常勤監査役の年収(報酬)はどれぐらい?企業規模や上場区分別で違いはあるの?



常勤監査役の年収は、その企業の規模や上場区分によって大きく異なっており、経営状況や業界の慣習などによる影響を強く受けます。
本記事では、常勤監査役の年収がどの程度であるのか、企業規模別、上場区分別に詳しく解説するほか、報酬の決定方法や種類についても取り上げていきます。
常勤監査役を目指す方や、現役の監査役の方々にとって、今後のキャリア形成にお役立ていただける内容となっているので、ぜひ参考にしてください。
そもそも常勤監査役とは?
監査役とは、企業において取締役の職務や経営活動を監視し、法令遵守や経営の健全性を確保するための重要な役職です。
監査役の主な役割は、取締役の業務執行が法令や定款に従って適正に行われているかを監視する「業務監査」と、財務諸表や計算書類の正当性を確認する「会計監査」です。
これにより、企業の経営判断が適切であるかを確保し、不正や不当な行為が行われていないかをチェックします。
不正が見つかった場合には、取締役会や株主総会に報告する義務を負い、迅速な対応が求められます。
監査役は株主総会で選任され、会社法によって役員としての地位が定められています。
常勤監査役は、その名の通り、専業で監査業務を行う役割を担い、企業の内部から選ばれることが一般的です。
この理由は、社内出身者であれば、企業内部の事情に精通しているため、業務や組織の状況に関する深い理解をもとに、効率的な監査を行うことが可能となるからです。
また常勤監査役は、資本金5億円以上や負債総額200億円以上の「大会社」や、取締役会を有する企業においては設置が義務付けられています。
これらの企業では、監査の重要性が特に高く、常勤監査役を設置することで、内部監査の質を高め、経営の健全性を保つことが求められます。
【企業規模別】常勤監査役の年収相場
この章では、企業の人数規模別に常勤監査役の年収相場を見ていきましょう。
一般財団法人労務行政研究所『役員報酬・賞与等の最新実態』2023年調査分※1によると、企業人数規模1,000人以上、300人~ 999人、300人未満の3つの区分で常勤監査役の年収を調査したところ、以下のような結果になりました。
規模計 | 1,000人以上 | 300~ 999人 | 300人未満 | |
---|---|---|---|---|
月額報酬 | 133万円 | 173万円 | 118万円 | 83万円 |
年間賞与 | 13万円 | 15万円 | 12万円 | 10万円 |
年間報酬 | 1,609万円 | 2,091万円 | 1,428万円 | 1,006万円 |
調査対象全体では、常勤監査役の年間報酬は平均1,609万円でした。
また、企業規模別にみてみると、人数規模が大きい企業ほど常勤監査役の報酬が高い傾向が顕著であり、1,000人以上の人数規模の企業においては、平均して2,091万円と、非常に高額な報酬を支払っていることが分かります。
【上場区分別】常勤監査役の年収相場
次に、上場区分別に常勤監査役の年間報酬額を見てみましょう。
尚、こちらは日本監査役協会が2019年に発表したデータ※2を参考にしているため、上場区分は当時の名称になっています。
1部上場 | 2部上場 | 新興市場 | 非上場 (IPO準備中) |
非上場 | |
---|---|---|---|---|---|
~200万円 | 0.2% | 0.8% | 1.1% | ||
200万円~ 500万円未満 |
0.7% | 5.1% | 6.9% | 28.1% | 2.0% |
500万円~ 750万円未満 |
3.9% | 11.2% | 26.7% | 34.8% | 8.6% |
750万円~ 1,000万円未満 |
6.2% | 19.4% | 30.5% | 16.9% | 16.6% |
1,000万円~ 1,250万円未満 |
13.2% | 24.5% | 19.1% | 13.5% | 27.0% |
1,250万円~ 1,500万円未満 |
14.6% | 19.4% | 4.6% | 3.4% | 19.2% |
1,500万円~ 1,750万円未満 |
13.3% | 9.2% | 5.3% | 1.1% | 11.0% |
1,750万円~ 2,000万円未満 |
14.0% | 5.1% | 3.1% | 1.1% | 7.2% |
2,000万円~ 2,500万円未満 |
18.4% | 5.1% | 3.1% | 4.1% | |
2,500万円~ 3,000万円未満 |
8.0% | 1.0% | 1.1% | 2.4% | |
3,000万円以上 | 7.6% | 0.7% |
1部上場企業では2,000~2,500万円の報酬帯が最も多く、18.4%でした。
2部上場企業では1部上場企業と比較して低くなり、1,000~1,250万円の年間報酬を支払っている企業が多いようです。
また、IPO準備中ではない非上場企業の年間報酬は2部上場企業の水準と同程度であり、非上場企業でも高額の報酬を常勤監査役に支払っている企業があることがわかります。
常勤監査役の報酬(年収)はどうやって決まる?
