法務の転職に必要なスキルは?業界別・企業規模別に徹底解説



法務は専門知識が要求される職種であるため、「自分の経験やスキルで転職できるか不安」という方も多いのではないでしょうか。
確かに法務の転職ハードルは高いですが、自分の適性を見極め、ポイントを押さえた転職活動を行えば、成功する確率は高まります。
この記事では、業界別・企業規模別に法務に求められるスキルや転職のポイントなどについて解説します。
法務の仕事内容・役割
法務とは、企業内の法律業務全般を担うポジションであり、高度な法律知識や正確さが求められます。
主な法務の役割は、法律トラブルを未然に防ぐ「予防法務」と、法律知識を活かして業績の向上をサポートする「戦略法務」の2つです。
主な仕事内容は下記の通りです。
- ・法律相談
- ・契約法務
- ・コンプライアンス対応
- ・機関法務
- ・紛争対応
- ・法令調査
- ・労務サポート
- ・知的財産権の登録や申請
- ・債務の管理や回収
法務は、企業内で法律業務を担う部門であり、弁護士のような役割を果たすこともあります。
ただし、法務に関する専門の資格はなく、無資格でも法務として働くことは可能です。
詳しくは「【法務の仕事内容一覧】役立つ資格や求められるスキル、年代別年収目安など」をご覧ください。
【業界別】法務の転職に必要なスキル
法務として転職する際には、法律関連の知識やスキルだけでなく、その業界のビジネスモデルや実務などに関する理解も必要不可欠です。
ここでは、法務として求められるスキルを業界別に紹介します。
メーカー
法務部門を置いているメーカーは老舗企業が多く、法務が独立して組織化しているケースも珍しくありません。
メーカーは売買契約、秘密保持契約、業務委託契約などさまざまな契約を交わす機会が多く、不備のない契約書の作成能力や正確なチェックスキルなどが求められます。
特許、商標、意匠に関する出願や、これらに派生する権利関係を取り扱うことも多いため、知財特許に関する知識も必要な場合があります。
詳しくは「メーカー企業の法務担当に転職するには?未経験でも大丈夫?」もご覧ください。
IT
IT企業の法務も契約業務がメインではありますが、契約についてはIT業界ならではの特徴もあります。
契約段階では具体的な仕事の完了状態が不明確であり、要件定義の作業を進める中で徐々にゴールが見えてくるケースも少なくありません。
そこで契約においては、作るべきシステムの仕様を定義する「仕様確定プロセス」の条項や、確認・修正について定義する「検収プロセス」の条項についての検討が必要です。
また、ソフトウェアなどの知的財産権に関する知識や業務スキルも求められます。
詳しくは「IT企業の法務として働く!主な仕事内容や年収は?」もご覧ください。
金融
金融業界の法務は契約書の作成や、法的文書の作成、法務コンサルティング、訴訟対応など、一般的な企業と同じような業務を行います。
しかし、関連する法律が、金融に特化する点は他の業界との違いでしょう。
たとえば、金融商品を取り扱う場合や、企業が資金調達を行う場合などは、規制する法律とのすり合わせが欠かせません。
また、一口に金融業界といっても、銀行取引やキャピタル・マーケット、プロジェクトファイナンスなど、業務領域はさまざまです。
金融業界の法務には、各領域の業務に対応できる、高度な専門知識が要求されます。
詳しくは「金融機関の法務は独特!?転職前に仕事内容や求められるスキルを知っておこう!」もご覧ください。
商社
商社の法務では、多種多様な商材や取引形態を扱います。
どの業界でも契約法務を担う機会は多いものの、特に商社では「契約がビジネスの生命線」と言われるほど重視されています。
そのため、契約法務の実務経験はもちろん、契約法や商法、金融商品取引法、独占禁止法、会社法、税法などの幅広い法律知識が必要不可欠です。
また、海外企業との取引が多いため、国際取引法や国際税務、国際制裁リストへの対応方法などの知識も求められます。
英語での契約書作成など、語学力が求められるシーンも多いでしょう。
詳しくは「商社の法務|年収や仕事内容、転職のポイントを解説」もご覧ください。
サービス
サービス業界はアパレルや飲食、医療福祉など、領域が多岐にわたり、それぞれで法務に求められるスキルも多少は異なるでしょう。
ここでは、サービス業界の法務に共通して求められるスキルを中心に紹介します。
サービス業界と他の業界との大きな違いは「一般消費者とのトラブルリスクの高さ」です。
消費者との接点が多いサービス業界では、それだけトラブルリスクも高くなるため、法務には、訴訟などの予防・解決能力が強く求められます。
また、ブランドイメージを守るためには、コンプライアンスの遵守も重要です。
サービス業界の法務は対社員、対取引先、対一般消費者と幅広い対応スキルが求められる点が大きな特徴です。
不動産
不動産は売買契約から賃貸契約にいたるまで、あらゆる契約において法律と背中合わせです。
