外資系法律事務所と日系法律事務所の違い、転職のポイントを解説!
法律事務所には、日系法律事務所のほか、外資系法律事務所が存在します。
外資系法律事務所は、よりグローバルな視点で法的サービスを展開しているため、案件の種類も日系法律事務所に比べるとバリエーション豊かです。
また、外資系法律事務所は日系法律事務所と働き方のスタンスが異なるところが多く、求められるスキルも異なります。
この記事では、外資系法律事務所への転職を目指している方向けに、外資系法律事務所・日系法律事務所の違いについて解説します。
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外資系法律事務所とは
外資系法律事務所とは、他国から日本に進出している海外の法律事務所をいいます。
近年、日本国内における外資系法律事務所の数は急増しており、その背景には2003年の「外国弁護士による法律事務の取扱いに関する特別措置法(外弁法)」改正があります。
古くは1980年代から、アメリカ・ヨーロッパ諸国等による外弁法の改正は規制緩和が要請されていたものの、2003年の法改正は以下の通り外資系法律事務所にとって大きな意味を持つものとなりました。
- ・外国弁護士による日本弁護士の雇用を許可
- ・外国弁護士が日本弁護士と共同事業を行う場合の対象範囲制限撤廃
日本に多く存在する外資系法律事務所の種類としては、アメリカ系・イギリス系・中国系の事務所があげられます。
ただし、日本の拠点では比較的小規模な事務所が多く、100名を超える弁護士が所属している事務所はごくわずかです。
代表的な外資系法律事務所
日本における代表的な外資系法律事務所には、次のようなものがあげられます。
英国系
英国系の外資系法律事務所では、次のような事務所が有名です。
事務所名 | 特徴 |
---|---|
クリフォードチャンス法律事務所外国法共同事業 |
・世界に33箇所のオフィス、約3,500人の弁護士を擁する世界最大級の国際ローファームの日本拠点 ・日本拠点は日本弁護士・外国弁護士合わせて約50人の規模で、ファイナンスから労働問題まで幅広い法的サービスを提供している 【出典元:クリフォードチャンス法律事務所外国法共同事業】 |
フレッシュフィールズブルックハウスデリンガー法律事務所 |
・1988年に東京オフィス開設 ・様々な案件を取扱い、日本企業が関わるクロスボーダー案件・グローバル案件の経験が豊富 【出典元:フレッシュフィールズブルックハウスデリンガー法律事務所】 |
外国法共同事業法律事務所リンクレーターズ |
・創立から186年の歴史を有する法律事務所で、日本法および外国法のリーガルサービスを完全統合した法律事務所としては日本初 ・21ヶ国、31都市に2,500人の弁護士を擁している 【出典元:外国法共同事業法律事務所リンクレーターズ】 |
米国系
米国系の外資系法律事務所では、次のような事務所が有名です。
事務所名 | 特徴 |
---|---|
ポールヘイスティングス法律事務所 |
・アメリカ・アジア・ヨーロッパの各地域に拠点を展開するグローバル法律事務所で、東京オフィスは1988開設 ・企業法務やM&A、コンプライアンスおよびリスクマネジメントなど、幅広い法律分野を取り扱う 【出典元:ポールヘイスティングス法律事務所】 |
ベーカー&マッケンジー法律事務所 |
・日本での活動を開始して50年を迎える老舗外資系法律事務所 ・収益の2/3は5ヶ国以上にまたがる案件から生じており、クライアント企業は500社を超える 【出典元:ベーカー&マッケンジー法律事務所】 |
ホワイト&ケース法律事務所/ホワイト&ケース外国法事務弁護士事務所 |
・東京オフィス在籍の日本法・外国法の弁護士は、ほぼ全員が日本語・英語に堪能なバイリンガル ・外国法事務弁護士のほとんどが日本に定住しており、日本の商慣習や産業の動向、諸外国との文化の違いなどに明るい 【出典元:ホワイト&ケース法律事務所/ホワイト&ケース外国法事務弁護士事務所】 |
外国法共同事業 ジョーンズ・デイ法律事務所 |
・2,400名を超える弁護士を擁し、5大陸に40オフィスを有する規模 ・ファーム全体でクライアントの課題解決に対応するスタンスのため、クライアントは多様な法域・分野にまたがる課題の解決が期待できる 【出典元:外国法共同事業 ジョーンズ・デイ法律事務所】 |
モリソン・フォースター外国法事務弁護士事務所 |
・世界各国18箇所の事務所に1,000名を超える外国弁護士が在籍 ・業務分野は多岐にわたるが、特にテクノロジー・ライフサイエンス・ファイナンス分野に明るい 【出典元:モリソン・フォースター外国法事務弁護士事務所】 |
