2025年06月19日

「FASに転職して後悔…」失敗しないための注意点やメリット・デメリットを解説!

財務に関するアドバイザリー業務など、専門性が高い業務に従事するFASは、会計・監査・財務の経験者にとって魅力的な転職先でしょう。
その一方で、FASに転職したことを後悔する人も少なくないため、自分に合った職場かどうか慎重に検討する必要があります。

この記事では、FASへの転職を検討している人に向けて、転職の注意点メリット・デメリットについて解説します。

そもそもFASとは?

ここで、FASの基礎知識をおさらいしておきましょう。
FASとは会計関連のコンサルティングに特化したファームです。
FASは、その規模や事業形態によって、主に以下の3つに分類できます。

分類 特徴
Big4系FAS 上場企業やグローバル企業の大型案件を扱う
税理士法人系FAS 税理士法人を母体とする
独立系ブティック型FAS グローバルファーム等に所属せず、独立して経営を行っており、少数精鋭、得意分野が明確にあるといった特徴を持つケースが多い

また、FASの業務内容として、代表的なものは「M&A」「事業・企業再生」「フォレンジック」の3つです。
次の章でそれぞれの業務について詳しく解説します。

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FASの業務内容

M&A

M&A支援はFASの中核ともいえる業務です。
M&AにおいてFASが対応する業務範囲はファームによって異なりますが、主には以下の4つの業務が挙げられます。

  • 1.財務DD(デューデリジェンス)
  • 2.バリュエーション
  • 3.PMI(ポスト・マージャー・インテグレーション)
  • 4.PPA(パーチェス・プライス・アロケーション)・減損テスト

以下で4つの業務の内容を紐解いていきましょう。

1.財務DD(デューデリジェンス)

財務DDとは、買収対象企業について財務上の価値を知るための調査です。
法務DDや労務DDは、法律事務所や社労士事務所などが別途対応するケースが多いため、FASでは財務DDをメインに行います。
主に「リスクの洗い出し」に用いるもので、自社で行うことも可能ですが、かなりの人員数と専門知識を持ったチームが必要になるため、専門のコンサルティングファームに委託するケースがほとんどです。
DDは監査と比較してより集中的に短期間で実施される傾向があり、分析・質問が中心です。
監査経験が活かせる業務であることから、監査法人から転職してきた人の多くは、最初に財務DDを任されることが多い傾向にあります。

2.バリュエーション

バリュエーションとは、日本語に訳すと「企業価値評価」となり、買収対象企業の買収価値(株価)を算定する業務です。
買い手側の企業は、買収価格と比較し、企業価値や既存事業とのシナジー効果などの複合的要因を考慮して買収するか否かを決定します。
対して売り手側は、不当に安く買われないように、FASにバリュエーションを依頼するケースもあるため、M&Aの規模や状況によって様々です。
バリュエーションは、財務以外にも経営や事業に対しての理解が求められるため、監査法人業務からすぐに対応できる業務ではありませんが、会計・財務知識がある分キャッチアップしやすい分野ではあるといえるでしょう。

3.PMI(ポスト・マージャー・インテグレーション)

PMIとは、「M&A後の統合」に関連する業務です。
M&Aは買収して終わりではなく、経営戦略・ブランド・システム等の統合において、買収後も2社(買収元企業・買収先企業)の間で調整が必要になります。
監査法人で会計士として勤務していた人であれば、会計制度や内部統制の統合を任される可能性があるでしょう。
分野によって求められるスキルが異なるため、PMI未経験者はややハードルが高めとされます。

4.PPA(パーチェス・プライス・アロケーション)・減損テスト

PPAは、買収時における取得原価の配分に関する手続きのことです。
M&A時はバランスシートに計上されている資産・負債を引き継ぐ形になりますが、無形資産も引き継がれるため、その無形資産を会計的なPPAによって識別します。
次に減損テストですが、こちらは「のれん」の減損兆候から測定までをテストするものです。
例えば、日本基準と国際会計基準(IFRS)でアプローチが異なるなど、*会計基準に関する高度な専門知識や判断が求められる業務です。

