弁護士(司法修習生)の就職活動!採用されるために必要な力とは?
弁護士になる最大の難関は、司法試験です。しかし、近年は司法試験合格者の増加によって、就職活動も厳しさを増しています。そのため、業界研究や書類・面接対策をしっかりと行ったうえで活動を進めることが大切です。
そこで、今回は「弁護士(司法修習生)の就職活動」をテーマに、弁護士就職動向や代表的な就職先、履歴書で見られやすいポイントについてまとめました。
また、効果的な自己アピール方法や、就職活動のコツなども解説します。
司法試験に受かっても、就活が待っている
まず、弁護士になるまでの道のりについて確認しておきましょう。
弁護士を含む「法曹三者(弁護士・裁判官・検察官)」になるためには、まずは司法試験に合格しなければなりません。司法試験には下記の3つの受験資格が定められており、いずれかに該当する必要があります。
- 1.法科大学院課程の修了
- 2.司法試験予備試験の合格
- 3.法科大学院課程の在学及び法第4条第2項第1号に規定する学長の認定
上記の「3」は2023年度から新たに追加された受験資格です。法科大学院で所定の単位を取得し、1年以内に修了する見込みがあれば司法試験を受験できるようにルールが緩和されました。
司法試験に合格すると1年間の司法修習が始まり、法律事務所・裁判所・検察庁など実際の現場で経験を積みます。最後に修了試験に合格すれば修習は終了ですが、弁護士志望の修習生は、修習と並行して法律事務所への就職活動が待ち受けています。
近年の弁護士の就職活動は非常に厳しい状況です。
司法制度改革で司法試験の合格者が大幅に増員されたため、弁護士人口が急増しています。人気の高い東京や大阪などの都市部の就職活動は一層厳しく、地方でもすんなり就職できる状況ではありません。
就職できなかった場合は、未経験からいきなり独立する「即独」の選択肢もありますが、安定的に案件を獲得して食べていくのは大変厳しいでしょう。司法修習と並行して就職活動の準備をしておかないと、弁護士としてのキャリアスタートをスムーズにできない恐れがあります。
弁護士の代表的な就職先とは?
弁護士志望者は法律事務所への就職を希望するケースが大多数ですが、弁護士が活躍している場は他にもあります。ここでは、弁護士の代表的な就職先についてご紹介します。
法律事務所
弁護士志望者の最もポピュラーな就業先が法律事務所です。
「ボス弁(経営者の弁護士)」1人で様々な案件を幅広く扱う事務所から、100人以上の大所帯で企業法務案件を中心に扱う事務所まで、実にさまざまな事務所が存在します。
新人はアソシエイト、もしくはイソ弁(居候弁護士)として数年~10年前後修行を積み、いずれパートナー昇格や独り立ちを目指す道が一般的です。
一般企業
近年、弁護士の就職先として徐々に広まりを見せているのが「企業内弁護士(インハウス・ローヤー)」です。
企業の社員として雇用される弁護士のことで、企業の業務や状況に精通した立場からコンプライアンスや法律に関する問題を専門的に扱います。
かつては、企業内に選任の弁護士を置くことは一般的ではありませんでした。必要に応じて外部の法律事務所と雇用契約を結ぶなど、外部の弁護士に外注して対応していました。
しかし、近年におけるコンプライアンス経営の強化や、グローバル化の進行によって、国際間での取引やM&A・組織再編が加速化しています。
拡大した法務リスクを円滑に対応するために、企業内弁護士が積極的に採用されているのです。また、弁護士人口が増加傾向にあることから、法律事務所だけでなく一般企業への転職を視野に入れる弁護士が増えている点も、企業内弁護士が増加しているひとつの要因だと言えるでしょう。
企業内弁護士は、商社・銀行・証券会社・IT系企業などで多く採用されており、海外交渉・金融に関する内容や景品表示法への対応などにニーズがあります。
官公庁・公的機関
企業内弁護士と同様に、官公庁・公的機関に所属する弁護士が存在します。
雇用形態は、省庁や地方自治体の任期付き公務員や常勤・非常勤職員が一般的です。
司法試験合格者を対象にした国家公務員試験もあるため、転職活動と並行してチャレンジしてみるとよいでしょう。官公庁・公的機関での経験は、その後弁護士に転身した際に他弁護士との差別化につながります。
法テラス
法テラスは、法的トラブルで困っている人から相談を受けたり、経済的理由から弁護士等への依頼が難しい人を支援したりする機関です。法テラスは専属の「スタッフ弁護士」を採用しており、国選弁護事件や出張法律相談などを行なっています。新卒採用の場合は法テラスで働く前に一般の法律事務所で1年間のOJTが課されます。
弁護士(司法修習生)の履歴書はどこが見られている?
