管理会計とは?財務会計との違いや導入するメリットを解説!
企業の会計は、目的に応じて「財務会計」と「管理会計」の2種類があります。
一般的に話題となる会計上のトピックは、多くが財務会計に関するものであり、管理会計にスポットが当たるケースは少ない傾向があります。
これは財務会計が共通の基準で企業の業績を判断する際ことを目的にしているのに対して、管理会計は基本的には社内的な業績管理を目的にしていることが影響しています。
しかし、管理会計は自社の状況を正確に把握する上で重要なものであり、管理会計を導入している企業は企業規模を問わず存在しています。
この記事では、管理会計とはどのような会計を指すのか、概要や導入のメリットについて財務会計との違いに触れつつ解説します。
管理会計とは
管理会計とは、主に経営者が経営状態の把握や企業戦略に用いる「企業をマネジメントするために必要な会計情報」をまとめることをいいます。
会計面で自社の現状や将来の変化を予測し、経営者の意思決定に必要な情報提供を行うことが、管理会計の主な目的です。
管理会計における代表的な資料の種類としては、次のようなものがあげられます。
資料の種類 | 概要 |
---|---|
予算管理に関するもの |
●過去の実績から、未来の予算を策定する目的で作成される ●予算は企業の経営計画をもとに作られ、大きく以下の3つに大別される ・損益予算(売上高・製造・費用の3つに分けられる) ・資金予算(現金収支・借入返済といった資金繰りに関する予算) ・資本予算(設備投資・資金調達についての計画) |
予実管理に関するもの |
●予算と実績を比較し、経営上の問題を洗い出すために作成される ●目標予算の数値に対する達成度を把握する資料としては「予実管理表」がよく知られている |
経営分析に関するもの |
●経営状況を数値で表し、企業の状態を客観的に判断するために用いられる ●経営分析に用いる主な資料は以下の通り ・貸借対照表 ・損益計算書 ・キャッシュフロー計算書 |
管理会計そのものは、各種法令で実施するよう定められているものではないため、導入しなかったとしても罰則はありません。
しかし、過去と未来を比較して自社の方針を見極める上で、管理会計を導入するメリットは大きいものがあります。
管理会計の業務内容
管理会計においては、基本的に企業が必要と判断した情報を取捨選択して差し支えありませんが、特に重要な4つの業務が存在します。以下、管理会計の業務内容について解説します。
予実管理
予実管理を行う際は、全社で目標を立てた後、各部門への分配・実績との対比を通して成果を管理する流れとなります。一定期間ごとに予算・実績を比較することは、計画に対する進捗度を確認するのに役立つだけでなく、遅れが著しい部門に対して施策を行う際の判断材料にもなります。
タイミングとしては、月次決算と同じ時期に情報を把握できると、月単位での成績・状況を把握できるためスムーズです。Excelを使用して集計・分析・管理を行うのも一つの方法ではありますが、業務効率化の観点からは会計システムを介してデータを取得できるようにした方が効率的です。
原価管理
原価管理においては、原材料・部品・人件費・設備費といったコストを算出します。正確な原価がわかると、適正な価格設定や正確な損益の算出につながり、より経営状況を把握しやすくなります。
多くの場合、標準原価という基準を設定した後、製品完成時にかかった実際の原価と比較して差異を分析する手法が採用されます。差異を比較・分析することは、工程・材料の見直しや売値・利益の適正化につながります。
経営分析
管理会計において、特に重要度の高い業務の一つが経営分析で、企業規模や業種・業態によって分析内容も変わってきます。ただし、企業規模等にかかわらず、重要なポイントは以下の2点とされます。
- ・収益性(損益)
- ・安全性(資産)
具体的な指標としては、企業の成長状況を把握する「売上成長率」や「営業利益率」のほか、現在の資本の状況を把握する「自己資本比率」や「当座比率」などがあげられます。
また、財務会計が売上総利益・営業利益・経常利益・当期純利益などを重視するのに対して、管理会計では売上高と変動費の差である「限界利益」を重視します。限界利益は“すべての固定費を回収できる利益”とも言い換えられ、限界利益が低い企業の場合、固定費の支払いが間に合わない状況に陥っている可能性もあります。
資金繰り管理
資金繰り管理は、主に現金の入出金の流れを管理し、資金の過不足を調整するために行われる業務です。黒字化しているのにキャッシュが不足している状況を把握し、いわゆる「黒字倒産」のリスクを回避する上でも重要です。
入出金の流れを把握することで、現時点での財務状況のほか、将来資金が必要になるタイミングを予測するのにも役立ちます。
管理会計と財務会計の違い
管理会計と財務会計は、ともに企業会計ではあるものの、それぞれ実施する目的が異なります。以下、管理会計と財務会計の違いについて解説します。
財務会計とは
財務会計は、企業の中に向けたものではなく“外に向けた情報”を公開するための会計です。
具体的には、投資家・債権者・税務署など社外の利害関係者に対して、決算日時点における自社の財政状態や経営成績を開示・報告する目的で行われる会計のことをいいます。
財政状態とは、自社が所有する資産・負債などの財産の状況をいい、経営成績は会計期間における利益のことをいいます。
情報の開示にあたっては、法令で定められている所定の書式にもとづいて、貸借対照表・損益計算書などの決算報告書(財務諸表)を作成しなければなりません。
管理会計と財務会計の違い
管理会計は経営者向け、財務会計は社外向けの会計であることから、目的や内容など異なる点が複数存在します。
