なぜ弁護士の廃業は増えているのか?
現在日本では、ロースクール制度が確立したことの影響により、司法試験合格者数が増え、弁護士の人数も増加しました。
しかしその一方で、仕事を思うように得られない弁護士が多くなり、廃業に至るというケースも生じています。
この記事では、弁護士が廃業する理由と、廃業後における元弁護士のキャリア形成の方法についてご紹介しましょう。
なぜ弁護士が廃業するのか?
弁護士の廃業とは、弁護士本人の意思に基づいて弁護士業務を辞めることをいいます。
かつて弁護士の廃業理由として多かったのは、高齢あるいは病気、結婚や出産、育児など、一般企業で働く会社員と同様のものでした。
ところが近年、高齢および結婚や出産といった理由ではなく、弁護士としての収入が思うように得られず、生活を維持できないとの理由で廃業に至るケースが増加しているといわれています。
弁護士廃業の実態
日弁連が作成している『弁護士白書』によれば、弁護士資格の取り消し請求者数は2009年当時では190人(うち女性は46人)でしたが、2015年には312人(うち女性は110人)となり、6年ほどの間に100人以上も増加しました。
ただ、司法改革の名のもと、2006年からロースクール(法科大学院)制度が導入されたことで弁護士の数は年々増えており、弁護士全体に占める廃業者の割合そのものは増えてはいません。
弁護士数は2009年当時で約2万8,000人でしたが、2015年には3万7,126人と約9,000人増加。弁護士全体に占める廃業者の割合は、2009年当時は0.7%、2015年は0.8%とほぼ横ばいとなっています。
しかし、「弁護士として活動していたものの、事務所をたたみ廃業してしまう」という人数自体が増えていることは間違いありません。
弁護士の数は増えているが、事件の数は減っている
弁護士の人数が増える一方で、廃業者数も増えている要因の1つが、顧客を巡る弁護士間における競争の激化です。
2016年版の『弁護士白書』によれば、ロースクールの導入によって弁護士数は年々増え、2015年時点における弁護士数は10年前の約1.6倍となっています。
一方で、民事事件の件数自体は2009年ごろをピークにその後減少。
2015年の新受件数は約15万件で、2009年当時よりも10万件近くも減っています。
今後は法的紛争がより増加する社会になる、との予測に基づいてロースクール制度が導入されましたが、実際には増えるどころか大きく減少したのです。
弁護士数が大幅に増える一方で、民事事件の件数が大きく減少してきたわけですから、1つの案件を巡る弁護士同士の競争は激しくならざるを得ません。
そうした中、仕事を思うように得られないために生活がなり立たなくなり、廃業に至る弁護士が増えてきたわけです。
弁護士廃業・独立失敗後のキャリア
では、独立に失敗して廃業した弁護士は、その後どのようなキャリアを形成できるのでしょうか。大きく分けて、企業内弁護士として働くケースと、弁護士経験を活かして企業で働くケースとに分けられます。
高齢で弁護士業務を廃業する場合、再就職先を見つけることが難しいことも多いです。
しかし、それまで法人を対象に弁護士業務を長年続けてきた人であれば、経験を買われて企業で働くこともできます。
・企業内弁護士(インハウスローヤー)として
弁護士として培った法律知識や紛争解決能力を、企業の事業成功のために活用するという働き方です。
事務所を閉鎖しただけで、弁護士登録を引き続き続けている場合、弁護士が有する法律上の権限を用いることもできます。
各企業には顧問弁護士が配置されていますが、現場で勤務する企業内弁護士の方が、紛争への対応力は早いのが一般的です。
また、企業内弁護士は顧問弁護士とは異なり、個々の事業の立ち上げ、運用に至るまで、法的な視点から戦略構築に関与することもできます。
(大手企業に弁護士が転職するために必要なこととは)
・弁護士経験を活かして企業で働く
弁護士としての知見を活かす形で、企業における法務やファイナンス、ベンチャー部門のリーガル部門で勤務するという方法もあります。
弁護士としての実務経験があれば、法律や契約文言の解釈方法や、証拠に基づいた事実認定の方法を熟知しており、こうしたスキルは法務部門で働く一般社員では持つことが難しいものです。
特に、かつて知的財産を専門に扱っていた方など、自分が得意とする分野を持っている場合は、比較的再就職もしやすくなるでしょう。
しかし、一般市民を対象とするようないわゆる町弁として活動してきた人だと、転職が大変になる場合もあります。
まとめ
ロースクール制度が導入されたことで弁護士資格は以前よりも取得しやすくなり、実際、制度導入後に弁護士の数は年々増えてきました。
しかし、弁護士にとって大きな収入源ともいえる民事案件は年々減少する傾向にあり、その結果、十分に仕事を得られないまま廃業に至る弁護士が増えているのが実情です。
ただ、弁護士業を廃業しても、法律知識や実務経験を活かして新たな仕事に就くこともできます。
これから弁護士資格の取得を目指す人は上記のような現状を理解し、もし廃業に直面した場合はどうするのか、について考えておくことも必要かもしれません。
あなたへのおすすめ求人
同じカテゴリの最新記事
行政書士の雇用実態レポート【2024年版】
法務の転職情報|法務転職のプロMS Agentが徹底解説!
人事の転職情報|人事転職のプロMS Agentが徹底解説!
【弁護士の残業事情】平均時間や繁忙期、残業が少ない求人例など
税理士の転職は何歳まで?「転職35歳限界説」は税理士も同じなのか?
経理経験が浅い職務経歴書は落とされる?応募書類作成のポイントとは
経理は残業が少ない⁉効率UPのコツや転職時のポイントなども紹介
【法務の仕事紹介!】9つの具体的な仕事内容から分かる法務に必要なスキルも紹介!
内部監査の志望動機・自己PRはどう書く?経験者・未経験者別にポイントを解説!
サイトメニュー
業界最大級の求人数・転職支援実績!管理部門・士業の転職に精通した専門アドバイザーがキャリア相談~入社までサポートいたします。
新着記事
求人を職種から探す
求人を地域から探す
セミナー・個別相談会
業界最大級の求人数・転職支援実績!管理部門・士業の転職に精通した専門アドバイザーがキャリア相談~入社までサポートいたします。