続いて、弁護士(司法修習生)の履歴書で、注目されやすいポイントを押さえましょう。
司法試験の成績
特に法律事務所においては、司法試験の成績が重要視される傾向があります。
就職活動の激化によって応募が殺到しているため、書類選考時にある程度の人数まで絞り込む必要があるためです。
その傾向は大手事務所で多く、なかには「〇〇位までが主な採用対象」といった目安を掲げているケースも少なくありません。もし書類選考に通らない状況が続く場合は、応募先の事務所規模や取り扱い案件の見直しをする必要性もあるでしょう。
出身ロースクール
大手法律事務所では、「学歴重視」の風習が存在しているところもみられます。もちろん出身ロースクールで採用が決まるわけではありませんが、事務所によっては選考要素となることも多い点を認識しておくとよいでしょう。
法科大学院の成績
法律事務所によっては、法科大学院での成績に注目する場合もあります。とはいえ司法試験の成績の方が評価要素としては重要ですが、もし法科大学院にて優秀な成績を収めた実績がある場合は履歴書にてしっかりとアピールすることが大切です。
所属ゼミ
弁護士は横のつながりも強い世界であることから、所属ゼミの名称も注目される傾向があります。有名な教授や弁護士のゼミに所属していた場合は、面接担当の弁護士がそのゼミの出身でない場合でも話のネタになりやすいため、履歴書内にしっかりと記載しておきましょう。
受験回数
司法試験の受験回数は、法律事務所によっては重視されることもあります。たとえば四大法律事務所(西村あさひ法律事務所、森・濱田松本法律事務所、アンダーソン・毛利・友常法律事務所、長島・大島・常松法律事務所)等をはじめとするスペック重視の法律事務所においては、「一発合格かどうか」が注目されやすい印象です。
それ以外の事務所であれば、受験回数が2~3回程度であればそれほどネガティブに捉えられることはありません。ただし、4~5回程度となると書類選考の時点で足切りとなる可能性が上がるため、その点を補えるような魅力的なアピールポイントを考えるなどしっかりと対策をする必要があるでしょう。
他の資格(ファイナンスや英語力など)
履歴書の項目において、他の資格の有無もチェックされる傾向があります。たとえば中小規模の法律事務所においては、法律関連だけでなく会計や税務の業務を行う機会も少なくないため、簿記や金融・財務系の資格があると大変重宝されるでしょう。
一方、大手事務所の場合は海外案件に携わるケースが多いことから、英語関連の資格があると採用時に有利です。目安としては、TOEIC700点以上あると効果的にアピールできるでしょ
採用される弁護士に必要な力とは?
採用される弁護士になるためにはどのような力をつけておけば良いのでしょうか。
ここでは、法律事務所への就職を目指すためのポイントをご紹介します。
コミュニケーション力
難関試験をクリアするために必死に法律書を読み込んで勉強してきた人も、弁護士として現場で向き合うのは、複雑な感情や事情を抱えた生身の人間です。
依頼者のニーズを的確に読み取り、信頼を得る言動をとるコミュニケーション力は弁護士に不可欠だと言えるでしょう。また、事務所の一員として仕事をスムーズに進めるためにも他の弁護士やスタッフと円滑なコミュニケーションが求められます。
フットワークの軽さ
ボス弁は、書面作成・出張・急な依頼者対応などを任せて、自分の業務負担を軽減するためにイソ弁を採用します。つまり、イソ弁は頼まれた仕事は何でも引き受けるフットワークの軽さが重要です。幅広い経験を積んでおけば将来独立する際にも役立ちます。就職活動ではどんな仕事も積極的に引き受ける覚悟を伝えましょう。
心身のタフさ
イソ弁時代は修行の日々です。慣れない実務に奔走し連日夜遅くまで働く生活は体力がないと乗り切ることができません。時には依頼者やボス弁からの厳しい指摘に落ち込む日もあるでしょう。心身ともにタフであることは、弁護士の絶対条件と言えます。
司法試験の順位
就職活動の激化により法律事務所には志望者から大量の応募が寄せられるようになり、事務所側は書類選考である程度の人数まで絞り込む必要が出て来ました。その際、司法試験の順位や学歴を参考にするケースが多くなっています。
人脈力
弁護士を募集していない事務所の中にも「いい人がいれば来てほしい」と考えているケースは少なくありません。ネット上や就職説明会には出てこない求人情報をキャッチするためには、修習中から様々な弁護士と知り合って懇意にしておき、就職について相談しておくことがポイントです。
弁護士(司法修習生)の自己アピールとは?
