、行政も高度化・多様化・国際化しているため、それらの変化にフィットできる人材の育成が求められています。

しかし、これまでのように新卒採用してから内部で育成するだけでは対応しきれないため、有能な民間人材を採用して対応しようという方針のもと、「一般職の任期付職員の採用及び給与の特例に関する法律」(任期付職員法)が制定されました。

これに伴い、任期付き公務員が広く募集されるようになりました。
任期付き公務員を採用できるのは、“高度の専門的な知識経験又は優れた識見を有する者をその者が有する当該高度の専門的な知識経験又は優れた識見を一定の期間活用して遂行することがとくに必要とされる業務に従事させる場合”と定められています。

ここで言う、高度の専門的な知識経験には弁護士の知識経験が合致するため、弁護士を任期付き公務員として採用しようとする官公庁・自治体も少なくありません。

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弁護士が任期付き公務員になるメリット

弁護士が任期付き公務員になるメリットは、以下の3点です。

• 専門性の獲得、他の弁護士との差別化
• 人脈形成
• ワークライフバランスの充実

それぞれのメリットを詳しく解説します。

専門性の獲得、他の弁護士との差別化

弁護士が任期付き公務員になるメリットは、専門性を深めつつ、他の弁護士との差別化ができる点です。
通常の弁護士業務では、幅広い分野の案件を扱う機会が多い一方で、特定の分野において深く掘り下げた経験を積む機会は限られがちです。
任期付き公務員では、行政機関や特定の分野に特化した業務を担当することが多く、通常の弁護士業務では得られない専門的な知識やスキルを磨けます。

たとえば、行政法労働法公共政策に関する必要な業務を経験できます。こうした法律の解釈だけでなく、実践的な運用能力を習得できる点は、一般の弁護士業務では得がたい貴重な経験です。
こうした専門性は、今後の弁護士としてのキャリアにおける強みとなり、依頼者やクライアントからの信頼を得やすくなります。

人脈形成

人脈形成ができるのも弁護士が任期付き公務員になるメリットです。任期付き公務員として行政に携わることで、法律の適用や政策立案の現場を知る職員たちと密接に関わるチャンスが広がります。
任期付き公務員としての業務を通じて、行政機関の職員政策立案に関わる多様な人々とのネットワークを作り、後の弁護士生活に活かせます。

こうした人脈は、行政関連の相談案件の増加につながるだけでなく、依頼者に対する新しいソリューションの提案にも役立つでしょう。
弁護士生活とは別ですが、政策や立法に関わる活動に参加するチャンスが広がるかもしれません。こうした人脈を積極的に活用することで、将来の可能性が大きく広がるでしょう。

ワークライフバランスの充実

ワークライフバランスの充実が期待できるのも、任期付き公務員になるメリットです。
一般的な弁護士業務では、長時間労働や業務量の変動が大きいなどの理由で、家庭やプライベートの時間を確保できない場合があります。
一方、任期付き公務員の働き方は、一般的な弁護士業務と比較して労働時間や業務負担が比較的安定している傾向があります。

「育児や家庭の事情でキャリアを中断することを避けたい」と考える弁護士にとっても、任期付き公務員は魅力的な選択肢です。
育児介護中でも、法律の専門家としてのスキルを維持しつつ、仕事と家庭の両立を目指せる環境が整っています。一般的な弁護士事務所や個人開業弁護士に比べて、福利厚生が充実している点も魅力です。

有給休暇の取りやすさや、職場でのサポート体制も充実しているため、任期付きとはいえ長期的に安心して働ける点が評価されています。

弁護士が任期付き公務員になった際の給与

人事院によれば、「特定任期付職員の俸給月額」は、以下のように定められています。

俸給月額
1 380,000円
2 427,000円
3 477,000円
4 539,000円
5 615,000円
6 718,000円
7 839,000円

引用:人事院「民間人材の任期付採用」

年収にすると、以下の表のようになります。

年収(俸給月額×12)
1 4,560,000円
2 5,124,000円
3 5,724,000円
4 6,468,000円
5 7,380,000円
6 8,616,000円
7 10,068,000円