そのため、不動産業界の法務には、業務範囲の法律に関する高い専門知識が求められます。
また、トラブルが起きやすい業界でもあるため、紛争解決能力やリスクヘッジ能力も非常に重要です。
不動産業界の法務は、各規制や複数の法律、物件による契約要件など、さまざまな要因によって対応内容などが大きく異なります。
そのため、柔軟な思考力やフレキシブルな対応力も必要でしょう。
詳しくは「不動産の法務について、大まかな仕事内容から転職するまでをご紹介。」もご覧ください。
外資系
外資系企業の法務では、日本でのビジネスを成功させるための法的サポートが求められます。
したがって、日本での商習慣や文化、国内法すべてに精通した人が活躍できます。
「外資系企業だから国際法に詳しければ問題ない」と考える方も多いようです。
もちろん、国際法の理解も重要ですが、外資系企業だからこそ、日本に精通した人材が重宝されやすい側面があることも念頭に置いておきましょう。
また、本社とのコミュニケーションは英語を始めとする外国語で行うのが一般的なため、読み・書き・会話のいずれにおいても高い語学力が要求されます。
さらに、海外の場合、日本よりも訴訟頻度が多いこともあり、訴訟に対応できる弁護士が優遇されるケースも多いようです。
詳しくは「外資系企業の法務の年収は高い?法務人材が外資系企業に転職するには?」もご覧ください。
【企業規模別】法務の転職に必要なスキル
法務として転職する際、業界だけでなく、転職先の企業規模によっても必要なスキルが異なります。
そこで、企業規模ごとに法務に必要とされるスキルについて解説します。
大手企業の法務
事業拡大や新規事業への挑戦、業務提携などが頻繁に行われる大企業では、多くの法務業務が発生します。
そのため、大企業の法務部は慢性的な人手不足に悩まされているところが多いようです。
教育リソースも限られているため、実務経験や実績がある方が転職で有利とされています。
また、向学心や頭の回転の速さ、思考力などが求められる法務では、学歴も指標の1つになります。
とくに大企業では、学歴が優位に働くことも少なくありません。
また、海外企業との取引が多い企業が多く、英語力のある人や訴訟に備えて弁護士の有資格者、その他士業の有資格者なども重宝されます。
詳しくは下記の記事もご覧ください。
ベンチャー・IPO準備企業の法務
経営陣との距離が近いベンチャー企業およびIPO準備企業では、法務全般の相談だけでなく、M&Aについての助言や、経営戦略のアドバイスなどを求められることも少なくありません。
そのため、法律知識だけでなく、ビジネスへの理解も求められます。法務の人材が豊富でないケースが多いため、マルチタスクのスキルも必要でしょう。
また、今後のビジネス拡大が目標であるベンチャー企業や上場を目指す企業では、トラブルの予防法務やコンプライアンス法務も非常に重要な役割を担います。
大手と違い、まだ法的課題が多数残されている企業も多いため、制度や環境などを一から作り上げる能力のある方が活躍しやすい環境です。
詳しくは下記の記事もご覧ください。
法務の転職に役立つ資格は?
異業種、同業種を問わず、法務への転職を考えるなら、法律知識をアピールできる資格を持っているかどうかが評価内容を大きく左右します。
法務分野は会計などと同じく、特化した高度な専門知識が求められる職種です。
以下では、どの業種でも評価されやすい資格についてご紹介しましょう。
弁護士資格
いわずもがな評価が高い資格です。
法律事務所勤務の場合、特に企業法務案件の対応経験があれば評価が高いです。
ただし、弁護士資格自体を高く評価される企業も多く、昨今の転職市場であれば法律事務所にて民事案件対応のみの弁護士でもインハウスへのキャリアチェンジの可能性は十分あるでしょう。
弁護士資格を取得するには司法試験に合格しなければなりません。
司法試験を受けるには、法科大学院で必要な単位を取得してから受験するコースと、予備試験(短答式試験、論文式試験、口述試験)を突破してから受験するコースの2通りがあります。
司法試験に合格したら、1年間の司法修習を経たあとに修了試験を受け、それに合格すれば弁護士として活動できます。
詳しくは「弁護士とは?仕事内容・働き方・年収など、気になる情報を解説!」もご覧ください。
ビジネス実務法務検定試験
ビジネス実務法務検定試験は、近年重要視されているコンプライアンスに関する知識を証明できる資格です。
資格取得に向けた勉強では、どの業種においても重要となるビジネス関連の法知識を一通り身につける必要があります。
コンプライアンスに関わる法知識は職種を問わず求められるものですが、法務部門への転職を考えるなら、取得しておくに越したことはありません。
ビジネス実務法務検定試験は3級~1級があり、級によって要求される法知識や実務スキル、受験料が異なります。
3級・・・基本的な法律知識