弁護士(司法修習生)の就職活動では、「的確な自己アピール」も重要なポイントです。
自己アピールとは、自分を採用したらどのようなメリットがあるのか、どうやって事務所・企業に貢献できるかを履歴書・面接を通じて明確に伝えることを指します。
ここでは、的確な自己アピールをするための準備や方法についてまとめました。
自己アピールの準備は自己分析
採用担当者が自己アピールで注目するポイントは、主に「スキル」「経験」「人間性」です。その3点によって、即戦力になる人材か、責任感を持って業務に取り組めるか、他のスタッフと円滑に業務を進められそうかなどを見極めています。
効果的な自己アピールを考えるにあたり、まずは「自己分析」から始めるとよいでしょう。これまでの人生を振り返り、「得意なこと」や「褒められたこと」を細かく書き出していきます。
そして、リストアップした「得意なこと」や「褒められたこと」をベースに、自分自身のどのようなスキル・素質を活かすことができたのかを考えてみましょう。
そうすることで、積極性や忍耐強さ、提案力の高さといった強みや、自分自身が人生において大切にしている価値観が明確になります。
しかし、その価値観が応募先の価値観と一致していない場合、いくらアピールしても魅力的な人材には映りません。そのため、事前にしっかりと業界研究を行い、応募先の特性や方針を確認したうえで自己アピールに効果的な材料を見極めることが大切です。
自己アピールを効果的に伝える方法
自己アピールをする際は、下記のように論理立てて「自分を採用するメリット」を伝えるとよいでしょう。
- 1.自分の強みや大事にしていること(アピールポイント)を簡潔に伝える
- 2.1の具体的な根拠を述べる
- 3.どのような面で貢献できるのかを明確に説明する
たとえば「高い協働力」をアピールしたい場合は、以下のような構成で伝えると良いでしょう。
私の強みや大事にしていることは「協働力」だと思っています。
中学・高校時代に携わった生徒会活動で生徒会長の役割を担った際には、単にこちらから発信するだけでなく、周囲と可能な限りコミュニケーションをとる事を重視し、行動してきました。
時にはクラスごとに意見が割れてトラブルになることもありましたが、そんな時こそ同じ生徒会役員や各クラスのメンバーと丁寧にコミュニケーションを取る、特に相手の話にしっかりと耳を傾ける事を重視し、一つ一つの課題と向き合い解決してきました。
御社の業務においては複雑な感情や事情を抱えたクライアントと向き合う場面も多いと思いますが、これまで培った高い協働力を活かしてひとつひとつの案件に寄り添っていく所存です。そして、新規顧客の獲得にも貢献し、利益の最大化を目指します。
アピールポイントは一つに絞った方が良いでしょう。「多くのアピールポイントを提示する方が自身の魅力が伝わりやすい」と考える方もいるかもしれませんが、アピールポイントが複数あると、かえってその人個人の一貫した個性や人柄・特徴が分かりづらくなってしまう恐れがあります。
そのため、応募先の企業・事務所が求めている人材を意識しながらアピールポイントをある程度絞り込み、その根拠や、アピールポイントを活かして応募先でどのように貢献できるのかをしっかりと伝えるようにしましょう。
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まとめ
弁護士の就業先は法律事務所が一般的ですが、一般企業や官公庁・公的機関に就職する選択肢もあります。どの道へ進む場合でも厳しい活動になることを想定し、書類や面接対策を入念に行うことが大切です。
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この記事を監修したキャリアアドバイザー
大学卒業後、旅行代理店にて法人営業を約3年。20代でMS‐Japanへ入社。
企業の採用支援(リクルーティングアドバイザー)を約8年、求職者の転職支援(キャリアアドバイザー)を約5年経験。
両ポジションでチームマネジメントを経験し、キャリアアドバイザーとしては複数回にわたり支援実績数NO1を獲得。リクルーティングアドバイザーにおいても入社1年半後にチームマネジメントを経験させていただきました。現在は子育てと両立しながら、常に社内でトップ10以内の採用支援実績を維持。
経理・財務 ・ 法務 ・ 役員・その他 ・ IPO ・ 公認会計士 ・ 弁護士 を専門領域として、これまで数多くのご支援実績がございます。管理部門・士業に特化したMS-Japanだから分かる業界・転職情報を日々更新中です!本記事を通して転職をお考えの方は是非一度ご相談下さい!
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