【法務の仕事紹介!】9つの具体的な仕事内容から分かる法務に必要なスキルも紹介!
「法務」は企業の法律に関する業務を担っており、トラブルを未然に防いだり、早期に解決したりといった役割のある大変重要な仕事です。
法律に興味のある方、法律に関わる仕事がしたい方から人気の職種ですが、「具体的にどのような仕事をするのかイメージしづらい」「やりがいはある?」といった疑問や不安を感じている方もいるかもしれません。
そこで、今回は企業における法務の役割に触れながら、主な9つの仕事内容を詳しくまとめました。
また、法務の仕事に就くために必要なスキルや資格、向いている人の特徴もご紹介するとともに、法務ならではのやりがいや未経験での転職事情についてもあわせて解説します。
企業における法務の役割とは
法務とは、企業において法律関連の業務を行う職種のことです。
法務が機能していなければ知らないうちに法令違反を行ってしまったり、気づいた時にはコンプライアンスの問題が深刻化してしまったりするリスクがあるため、法務は企業の健全性を守るうえで大切な存在となっています。
なお、法務の役割としては主に下記の3点が挙げられます。
- ・臨床法務
- ・予防法務
- ・戦略法務
それぞれの概要は以下の通りです。
臨床法務
臨床法務とは、法的トラブルへの対応を発生ベースで行うことを指します。たとえば損害賠償請求への対応や、クレーム・不祥事対応などです。
この臨床法務においては、トラブルによって企業の信用に悪影響が生じないように尽力し、円滑でスムーズな収束を目指す役割を担っています。
なお、案件の内容によっては法務部門内のみで対応するのではなく、外部の弁護士と連携を行う場合もあります。
予防法務
予防法務は、法的トラブルを未然に防ぐための対策を行う業務で、「守りの法務」とも表現されます。契約書の内容チェックや社内規程の作成・チェック、法令の観点による人事・労務サポート、コンプライアンス研修の実施などが代表例です。
予防法務を徹底することにより、トラブルの起こりにくい社内体制を構築する役割があります。
戦略法務
戦略法務とは、法律の観点から企業の経営をサポートする業務です。具体的には新規事業の立ち上げや海外進出、M&A、知的財産の活用などを法律面から支える役割を担っており、「攻めの法務」ともいわれます。
法務の主な9つの仕事内容
企業法務は「臨床法務」「予防法務」「戦略法務」の3つの役割を果たすために、主に以下9つの仕事を行います。
契約・取引法務
最も多いのは契約や取引に関する法務業務です。企業活動をするうえで契約はつきもので、取引先と売買契約や秘密保持契約、業務委託契約など、さまざまな契約を結びます。
「契約書自社や相手方にとって不当なものになっていないか」「自社が不利益を大きくこうむるリスクを抱えるものになっていないか」を確認して契約書を作成します。
また、海外と取引がある企業では英語で書かれた契約書も確認・作成します。
機関・組織法務
株主総会や取締役会など、企業を運営するにあたって重要な機関・組織を運営する業務です。会社法に則って業務を遂行し、株式の発行や分割、子会社設立の手続きなども機関・組織法務に含まれます。
法に則っていない部分があると会社に対する信用が著しく損なわれるため、法務業務のなかでも得に責任が重い仕事です。
コンプライアンス・社内規定
社内規定の作成や研修の実施、相談窓口の設置・運営などを通して、従業員に対して法令と企業倫理の遵守を徹底させます。
近年ではコンプライアンスの遵守が厳しく求められているため、こちらも法務にとっては重要な業務です。
紛争対応法務
取引先との契約上のトラブルや競合企業との紛争、顧客からのクレームなどに対応します。
トラブル対応やクレーム処理は一般的にはカスタマーセンターやお客さま相談窓口、あるいは営業担当が行いますが、訴訟などの法的な手段をとる場合、またはとられた場合は法務が対応することもあります。
他部署の法律的サポート
法務は、他の部署の法律的サポートを行うこともあります。
特に繋がりが深いのが人事・労務部で、たとえば労働基準法に沿った労務管理ができるように体制を整えたり、セクハラ・パワハラ相談に対応したりと、さまざまな労務トラブルにおける早期解決を支援します。
法律相談
企業内のさまざまな業務にまつわる法律相談に応じることも、法務部の大切な仕事です。部署や業務内容によって関連する法律が異なるため、あらゆるジャンルの法的知識が求められます。
また、問題点をスムーズに把握して適切なアドバイスを行うためには、相談者への十分なヒアリングが必要不可欠です。
弁護士対応
社内の法律相談は基本的に法務が対応しますが、高度な専門知識を必要とする複雑な案件の場合には顧問弁護士にも相談したり、アドバイスを受けたりしながら解決を目指します。
知的財産の管理
社内に知的財産部門がない場合は、法務部が知的財産の管理を行います。具体的には企業の持つ特許権や商標権などの出願を行ったり、自社の知的財産権を侵害されていないか、あるいは他社の知的財産権を侵害していないかを確認したりといった業務内容です。