任期付き公務員の給与には基本給(俸給)以外にも、さまざまな手当が支給されます。これらの手当は勤務地や勤務期間に応じて支給額が変動します。主に、「地域手当」「期末手当」の2つです。

地域手当は、勤務地域の生活費や物価水準に応じて支給される手当です。とくに物価や生活費が高い地域に勤務する場合、この手当の割合が高くなる傾向があります。
たとえば、東京都特別区(1級地)で勤務する場合、俸給月額の20%が地域手当として加算されます。

期末手当はいわゆるボーナスで、年に2回(6月と12月)に分けて支給されるものです。年間の給与に対して、3カ月分または4カ月分の俸給を基準に計算されます。
任期付き公務員の場合も、通常の公務員と同様に安定したボーナスが支給されるため、年間収入の一部として計画を立てやすいのが特徴です。

特定任期付職員の給与イメージ

考えうる最高の収入額としては、「7号棒、東京都特別区勤務、期末手当4カ月分の場合」が挙げられます。その場合は以下の金額になることが想定されるでしょう。

(月額839,000円 + 地域手当839,000円 × 20%) × 12カ月 + 期末手当839,000円 × 4カ月分
年収15,437,600円

以下、詳細となります。

給与
俸給
(基本給)
月額 839,000円(7号棒)
地域手当 東京都特別区(1級地)の場合、俸給の20%
839,000円 × 20% = 167,800円
合計月収 839,000円 + 167,800円
= 1,006,800円
年間の基本給・地域手当 1,006,800円 × 12カ月
= 12,081,600円
期末手当
(ボーナス)
年間4カ月分
839,000円 × 4カ月 = 3,356,000円
合計年収 12,081,600円(基本給+地域手当)+ 3,356,000円(期末手当)
= 15,437,600円

実際の給与額は、職務内容や地域、号棒(給与ランク)によって異なりますが、このような条件下では年収1,500万円超えが可能であるとわかります。
とくに地域手当が加算される地域での勤務は、給与額を大きく押し上げるポイントになります。

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任期付き公務員を経験した弁護士の転職先例

任期付き公務員を経験した弁護士の転職先例任期付き公務員の求人にはその名の通り、定められた任期が明記されています。
任期は2~3年の場合が多いものの、採用した日から5年を超えない範囲内で更新されるケースも見られます。

しかし、法律で任期付き公務員の任期は最長で5年以内と決まっているため、任期付き公務員を経験した弁護士は次のキャリア選択を迫られます。そこでまず候補となるのがもともと在籍していた法律事務所への復帰です。
弁護士業界では任期付き公務員は出向先の選択肢の1つとして知られており、任期付き公務員としての勤務期間を専門性獲得のための期間として捉えている事務所も少なくありません。

こういった背景もあり、法律事務所に所属したまま任期付き公務員として働いている弁護士もいます。
もちろん他の法律事務所へ転職することも選択肢の1つとなります。任期付き公務員として働くことで専門性を養うことができるため、それを活かせる新しい事務所へと転職し、新たなキャリアを積み重ねていきます。

法律事務所だけでなく、企業内弁護士(インハウスローヤー)として働いたり、独立開業したり、といった選択肢も候補となってきます。

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任期付き公務員を経験した弁護士は転職しやすい?

任期付き公務員は弁護士業界でも出向先の1つであり、特定分野への専門性を培うことができるため、そのキャリアを魅力的なものとして捉えている法律事務所は少なくありません。

その理由は任期付き公務員だからこそ得られる専門性・着眼点にあります。
自治体や公官庁などの公的機関で担当する業務は、通常の法律事務所勤務ではなかなか経験できない業務も多く、公官庁側からの視点を身に着けることができるといったメリットもあります。

どのような業界でも希少な専門性をもつ人材は高い評価を受けやすい傾向があり、弁護士業界は尚更です。
難関資格である弁護士資格を取得している以上、弁護士はそれぞれ専門性の高い人材であるといえますが、そのような弁護士が勤務する法律事務所では専門性とともに多様性も求めています。