2級・・・問題が生じた際に、弁護士への相談など必要な対応ができるレベルの法律知識
1級・・・幅広い法律知識を持ち 、問題解決に必要な判断や対応ができる
詳しくは「【ビジネス実務法務検定】合格率と難易度、勉強時間、試験日程など」もご覧ください。
ビジネスコンプライアンス検定
ビジネスコンプライアンス検定は、その名前の通り、企業経営の健全化につながるコンプライアンス能力を証明できる資格です。
資格試験で問われるのは、コンプライアンス違反をしないために必要な知識です。最も初歩的な「BASIC WEBテスト」、「初級」、「上級」の3段階で構成されています。
BASIC WEBテスト……基礎的な法律知識(オンライン受験可能)
初級……適切な法律知識、価値判断基準を持ち 、経営理念や社会通念に配慮した行動が取れる
上級……高度な法律知識があり、企業全体レベルでの問題解決能力・価値判断基準を持ち 、コンプライアンス経営を推進できる
詳しくは「ビジネスコンプライアンス検定とは?難易度や活かせる仕事について解説!」もご覧ください。
司法書士
司法書士は国家資格であり、資格取得者は登記・供託の代理業務、裁判所・検察庁・法務局などに提出する書類の作成、各種登記申請手続きの代行をすることができます。
資格取得には高度な法律知識が要求されるので、資格取得までの道のりは困難です。
しかし、取得できれば、企業法務の専門職として高く評価されます。
契約書類の管理者や法律関係のコンサルタントなど、司法書士が求められるビジネスシーンは多いです。
司法書士には受験資格がなく、受験・合格には学歴や年齢は関係ありません。
試験は筆記と口述があり、筆記試験に合格した人が口述試験に進みます。受験手数料は8,000円です。
詳しくは「司法書士は企業法務に転職できる?業務範囲や難易度、求人例など」もご覧ください。
行政書士
行政書士も国家資格であり、資格取得により官公庁に提出する法律関係の書類、権利義務や事実証明に関する書類などの作成が可能です。
弁護士や司法書士よりも難易度は低めと言われていますが、それでも難関資格であることには 間違いありません。
資格試験では幅広い法律知識が出題され、合格には時間をかけて準備する必要があります。
受験資格は特になく、誰でも受験可能です。受験手数料として10,400円かかります。
詳しくは「行政書士は企業法務に転職できない?資格の活かし方や求人例など」もご覧ください。
法務への転職は「MS Agent」にご相談ください
法務は法律に関する専門知識が求められるうえに、そもそも募集人数が少ないため、転職の難易度は決して低くありません。
また、業界や事業内容ごとに取り扱う法令が異なるため、実務経験者であっても、必ずしも転職活動で有利になるとは限らない点も、法務の転職が難しいとされる理由です。
自分の力だけで良い求人を見つけ、面接の対策まで行うのは簡単なことではありません。
法務求人を多く取り扱っているだけでなく、書類添削や面接サポートまで対応してくれる転職エージェントを利用することで、成功する確率が上がるでしょう。
管理部門・士業特化型転職エージェント「MS Agent」では、法務専門のキャリアアドバイザーが30年以上の支援実績とノウハウを活かして転職をサポートしています。
法務としての転職をお考えの方や、どのような求人があるのか知りたいという方は、ぜひご登録ください。
まとめ
企業内の弁護士のような役割を果たす法務は、業界や企業規模に適した高度な専門知識や柔軟な思考力、語学力など、各企業によってさまざまなスキルが求められます。
実務経験者や法律に関する有資格者が優遇される側面もあるため、転職活動の難易度は決して低くありません。
自分1人での転職活動が難しいと感じている方は、転職エージェントを活用するのも手段の1つです。
「MS Agent」だけが取り扱っている求人の紹介や、書類添削、面接対策など、さまざまな側面で転職活動をサポートいたします。
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この記事を監修したキャリアアドバイザー

大学卒業後、新卒でMS-Japanに入社。
法律事務所・会計事務所・監査法人・FAS系コンサルティングファーム等の士業領域において事務所側担当として採用支援に従事。その後、事務所側担当兼キャリアアドバイザーとして一気通貫で担当。
会計事務所・監査法人 ・ 法律・特許事務所 ・ コンサルティング ・ 金融 ・ 公認会計士 ・ 税理士 ・ 税理士科目合格 ・ 弁護士 を専門領域として、これまで数多くのご支援実績がございます。管理部門・士業に特化したMS-Japanだから分かる業界・転職情報を日々更新中です!本記事を通して転職をお考えの方は是非一度ご相談下さい!
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