法務部に転職できるのは「エリート」だけ?必要なスキルや資格、年収など徹底解説



法務部は、管理部門の中でも特に「エリートしか転職できない」と聞いたことがある方も多いのではないでしょうか。
しかし、実際のところ、優秀な能力が求められる職種ではあるものの、決してエリートに限られた転職先ではありません。
転職の可能性は努力や適性に左右される部分が多く、噂を鵜呑みにして諦めることは早計な判断です。
この記事では、法務部が「エリートしか転職できない」と言われる理由を突き詰め、法務部への転職に必要なスキルや資格などを解説します。
なぜ「法務部はエリートしか転職できない」と言われるのか
そもそも、なぜ法務部はエリートしか転職できない職種だと言われているのでしょうか。
以下、主な理由について解説します。
企業経営において重要な役割を担っている
法務部は、企業の経営判断において重要な役割を担う部門です。
例えば、法務部の職務である「法的リスクの回避」は、企業の資産や権利・社会的な信用を守るために、経営判断に多方面で法務部が関与しています。
場合によっては、経営陣に対して、法的リスク回避のための情報提供・アドバイスを行うこともあるでしょう。
万が一、法務部が判断を誤れば、訴訟や社会的な信用の損失、株価の暴落など、企業に深刻な影響を与える可能性があります。
このように、担う責任の重さによって、法務部は「エリート」が集まると認識されるようになりました。
法律に関する専門知識が求められる
法務部の職務は、自社に関連する法令を考慮して、リスクを回避することです。
例えば、契約書の作成・チェック業務では、トラブルを防ぐために、自社に不利な契約条項がないかどうか細かくチェックします。
安易に一般的なテンプレートを流用していると、実際の取引内容と合わないだけでなく、自社に不利な契約となってしまうリスクもあるでしょう。
毎年のように改定される法令にも対応する必要があり、法務部に求められる役割は今後も増えていくことが予想されます。
エリートと呼ばれる法務部の仕事内容とは
ここでは、法務部の職務について見ていきましょう。
法務部の職務は、大きく以下の3つに分かれます。
- ・戦略法務(企業活動における利益を最大限に高める法務)
- ・予防法務(将来的に想定されるトラブルを未然に防ぐための法務)
- ・臨床法務(実際に起きたトラブルに対処する法務)
戦略法務には、法に触れない範囲で、自社の利益を最大限に高めるための業務が該当します。
M&Aや海外進出など、自社の活動にからむ法律を踏まえ、ビジネスの観点から最善の提案を行うことが求められます。
予防法務は、法務部の数ある職務の中でも特に重要なもので、消費者やライバル企業との衝突を防ぐ意味合いがあります。
具体的には、契約内容の精査、従業員へのコンプライアンス研修、情報漏洩対策などが該当します。
臨床法務は、予防法務によって抑えられなかった法的トラブルに対処する業務のことです。
顧客からのクレームやCM等による炎上対応、従業員の不祥事などへの対応を行うだけでなく、次回も同じような問題が発生しないようにすることも重要です。
それぞれ具体的な仕事内容については、下記記事で詳しくご紹介しています。
法務部は本当にエリート?様々な角度から徹底解説
ここでは、「法務部が本当にエリートなのか」を様々な角度から紐解きます。
法務部に必要なスキル
法務部で必要とされるスキルは、関係法令の条文を隅々まで暗記するスキルではありません。
もちろん、法令知識は評価されますが、知識だけでなく「法令知識を自社のビジネスに最大限活かすスキル」が問われます。
具体的には、以下のようなスキルが法務部で評価されます。
- ・法律を正しく理解した上で、状況に当てはめることができる分析スキル
- ・論理的破たんがない文章を作成できる構成スキル
- ・「やってはいけないこと」をシビアに判断できる倫理観
- ・他部署のスタッフに分かりやすく説明できるコミュニケーションスキル
また、管理職クラスになると、次のようなスキルも問われるでしょう。
- ・課題全体を見通して最適解を導き出せるバランス感覚
- ・顧問弁護士との調整スキル
- ・対外的な交渉スキル
- ・リーダーシップ
法務部に必要な資格
法律関連の資格と言えば、弁護士・司法書士・行政書士などの「士業」の国家資格が有名ですが、法務部で勤務するにあたり、資格は必須ではありません。