フォレンジック

フォレンジックは、不正調査にあたる業務で、会計不正のほかサイバー攻撃・製品データ偽装といった分野の調査も含まれます。
企業の不正会計が発覚したケースでは、関係者への聞き取り・メールチェックなど、企業の深部まで入り込んだ調査を実施し、不正が発生した原因発見を行い、有価証券報告書(有報)の過年度遡及修正を行います。
また、同様の不正を発生させないためのSOX法対応支援までがワンセットで行われる場合がほとんどであり、一連の対応が完了したら調査報告書を作成する流れです。

事業・企業再生

事業・企業再生業務は、企業の業績や財務状態を健全化するサービスで、売上増を目指すというよりも「資金繰り・利益構造」を改善する目的で行われます。
サポート内容は、事業計画書を作成して金融機関に提案後、追加融資を受けるようなイメージになります。
事業・企業再生では関与度合いや規模によって異なりますが、基本的な流れとしては事前調査を行った後に再生計画を立案します。
その後の実行サポート、実行スケジュールに遅れやエラーがないかといったモニタリングを行います。

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FASへの転職を後悔する5つの理由とは?

やりがいが大きく、魅力的な業務が多いFASですが、実際に転職すると諸々の理由から後悔する人も少なくありません。
転職へ向けて情報収集する中で「FASはやめとけ!」という噂を耳にした人も多いのではないでしょうか。
ここでは、FASへ転職した人が後悔してしまう理由転職のデメリットについて解説します。

残業が多く、負担が大きい

FASでは複数のプロジェクトを同時に担当することが多く、進捗次第では残業時間が多くなる場合もあります。
また、クライアントの要望や社会情勢の動きによって、突発的な残業が発生することも多いでしょう。
ワークライフバランスを重要視する人や残業時間を理由に転職を検討している人は、FASとマッチしない可能性が高いと考えられます。

希望の案件・業務ができない

FASへの転職を目指す人の中には、希望する業務内容が明確に決まっている人も多いでしょう。
しかし、転職先の社内状況や自身の保有スキルによっては、必ずしも希望する業務に携われるとは限りません。
例えば、事業・企業再生の経験を積みたい人がフォレンジック業務を担う部門に配属されるなど、求める経験や知識、スキルを身につけることができないケースもあるでしょう。
特に、実務経験やスキルがあるのにそれを活かせない仕事を任された場合、将来のキャリアプランに支障が出る可能性もあります。

Big4やグローバルファーム以外のFASは、日系企業の国内案件が多く、クロスボーダー案件を経験しにくい傾向です。
「英語の使用機会を増やしたい」「グローバルに活躍したい」と考えている人は、クロスボーダー案件を安定的に取り扱っているファームを選ぶ必要があります。

入社前に「希望する業務に従事できるか」「入社後に異動となる可能性はあるか」など、社内の情報を把握しましょう。
また、職務経歴書や面接で、希望する案件や業務を明確に伝えることも重要です。

獲得できるスキルに偏りがある

FASは、専門分野を究める働き方であり、入社時から担当業務が変わらないケースも珍しくありません。
しかし、キャリアプランによっては、この業務の偏りが将来的にデメリットになることもあります。
例えば、将来的に他企業や投資銀行等に転職を考える場合、目指すポジションによってはDDの業務経験だけでは不足と感じられるケースもあるでしょう。。
DD以外にも、バリュエーションやPMIなどの経験も積んでおくと有利になると考えられます。
転職では、目先のやりたいことだけでなく、将来的なキャリアプランまで見据えて応募先を選ぶことが重要です。

