司法試験後、司法修習を受けなくても就職活動に有利?就職先やポイントなど
司法試験合格後、司法修習を経て法曹の仕事に就くのが一般的な道筋です。
しかしこれは必須ではなく、司法試験に合格してから司法修習を受けずに就職活動を始めることもできます。
司法修習は最低約1年間かかるため、たとえば大学在学中に予備試験を突破して司法試験に合格した場合、新卒の年齢(22~23歳)で就職活動を始めるなら司法修習を受けないという選択肢もあるのです。
この記事では、司法試験合格後、司法修習を受けずに就職活動をする場合に理解しておきたいこと、注意すべき点などについて詳しく解説します。
司法試験合格後、司法修習を受けずに就職活動しても有利になる?
司法修習を修了していなくても、「司法試験合格」の肩書きがあれば就職活動では有利です。
とくに一般企業の法務部などの部署では、豊富な法律知識をもつ人材へのニーズは高く、採用試験の場でも高評価を受けやすいです。
また司法試験合格の実績は学習能力、論理能力の高さの証明にもなり、社会人としてのポテンシャルの高さを示すことにもつながります。
ただし、司法試験合格者は続けて司法修習を受ける方が多いので、なぜ合格後すぐに就職活動を始めたのかを説明できるようにしておく必要があります。
その点があやふやだと、「司法修習を受けない理由がわからない」と採用担当者に疑問に思われ、マイナスポイントになる恐れもあります。
例えば、「弁護士資格認定制度」を活用し、働きながら弁護士資格の取得を目指しているなど、採用企業側が納得できる理由があれば、問題ないでしょう。
なお、司法試験は一度合格すれば、有効期限はありません。企業などで社会人経験を積んでから、あらためて法曹を目指すことも可能です。
経済的な面ですぐに働く必要があるなど、司法修習をすぐに受けないことが自分の将来設計に関係している場合は、応募書類や面接で採用担当者に伝えましょう。
司法試験を撤退し、就職活動を始めても有利なのは何歳まで?
司法試験撤退後の就活は20代後半から
司法試験を合格する道筋には、「法科大学院を修了する」「予備試験に合格する」の2パターンがあります。
令和5年司法試験からは、所定の要件を満たせば法科大学院在学中の方も受験可能となり、在学中受験資格により最初に司法試験を受けた日の属する年の4月1日から5年以内に、5回まで司法試験を受験できます。
法科大学院は修了までに2~3年かかるため、大学の学部卒業時で22歳の場合、最初に司法試験に挑戦するのは若くても23~4歳です。
そのため法科大学院経由の司法試験の受験経験者は、現行制度ではストレートに進んだ場合でも23,4~29歳程度になるでしょう。
一方、予備試験の場合、予備試験の受験資格に年齢制限はないため、早ければ大学在学中に合格することも可能です。
ただし試験は超難関であり、20代前半の段階で合格することを前提に将来設計を考えるのは、難易度が高いといえるでしょう。
以上の状況を考えると、どちらの方法を選択したとしても、司法試験を経験してから就職活動を始める計画を立てる場合、20代後半がスタート時期と想定するのが現実的です。
20代後半の就活でもニーズが高い
この20代後半という年齢は、一般の人が就職活動を始める時期としては遅いと言えるでしょう。
企業側としては若い段階で採用して教育・経験を積ませたいと考えるため、社会人経験がなければ不利にならざるを得ません。
しかし、司法試験の勉強をしていた人であれば話は別です。
専門知識を得るために時間を費やし、結果として就職活動の時期が遅れたことは、履歴書を見た企業側の採用担当者はすぐに理解します。
また司法試験合格者であれば高度な法律知識をもつので、20代後半であっても労働市場でのニーズは高いでしょう。
30代前半であっても、就職に不利にならない職場があるとも考えられます。
ただし30代後半になってくると、法律知識を活かした実績・実務経験等が求められるので、「司法試験合格」だけではハードルは高くなってきます。
司法試験後の就職先
司法試験後の就職先としては、大きく分けて以下の2つが考えられます。
一般企業の法務部や管理部門
大手企業では、法務が独立した部門として存在しています。
法務部門の主な業務は、企業内の他部門からの「法律相談」、契約書類の作成や審査を行う「契約法務」、透明性のある意思決定をするための取り組みを支援する「ガバナンス」、企業内外の法的トラブルに対処する「紛争対応」、法令遵守をチェックする「コンプライアンス」等があります。
中小企業の場合だと独立した法務部門ではなく、「総務部」などの管理部門の中に、法務担当者が配属されていることも多いです。
基本的な業務内容は大企業と変わりませんが、中小企業は人手に限界があるため、一人でマルチな対応を任される傾向があります。
公務員