もちろん、弁護士資格保有者が「インハウスローヤー」として勤務する場合もありますが、法務部の一般社員に弁護士資格が求められることはないと言えるでしょう。
国家資格以外には、ビジネス実務法務検定やビジネスコンプライアンス検定、個人情報保護士のような民間資格もあります。
取得することで、体系的な法令知識が身につき、転職活動でも役に立つでしょう。
法務部の平均年収
2023年に弊社MS-Japanが運営する管理部門・士業特化型転職エージェント「MS Agent」に登録のあった法務経験者の現在年収を年代別に見てみましょう。
年代 | 平均現在年収 |
---|---|
20代 | 403万円 |
30代 | 536万円 |
40代 | 696万円 |
50代以上 | 885万円 |
全体 | 650万円 |
※弁護士・公認会計士・税理士を除く
対して、国税庁の「令和4年分民間給与実態統計調査」によると、正社員全体の平均年収は523万円です。
法務経験者全体の平均年収は650万円であり、127万円上回っていることが分かります。
また、30代の時点で、正社員全体の平均年収を10万円以上上回っていることからも、法務部は高年収な職種であると言えるでしょう。
法務部に多い学歴
法務部で働いている人は、そのすべてが法学部出身とは限りませんが、基本的には大学の法学部・法科大学院を卒業した人が多い傾向です。
学歴を根拠として、体系的に法律を学んだ経験をアピールできるため、就職・転職市場で有利になります。
また、法務部は毎年の法改正に対応する必要があるため、新しい情報を学び続けることに抵抗がない人の方が向いています。
よって、学歴はともかく、法務部には法律を体系的に学んでいる人・法改正に対応する必要性を理解している人が集まりやすい傾向にあるものと推察されます。
法務部のキャリアパス
法務部は、管理部門の中で特に専門職としてのイメージが強い部門ですが、具体的にどのようなキャリアを描けるのかを想像できない人も多いかもしれません。
以下、法務部のキャリアパスについてご紹介します。
スペシャリストを目指すキャリアパス
企業規模が大きく、法務部の人員も多い環境で働く場合は、法務部の中でも分野ごとに分業化されており、担当分野のスペシャリストを目指すキャリアパスが検討できます。
どの分野を究めるのかは、配属先や個人の希望にもよりますが、概ね以下のようなジャンルに集約されるでしょう。
- ・英文契約も含め、契約業務を中心にキャリアを積む
- ・社内ルールに精通し、経営に関連する法務を中心にキャリアを積む
- ・弁理士資格取得を視野に入れつつ、知財法面のキャリアを積む
- ・海外に事業を展開する企業で、国際法務のキャリアを積む
特定分野のスペシャリストとして専門的なキャリアを積むことができれば、役職に就いていなかったとしても、社内で正当な評価を得やすい傾向です。
知識・スキルを高める努力を惜しまず、企業が絶対に手放したくない人材になることで、自身の市場価値を高めることができます。
ゼネラリストを目指すキャリアパス
中堅クラスの企業は、法務部の人員がそれほど多くないことも珍しくありません。
企業によっては、総務が法務を兼任するケースもあるなど、小規模な法務部ではゼネラリストを目指す選択肢があります。
法務のゼネラリストには、法務以外にも幅広い分野を横断的に学び、柔軟に対応することが必要です。
ゼネラリストとしてのスキル・知識は、法務部を立ち上げ段階にある企業や、法務部が1人体制の企業など高く評価されるでしょう。
管理職を目指すキャリアパス
部下のマネジメントやプロジェクトの進捗管理などを担う管理職を目指すキャリアパスもあります。
管理職は、法務業務に関する幅広い知識はもちろん、チームをまとめるマネジメントスキルやリーダーシップも必要です。
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法務担当者としてキャリアアップする方法
ここでは、法務部でキャリアアップする方法をご紹介します。
明確なキャリアパスを描く
「法務部のキャリアパス」でご紹介した通り、法務部のキャリアパスはスペシャリスト・ゼネラリスト・管理職に分かれます。
キャリアパスによって、高めるべきスキルや身につけるべき知識が異なるため、どのキャリアパスを目指すのかを明確にすることが重要です。