常勤監査役の報酬は、企業のガバナンスにおいて重要な要素であり、その決定プロセスには透明性と公正性が求められます。
常勤監査役の報酬(年収)決定の流れ
報酬の決め方は、まず定款または株主総会の決議によって定められます。
定款において監査役の報酬が明記されている場合、その金額が支給されることになります。
定款に報酬額が記載されていない場合には、株主総会で報酬の総額が決定されます。
この株主総会での決議は、会社の全体のガバナンスと監査役の独立性を維持するために重要なステップであり、監査役の職務の独立性を確保するために、全体の報酬総額のみが定められ、その範囲内で各監査役の具体的な報酬額が後に決まることが一般的です。
株主総会で監査役全体の報酬総額が決定された後、次に行われるのが監査役間での協議です。
この協議では、具体的な報酬額を各監査役間で話し合って決定します。
例えば、全体で3,000万円の報酬が決められた場合、3人の監査役がそれぞれ1,000万円ずつ分配するのか、もしくは社内監査役が1,200万円、社外監査役がそれぞれ900万円ずつ受け取るのかを決めます。
ここで重要なのは、監査役の独立性を維持し、監査役それぞれが公正かつ効果的に職務を遂行できるよう、適切な報酬額を確保することです。
報酬額決定の実態は...
しかし、実際のプロセスでは、監査役が独立して報酬額を決定するケースばかりではありません。
公益社団法人日本監査役協会の調査によれば、多くの企業で、執行側が提案した報酬額に基づいて監査役が決定する場合が多く、約半数のケースでは執行側の提示額をそのまま承認している実態が見られます。
また、執行側と監査役が協議して最終的な金額を決定する場合もありますが、その場合でも執行側の影響が残ることが多いとされています。
監査役には独立性を保ちながら、適正な報酬を得られるよう、報酬に関する意見を述べる権利も認められています。
これは、報酬が不当に低いと感じた場合や、他の取締役と比べて著しく差がある場合、あるいは業界の平均よりも低い場合などに、相応の報酬を求めることができるようにするためです。
常勤監査役の報酬(年収)の種類
常勤監査役の報酬には、いくつかの種類があります。
定期同額給与
「定期同額給与」とは、役員に対して毎月同額の報酬を支給する給与のことです。
支給額が一定で、事業年度内の各支給時期で変動しないことが特徴です。
この給与形態は、損金算入が可能であり、税務署への事前報告が不要なため、多くの企業で採用されています。
安定的に報酬を支給することで、税務上のリスクを軽減し、企業の財務管理を効率化する手段として利用されています。
事前確定届出給与
「事前確定届出給与」とは、役員に対して特定の時期に一定額の報酬を支払う旨を事前に税務署に届け出ることで、損金算入が認められる給与です。
具体的には、年に数回支給されるボーナスや特別報酬に適用されます。
税務署への事前届出が必須であり、この届出を怠ると損金扱いができなくなる点には注意が必要です。
この給与形態は、特定の報酬を計画的に支給し、税金対策として活用されています。
業績連動給与
「業績連動給与」は、企業の業績に連動して役員報酬が変動する給与形態です。
利益や株価などの業績指標に基づいて報酬が決定され、企業の経営状況に応じた柔軟な支給が可能です。
平成29年度の税制改正により、利用できる指標が拡大され、従来の「利益連動給与」から名称が変更されました。
ただし、同族会社では認められないため、中小企業では利用が少なく、実務的には煩雑な面もあります。
まとめ
常勤監査役の年収は、企業の規模や上場区分、報酬形態によって大きく異なります。
責任の重さに比例して報酬が高くなる傾向があるため、特に大企業や上場企業では高年収を期待できます。
監査役の報酬は、企業のガバナンスの一環として、透明性と公正性が求められるため、慎重に決定されます。
報酬の種類も、定期同額給与、事前確定届出給与、業績連動給与といった様々な方法があり、それぞれの企業が自社に合った形態で運用しています。
常勤監査役としてのキャリアを考える際には、企業の規模や報酬の決定プロセスを十分に理解し、適切な報酬が得られる環境を選ぶことが重要です。
これにより、企業の健全な運営を支える役割を果たしながら、自身のキャリアと収入の両方を充実させることができるでしょう。
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この記事を監修したキャリアアドバイザー

大学卒業後、大手出版系企業を経て現職へ入社。
主に大手・新興上場企業を対象とする法人営業職を4年、キャリアアドバイザーとして10年以上に及ぶ。
経理・財務 ・ 人事・総務 ・ 法務 ・ 経営企画・内部監査 ・ 会計事務所・監査法人 ・ コンサルティング ・ 役員・その他 ・ IPO ・ 公認会計士 ・ 税理士 ・ 弁護士 を専門領域として、これまで数多くのご支援実績がございます。管理部門・士業に特化したMS-Japanだから分かる業界・転職情報を日々更新中です!本記事を通して転職をお考えの方は是非一度ご相談下さい!
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