中国系
中国系の外資系法律事務所としては、金社律師事務所(King & Wood Mallesons)がよく知られています。
世界各地に31箇所のオフィスを開設しており、所属弁護士は3,000名以上と大規模です。
金社律師事務所は、1993年に設立された金杜法律事務所(King & Wood)と、1987年に誕生したオーストラリアのMallesons Stephen Jaques法律事務所が統合して生まれた法律事務所です。
中国とオーストラリアという、アジア・オセアニア地域の大国にある法律事務所が手を組み、日本のみならずシンガポール・ヨーロッパ・アメリカ・中東などにもオフィスを構えています。
「東洋と西洋を結び付け、世界最高レベルのリーガルサービスを提供する」のがミッションの一つであり、アジアをホームグラウンドとしていることから東西の文化に精通し、多様な思考・豊富な専門知識を持つ弁護士が在籍しているのが特徴です。
【出典元:金社律師事務所(King & Wood Mallesons)/History】
外資系法律事務所と日系法律事務所の違い
外資系法律事務所は、海外各国に本拠地があることから、日系法律事務所とは異なる仕組みで運営されているケースが多く見られます。
以下、複数の視点から、外資系法律事務所と日系法律事務所の違いを解説します。
資本・本国の方針の違い
一般的に「外資系」と聞くと、資本が外国由来であるイメージを持ちますが、外資系法律事務所では必ずしもそうとは言い切れません。
あくまでも、世界にまたがる法律事務所ネットワークの一部としてその名前を用いているだけで、外国の法律事務所と資本関係にあるとは限らないのです。
しかし、本国の方針の影響は大きく、日本人弁護士が出世できる土壌かどうかも事務所によって違いが見られます。
また、担当する案件に関しては、本国と日本の関係性が反映されることが多く、国際情勢によって経験できる業務に違いが生じることも予想されます。
日系法律事務所の場合、基本的に日本国内の視点から諸々の判断を行う形になるため、この点に関しては転職時にギャップを感じる人も多いかもしれません。
業務の違い
日系法律事務所では、主に日本の法律に基づいて案件を処理していくことがほとんどです。
これに対して外資系法律事務所では、グローバルな法的サービスを提供するケースが多いため、ゼネラリストよりはスペシャリスト的な働き方を要求される可能性があります。
例えば、訴訟に強い事務所もあれば、特定のファイナンス分野に強い事務所もあります。
クライアント企業もグローバル展開しているところが多く、必然的に日本国外の動向を視野に入れつつ案件を処理していくことが求められます。
言語の違い
外資系法律事務所では、様々なバックボーンを持つ人たちが集まるため、基本的には事務所内の共通言語として英語が用いられます。
この点は、日系法律事務所との大きな違いの一つに数えられるでしょう。
英語の書類のリーディング・ライティングだけでなく、日常のコミュニケーションを英語でとらなければならない事務所もあります。
立場が上がるにつれて、英語によるディスカッション・交渉などの機会も増えることから、転職を希望する際、また転職後には英語力を継続的に磨き続ける必要があるでしょう。
働き方の違い
多忙である点については、日系法律事務所も外資系法律事務所も違いはありませんが、外資系法律事務所は働き方がやや変則的になる傾向が見られます。
本国の法律事務所とやり取りする場合、現地時間でミーティング等が開催されるケースが多く、スタート時間が深夜・早朝になることも十分考えられます。
給与の違い
給与面では、入所年次が短い時期ほど、外資系法律事務所の方が年収は高くなる傾向にあります。
以下、外資系法律事務所と、日系5大法律事務所の大まかな年収を表にまとめました。
入所年次 | 外資系法律事務所 | 日系5大法律事務所 |
---|---|---|
1年目 | 1,100~1,500万円 | 1,000~1,200万円 |
3年目 | 1,200~1,700万円 | 1,300~1,500万円 |
5年目 | 1,500~2,000万円 | 1,500~2,000万円 |
上記の表を見ると、1年目は100~300万円ほど外資系法律事務所の方が年収は高くなっています。
しかし、3年目になると5大法律事務所より年収が下がるケースもあり、年収の幅も外資系法律事務所は広くなっています。
外資系法律事務所は選考なにを重視する?