なお、知的財産権の出願登録事務は弁理士と、知的財産権関連の紛争については弁護士と連携しながら対応を進めるケースが一般的となっています。
法令調査
自社に関係する法律に関して調査することも、法務において重要な業務です。法律は頻繁に改正されるため、常に最新の内容をチェックして法改正情報の周知対応を行う必要があるほか、場合によっては社内規程の変更も行います。
なお、海外にて事業を展開したり、海外との取引を行ったりしている企業は、対象となる国の法令調査もしっかりと行うことが必要です。
法務に必要なスキルとは
法務職を経験することで、高度な法律知識だけではなく、さまざまなスキルが身につき転職にも役立ちます。以下のようなスキルや実績があれば積極的にアピールしましょう。
法務としての経験・知識 |
・民法、商法、会社法、有価証券法、独占禁止法、労働基準法などの法律に関する専門知識 ・転職先のニーズに合致する領域の強化とアピール |
契約書の確認・作成実績 |
・月間40件以上の契約書の確認や作成の実績が豊富であることが評価基準 ・契約書作成の実績アピール |
社内規定の作成・運用実績 |
・コンプライアンス強化に伴い、社内規定の作成・運用経験のアピール ・ニーズが高まる法務担当者の実績 |
訴訟対応・クレーム対応 |
・訴訟やクレーム対応の経験と結果のアピール ・企業にもたらした利益の説明 |
戦略的法務の実績 |
・予防法務を超えた戦略法務の実績とアピール ・企業に利益をもたらした実例の紹介 |
ビジネス力 |
・法務としてのビジネスパーソンとしての実績 ・事業展開に活かした法律知識やスキルのアピール |
コミュニケーション能力 |
・多岐にわたる部門とのコミュニケーション能力のアピール ・法務研修、コンプライアンス相談窓口、クレーム処理等の実績の紹介 |
マネジメント経験 |
・大手企業法務の転職でのマネジメント経験のアピール ・プロジェクトリーダーや他部門の従業員との連携経験の紹介 |
語学力 |
・国際法務の経験 ・英文契約書の確認・作成、英語でのメール対応、海外取引先との会議の経験などのアピール |
法務に必要な資格とは
法務に必ず必要な資格はありませんが、以下の資格を取得すると転職に有利になったり、スペシャリストとしてキャリアアップできたりとさまざまなメリットがあります。
ビジネス実務法務検定
ビジネス実務法務検定は、ビジネスの現場で必要とされる法律知識を身につけられる資格です。
法務だけでなく総務や人事、営業、販売といった多彩な職種で活用できる法律を学べるため、法律相談に応じたり、他部署のサポートを行ったりする際に大いに役立ちます。
なお、ビジネス実務法務検定は以下の通りに3つのレベルに分かれています。
階級 | レベル |
---|---|
1級 | ビジネス法務エグゼクティブ(上級レベル) |
2級 | ビジネス法務エキスパート(中級レベル) |
3級 | ビジネス法務リーダー(初級レベル) |
一般的に3級合格には3か月程度、2級合格には半年程度、1級合格には1年以上の学習期間が必要といわれており、2級以上を所有していると法務の実務経験がなくても就職・転職時に有利になりやすい印象です。
弁護士
弁護士の資格は、法律の専門家としてさまざまな事件・紛争の解決にあたることのできる国家資格です。
法科大学院を修了、あるいは予備試験に合格すると司法試験の受験資格を得られ、司法試験合格後に1年間の司法修習期間を経て、司法修習生考試に合格をすると弁護士資格を取得できます。
合格率は30~40%程度、合格するには3年以上の学習期間が必要といわれる難関資格であることから、資格取得には強い覚悟や根気が求められます。
なお、法務として働きながら弁護士資格を取得できれば「企業法務弁護士」として大変重宝され、活躍の場が大きく広がるでしょう。
司法書士
司法書士の資格は、主に登記関連の法律事務に携わることのできる国家資格です。
受験資格はなく誰でもチャレンジ可能ですが、例年合格率は3%前後の難関資格であり、合格するためには3,000時間程度の学習時間が必要といわれています。
司法書士の資格を取得することによって法律知識をより一層深めることができ、専門性の高い法務業務を行えるようになります。また、企業からの信頼度も上がってキャリアアップ・年収アップにつながるでしょう。
法務に向いている人の特徴
法務に向いている人の特徴を見てみましょう。
法的な知識・思考方法を備えている
法務に向いている人の第一の特徴は、法的な知識や思考方法を備えていることです。
法学部や法科大学院を卒業・修了した人にとってはおすすめの職業だといえるでしょう。
環境の変化に対応できる
企業は、ITの進化や経済のグローバル化、あるいは働き方改革への取り組みなど、さまざまな環境の変化にさらされています。
したがって、企業内で働く法務スタッフにも、環境変化に対応できる柔軟性が求められます。
課題解決の能力がある
法務は、単に法的なアドバイスをする存在ではなく、社内のさまざまな課題について、法的な知識を駆使しながら、解決していくことが求められます。
そのため、課題解決能力がある人が向いています。
法務がやりがいを感じるポイントは?