常に学習し続ける必要がある

FASは、高度な専門知識と経験を要する難易度の高い案件に対応し、クライアントへ価値を提供することで、高額の報酬を受け取ります。
そのため、FASで働く社員は、高いレベルのサービスを提供できる知識・スキルが求められます。
担当するクライアントや社会情勢などによって、求められる知識・スキルが変化するため、常に学習を続ける必要があるでしょう。
激務に加え、自主的な学習が求められることにストレスや疲弊を感じ、転職を後悔するケースも多く見受けられます。

実力主義の競争社会に疲れてしまう

FASに限らずコンサルティングファーム全般に言えることですが、FASは特にプロジェクト単位での成果が明確に評価されるため、同時期に入社した人と年収や役職に差が出ることも多いでしょう。
年功序列で評価される企業で働いていた人は、社内での競争が激しい環境に慣れるまで時間がかかる可能性があります。

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FASへ転職するメリットとは?

FASに転職して後悔した人もいれば、「道が大きく開けた」と感じる人もいます。
ここでは、FASへの転職で享受できるメリットについてご紹介します。

専門性が高められる

「獲得できるスキルに偏りがある」というデメリットは、裏を返せばメリットになります。
FASは特定の業務に精通しやすい職場環境であることから、専門性を武器にしてキャリアを積みたい人に適しています。
競争社会で揉まれながら、特定分野の専門性を高めることで、自身の市場価値向上にもつながるでしょう。

新しい業務が多く刺激的

会計職として働く中で、雑務に従事することが多かった人は、FASに転職することで新たなジャンルの業務に携われるチャンスが増えます。
これまで監査を中心に担当してきた人も、FASで新たな業務に従事することで、別の道が開ける可能性があるでしょう。

クライアントに貢献している実感が持てる

FASで働くモチベーションの一つに、クライアントに貢献している実感があげられます。
監査法人での監査業務は、会計の誤りを指摘する立場であるため、クライアントからは距離を感じられることがあります。
対して、M&Aや企業再生に向けたアドバイスを行うFASは、「クライアントの役に立っている・頼られている」という実感を得やすい傾向です。

年収が高い

年齢ではなく自分の努力・実績を評価して欲しいと考えている人にとって、FASは魅力的な職場の一つに数えられます。
FASの年収は、ファームの規模や個人の経験・スキルによって大きく異なりますが、入社時のベースとなる年収は600~800万円が一般的です。
昇給率が高いFASに転職した場合、早期に年収1,000万円超えを果たせる可能性もあります。
即戦力として期待される経歴を持つ方であれば、入社時に年収1,000万円を超えるオファーを受けることもあります。

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FASへの転職で失敗しないための注意点

FASへの転職で失敗しないための注意点

FASへの転職で後悔・失敗しないためには、どのような点に気を付けるべきなのでしょうか。
以下、FASに転職する際の注意点を解説します。

仕事内容をしっかり確認する

FASを目指す際は、入社後に担当する仕事内容をしっかり確認しておきましょう。
場合によっては、監査から離れたかったのに結局監査の仕事をしているケースもあります。
面接では具体的な仕事内容を丁寧に確認することが重要です。
ただし、求人情報や公式サイトなどに記載されている内容を質問してしまうと、情報収集不足としてマイナス評価につながる可能性があります。
事前に収集した情報をもとに、さらに掘り下げる質問をすることで理解を深めることができるでしょう。

明確なキャリア目標を決める

FASへの転職も含め、転職を成功させるためには、明確なキャリア目標を決めておく必要があります。
例えば、投資銀行へのステップとしてFASを想定しているなら、FASで経験したいプロジェクトから逆算して職場を選ぶことが大切です。

転職エージェントで情報を収集する

FASへの転職活動は、自力で求人を探して応募するよりも、転職エージェントを経由することで効率的に進めることができるでしょう。
転職エージェントとは、転職希望者と採用企業をマッチングするサービスです。
求人の紹介はもちろん、履歴書・職務経歴書の作成サポートや面接対策、内定後の条件交渉まで、転職活動をトータルサポートしているため、安心感を持って進めることができます。

転職エージェントには、様々な業界・職種の求人を取り扱う総合型と、特定の業界・職種に精通した特化型があります。
FASへの転職を目指す場合、FASやコンサル業界に特化した転職エージェントを選ぶことで希望に合った求人を見つけやすくなるでしょう。
また、FASに特化した転職エージェントでは、FASの最新転職市場と企業側の内情を詳しく把握しているため、情報収集手段としてもおすすめです。

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FASの次のキャリアは?