日々の業務だけでなく、転職を検討する場合も、目指すキャリアパスに沿って行動することで、着実にキャリアアップしていくことができるでしょう。
ビジネスセンスと倫理観を磨く
自社の利益を最大化するためには、後ろ指を指されない範囲で貪欲に利益を追求する姿勢が求められます。
法的リスクを最小限に抑えつつ、利益を追求するためには、ビジネスセンスが必要です。
例えば、法改正・判例などの最新情報を収集・分析した上で、自社のビジネスに与える影響を予測できれば、経営陣の判断に役立ちます。
法律知識とビジネスセンスを兼ね備えることで、キャリアアップへの近道となるでしょう。
一方で、ビジネスパーソンとして「やってはいけないこと」に手を染めないよう、倫理観を磨くことも大切です。
顧客を優先するがあまり自社をリスクにさらしていないか、逆に自社の利益を最大化しようとして不正に手を染めていないかなど、客観視できる倫理観を身に着けましょう。
コミュニケーション能力を磨く
法務部では、自身が持つ法律知識を他部門の従業員に共有し、様々な場面で法的なサポートを行うことも大切な仕事の一つです。
経営陣や他部門の従業員から受ける法律関連の相談や従業員に向けたコンプライアンス研修、顧問弁護士との連携など、法務の仕事では、様々な場面で様々なポジションの人とのやりとりが発生します。
そのため、どのような関係性の人ともスムーズにコミュニケーションをとる能力を磨くことで、キャリアアップにつながります。
法務の転職は「MS Agent」にご相談ください!
エリートと呼ばれることからも分かるように、法務部は企業の経営を左右する重要な部門の一つに数えられます。
しかし、法務人材の数が少なく、求めるスキルのレベルも高いため、企業が求人募集をする際に、採用活動が難航するケースが多いようです。
そのため、一般的な転職サイトでは要件を満たす応募者が集まりにくいと考え、転職エージェントを利用する企業が増えています。
転職エージェントで扱っている「非公開求人」は、企業側と転職者側の双方が希望する要件を満たした場合にのみ紹介される求人です。
転職エージェントの非公開求人を利用すれば、企業側だけでなく、転職者側も効率的に希望要件を満たす法務求人を見つけることができると言えるでしょう。
弊社MS-Japanが運営する管理部門・士業特化型転職エージェント「MS Agent」は、法務をはじめとする管理部門・士業の特化型転職エージェントとして、30年以上の実績がございます。
法務求人の紹介はもちろん、法務の転職市場に詳しいキャリアアドバイザーによるカウンセリング・応募書類の添削・面接対策、内定後の条件交渉まで、転職活動を徹底サポートしています。
法務の転職活動に不安がある場合は、ぜひお気軽にお問い合わせください。
まとめ
法務部は、高学歴・国家資格取得などが求められる職種ではありません。
しかし、法務担当者に求められるスキルの専門性や経営における職務の重要性から、誰にでもできる仕事とは言えないでしょう。
年収面においても、正社員の平均値と比較して高めの傾向で、年代が上がるにつれて更なる年収アップが見込めます。
キャリアアップにあたって、法律知識だけでなく人間力も幅広く問われるため、実力を備えた法務担当者は、「エリート」に分類される存在と言えるでしょう。
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この記事を監修したキャリアアドバイザー

大学卒業後、ウェディングプランナー、業界大手で求人広告の企画提案営業を経て、MS-Japanへ入社。
企業担当のリクルーティングアドバイザーを経験した後、現在は転職を考えられている方のキャリアアドバイザーとして、若手ポテンシャル層~シニアベテラン層まで多くの方の転職活動のサポートをしています。
人材業界での経験も長くなり、いつまでも誰かの記憶に残る仕事をしていたいと思っています。
経理・財務 ・ 人事・総務 ・ 法務 ・ 経営企画・内部監査 ・ 会計事務所・監査法人 ・ 役員・その他 ・ 公認会計士 ・ 税理士 ・ 弁護士 を専門領域として、これまで数多くのご支援実績がございます。管理部門・士業に特化したMS-Japanだから分かる業界・転職情報を日々更新中です!本記事を通して転職をお考えの方は是非一度ご相談下さい!
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