任期付き公務員として得られた専門性は法律事務所の求める多様性にも合致するスキルであるため、転職時には有利に働くケースが多々見られます。
ある程度の規模の事務所となれば、既に特定分野に強い弁護士が在籍していることが多いので、転職するタイミングによって求人のニーズに合致するかどうかは流動的となります。

このため、最近ではカジュアル面談の機会を設けるなどして、本選考の前にお互いの得意分野やニーズなどを擦り合わせることも増えてきています。
カジュアル面談とは、その面談が採否の判断に影響を及ぼすものではなく、あくまでお互いをよく知るために企業の人事と応募者が1対1で対話する機会のことをいいます。
いわば選考の前段階として行うステップであり、後々のミスマッチを避けるための貴重な機会に他なりません。
その他では、転職エージェントを活用することで、求人企業と応募者の双方のニーズを事前に擦り合わせる方法もあります。

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自治体や政府機関が募集している任期付き公務員の求人例

弁護士向けの任期付き公務員の求人例をいくつかご紹介します。なお、MS Agentでは任期付き公務員の求人を取り扱っていないため、詳細は各自治体や省庁の公式ウェブサイトをご確認ください。

『証券取引等監視委員会』

任期
採用時から原則として2年程度
業務内容
・リスク管理・内部管理態勢等の適切性・実効性
・法令違反行為の有無
・リスクの所在が不明確な商品の取り扱いの有無及びその場合の勧誘実態等
・マネー・ロンダリング対策、テロ資金供与対策への取組状況
・サイバーセキュリティ対策の十分性
・「顧客本位の業務運営」を実現するための施策の実施状況

『国土交通省』

任期
採用予定日より3年間
業務内容
・情報公開開示請求に係る不開示判断等の適法性の精査
・情報公開に係る審査請求事案の対応
(情報公開審査会への諮問に係る理由説明書の作成等)
・情報公開に係る訴訟事案の対応、地方機関等への指導・助言

『地方自治体』

任期
採用予定日より2年間
業務内容
・法律的課題に係る職員からの相談への助言、指導
・職員の法務能力向上に向けた研修の実施
・指定代理人として訴訟事件への対応
・審査請求への対応 など

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まとめ

任期付き公務員として働く経験は、弁護士にとって専門性を深めたりキャリアの幅を広げたりする貴重な機会となります。
行政法や公共政策など特定の分野での専門性を磨き、他の弁護士との差別化を図れる点が大きなメリットです。

給与面でも、地域手当や期末手当が支給されることで、安定した収入を得られる点も魅力的です。
一方で、任期付き公務員としてのスキルや経験を活かせる求人はある程度限られているため、転職市場での選択肢を広げるためには工夫が必要になります。

そのような場合には、転職エージェントの活用がおすすめです。弁護士の転職支援に特化したMS Agentでは、専門のキャリアアドバイザーが個々の希望や経験に応じた求人を提案しています。
さらには応募書類のブラッシュアップや面接対策、内定後の条件交渉まで、手厚いサポートを無料で受けられます。

任期付き公務員として培った専門性を最大限に活かし、理想の転職先を見つけるためにも、ぜひMS Agentを利用してみてはいかがでしょうか。

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この記事を監修したキャリアアドバイザー

佐藤 颯馬

大学卒業後、新卒でMS-Japanに入社。
法律事務所・会計事務所・監査法人・FAS系コンサルティングファーム等の士業領域において事務所側担当として採用支援に従事。その後、事務所側担当兼キャリアアドバイザーとして一気通貫で担当。

会計事務所・監査法人 ・ 法律・特許事務所 ・ コンサルティング ・ 金融 ・ 公認会計士 ・ 税理士 ・ 税理士科目合格 ・ 弁護士 を専門領域として、これまで数多くのご支援実績がございます。管理部門・士業に特化したMS-Japanだから分かる業界・転職情報を日々更新中です!本記事を通して転職をお考えの方は是非一度ご相談下さい!

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