外資系法律事務所への転職に成功するためには、どのような実務経験・スキルが求められるのでしょうか。
以下、重要なものを2つご紹介します。
企業法務経験はほぼ必須
外資系法律事務所は、中途採用において即戦力を求める傾向にあります。
特に、法律事務所で企業法務案件を経験していることは、転職においてほぼ必須といえるでしょう。
企業法務と聞くと、インハウスローヤーでも問題ないと考えるかもしれませんが、あくまでも「法律事務所」で案件を処理したかどうか、事務所の取扱業務を経験したことがあるかどうかが問われます。
よって、インハウスローヤーからの転職は厳しいかもしれませんが、法律事務所できちんと仕事をしていたことが説明できれば、ポテンシャルを評価して採用されるケースも十分考えられます。
英語力
日本国外にバックボーンを持つ弁護士が働く外資系法律事務所では、英語が共通言語となるため、転職にあたってはビジネス英語レベルの実力が必要です。
スタート時は読み書きだけでOKという場合であっても、将来的には英語メインで業務を進めることがほぼ確実であることから、TOEICのハイスコア(800点以上)を目指しつつ英会話の経験を積むことが求められます。
外資系法律事務所に転職するメリット
日系法律事務所ではなく、あえて外資系法律事務所を選ぶメリットとしては、どのようなものが考えられるのでしょうか。
以下、主なものをいくつかご紹介します。
実務を通して外国の法律・文化に触れられる
海外のオフィスで働く弁護士とのやり取りが多い外資系法律事務所では、実務を通して外国の法律・文化に触れる機会が多くなります。
世界各国の法律・文化に詳しくなると、例えば将来的にインハウスローヤーへと転職した際に、外資系企業との折衝等をスムーズに行えます。
仕事とプライベートのメリハリがある
外資系法律事務所では業務が細分化されていることが多く、時間的リミットを決めて効率的に働ける職場が多いようです。
よく「働きすぎ」といわれる日本人ですが、海外の弁護士はプライベートも大切にするため、転職を機に仕事とプライベートのメリハリをつけて働きたい人にとってはおすすめの職場です。
外資系法律事務所に転職する際の注意点
職場環境としては魅力的な面も多い外資系法律事務所ですが、転職する際は以下の点にも注意が必要です。
自分のクライアント開拓が難しい
将来的に独立して事務所を構えようと考えている方にとっては、外資系法律事務所への転職がキャリアプランを妨げるおそれがあります。
外資系法律事務所では、海外のクライアントや国内の大手企業とやり取りする機会が多い反面、日系法律事務所における主なクライアントの「国内企業」との関係構築が難しくなります。
海外で開業するという選択肢を考えている方にとっては、外資系法律事務所で学べることは数多く存在するかもしれません。
しかし、日本国内での独立を視野に入れている方は、転職にあたり別の選択肢も検討しておくとよいでしょう。
アソシエイトはパートナーの補佐業務が多い
外資系法律事務所の場合、若手のアソシエイト弁護士がクライアントとの窓口を担当することはあまりありません。
外資系法律事務所は日系法律事務所と比べてタイムチャージが高く、若手に責任や業務をすべて任せることはクライアントとしても、事務所としてもリスクがあります。クライアントとの商談や交渉はパートナークラスの年次を重ねた弁護士が担当することが通例ですので、アソシエイトのうちはパートナーとチームを組み、案件の補佐に入ることが一般的です。
もし、若手のうちからクライアントとの直接のやり取りを希望しているのであれば、中小~中堅の日系法律事務所の方が向いている可能性があります。
日本から撤退するリスクがある
外資系法律事務所はドライな側面もあり、良くも悪くも売り上げを重視します。
日本に拠点を置くことが、売り上げの観点で有益か否かという点は常に本国からみられており、採算が合わないとあれば日本から撤退してしまうリスクも大いにあります。
近年は円安が進んでいるため、国際経済の影響なども十分に考慮したうえで、転職するか否かを判断すべきでしょう。
まとめ
日本に進出している外資系法律事務所は、その多くが英国・米国・中国系となっており、それぞれに特徴があります。
総じてグローバルな案件を抱えており、本国の動きや国際情勢に左右されるケースも珍しくないことから、転職当初から日系法律事務所とは異なる働き方を期待されるでしょう。
しかし、日本国内で働くだけでは経験できない様々な案件・クライアント・弁護士等の出会いがあることから、弁護士としてのスキルアップだけでなく人間的成長を求める方には最良の職場の一つといえます。
日系法律事務所の実務経験を重ねた上で、新しいフィールドに打って出たいとお考えの方は、転職を検討してみてはいかがでしょうか。
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この記事を監修したキャリアアドバイザー
大学卒業後、食品メーカー営業を経て2005年MS-Japan入社。企業側営業担当を1年半経験し、以降はカウンセラー業務を担当。若手中堅スタッフの方から、40~50代のマネージャー・シニア層の方まで、年齢層問わず年間500名以上をカウンセリングさせていただいています。
企業管理部門全般~会計事務所など士業界、会計士・税理士・弁護士資格者まで弊社の特化領域全般を担当しています。
経理・財務 ・ 人事・総務 ・ 法務 ・ 経営企画・内部監査 ・ 会計事務所・監査法人 ・ 役員・その他 ・ 公認会計士 ・ 税理士 ・ 弁護士 を専門領域として、これまで数多くのご支援実績がございます。管理部門・士業に特化したMS-Japanだから分かる業界・転職情報を日々更新中です!本記事を通して転職をお考えの方は是非一度ご相談下さい!
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