最後に、FASに転職後のキャリアについて解説します。

コンサルティングファーム

クライアントの課題を解決するというミッションを抱える点において、コンサルティングファームはFASと類似する職場です。
FASで専門分野を究めることで、スペシャリストとして評価された結果、年収アップにつながるケースも見受けられます。

事業会社(経営企画、M&A等)

FAS経験者が事業会社に転職すると、企業内部の当事者としてビジネスを把握できるため、新しい体験・やりがいを得やすいでしょう。
ワークライフバランスの観点からも魅力的であることから、FASで勤務する中で体力の限界を感じてきた人は、転職先の候補の一つとして検討したいところです。

ベンチャー・スタートアップ

常に優秀な人材を求めているベンチャー・スタートアップ企業は、FAS経験者や若手会計士を将来のCFO候補として採用することがあります。
未経験の業務に体当たりしなければならないケースも多いため、場合によってはFAS以上の激務になることも予想されますが、その分だけ得るものも多く、経営に幅広く関与する貴重な体験ができるでしょう。

ファンド

一口にファンドといっても様々な種類がありますが、FASと親和性が高いのはPEファンドです。財務会計・M&Aに精通した人材は活躍が期待されるでしょう。
PEファンドの目的は、投資して企業価値を高めた後で資金回収することであり、そのプロセスで様々なスキルを得られるはずです。

投資銀行

投資銀行への転職難易度は非常に高い傾向にありますが、FASで専門性を高めることで、転職のチャンスが巡ってくる可能性は十分あります。
クライアントの質もFAS時代とは変わり、クライアントに対して直接資金調達のサポートに携われる点も魅力です。

同業他社のFAS

FASでの実務経験を糧に、同業他社のFASを狙うのも、キャリア構築の観点からは魅力的です。
転職先でそれぞれ特徴や任される仕事も異なるため、自分の目的に合わせて複数のFASを経験しておくのもよいでしょう。

転職でキャリアアップをかなえる

まとめ

この記事では、FASへの転職を後悔する理由をはじめとして、FASで働くメリットや転職の注意点などを解説しました。
FASで経験する業務は、総じて専門性に富んでいます。特にM&Aにおいては、財務DDのみを担当するケースもあるなど、特定の分野に特化して経験を積むことが可能です。
プロジェクトが増えると残業時間も長くなる傾向にあり、自分がやってみたい仕事を任されない可能性もありますが、一方で年収・やりがいの観点からは魅力的な職場の一つです。
FAS経験後に検討できる転職先も豊富であり、経験やスキルによっては投資銀行など難易度の高い転職先も選択肢に入るでしょう。
求人を探す際は、公開されている求人票を鵜呑みにせず、事前に転職エージェントで情報収集することをおすすめします。

  • #FAS
  • #FASやめたい
  • #FAS後悔

この記事を監修したキャリアアドバイザー

林 良樹

大学卒業後、カーディーラ・小売業を経験し、2008年からMS-Japanでリクルーティングアドバイザーとキャリアアドバイザーを兼務しております。

会計事務所・監査法人 ・ コンサルティング ・ 公認会計士 ・ 税理士 ・ USCPA ・ 弁護士 を専門領域として、これまで数多くのご支援実績がございます。管理部門・士業に特化したMS-Japanだから分かる業界・転職情報を日々更新中です!本記事を通して転職をお考えの方は是非一度ご相談下さい!

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