【弁護士×公認会計士】ダブルライセンスのメリットや共通点・相違点を解説!
【弁護士×公認会計士】ダブルライセンスのメリットや共通点・相違点を解説!
将来のキャリア設計のために、「弁護士×公認会計士のダブルライセンス」の取得を検討している方もいるのではないでしょうか。
どちらも最難関の国家資格であるため、取得までには時間も費用もかかりますが、他者との差別化を図れる、仕事の幅が広がるなどのさまざまなメリットがあります。
そこで、今回は弁護士と公認会計士の特徴や共通点、相違点に触れながら、ダブルライセンスを活かせる仕事や取得のメリットをまとめました。また、ダブルライセンス取得時の注意点についてもあわせて解説します。
弁護士とは
まずは、弁護士の役割や仕事内容、なるまでの流れについて押さえておきましょう。
弁護士の役割
弁護士は司法試験を突破して国家資格を取得した『法律の専門家』として、社会正義のために働く職業です。個人間における困りごとや企業間のトラブルまで、あらゆる依頼内容に対応して問題解決へと導きます。
弁護士の仕事内容
弁護士の仕事内容は、大きく分けて「民事事件への対応」と「刑事事件への対応」の2種類があります。それぞれの特徴は以下の通りです。
民事事件
民事事件とは、個人間・法人間を問わず、身の回りで起こる争いのことを指します。たとえば以下のような案件です。
- ・離婚トラブル
- ・借金トラブル
- ・相続問題
- ・交通事故に基づく損害賠償トラブル など
民事事件の対応を行う場合、案件の内容によって具体的な業務が異なります。法律の観点からアドバイスを行うのみで解決する場合もあれば、代理人として相手方と面会して交渉を持ちかけたり、訴訟を起こしたりとさまざまです。
訴訟を起こして裁判に持ち込む場合は、まずは依頼人の言い分を聴取したうえで事実関係を調査します。そして、依頼人に有利となる証言や証拠品などを集め、裁判にて弁護を行うスタイルが基本です。
刑事事件
刑事事件は、警察や検察などの捜査機関が介入し、捜査に着手した事件のことです。たとえば、以下のような案件が刑事事件に該当します。
- ・暴行
- ・傷害
- ・窃盗
- ・器物破損
- ・脅迫
- ・詐欺
- ・わいせつ
- ・賭博 など
刑事事件では、弁護士は被疑者(犯罪の嫌疑をかけられている人)や被告人(罪を犯したとして起訴された人)の代理人となり、事件の調査や弁護活動などを行います。
弁護士になるまでの流れ
弁護士になるまでの流れは、主に以下の3ステップです。
- 1.司法試験の受験資格を得る
- 2.司法試験に合格する
- 3.研修(司法修習)を受け、試験に合格する
具体的な流れについて、以下で詳しく見ていきましょう。
1.司法試験の受験資格を得る
弁護士になるためには司法試験に合格する必要がありますが、司法試験は誰でも受けられるわけではありません。
「法科⼤学院に入学して3年間または2年間学ぶ」、あるいは「予備試験に合格する」のどちらかに該当すると司法試験の受験資格を獲得できます。
2.司法試験に合格する
司法試験は毎年5月に実施されており、論文式試験3日間・マークシート方式の短答式試験1日間の計4日間です。司法試験に合格すると弁護士になるための研修(司法修習)を受けることができますが、法科大学院在学中に司法試験に合格した場合はすべての課程を修了した後で司法修習に進むことになります。
3.研修(司法修習)を受け、試験に合格する
司法試験に合格したら、1年間にわたって法律事務所や裁判所、検察庁、司法研修所等で研修(司法修習)を受け、研修終了後に実施される「司法修習考試」に合格する必要があります。「司法修習考試」に合格すると晴れて弁護士資格を得られ、一度取得すれば一生涯有効です。
公認会計士とは
続いては、公認会計士の役割や仕事内容、なるまでの流れについて解説します。
公認会計士の役割
公認会計士は、シンプルに表現すると『監査および会計の専門家』です。独立した第三者の立場から、財務書類や財務に関する情報の信頼性を確保する役割を担っています。
公認会計士の仕事内容