企業の法務を担当するほか、公務員として法令の立案や、裁判手続等のための事実関係の確認、訴状の作成主張の陳述等を7年以上行うことでも、弁護士資格認定制度を利用することができます。
弁護士になった後で官公庁に出向する人も少なくないですが、先に公務員として官公庁勤務をしたうえで、弁護士になるというユニークな経歴は強みになる場合もあります。
司法試験後の就職活動を成功させるポイント
司法試験後に就職活動を始める場合、学部新卒者に比べて引け目を感じやすいのが年齢です。
大卒者は22歳程度で就職活動をしているのに対して、司法試験受験者は早くて24歳、複数回受験すれば20後半や30代の方も少なくありません。
しかし就職活動をするにあたって、年齢のことをマイナスポイントと感じる必要はありません。
司法試験に合格しているのであれば、少なくとも30代前半までは年齢や社会人経験ではなく、「司法試験合格」の実績が最も重視されます。
司法試験合格者が就職活動をする際、具体的には以下の3点に注意する必要があります。
企業研究などの情報収集を念入りに行う
就職活動を始める前に、法律事務所・企業の情報収集を十分に行い、自分に適した就職先はどこかを検討しましょう。
企業であれば法務部門での業務内容や働き方、法律事務所であれば提示している理念や得意分野などについて調べます。事前に入念な情報収集を行っておくと、就職後のミスマッチの回避につながります。
情報収集を行う際、重要なツールとなるのがインターネットです。現在ではほとんどの企業、法律事務所が公式Webサイトで、どのような事業・活動をしているのかを紹介をしています。
法律事務所の中には、事務所のWebサイトで人材を募集していることもあり、求めている人物像やスキルなどの確認も可能です。
とはいえ、ネット上で公開されている情報には限界があるのも事実です。
大学の先輩など個人的なつながりの中で情報収集できる機会があれば、ぜひ活用しましょう。
また転職エージェントを利用するのも有効な方法です。転職エージェントでは膨大な求人案件を扱っているので、表に出ていない情報をもっている可能性もあります。
どのように貢献できるかを簡潔にアピール
司法試験合格者である以上、通常の新卒・第二新卒とは異なり、法律の専門家としての能力・スキルをアピールにすることが重要となります。
その際、自分の主張に説得力をもたせるには、自分が採用された後、どのような貢献ができるのかを応募書類や面接の場で具体的に示すことが有効です。
企業、法律事務所の求人には求める人材像が書かれているので、その内容と自分の能力・スキルを照らし合わせる必要があります。自分が貢献できることを客観的に把握するため、時間をかけて自己分析を行いましょう。
知識があるとはいえ、即戦力となり得る実務経験があるわけではないので、未経験の業務に対して前向きにキャッチアップしていく意欲や向上心をアピールするのも有効です。
応募書類の誤字脱字、面接時の言葉遣い・マナー
採用試験において、司法試験合格者は法律知識・能力の面で十分にアピールできますが、低評価の要因となりやすいのが社会人としての適性です。
応募書類に誤字脱字があったり、面接時の言葉遣いにおかしな点があったりすれば、当然ながら採用担当者の印象は悪くなります。
法律家としての知識・能力以外の面でネガティブなイメージを与えないためにも、誤字脱字と言葉遣い・マナーには注意しましょう。
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まとめ
司法試験合格者は、司法修習を修了していなくても基本的に労働市場では売り手市場といえます。
ただし、正社員・正職員としての社会人経験がない場合だと、司法試験合格を強みとできるのは30代前半までが目安となります。30代後半以降は法律家としての実績の有無が重視されるようになります。
また、とくに企業の場合、採用試験では社会人としての適性もチェックされるので、応募書類の書き方や面接の際の対応方法は、事前に対策を講じておくのが望ましいです。
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この記事を監修したキャリアアドバイザー
大学卒業後、新卒でITベンダーに入社し、営業としてエネルギー業界のお客様を担当。その後、損害保険会社で法務業務に従事。
キャリアアドバイザーとしてMS-Japanに入社後は、法務、弁護士、法科大学院修了生などリーガル領域を中心に担当。
人事・総務 ・ 法務 ・ 法律・特許事務所 ・ 役員・その他 ・ 弁護士 を専門領域として、これまで数多くのご支援実績がございます。管理部門・士業に特化したMS-Japanだから分かる業界・転職情報を日々更新中です!本記事を通して転職をお考えの方は是非一度ご相談下さい!
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