法務のやりがいを感じるポイントを見ていきましょう。
専門知識が活かせる
法務が行う仕事には、法律の専門知識が必要です。特に、法学部や法科大学院を卒業・修了した人にとっては、学んだ専門知識を活かせることが大きなやりがいとなるでしょう。
また社外の弁護士以上に、業界に特化した法律知識や自社の商品や組織に関する知識も必要とされます。
このように法務は、独特のスキルや知識が要求されてくるために、一種の専門職であるといえ、転職にも有利です。
法律の面から企業を支える
法務は自らが、開発のように新商品を生み出したり、営業のように売上を作ったりすることはありません。 しかし、社内で「法律」が全く関係しないところ部署はないため、すべての部署が法務の力を必要としていることになります。
文面の一言一句に配慮しながら作り上げた契約書が、大きな売上につながることもありますし、クライアントとのトラブルを速やかに解決できることもあるかもしれません。
このような法務のサポートにより達成された、各部署での成果の一つ一つが、法務にとってのやりがいにつながります。
経営陣との距離が近い
法務は経営陣との距離が近いこともやりがいの一つです。
法務の具体的な仕事である対外的な契約や、株主総会の運営、株式の発行、子会社の設立、社内規定の作成、紛争対応などのすべては、経営陣の直接的な意思決定を必要とすることです。
経営陣の意思を確認しながら仕事を進めていくことが、法務には求められます。
経営陣との距離が近いことにより、法務は会社を俯瞰的に見られるようにもなり、また仕事を達成した際には、経営陣から直接ねぎらいの言葉をかけられることもあるでしょう。
これらのことは、法務の大きなやりがいとなっています。
法務は未経験でも転職できる?
法務の仕事を検討するうえで、「未経験でも転職できる?」と気になっている方もいることでしょう。
法務は専門性の高い仕事であることから、基本的には未経験者は採用されにくいといわれています。
ただし、「大学法学部の卒業生」や「法科大学院の修了生」は法律や司法に関する深い理解があると判断され、転職を有利に進められる可能性があるでしょう。
また、大企業の場合は「学歴」の高さ、中小ベンチャー企業であれば「自主性」や「リーダーシップ」、「判断能力」の高さを求められるケースが多く、魅力的な人材との印象を与えられれば未経験でも採用される可能性は大いにあります。
まとめ
法務の仕事は契約・取引法務や機関・組織法務、紛争対応法務など多岐にわたり、法律全般の幅広い知識が求められます。
さらに契約書の確認・作成実績や社内規定の作成・運用実績、訴訟・クレーム対応経験などを有していると、転職の際に大変有利に働くでしょう。
また、ビジネス実務法務検定や弁護士、行政書士の資格も転職時に大きなアピールポイントになるだけでなく、キャリアアップ・年収アップにもつながる傾向があります。
法務への転職を検討している方はぜひご自身のスキルやキャリアを見直して、法務の仕事にどのような知識や経験を活かせるのか、どういった点をアピールするべきなのかを慎重に見極めてみてください。
この記事を監修したキャリアアドバイザー
大学卒業後、旅行代理店にて法人営業を約3年。20代でMS‐Japanへ入社。
企業の採用支援(リクルーティングアドバイザー)を約8年、求職者の転職支援(キャリアアドバイザー)を約5年経験。
両ポジションでチームマネジメントを経験し、キャリアアドバイザーとしては複数回にわたり支援実績数NO1を獲得。リクルーティングアドバイザーにおいても入社1年半後にチームマネジメントを経験させていただきました。現在は子育てと両立しながら、常に社内でトップ10以内の採用支援実績を維持。
経理・財務 ・ 法務 ・ 役員・その他 ・ IPO ・ 公認会計士 ・ 弁護士 を専門領域として、これまで数多くのご支援実績がございます。管理部門・士業に特化したMS-Japanだから分かる業界・転職情報を日々更新中です!本記事を通して転職をお考えの方は是非一度ご相談下さい!
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