公認会計士の主な仕事内容は、独占業務である「監査業務」です。クライアント企業が財務諸表を適正に作成しているかどうかをチェックし、その結果を投資家や株主等に報告します。
また、税理士登録している公認会計士は、税理士の独占業務である税務代理・税務書類の作成・税務相談を行うことも可能です。特に中小企業では、会計業務だけでなく税務業務もあわせて行うケースも多々みられます。
さらに、所属する事務所や企業によってはコンサルティング業務を行うことも少なくありません。買収や合併といったM&A・事業承継に関するサポート業務や、企業再生支援などを通じて課題解決へと導きます。
公認会計士になるまでの流れ
公認会計士になるまでの流れは、下記の3ステップです。
- 1.「公認会計士国家試験」に合格し、国家資格を取得する
- 2. 現場にて2年以上業務補助経験を積み、実務補習所に原則3年間通って単位を取得する
- 3. 日本公認会計士協会が行う修了考査(筆記試験)を受験し合格する
具体的な流れについて、以下で詳しく解説します。
1.「公認会計士国家試験」に合格する
公認会計士試験は、年齢・性別・学歴・国籍を問わず誰でも受験できます。12月と5月に行われる「短答式試験(マークシート方式)」、8月に実施される「論文式試験」の2段階試験で、短答式試験を突破すると論文式試験を受験できる流れです。
2.3年以上の実務経験を積み、実務補習所で単位を取得する
公認会計士試験に合格したら、現場で2年以上の実務経験を積む必要があります。実務経験を積む現場に指定はありませんが、9割以上が監査法人に就職します。この実務経験は公認会計士試験の受験前でも問題ありません。
また、「実務補習所」に通い、必要な単位を取得することも必要です。原則として3年間通う必要がありますが、要件を満たせば最短で1年間に短縮することもできます。
3.修了考査(筆記試験)に合格する
上記2のステップをクリアすると日本公認会計士協会が行う修了考査の受験資格が与えられ、合格すると公認会計士として働けるようになります。
弁護士と公認会計士の共通点と相違点は?
弁護士と公認会計士は役割や仕事内容などが大きく異なりますが、実は共通点もあります。例えば、M&Aで弁護士と公認会計士がタッグを組んで案件を進めるケースや、弁護士が取り扱う株関連の訴訟や損害賠償請求で会計の知識や技術が必要になるケースも少なくありません。
このように弁護士と公認会計士はお互いに深く関わる関係であるため、キャリアアップとしてダブルライセンスを目指す人が増えています。
公認会計士資格取得を目指す弁護士よりも、弁護士の資格取得を目指す公認会計士のほうが、圧倒的に多い印象です。
その理由は、公認会計士の業務は高度で複雑ではあるものの、事務作業中心で単調な傾向があります。その点、弁護士はクライアントへの事情聴取や現場での調査といった多彩な業務を行うため、仕事内容に魅力を感じて弁護士資格にチャレンジするケースが多く見受けられます。
なお、上記のような共通点がある一方で、「合格率(試験の難易度)」や「年収」の面では、弁護士と公認会計士とでは大きな違いがあります。具体的な相違点は以下の通りです。
合格率(試験の難易度)の違い
弁護士(司法試験)の合格率は30~40%程度であるのに対し、公認会計士試験の合格率は10%程度です。合格率だけを見ると公認会計士試験の方が難しいように見えます。
しかし、弁護士(司法試験)は、まず受験資格を取得するまでが非常に困難であるのに対し、公認会計士試験は誰でも受験することが可能です。
そのため、単純に合格率だけで試験の難易度を比較することは難しいでしょう。
年収の違い
令和4年の「賃金構造基本統計調査」によると、弁護士の年収相場が約971万円、公認会計士の年収相場が約747万円でした。
数字だけ見ると弁護士のほうが年収は高い印象ですが、年収の高さは本人の実力によって左右されるといっても過言ではありません。大成功して年収3,000万円以上稼ぐ人もいれば、年収数百万円の人もいるなどさまざまです。
弁護士も公認会計士も、年収にはかなりの個人差があると認識しておきましょう。
弁護士と公認会計士のダブルライセンスが活かせる仕事は?