以下、管理会計と財務会計の違いを表にまとめました。
項目 | 管理会計 | 財務会計 |
---|---|---|
利用者 |
主に社内の人間が利用 (経営者/管理職など) |
主に社外の人間が利用 (投資家/債権者/税務署など) |
目的 | 経営の判断材料として活用 | 財政状態や経営成績の開示・報告 |
内容 | 企業が任意で選択し導入 | 会計基準に準拠 |
方法 | 自社で必要とされるデータを抽出 | 法令にもとづき所定の形式でまとめる |
書式 | 任意の資料・レポートなど | 決算報告書(財務諸表) |
集計単位 | 任意(金額とは限らない) | 金額 |
対象期間 | 任意 (1年・1ヶ月・1週間など様々) |
原則として1年の会計期間 (上場企業は四半期ごとに開示) |
また、どの時点の情報を取り扱うのかについても違いがあり、基本的に管理会計は計画・予算といった未来の情報を取り扱います。
これに対して、財務会計は過去の取引や事象を記録・集計します。
管理会計を行うメリット
管理会計の導入は、経営陣だけでなく、管理職・現場社員にとってもプラスに働くことが期待できます。以下、企業が管理会計を行うメリットについて解説します。
部門単位で評価・管理ができる
管理会計を導入すると、部門単位で成績が良い部門・悪い部門を把握できるようになります。現状を具体的に把握できると、それぞれの部門・現場でどのような目標を立てるべきなのかが明確になり、業績の評価・管理もスムーズになるでしょう。
また、現場に具体的な数字を開示することで、管理職や監督者の指示の説得力が増します。やがて、従業員全員が数字を追う意識を持つようになれば、コストカット・生産性向上なども十分期待できます。
定量的に経営状態がわかる
財務会計は、主に財務諸表を「作る」ことが目的となりますが、管理会計では財務諸表を「使う」ための資料と考えます。管理会計を導入すると、財務諸表に記載された数値を読み解き、未来に備えて迅速に手を打つことが可能になります。
例えば、自社の安全性を自己資本比率から確認したり、売上高営業利益率を確認して営業利益に対する売上の割合をチェックしたりすることができます。月次決算のタイミングで都度業績を確認するルールを定めれば、1年ごとに財務諸表を確認するのに比べて自社の問題点をスピーディーに把握できるため、早期の問題解決につながります。
資金繰り等のコスト管理がしやすくなる
管理会計で特に経営に役立つ手法の一つとして、資金繰り管理があげられます。自社が資金不足に陥らないためには、資金繰り表を作成するなどして、財務諸表からはわからない資金の流れを把握することが大切です。
また、管理会計では集計単位や収集するデータの種類を自由に決められるため、例えば製品・サービス別の予算設定や達成度を把握することも可能です。製品開発・サービス運用のコストを別々に把握できるため、より詳細なコスト管理を実現できます。
管理会計の求人を確認したい方はこちら
管理会計の求人情報
より経営に近いポジションなため世の中的には求人数は少ないですが、弊社は管理部門特化型エージェントなので、
管理会計の求人も多く保有しております。ごく一部ではありますが、ご確認ください。
またより多くの管理会計の求人をご確認いただきた場合は、会員登録していただければ確認できます。
まとめ
企業が管理会計を導入すると、各種データから「自社がこれからどうなるのか」や「悪い未来を避けるためにはどうすればよいのか」が見えてきます。
予実管理・原価管理・経営分析・資金繰り管理を適切に実施することは、自社の課題を浮き彫りにし、現場にとって説得力のある施策を講じることにつながります。
対外的に財政状態や経営成績の開示・報告を行う財務会計と違い、管理会計は自社の経営の判断材料として有効に活用できます。
収集・活用するデータは企業側のニーズに応じて自由に選べるため、部門単位での評価や管理に用いれば、コストカットや生産性向上も期待できるでしょう。
この記事を監修したキャリアアドバイザー
横浜国立大学卒業後、電気系の総合商社に新卒で入社し法人営業に従事。
その後、キャリアアドバイザーとしてMS-Japanへ入社。現在は人事総務・経理領域担当として転職支援に従事しております。
経理・財務 ・ 人事・総務 ・ 社会保険労務士事務所 を専門領域として、これまで数多くのご支援実績がございます。管理部門・士業に特化したMS-Japanだから分かる業界・転職情報を日々更新中です!本記事を通して転職をお考えの方は是非一度ご相談下さい!
あなたへのおすすめ求人
同じカテゴリの最新記事
未経験で税理士事務所に転職できる?仕事内容や向いている人の特徴など
法務の転職・求人|最新の転職市場や転職成功のポイントを解説!
人事の転職ならMS Agent|経験・未経験別の人事転職成功のポイントを解説!
【税理士試験合格発表速報】令和6年度(第74回)試験の合格者数・合格率は?過去の試験結果や合格者数推移についても解説!
税理士の転職情報|税理士転職のプロMS Agentが徹底解説!
弁護士の転職ならMS Agent|弁護士の転職成功のポイントを徹底解説!
衛生管理者とは?第一種・第二種の資格概要や難易度、合格率、勉強方法などを解説!
会計事務所転職の失敗事例と対策。後悔しない転職をしよう!
40代の公認会計士は転職が難しい? おすすめの転職先や気をつけるべきことなど
サイトメニュー
業界最大級の求人数・転職支援実績!管理部門・士業の転職に精通した専門アドバイザーがキャリア相談~入社までサポートいたします。
新着記事
求人を職種から探す
求人を地域から探す
セミナー・個別相談会
業界最大級の求人数・転職支援実績!管理部門・士業の転職に精通した専門アドバイザーがキャリア相談~入社までサポートいたします。