続いては、弁護士と公認会計士のダブルライセンスを活かせる仕事に注目してみましょう。
M&A
M&Aは、成約までの段階で「デューデリジェンス」と呼ばれる買収対象企業の調査が行われます。法務や財務、税務、ITといった各分野の専門家に依頼して調査するケースが一般的ですが、弁護士と公認会計士のダブルライセンスがあれば法務と財務の専門家として2つのデューデリジェンスをまとめて行うことが可能です。
不祥事の対応
企業で不祥事が発生した際は、財務資料の調査で公認会計士のスキルが役立ちます。
そこで違法性が明るみになったり、損害賠償請求訴訟などに発展したりした場合は、弁護士のスキルを活かすことでスムーズに対応できるでしょう。
民事再生
民事再生で企業を再生へと導くために、法的手続きの面で弁護士の知識が、会計や税金関連の手続きでは公認会計士としての知見が活かせます。
損害賠償請求訴訟
企業の損害賠償請求訴訟でも、弁護士と公認会計士のダブルライセンスを生かせます。訴訟対応や法的手続きでは弁護士の知識が、決算書への対応では公認会計士の知識が役立ち、効率的に案件を進められるでしょう。
相続に関する相談
相続時に金銭の分割を行う場合、公認会計士の知識が役立ちます。トラブルに発展した場合や、法律上の問題がみられた場合は、弁護士の知見も活かして円滑な問題解決を目指せるでしょう。
弁護士と公認会計士のダブルライセンスのメリットは?
弁護士と公認会計士のダブルライセンスのメリットは下記の通りです。
- ・仕事・キャリアの幅が広がる
- ・独立した際に差別化ができる
- ・クライアントとのコミュニケーションがより円滑になる
- ・社外取締役のニーズにも対応できる
具体的にどのような魅力があるのか、以下で詳しく見ていきましょう。
仕事・キャリアの幅が広がる
先述のように、弁護士と公認会計士の知見を持ち合わせることで、自分ひとりで行える業務が増え、それが強みとなって仕事の幅が広がります。また、両方の資格を保有する人は少なく、希少価値が大変高いため、年収アップ・キャリアアップも期待できるでしょう。
独立した際に差別化ができる
独立開業して会計事務所と法律事務所を同時に立ち上げた場合、他の公認会計士・弁護士との大きな差別化になります。弁護士の中には数字に弱い人もいるため、『数字に強い弁護士』として効果的にアピールできるでしょう。
クライアントとのコミュニケーションがより円滑になる
異なる専門分野を習得することによって物事を多様な側面から見られるようになるため、考え方の幅が広がることにもつながります。クライアントのニーズを的確に把握し、コミュニケーションをより円滑に行えるようになるでしょう。
社外取締役のニーズにも対応できる
近年、社外取締役を確保する企業が増えている中で、弁護士と公認会計士のダブルライセンスがあればそのニーズに対応することが可能です。社外取締役には企業法務に関する知識や財務データを扱うスキルが求められることが多いため、まさに弁護士と公認会計士の両方の知見が役立つでしょう。
弁護士と公認会計士のダブルライセンスの注意点は?
弁護士と公認会計士のダブルライセンスには上記のようなメリットがあるものの、下記のような注意点も存在します。
- ・時間的・金銭的な負担が大きい
- ・専門性を維持するためには努力が必要
それぞれの内容について、以下で詳しく解説します。
時間的・金銭的な負担が大きい
先述のように、司法試験も公認会計士試験も難関であり、仕事と両立しながら資格取得を目指すことは非常に難しいでしょう。また、試験に合格してもすぐに弁護士・公認会計士を名乗れるわけではありません。
さらに、法科大学院や実務補修所への通学費などまとまったお金が必要となることも考慮すると、ダブルライセンスの取得には時間的・金銭的な負担が大きい点に注意が必要です。
専門性を維持するためには努力が必要
公認会計士・弁護士ともに高い専門性を有する資格です。そのため、ダブルライセンスを取得できたとしても、その知識やスキルを維持するための努力が必要不可欠です。
定期的に勉強したり、情報のアップデートを行ったりと、どちらも中途半端にならないように注意する必要があります。
まとめ
弁護士と公認会計士のダブルライセンスを取得すると、担当できる業務が増えることから仕事の幅が広がり、年収アップやキャリアアップも期待できます。
また、独立開業時に他との差別化できるだけでなく、多彩な業務をこなせることでクライアントからの信頼も高まり、社外取締役の声がかかる可能性もあるでしょう。
ただし、弁護士や公認会計士として働きながら資格を取得するには、かなりの努力が必要です。まずは、ダブルライセンス取得の目的を明確にしたうえで、高いモチベーションを持ってチャレンジすることをおすすめします。
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